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            医薬品による健康被害の再発防止対策についてNO2

III 具体的な改革の方向
 1.情報の収集、分析、評価体制の強化

    生命や健康に直結する分野において不確実な情報の下で政策決定を行わざるをえ
    ない場合に、より適切な政策決定が行われるよう、できる限り迅速に情報の収集、
    分析、評価や伝達を行う組織的な対応を強化する。
    このため、省内担当部局や試験研究機関等について見直しを行い、役割分担や責
    任の明確化、機能の強化を図る。特に、国立試験研究機関等における情報の収集、
    分析、評価機能や情報、知見を集積するための機能の強化を図る。

  (講ずべき方策)

  (1) 情報の収集、分析、評価体制の強化

      ○ 国立予防衛生研究所については、国立試験研究機関の重点整備・再構築の一
        環として国立感染症研究所(仮称)に改組し、保健医療行政の中で適切に位置
        づけて、体制の整備充実を図る。
        具体的には、感染症に関するサーベイランス等の一次情報から文献情報に至
        る内外の情報を迅速に収集、分析、評価し、これを分かりやすい形で省内担当
        部局へ伝達する責務を有し、対外的にも情報の発信を行う専門部署を設置する
        。また、重大な危険のおそれがあると判断される情報を入手した場合に迅速か
        つ適切な対応を図っていけるよう、研究所内における情報の伝達及び意思決定
        のシステムの整備と組織の役割の明確化を図る。

      ○ 国立衛生試験所については、国立衛生科学研究所(仮称)として整備充実す
        る中で、収集、蓄積された情報について中長期的あるいは薬剤疫学の観点から
        の分析を行う部門の設置や、医薬品の品質、毒性等に関する研究情報の収集、
        分析及び提供の充実を図る。また、医薬品の審査における国立衛生試験所の果
        たすべき役割について今後の課題として検討する。

      ○ 米国のFDA(食品医薬品庁)やCDC(疾病管理センター)、WHO(世
        界保健機関)等海外の専門機関との連携を強化し、特定の政策決定に必要とな
        る焦点を絞った情報を、直接、迅速に収集する。このため、これらの機関との
        人事交流、専門家会合等への積極的な参加等をさらに進めるとともに、特定の
        機関との連絡窓口を設置することを検討する。

  (2) 組織内における情報の集中と伝達システムの確立

      ○ 情報の収集、分析、評価や政策決定を担当する部局間で定期的な連絡会議を
        開催し、円滑な情報の流通を図る。特に重大な危険のおそれがあると判断され
        る場合には、緊急協議を行い、迅速な対応を図ることとし、その場合の条件、
        組織、責任分担等をあらかじめ定めておく。

      ○ 週報や月報等の方式や省内の「パソコン/LANシステム」の活用により、
        収集、分析、評価した情報の省内の流通、回覧を図るとともに、それを蓄積し
        て情報提供を行えるよう、年報方式や電子情報化による工夫を行う。

 2.審議会、研究班の活用と行政との役割分担、責任の所在

    専門的、学問的知見に基づく検討のため、審議会や研究班を活用する場合には、
    政策決定の最終責任はあくまで行政にあることを踏まえつつ、審議会や研究班と行
    政との役割分担と責任の明確化を図るとともに、審議会や研究班の運営ルールを明
    示し、情報公開を行う。また、政策決定のプロセス等について、後日検証可能なよ
    うに、現行の文書管理体制の見直しを行う。

  (講ずべき方策)

    ○ さまざまな異なった立場から問題を分析し、検討してもらうため、審議会の委
      員は、広範囲の専門家や有識者を選任する。

    ○ 審議会の運営については、「審議会等の透明化、見直し等について」の閣議決
      定(平成7年9月29日)を踏まえつつ、基本的にはそれぞれの審議会が決める
      べき事項ではあるが、生命や健康と特に密接な関係の深い審議会(公衆衛生審議
      会、食品衛生調査会、生活環境審議会、中央薬事審議会)については、公開に関
      する国際的な整合性、個人のプライバシーに配慮しつつ、また、自由闊達に意見
      表明できるようにも工夫しつつ、議事録及び提出資料の公開を原則とし、個別の
   行政処分に関わるものであっても、当該処分の内容、判断の根拠等の公表を行う
      こととする。

