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院外調理における衛生管理指針(ガイドライン)
第1 目的
本指針は、入院患者等に対する病院内での食事の提供を院外調理方式により行う場合
において、調理加工施設を設置又は運営もしくは管理する者が、衛生管理に関して自主
的に遵守すべき事項を定め、食中毒等の発生を予防し、入院患者等に提供する食品の安
全性を確保することを目的とするものである。
第2 用語の定義
本指針における用語の定義は、以下のとおりとする。
(1)院外調理:病院の入院患者等(産婦、妊婦、じょく婦、外来透析患者、デイケア
利用者等を含む。)に対して、当該病院外の施設において調理加工された食品を病院内
において提供することをいう。ただし、一般消費者向けに販売、製造され、一般市場に
流通している食品(パン、牛乳、アイスクリーム等)を提供する場合を除く。
(2)食品:入院患者等に対して食事として提供されるすべての食品(加工食品のみな
らず、食材、素材、半加工食品を含む。)をいう。
(3)製造者:当該病院外の施設において、入院患者等に提供する食品の調理加工を行
う事業者をいう。
(4)調理加工施設:入院患者等に提供する食品専用の施設に限らず、入院患者等に提
供する食品の調理加工を行うすべての施設をいう。
(5)HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point):食品製造における衛
生管理手法の一つであり、原材料から製品に至るまでの一連の工程において、起こり得
るすべての微生物危害を分析し、その危害の重要度を評価した上で、特に重点的に管理
する必要のある箇所を集中的かつ常時管理し、その管理内容をすべて記録することによ
り製品の安全確保を図ることをいう。
(6)危害:食品の安全性に影響を及ぼし、人の健康を害するおそれのあるすべてのも
のをいう。危害の原因物質としては、微生物(ウイルス、細菌、寄生虫等)、化学物質
、毒素、代謝産物、異物等があげられる。また、危害の要因としては、汚染、生存、増
殖、産生、混入、残存等があげられる。
第3 院外調理における衛生管理
1 院外調理を行う調理加工施設は、食品衛生法(昭和22年法律第233号)及び医
療法(昭和23年法律第205号)に定める衛生に関する基準を満たしていなければな
らないこと。
2 本指針は、第4「調理加工施設の一般規定」に記された構造設備及び衛生管理に関
する規定を満たしている調理加工施設において、HACCPを用いた自主衛生管理が実
施されることを前提として作成されたものであること。
第4 調理加工施設の一般規定
1 構造設備
(1)構造設備の一般規定
ア 作業区域は、適切な衛生状態のもとで作業を行うための十分な広さを有すること。
イ 作業区域の構造及びレイアウトは、食品の汚染を防ぎ、建物の清潔な部分と汚染し
た部分を明確に分離したものであること。
(2)食品の取扱、処理、加工及び製造区域の構造設備の個別規定
ア 床は洗浄消毒が容易で、防水性材料で作られ、排水を良好にするように傾斜がつけ
られたもの又は傾斜のついていない床にあっては水を容易に除去できる構造であること
。
イ 内壁は耐久性のある不浸透性材料で作られ、表面が平滑で、清掃が容易な構造であ
ること。
ウ 天井は清掃が容易で、塵埃が溜まりにくい構造であること。
エ ドアは耐久性のある材料で作られ、清掃が容易な構造であること。また、手動で開
閉することにより食品を汚染するおそれのあるドア(冷凍・冷蔵設備のドアを除く。)
については、自動開閉ができること。
オ 適切な換気装置及び必要に応じて強制排気装置を有すること。
カ 自然光又は人工光により十分な照度が得られていること。また、照明装置は、電球
又は蛍光灯の破損時に破片が食品の上に落下しない構造となっていること。
キ 適切な数の手指の洗浄消毒設備が設けられていること。
ク 作業区域及び水洗トイレには、手洗い設備が設けられていること。
ケ 施設、装置、設備及び機械・器具の清掃設備を有すること。
(3)冷凍・冷蔵設備の構造設備規定
ア(2)のア〜エ及びカの要件に適合していること。
イ 必要に応じ、適切な温度を保つことができるよう十分な冷凍・冷蔵設備が設けられ
ていること。
ウ 食材、原材料等を保管する冷凍・冷蔵設備と、調理加工後の食品を保管する冷凍・
冷蔵設備とは明確に分離されていること。
(4)昆虫、鼠族、鳥等の有害な小動物の侵入を防ぐ適切な設備を設けること。
(5)まな板、容器、コンベアベルト等の機械・器具は耐腐食性に優れた材質で作られ
