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      医薬品による健康被害の再発防止について(報告書のポイント)
I 再発防止のための危機管理システムの構築


 1.情報の収集、分析、評価、伝達体制の強化

    ○ 医薬品、食品、感染症ごとに試験研究機関や省内に情報の収集、分析、評価、
   伝達を行う専門部署を設置し、定期的な連絡会議を開催。

    ○ 国立予防衛生研究所を国立感染症研究所(仮称)に改組する中で、内外の情報
      の収集、分析、評価、省内への伝達に責務を有するとともに、対外的にも情報の
      発信を行う専門部署を設置。

    ○ 副作用モニター制度について、将来的にはすべての医療機関を対象にするよう
      、計画的に対象医療機関を拡大。

 2.厚生科学審議会(仮称)の創設

    ○ 医薬品、食品、感染症等に関し、国民の生命や健康への危険が疑われる問題を
      大局的見地から公開で審議し、提言を行う厚生科学審議会(仮称)を創設。

 3.機動的、弾力的な政策見直し等

    ○ 運営ルールを明示することによる審議会や研究班と行政との役割分担の明確化
      並びに情報公開の推進。

    ○ 回収命令、緊急輸入等の措置が的確かつ迅速に行使できるよう、行政権限行使
      の発動条件等のマニュアルを作成。

    ○ 機動的、弾力的に政策の見直しができるよう、政策決定の前提となった知見等
      を公表。

 4.情報提供、インフォームド・コンセント

    ○  専門的な医薬品副作用情報等に国民がアクセスできる方途の確保等、多様な手
      段を活用した国民、医療機関等への情報提供・公開。

    ○ 血液製剤、新薬の治験、既存医薬品の適用外使用の場合等について、インフォ
      ームド・コンセントのガイドラインを設定。




II 透明度の高い薬事行政の確立


 1.薬事行政組織の再編

    ○ 薬事行政組織について、「治験、承認審査、市販後の安全対策等」と「研究開
      発振興、生産・流通対策等」とを原則として組織的に区分して担当させる方向で
      具体的に検討。

 2.審査体制の強化

    ○ 医薬品の審査体制については、「外部審査方式」も「内部審査方式」もそれぞ
      れに利点と問題点があるが、当面、外部審査方式によらざるを得ないことを踏ま
      え、中央薬事審議会の運営方法の改善と透明性の確保のため、以下の措置を実施
      。

      ・ 中央薬事審議会の常任部会の委員構成を他分野の専門家にも広げる。
      ・ 医薬品の審査区分等中央薬事審議会の運営事項全般について明文化し、公表
        する。
      ・ 中央薬事審議会の審査内容の公開を進めるため、新薬については、承認後に
        有効性や安全性に関する調査報告書を公表する。
      ・ 全く新規の医薬品については、中央薬事審議会の常任部会における審査の前
        に、有効性や安全性に関わる主要部分等を公表し、これに対して得られた意見
        を常任部会に報告する 等

    ○ 中央薬事審議会が専門的見地から審議に専念できるよう、審査担当官の計画的
      増員、チーム審査方式の導入等事務局審査体制の強化。

 3.治験における透明性と信頼性の確保

    ○ 製薬企業、医療機関及び行政の責任の明確化を図り、今回法制化されたGCP
      (治験実施基準)の具体化等により、国際的に通用する透明で信頼性の高い治験
      ルールの確立。

 4.血液行政の見直し

    ○ 日赤をはじめ、幅広い分野からの専門家や有識者による検討の場を設け、血液
      事業のあり方を検討し、立法措置を含め、総合的見直しを実施。

                  医薬品による健康被害の再発防止対策
                       について(報告)