    ○ 研究班については、専門的、学術的研究を行うために設置することを原則とす
      るが、例外的に政策決定に関わるような研究班を設置する場合については、上記
      に準じた取扱いとし、研究班の設置要綱等において、その検討事項の範囲、責務
      等を明確化し、これに適した専門家を幅広く選任するとともに、研究班と審議会
      の役割分担の明確化を図り、できる限り法令に基づく審議会のシステムの中への
      位置づけを図る。また、研究班の研究成果については、これを公表し、広く利用
      できるようにする。

 3.知見の蓄積や状況の変化を踏まえた政策の見直し

    政策については、絶えず知見の蓄積や状況の変化等に基づき見直しを行い、機動
    的、弾力的に変更、修正していく必要があり、そのための対策をシステム的に確立
    する。

 (講ずべき方策)

  (1) 政策の機動的、弾力的な見直し

      ○ 不確実な情報の下で政策決定を行った場合には、常にその前提となった諸条
        件(例、政策決定に当たって考慮した諸要因、判断の前提となった知見の具体
        的内容、制約条件等)をも合わせて公表する。

      ○ 政策決定後の当該政策の実施状況や効果、影響、副作用等について追跡調査
        するため、サーベイランスやモニタリングの体制を整備し、政策決定の判断の
        前提となった諸条件が変化した場合には、速やかに政策の見直しを行う。

  (2) 省内の政策決定手続等の明確化

      ○ 省内、局内の政策決定手続を再点検し、ラインによる明確な意思決定と責任
        分担、重要度に応じた政策決定のレベルや局議の位置づけ等について統一と明
        確化を図る。

      ○ 文書管理責任者の特定、文書種別に応じた保存期限の徹底、文書作成責任者
        の明示等新しい文書管理システムについて検討を進める。なお、重要な政策決
        定の際には、前提となった諸条件、判断の理由を明確にしておくことを検討す
        る。

      ○ 国民の生命や健康の危険に直結する場合において、法に基づく各般の行政措
        置が的確かつ迅速に行使できるよう、行政権限行使の発動条件、手続等のマニ
        ュアルを作成する。

  (3) 厚生科学審議会(仮称)の創設

      ○ 知見の蓄積がほとんどない段階であっても、安全性の問題が生じうると疑わ
        れる情報について、国民の生命や健康を確保するため、外部の有識者による幅
        広い視点からの評価や省内担当部局の迅速な対応に結びつく提言を行う仕組み
        を設けることが必要である。

      ○ このため、厚生科学会議(厚生大臣が開催する懇談会)を発展的に改組し、
        医学、薬学、理工学、法律等の専門家、科学評論家等幅広い分野の有識者を委
        員とする厚生科学審議会(仮称)を設置する。

      ○ 厚生科学審議会(仮称)は、厚生科学に関する基本政策についての審議を行
        うとともに、医薬品、食品、感染症等に関し国民の生命や健康への危険が疑わ
        れる問題を大局的見地から公開で審議し、提言を行う。

 4.情報の提供・公開システムの整備

    行政が把握した生命や健康への危険に関する情報については、その危険の程度が
    不確実な段階でも、また、その程度の大小にかかわらず、多様な手段を使って迅速
    に情報を提供、公開し、行政の基礎データについても、関係者や国民からのアクセ
    スの道も開かれたものとする。これによって、国民の選択や自己決定に資するとと
    もに、情報の広がりによって、新たな情報の発掘、収集につながる可能性も期待で
    きる。

 (講ずべき方策)

