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     病院経営指標(医療法人病院の決算分析)について

1.近年、我が国の経済状況は低迷をつづけ、医業経営を取り巻く環境も厳しい状況に
  あり、とりわけ民間病院が健全な運営を行っていくには経営状況の把握が一層必要と
  なっている。
  こうした背景の下に、厚生省では平成5年6月に「病院経営緊急状況調査」を実施
  し、この調査を受けて、「医療機関経営健全化対策検討委員会」を設置し、民間病院
  の経営の現状分析とともに、経営健全化対策についての検討を行い、平成6年1月に
  報告書が提出された。

2.「医療機関経営健全化対策検討委員会報告書」においては、経営管理の改善のため
  の支援として『病院の経営改善は、病院自身の経営努力が基本であるが、行政サイド
  においてもその努力を効果的なものにするための支援を行うべき』、『病院の経営努
  力のためには、努力の目安となる病院経営指標の策定が必要』と提言されている。
  また、医療機関が、健全かつ安定した経営を維持していくうえで、経営上の問題点
  の解決を図ることはもとより、中長期的な展望に立った経営方針や経営戦略を策定す
  ることが必要とされているところである。

3.同報告書の提言を受けて、平成6年度から実施している医療施設経営改善支援事業
  の推進のために、経営指標策定に向けて、集計の分類方法、分析項目、基礎資料の集
  計方法等について検討・研究を行ったところであるが、この際、新たな調査等による
  病院に対する負担を避け、民間病院の過半数を占める医療法人が開設する病院の決算
  書を基礎資料とすることとした。

4.集計については、医療法人が開設する 4,624病院(平成6年10月1日現在:医療施
  設調査)のうち、法人設立後1年以上経過し、かつ、会計年度が4月1日から3月31
  日までと定められているものとしたが、損益計算書(損益状況)や貸借対照表(財政
  状態)の記載内容に不備等のあったものを除外した結果、1,692病院の平成6年度決
  算書を基礎とした。
  なお、集計・分析は、今後とも継続して行うこととしている。

5.経営指標は、個々の病院が経営活動の実態を係数的に把握し、病院の種類や規模、
  地域性からみた全国的な病院の傾向と比較することで、経営上の課題を明らかにし、
  病院経営の改善・合理化等、健全な運営に資する参考資料として、医療施設経営改善
  支援事業における研修会を始め、経営相談等に際し活用できるよう有効的な普及に努
  めることとしている。


病院経営指標のレーダーチャート

 1.今回の集計に基づき、個々の病院が経営改善等の資料として活用できるよう、一
    般病院、療養型(老人)病院、精神病院について、損益状況及び財政状態に関する
    代表的な指標について視覚に訴えるレーダーチャートで示した。

 2.自病院の損益状況、財政状態について、経営上の課題を分析し、条件が近い他病
    院と比較できるようにするため、損益状況については機能性、収益性及び生産性を
    、財政状態については機能性及び安定性を、病床規模別、病院の所在地人口別に、
    全体・黒字・赤字の平均値で表した。
   なお、比較に際し、黒字と赤字を合わせた全体の数値を100とした。

 3.レーダーチャート作成に当たり、分析項目ごとに、以下に該当する場合は表示を
    省略した。
   1) 対象施設の黒字・赤字別施設数が10施設未満のもの。
   2) 対象施設が黒字のみのもの。

 4.レーダーチャートは、病院の種類別に、病床規模(99床以下、100床〜199床、200
    床〜299床、300床以上)、病院の所在地人口(政令指定都市、人口20万人以上の市
    、人口5万人以上の市、その他)等に区分し、全39表を示した。


全体的な集計結果の説明


1.はじめに
   今回の集計は、我が国で初めての医療法人病院全体を対象としたものであるが、集
 計結果について参考とする場合にあっては、次の3点に留意する必要がある。
  1) 本集計が初年度であったことから客体数は、全国の医療法人病院 4,624施設のう
   ちの1,692施設(全体の36.6%)にとどまっていること。
  2) 本集計は、医療法人病院の平成6年度の決算書を基礎資料とした単年度の財務分
   析であり、集計結果の傾向について客体数の違いから、他年度や他の調査との詳細
    な比較は困難となっていること。
  3) 本集計においては、数値を平均値、20%値、中央値、80%値などいくつかの統計
   的データでとっているが、対象施設には、開設年次が古いものと新しいものが混在
    していることから、これをもって、直ちに全体の傾向とみることはできないこと。

2.損益状況の集計対象施設数と病床数等(表1参照)
   集計対象施設数は 1,692施設で、その内訳は一般病院 1,115施設、療養型(老人)
 病院 214施設、精神病院 359施設、結核病院 4施設である。
   1病院当たりの病床数は、一般病院 124.1床、療養型(老人)病院 151.5床、精神
 病院 277.4床、結核病院 172.8床となっている。
   なお、表1に掲げる数値は、平成6年病院報告の医療法人の開設する一般病院と精
 神病院の関連データと比較しても、大きな違いはなく、本調査の有用性は確保されて
 いると考えられる。