、洗浄消毒が容易なものであること。
(6)ナイフ、包丁等は洗浄消毒が容易なものであること。
(7)食品廃棄物を専用に収容するため、耐腐食性かつ不浸透性の材質で作られ、清掃
が容易で運搬しやすい構造の容器を必要数備えること。また、1日の作業が終了した時
点で、当該容器が空になっていない場合には、これらの容器を保管する廃棄物保管場所
が設けられていること。この廃棄物保管場所は、低温に保つことができ、食品の汚染や
臭気の拡散を防ぐことができる構造とすること。
(8)給水設備は、圧力のかけられた十分な量の飲用適の水を適切に供給できるもので
あること。ただし、例外として、食品を汚染させる危険性がない場合に限り、飲用適の
水の配管と明確に区別された専用の配管により、消火、冷凍・冷蔵設備の冷却用等とし
て、飲用に適しない水を供給することが認められること。この場合、飲用に適しない水
の配管を他の目的で使用してはならないこと。
(9)適切な能力を有する衛生的な排水処理設備を有すること。
(10)水洗トイレ及び更衣室は平滑で防水性があり、洗浄可能な内壁及び床を備えてい
ること。また、水洗トイレの開口部は作業区域に直接つながっていてはならないこと。
(11)手洗い設備は、自動式又は足踏み式等の蛇口を手で操作しない方式であること。
また、手洗い設備には、手指の洗浄剤、手指消毒器及び使捨てのタオル又は温風手指乾
燥機等が備えられていること。
(12)定期的又は恒常的な検査が必要な場合には、専用に使用する適切な器具を備えた
施錠できる検査室を有すること。
(13)洗浄剤、消毒剤、殺鼠剤、殺虫剤その他食品を汚染させるおそれのある薬剤を保
管するための施錠可能な場所(薬品庫又は棚)を有すること。
(14)運搬車両等を洗浄消毒するための設備を有すること。
(15)施設内において甲殻類、魚類等を蓄養する場合には、有害な微生物、有毒物質等
が動物に移行することのない水質の水を供給し、最良の生存条件を確保するための適切
な装置が設けられていること。
2 衛生管理規範
(1)施設設備に適用される衛生に関する一般規範
ア 食品の処理に使用される床、内壁、間仕切り、天井及び機械・器具は、食品の汚染
源とならないよう清潔で良好な状態が保たれていること。
イ 施設又は機械・器具から鼠族、昆虫類及びその他の害虫を計画的に根絶しなければ
ならないこと。洗浄剤、消毒剤、殺鼠剤、殺虫剤その他食品を汚染させるおそれのあ
る薬剤は食品と明確に分離して保管すること。また、これらの薬剤を使用する場合に
あっては、食品を汚染させることのないよう十分配慮すること。
ウ 食品取扱区域、設備された機械・器具等は食品の処理、加工等に専用に使用するこ
と。
エ 飲用適の水をすべての用途に使用しなければならないこと。ただし、食品を汚染さ
せる危険性がない場合に限り、消火、冷凍・冷蔵設備の冷却用等として、飲用に適し
ない水を用いることができること。
オ 洗浄剤、消毒剤及びこれらの類似物質は、機械・器具及び食品に悪影響を与えない
ように使用すること。
(2)従事者に適用される衛生に関する一般規範
ア 従事者の衛生管理については、特に次の事項を配慮し、最良の状態を保つよう努め
ること。
(ア)食品取扱区域では、従事者は適切で清潔な作業着と髪の毛を完全に覆う帽子を着
用すること。
(イ)食品の処理及び調整を担当する従事者は、少なくとも作業を再開するときは必ず
手指の洗浄を行うこと。なお、手に傷がある従事者は、製造部門の責任者に届け、そ
の許可の下、耐水性の指サック又は手袋を着用すること。
(ウ)食品取扱区域(保管区域を含む。)においては、喫煙、飲食を行わないこと。
イ 製造者は、従事者が食品を汚染させる恐れなしに作業ができることが証明されるま
で、食品を汚染する可能性のある者を食品取扱業務から排除するために必要なあらゆ
る措置を講じなければならないこと。ただし、この規定は食品を汚染する可能性のあ
る者の解雇を認めたものと解釈してはならないこと。
ウ 製造者は法令に基づき、従事者に対して定期的に健康診断を実施すること。また、
製造者は、従事者が赤痢菌、サルモネラ菌、腸チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌、
病原大腸菌、カンピロバクタ−,A型肝炎ウイルス、小形球形ウイルス等の食品を汚
染し、食中毒等の原因となる微生物に感染することがないよう健康教育を実施し、従
事者の健康管理に努めること。
第5 HACCPの実施
1 HACCPは、次の原則に従って実施すること。
(1)製造者は、食品の製造のあらゆる段階で本指針の規定が遵守されるよう、各食品