  (1) 国民に対する情報の提供と公開

      ○ 行政が把握した生命や健康への危険に関する情報については、マスコミを通
        じて積極的に情報提供を行うとともに、インターネットにホームページを設け
        る等により、行政機関、医療機関等に提供されるものと同様の専門的な医薬品
        副作用情報、感染症情報等に国民がアクセスできる方途を新たに確保する。な
        お、その場合、危険度の高い緊急情報については、優先的に認識されるよう工
        夫を図る。

      ○ 患者組織に対し、特定の疾患に関連の深い医薬品や治療方法に関する専門的
        情報を提供することも視野に入れて、行政からの情報提供システムの充実を図
        る。


  (2) 医療機関、地方公共団体への情報提供

      ○ 緊急事態に対応するためには、医療機関が副作用等の専門的な最新情報を迅
        速に入手できることが不可欠であり、情報通信システムを通じ、医療機関側か
        らもアクセスできる方途を講ずる。

      ○ 感染症等に関する緊急情報についても即時にシステム内の医療機関に対して
        提供できるよう、「緊急医薬品情報伝達システム」(緊急ファックス)の整備
        を行う。

      ○ 都道府県、地方衛生研究所、保健所等に対しリアルタイムの情報提供を行う
        ため、WISH(厚生行政総合情報システム)を強化、活用する。

  (3) 情報の提供、公開のための体制整備

      ○ 情報の提供と公開を一元的、システム的に行うため、医薬品、食品、感染症
        等の分野ごとに、その窓口となる部署を設定する。また、月報等を定期的に公
        表したり、緊急性、危険性の高いものについては、特別の情報伝達ルートで提
        供するなど、危険度や確度に応じた情報提供のルール化、マニュアル化を進め
        る。

      ○ 情報公開の観点から、国民からの基礎データへのアクセスを可能とするため
        、プライバシーや知的所有権を侵害したりするおそれのあるものを除き、分野
        ごとにデータベースの構築に取り組むとともに、そのための体制強化を図る。

  (4) 製薬企業における情報の提供と公開

      ○ 製薬企業は、自ら取り扱う医薬品の品質、有効性、安全性について第一義的
        な責務を有するというべきであり、製薬企業においてMR(医療情報担当者)
        による適切な情報提供が徹底されるよう対策を講じるとともに、製薬企業自体
        において、医薬品に関するデータベースの構築、医療関係者や国民からのアク
        セスを可能にする情報通信手段の活用を図る。また、MS(医薬品卸販売担当
        者)による医療機関に対する副作用等の情報提供についても推進を図る。

 5.医療現場におけるインフォームド・コンセント

    患者の医療ニーズの高度化・多様化等の変化を踏まえ、医療機関自らの情報収集
    や国と製薬企業からの医療現場への十分な情報提供の下に、医師等から患者への十
    分な情報提供が行われ、それに基づいて患者が自らの意思により選択できるように
    する。

 (講ずべき方策)

  (1) 疾患等に応じたインフォームド・コンセントの推進

      ○ 血液製剤は、副作用やウイルス等による汚染の危険性を常に内在しており、
        厳重な製造管理が行われなければならないものであるが、このような特性を持
        つ血液製剤の使用の際には、特にインフォームド・コンセントが十分に行われ
        るべきである。さらに、新薬の治験や既存医薬品の適用外使用の場合等におい
        ても同様である。これらのケースについては、ガイドラインを設定し、具体的
        にその推進を図る。

      ○ エイズやウイルス肝炎等については、疾病の管理のためにも、また、家庭内
        感染等への対応のためにも、説明の内容、受容能力、告知後のフォロー体制等
        に配慮した上で適切に告知、説明が行われる必要があり、ガイドライン等の設
        定・定着を図る。

      ○ 患者が特に副作用等に注意して使用する必要のある医療用医薬品については
        、医師又は薬剤師が、製薬企業が用意する患者向け説明文書を患者に説明、交
        付するような仕組みを定着させる。