  表1:集計対象施設数と病床数等                 参考:平成6年病院報告
                                より

           一般病院  療養型(老人)  精神病院   結核病院   一般病院   精神病院
対象施設数(病院) 1,115          214       359          4      3,894     715
病床数   (床)   124.1         151.5     277.4      172.8      133.3    257.9
病床利用率(%)    81.7         94.7      96.0      88.1      84.7    96.6
外来/入院比(倍) 1.94         0.41      0.16      0.85      1.46     0.15
1日平均入院患者 101.3         143.5     266.3      152.1      112.9    249.0
数 (人)
1日平均外来患者 196.7          59.5      43.8      128.9      165.2     38.5
数 (人)
 *医療法人の開設する病院の対象施設数は、平成6年6月の確定施設数である。病床
  数は平成6年6月の確定病床数から算出した数である。
 *外来/入院比,1日平均入院患者数、1日平均外来患者数は、平成6年の年間患者
  数から算出した数である。
 *病院報告における一般病院は、療養型(老人)病院を含んでいること。


3.損益状況からみた一般病院の経営状況
   一般病院の対象施設数は、1,115施設であり、赤字病院は全体の27.2%となっている
  。(表2参照)
  表2:損益状況からみた基礎数値

                 全  体   黒  字   赤  字
  対象施設数    (病院)   1,115        812      303
   病床数       (床)    124.1     128.0      113.6
   1日平均入院患者数 (人)     101.3     107.0      86.1
   1日平均外来患者数 (人)     196.7     208.7      164.7

 1) 機能性(表3参照)
   外来/入院比をみると黒字病院と赤字病院で違いはないが、病床利用率を比べる
    と黒字病院83.6%、赤字病院75.8%と 7.8ポイントの差がある。
   平均在院日数は、黒字病院が赤字病院に比べて 6.6日短くなっており、病床利用
    率の向上や平均在院日数の短縮が病院運営のポイントと考えられる。
   また、入院収益をみると、黒字病院は入院が20,142円で赤字病院の1.14倍となっ
    ており、黒字病院の方が診療機能が高いと考えられる。

 表3:損益状況からみた機能性
                    全  体   黒  字   赤  字
 病床利用率         (%)     81.7      83.6      75.8
 外来/入院比        (倍)     1.94      1.95      1.91
 平均在院日数        (日)     39.7      38.4      45.0
 患者100人当たり従事者数  (人)     64.0      63.6      65.4
 患者1人1日当たり入院収益 (円)   19,578     20,142     17,691
 患者1人1日当たり外来収益 (円)    7,695     7,807      7,316


 2) 収益性(表4参照)
   損益状況からみた収益性を黒字病院と赤字病院別で比較すると、人件費率・材料
    費率・経費率・委託費率・減価償却費率などすべての項目で黒字病院の比率が低く
    なっている。
   人件費率で 5.4ポイント、材料費率で 1.5ポイント、経費率で 2.2ポイントの差
    があり、委託費率も 0.5ポイント低くなっている。このことから、黒字病院は経費
    の合理化に努力しており、人件費の適正化や在庫管理、購買努力に努めていること
    などが考えられる。




  表4:損益状況からみた収益性

                   全 体   黒 字   赤 字     20%値   中央値   80%値
人件費率          (%) 47.0     45.9     51.3       41.2     48.1     54.7
材料費率          (%) 28.0     27.7     29.2       19.8     26.8     33.4
経費率           (%) 15.0     14.5     16.7       11.6     15.1     20.1
委託費率          (%)  3.2     3.1     3.6       1.0     2.5     4.8
減価償却費率        (%) 3.7     3.6     4.0       1.8     3.5     5.0
医業収益対医業利益率   (%) 3.1     5.2     -4.7
経常収益対経常利益率    (%) 2.4     4.2     -4.1
総収益対総利益率      (%) 2.0     3.6     -3.8
経常収益対支払利息率    (%) 2.2     2.2     2.0

 *全体(平均値)と中央値を比較しても大きな違いはなく、収益性を平均値でみるこ
  とは、概ね有効であること。

 3) 生産性(表5参照)
  従事者1人当たりの年間医業収益は、黒字病院12,088千円、赤字病院10,619千円と
  なっており、黒字病院は赤字病院の1.14倍となっている。
  従事者1人当たりの年間給与は黒字病院が若干高い数値を示しているが、常勤医師
  1人当たりの年間給与は赤字病院が高くなっている。
  労働生産性は、従事者1人当たり年間どれだけの付加価値を生み出したかを示すも
  のであるが、黒字病院は 6,174千円、赤字病院は 4,945千円となっており、上述の給
  与と収益の関係がこの数値に現れている。
 表5:損益状況からみた生産性

                       全  体   黒  字   赤  字
従事者1人当たりの年間給与  (千円)     5,523     5,546     5,447
常勤医師1人当たりの年間給与 (千円)     12,745     12,667     13,020
常勤看護婦1人当たりの年間給与(千円)     4,397     4,397     4,399
従事者1人当たりの年間医業収益(千円)     11,744     12,088     10,619
労働生産性          (千円)     5,886     6,174     4,945
労働分配率             (%)      93.8      89.8     110.2

    問い合わせ先 厚生省健康政策局指導課
     担 当 田村(内2555)、小泉(2556)、並木(内2554)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3595-2194


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