                                  目  次


I はじめに  .................................................................1

II 再発防止対策のために検討すべき課題  ......................................2

 1.エイズや非加熱血液製剤の危険性についての情報収集、分析、評価  ...........2
 2.政策決定プロセスにおける審議会や研究班と行政との役割分担や責任の明確化  .2
 3.その後の知見の蓄積や状況の変化を踏まえた政策の見直し  ...................2
 4.国民や医療機関等に対する行政からの情報提供  .............................3
 5.医療現場におけるインフォームド・コンセント、告知と二次感染への対応  .....3
 6.治験、承認審査を始めとする薬事行政の見直し  .............................3
 7.血液行政の見直し  .......................................................4

III 具体的な改革の方向  .....................................................5

 1.情報の収集、分析、評価体制の強化  .......................................5
  (1) 情報の収集、分析、評価体制の強化  ....................................5
  (2) 組織内における情報の集中と伝達システムの確立  ........................5

 2.審議会、研究班の活用と行政との役割分担、責任の所在  .....................6

 3.知見の蓄積や状況の変化を踏まえた政策の見直し  ...........................6
  (1) 政策の機動的、弾力的な見直し  ........................................6
  (2) 省内の政策決定手続等の明確化  ........................................7
  (3) 厚生科学審議会(仮称)の創設  ........................................7

 4.情報の提供・公開システムの整備  .........................................7
  (1) 国民に対する情報の提供と公開  ........................................8
  (2) 医療機関、地方公共団体への情報提供  ..................................8
  (3) 情報の提供、公開のための体制整備  ....................................8
  (4) 製薬企業における情報の提供と公開  ....................................8

 5.医療現場におけるインフォームド・コンセント  .............................9
  (1) 疾患等に応じたインフォームド・コンセントの推進  ......................9
  (2) 診療記録(カルテ等)の開示についての取組み  ..........................9
  (3) 医療関係者の教育研修の充実  ..........................................9

 6.医薬品行政における対応  .................................................9
  (1) 現に使用されている医薬品の安全性の確保  ..............................9
   1. 情報の収集、分析、評価  ............................................10
   2. 対策の決定・実施  ..................................................11
   3. 情報提供等  ........................................................11
  (2) 治験における透明性と信頼性の確保  ...................................11
   1. 今回法制化されたGCP(治験実施基準)の具体化  ....................12
   2. 治験に関する情報の公表  ............................................12
   3. 治験費用の支払を含めた製薬企業と治験担当医師の関係の公正及び透明性の
    確保  ................................................................12
   4. 治験データの信頼性の確保  ..........................................12
   5. 国立病院における治験受入れ体制の整備  ..............................13
  (3) 薬事行政組織の見直し  ...............................................13
   1. 審査体制の整備  ....................................................13
   2. 薬事行政組織の再編  ................................................15

 7.血液行政の見直し  ......................................................16
  (1) 効率的かつ透明な血液事業の総合的展開  ...............................16
  (2) 使用の適正化と血液製剤の完全な国内自給の達成  .......................16
  (3) 血液製剤の安全性の確保  .............................................16

IV 終わりに  ...............................................................17


I  はじめに

  非加熱血液製剤により血友病患者等多数の方々がHIVに感染し、患者や家族の方
  々にたとえようのない苦痛をもたらしたことは痛恨の極みである。これまでの薬害の
  経験を的確に生かしきれなかったことを深く反省し、国民の生命、健康を守るべき責
  務を改めて深く認識し、このような甚大な健康被害を再び発生させないために、今回
  の事件を重い教訓として関連する行政のあり方を抜本的に見直さなければならない。

  医学をはじめ関連科学は本質的に不確実な部分を内包しているものであるから、国
  民の生命や健康と直結するような分野においては、常に鋭敏な危機管理意識を持ち、
  国民の視点に立って、政策決定に最善を尽くすとともに、その後の知見の蓄積や状況
  の変化等があった場合には政策を機動的、弾力的に見直していかなければならない。

  本プロジェクトチームは、このような基本的認識に立って、甚大な健康被害を再び
  発生させないための方策について、1.情報を収集、分析、評価し、政策決定や政策の
  見直しにつなぐシステムのあり方、2.生命や健康に関する情報を国民や医療関係者等
  に提供、公開するシステムのあり方、3.薬事行政について1.、2.を踏まえた具体的な
  改善方策や薬事行政組織のあり方、4.血液行政のあり方、について検討を行い、報告
  書を取りまとめた。