  (2) 診療記録(カルテ等)の開示についての取組み

      ○ カルテ等に記載された内容は、患者の診療内容等に関する重要な情報であり
    、患者の求めに応じたカルテ等の診療記録の開示の問題について、その際の条
    件、記録の保存方法及び保存期間のあり方等も含め、検討の場を設けることと
    する。

  (3) 医療関係者の教育研修の充実

      ○ 医療関係者が、インフォームド・コンセントに対する理解や副作用などを含
        めた医薬品に関する基礎知識を十分持つようにするため、国家試験、卒後臨床
        研修、生涯教育の各段階においてインフォームド・コンセント及び臨床薬理学
        を取り入れる等の改善を図るとともに、医学教育及び薬学教育の改善について
        は、関係方面に改善を要請する。

 6.医薬品行政における対応

  (1) 現に使用されている医薬品の安全性の確保

      医薬品は、医療を行う上で欠くことのできないものである一方で、使用に伴い
      副作用の発生等一定の危険が本質的に内在していることから、現に使用されてい
      る医薬品については、幅広い危険情報を迅速に収集、分析、評価し、必要な対策
      に結びつけていく必要がある。

  (講ずべき方策)

   1. 情報の収集、分析、評価

    ア 副作用等のモニター制度の充実等

          ○ 医療機関からの副作用モニター制度については、報告対象に医薬品によ
            る感染症の情報も加えるとともに、将来的にはすべての医療機関を対象に
            するよう、計画的に対象医療機関の拡大を図る。また、国立病院が使用成
            績調査等の市販後の安全性の調査に積極的に協力できるよう、条件整備を
            図る。

          ○ 副作用等のモニター制度については、報告方法の工夫、報告様式の簡略
            化を図るほか、報告対象範囲を医薬品を使用している患者の健康に関する
            不審な情報全般に拡大するなど、欧米諸国における取組みも参考にしなが
            ら、副作用等の報告が積極的に行われるような方策を幅広く検討する。

          ○ 治験医療機関は、治験医薬品に関して一般に情報の蓄積度も高いと考え
            られ、治験終了後はもとより、市販後もその副作用情報等について格別の
            注意を払うべきである。このため、治験契約上、市販後も治験医療機関か
            ら製薬企業への医薬品に関する副作用情報の提供を条件とする等、副作用
            情報の収集方法について改善を図る。

    イ 製薬企業による市販後の安全性の調査の充実

          ○ 新薬を製造、輸入する製薬企業は、当該新薬に関する副作用や感染症の
            内外の情報及び販売停止等に関する海外の情報を収集するとともに、その
            分析、評価を行い、PSUR(安全性定期報告)を作成して厚生省に提出
            することを義務づける。

          ○ 今回の薬事法改正で法制化されたGPMSP(市販後調査実施基準)の
            具体化として、製薬企業による市販後の安全性の調査の実施体制の整備を
            進めるため、社内にそれを担当する部門の設置等を義務づける。

    ウ 情報収集等の拠点設置

          ○ 薬務局の緊急対応のための一元的な情報担当部門を強化するとともに、
            国立衛生試験所、国立予防衛生研究所に情報担当部門を設置し、薬務局と
            一体となって安全性の確保の役割を果たすように位置づける。また、担当
            部門間をオンラインで結ぶとともに、関連するデータベースを整備する。

    エ 市販後の特別な調査・試験の実施

          ○ 市販後も、保健衛生上の危害の発生を防止するという観点から、副作用
            やウイルス等による汚染等について特別な調査・試験の実施が必要である
            と中央薬事審議会が認めた医薬品については、当該特別の調査・試験の実
            施を承認条件とし、厚生省から製薬企業に対し、文書で明確に指示を行う
            。また、承認後に公表される有効性や安全性に関する調査報告書にもその
            旨を明示するとともに、医療機関に対してその旨を周知する。

NO3に続く
  問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
     担 当 北村(内2243)、本田(内2259)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3591-9869


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