毎又は適切にグループ分けされた食品群毎に、次の事項に従って自主衛生管理を実施
すること。
ア 施設における処理、加工等の工程をもとに、重要管理点を確定すること。
イ 各重要管理点におけるモニタリング及び確認の方法を設定し、これを実施すること
。
ウ 施設の洗浄消毒方法が適切かどうか確認すること。その他、本指針に定められた規
範に適合していることを確認するための検査を実施すること。
エ 時間、温度等について、消去できない方法で記載された手書きの記録又は自動記録
機による記録を当該食品の消費期限又は品質保持期限の満了後、少なくとも1か月間
保管し、提示を求められた場合には、直ちに提示することができるように整理してお
くこと。
(2)製造者の実施する検査において衛生上の危害又はその疑いが判明した場合は、直
ちに適切に対応すること。
2 1の(1)に規定する「自主衛生管理」とは、食品が製造者自らが定めた管理基準
を満足するものであることを保証し、実証することを目的とするすべての対策のこと
をいう。
(1)これらの対策はその調理加工施設における規範に準拠したものでなくてはならず
、それぞれの製造部門に対する責任者又は責任者の監督のもとに開発され、実施され
るものでなくてはならないこと。
(2)施設の責任者は、自主衛生管理制度に携わるすべての担当者がその責務を効果的
に果たせるように、十分に訓練を受けなくてはならないこと。
3 1の(1)に規定する「重要管理点」とは、製造者が管理することができて、もっ
て食品の安全性に対する危害の発生を防止し、排除し、又は許容範囲に収めることの
できるすべての管理項目、1ステップ又は工程のことをいう。従って、管理基準に適
合していることを保証するために役立つすべての重要管理点を確定しておかなくては
ならないこと。
(1)これらの重要管理点を確定する場合には、第6の1「一般原則」に基づいて確定
すること。
(2)重要管理点は、使用する原材料を始め、製造工程、施設及び設備、最終食品、保
管及び運搬の方法等によって確定されるものであるので、各々の施設に対して固有の
ものであること。
4 1の(1)に掲げる「各重要管理点におけるモニタリング及び確認の方法」には、
個々の重要管理点が正常な管理状態にあることを保証するために必要なすべての肉眼
的観察及び計測の方法が含まれていること。モニタリング及び確認の方法を設定し、
実施する場合には、第6の10「重要管理点のモニタリング及び確認の方法の設定並
びにその実施」に基づいて実施すること。
5 1の(1)に規定する検査とは、自主管理制度が、上記2、3及び4の規定に関し
て効果的に機能していることを確認するためのものである。
(1)施設の責任者が製造バッチ毎に体系的に試験を行うこととは別に、以下の要件に
基づき、検証のための計画を定めなければならないこと。
ア 自主管理制度を最初に設定した時に、検証すること。
イ 食品又は製造工程に何らかの変更があった時に、必要に応じて、自主管理制度の有
効性について確認すること。
ウ 一定の期間ごとに、すべての計画が有効なものであり、かつ、適正に運用されてい
ることを検証すること。
エ 自主管理制度については、第6の11「自主管理制度の検証」に従って検証を行う
こと。
6 1の(1)に掲げる「消去できない方法で記載された手書きの記録又は自動記録機
による記録」を取るため、施設の責任者は自主管理制度の実施及びその確認に関する
すべての情報を文書化しなくてはならないこと。また、この文書は、次の(1)及び
(2)の要件を満たし、求めに応じて提出することができるものでなくてはならない
こと。
(1)詳細かつ分かりやすい文書であって、次の項目を含んでいること。
ア 食品についての記述
イ 製造工程及びその重要管理点についての記述
ウ 標準作業手順書
エ 個々の重要管理点についての確定された危害、危険度の評価及び防止措置
オ すべての重要管理点におけるモニタリング及び確認の方法並びにそれぞれの重要管
理点における管理基準の設定
カ 管理基準から逸脱が認められた際にとられる改善措置
キ 現行の自主管理制度自体の検証と見直しの方法
(2)3に掲げる肉眼的観察及び計測の記録、4に掲げる検証作業の結果並びに改善措
置を行った場合の報告及び経過の記録文書をとり、適切な文書管理規定を設けて、特
に問題が発生したそれぞれの製造バッチに関係するすべての文書を容易に取り出せる
ようにしておかなくてはならないこと。
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