  改善方策の検討に際しては、国会、厚生科学会議、マスコミをはじめとする関係方
  面からのこれまでの指摘を踏まえ検討を行った。各方面の方々から説明を受け、資料
  の提供があったが、これらについても参考とした。

  報告書のとりまとめに当たっては、改善方策の具体的な検討を今後に委ねざるを得
  ないものも多かったが、そのような場合であっても、可能な限り早期かつ確実に具体
  策をとりまとめられるよう検討の方向を明記した。

  なお、本件については、国会における真相解明のための調査審議や関係当局による
  調査が継続して行われているところであり、また、第三者委員会による調査も行われ
  ることになっている。この報告書は、これらの調査結果が出る前であっても、可能な
  限りの再発防止対策を講じることは必要なことであるとの視点から、現時点で再発防
  止対策に役立つと思われる事項を取りまとめたものであり、今後、原因究明を踏まえ
  て逐次見直されるべきものである。

II 再発防止対策のために検討すべき課題

  本件の経過は、「血液製剤によるHIV感染に関する調査報告書」(平成8年4月
  26日)にまとめられているが、再発防止のために本件の経過に学ぶという立場に立
  って現時点で振り返れば、次のような問題点と検討すべき課題を指摘することができ
  る。

 1.エイズや非加熱血液製剤の危険性についての情報収集、分析、評価

    ○ アメリカにおいて血友病患者のエイズ症例報告が行われて以来、未知の部分が
      多い問題だけに、これに関する情報、特に海外情報が重要であったが、試験研究
      機関を含む省内の情報の収集、分析、評価や伝達の体制が必ずしも十分でないと
      いう指摘があり、必要な情報が政策決定を行う部局に迅速に提供されるシステム
      を確立する必要がある。また、FDA(食品医薬品庁)、CDC(疾病管理セン
      ター)、WHO(世界保健機関)等との連携体制を整備していく必要がある。

    ○ 昭和58年6月に厚生省担当課は製薬企業から、供血者が供血後にエイズ様症
      状を呈したため、米国では製品の自主回収が行われ、日本でも原料血漿を用いた
      製品を出荷停止としたとの報告を受けた。知見の蓄積が十分でない状況の下にお
      いては、危機管理の観点から、こうした情報も広く専門家の検討に供するという
      ルールを設定しておく必要がある。

 2.政策決定プロセスにおける審議会や研究班と行政との役割分担や責任の明確化

    ○ エイズ研究班や血液製剤小委員会は、非加熱血液製剤の継続使用の方向性を示
      し、そのまま行政の施策となっている。重要な政策決定に結びつく検討をその責
      任のない研究班に委ねたことや、権限と責任の明確な審議会に諮らなかったこと
      について問題とする指摘がある。
      また、帝京大症例について、疑似症例を結論とした同研究班の検討経過、CD
      Cスピラ博士の診断の受け止め方、AIDS調査検討委員会での第1号症例に係
      る議論の経過も判然としないという指摘がある。
      審議会や研究班については検討事項に応じた人選や運営のルールを確立すると
      ともに、行政と審議会や研究班との役割分担や責任の明確化を図る必要がある。
      また、政策決定へのかかわりがある場合には、検討経過を記録するとともに、結
      果を公表する必要がある。

    ○ 不確実な情報の下で政策決定を行う場合には、その後の知見の蓄積による再検
      討に備えるためにも、前提となった諸条件、判断の理由を公表するとともに、行
      政内部の責任の所在の明確化、文書管理の徹底を図る必要がある。

 3.その後の知見の蓄積や状況の変化を踏まえた政策の見直し

    ○ エイズや非加熱血液製剤の危険性等に関しては、昭和59年5月の米国NIH
      (国立保健研究所)のギャロ博士による原因ウイルスの同定、同年9月の国際ウ
      イルス学会における概ねの認知、同年10月の加熱処理によるウイルスの不活化
      効果の報告と徐々に解明が進み、昭和60年以降も知見が積み重ねられていった
      。このような変化をフォローし検討する体制を整備し、知見の蓄積や状況の変化
      を踏まえ、従前の政策について弾力的かつ機動的な見直しが確実に行われるよう
      なシステムを確立する必要がある。

    ○ 加熱血液製剤の承認後の非加熱血液製剤の回収については、通達による回収は
      供給に多大の影響を与え患者の治療に重大な支障を来たすおそれがあると考えら
      れたこと等により、製薬企業の自主回収に委ねられた。しかし、一部製薬企業に
      おいて回収措置が徹底されなかったため、長期にわたり、非加熱血液製剤が市場
      に出回り、非血友病患者も含め、被害の拡大をもたらすこととなった。回収等の
      措置が確実に実施されるよう行政権限行使の発動条件等をあらかじめ明らかにし
      ておくとともに、これらの供給や回収の状況報告等の重要な報告は、文書により
      確実に行うように徹底する必要がある。

 4.国民や医療機関等に対する行政からの情報提供

    ○ エイズについては、当時の学術雑誌等に多くの関連記事があり、また、国内外
      の医学雑誌は、エイズに関する論文は特別扱いで早く載せるという申合せがあり
      、医療関係者もエイズに関してはかなり早くに知る機会があったという指摘があ
      る。しかし、実際は、医療従事者が必要な情報を常にもっていたわけではなく、
      患者にも十分な情報が伝わっていたとは言えなかったという指摘もある。生命や
      健康への危険に関する情報は、行政の対応策が整っていない段階でも公開し、ま
      た、行政から医療関係者等に対して積極的に情報を提供する必要がある。

 5.医療現場におけるインフォームド・コンセント、告知と二次感染への対応

    ○ 血液製剤小委員会が非加熱血液製剤を使用継続としたことについて、その場合
      の患者におけるメリット・デメリット(エイズにり患する危険性と止血管理面の
      有用性)とクリオ製剤に切り替えた場合のメリット・デメリットを比較考量した
      結果であるとされている。このような情報は、医療現場に提供し、患者が主治医
      と相談して自らの判断で対応できるようインフォームド・コンセントの推進を図
   るとともに、医療関係者の教育研修のあり方を見直す必要がある。

    ○ 抗体検査の結果、患者が感染しているにもかかわらず、医師が告知を行わなか
      ったため、配偶者等の二次感染を招く等の被害を生じたケースが報告されている
      。適切な告知、説明が行われるようにさらに徹底を図る必要がある。

 6.治験、承認審査を始めとする薬事行政の見直し

    ○ 加熱血液製剤の承認申請区分をめぐり、企業と厚生省担当者の間で意見交換が
      重ねられていたが、認識の不一致等の不明な部分がある。また、治験のプロセス
      が不透明という指摘がある。したがって、この際、治験及び承認審査について、
      透明性の一層の確保を図る必要がある。

    ○ 医薬品の市販後の安全対策について、副作用や汚染に関する幅広い情報を迅速
      に収集し適切に対応するための仕組みを構築する必要がある。

    ○ 医薬品審査の厳格性を確保する等のため、審査体制の拡充を図るとともに、「
   治験、承認審査、市販後の安全対策」と「研究開発振興、生産・流通対策等」と
      を原則として組織的に区分する方向で薬事行政組織のあり方を見直す必要がある
      。

 7.血液行政の見直し

    ○ 血液事業について厚生省と日本赤十字社との連携や血漿分画製剤の原料血漿の
      海外依存の問題が指摘されたが、血液製剤の安全性の確保に努めるとともに、適
      正使用を一層推進するため、血液行政組織のあり方も含め血液行政全般にわたる
      抜本的な見直しを行う必要がある。
NO2へ続く
  問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
     担 当 北村(内2243)、本田(内2259)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3591-9869


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