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現状分析
平成15年12月に発生した輸血によるHIV感染事故等を踏まえ、平成16年7月に薬事・食品衛生審議会血液事業部会において「輸血医療の安全性確保のための総合対策」がまとめられ、これに基づき、検査目的での献血の防止や健康な献血者の確保などの施策を強力に推進することとなった。
検査目的献血については、平成14年度厚生労働科学研究において、都内の献血者の中でHIV陽性が判明した者の約半分は連絡がとれないことや、HIVの感染リスク行動についての問診では、調査対象者の約9%が虚偽の申告をする可能性があることが指摘されており、いわゆる検査目的献血者は虚偽の申告をして献血することが考えられる。
また、「献血手帳」が紙製であるということは、現在の時代に則したものとは言い難く、現在、献血履歴や血液検査結果(GPT,GOT等)については、献血の都度検査結果記録を郵送しているが、献血者の側において容易に継続管理できるものとはなっておらず、血液検査結果の記録を自らの健康管理に生かそうとする上で不便であることから、なんらかの改善・改良が必要である。 |
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問題点
日本で唯一の採血事業者である日本赤十字社は、献血された血液について、できる限りの検査を実施し、その安全性の確保に努めている。しかしながら、検査でウイルスを検出するには技術的に限界があるほか、感染が成立しても検査でウイルスを検出できない「ウインドウ期間」があることから、感染のハイリスク行動を行ったことを自ら自覚しつつ、性行為感染症の検査を目的として献血を行う検査目的献血(者)の存在は、血液製剤の安全性確保にとって、重大な問題である。
検査目的献血については、身分証明書の提示によって本人確認を行い、その防止を図ることが考えられるが、身分証明書を通常携帯していない又は一時的に所持していない者は献血ができないという問題が生じる。
また、献血者が血液検査結果を自らの健康管理に生かそうとする場合にも特段の配慮はなされていない。 |
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問題分析
血液の安全性の確保のためには、献血された血液のウイルス検査の精度向上等を図るだけでは限界があり、献血血液にウイルスが混入しないような施策を講じる必要がある。この一環として検査目的献血の防止を図る必要がある。
現在の紙製の献血手帳では、虚偽の申告をして献血を行うことが可能であり、また身分証明書の提示を厳格に行おうとすると献血に応じる人数の減少が見込まれる。
このため、献血手帳と身分証明書を併せた手法を講じる必要がある。
また、献血者への健康管理サービスを充実させるためには、紙製の献血手帳では記録の継続管理という点から限界があり、本人確認が確実にできた献血者に対してフロッピーディスク等に情報を入れて渡す等、本人及び採血事業者において継続した記録管理を可能とする方策を検討する必要がある。 |
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事業の必要性
献血手帳を電子化することにより、本人確認をより厳格かつ容易(献血カードを所持していない場合でもパスワード等で本人確認ができる等)なものとし、善意の献血者が献血できないという事態を防ぎつつ、検査目的献血(者)を減少させるため、献血手帳の電子化が必要である。また、同事業は、献血者に対してより適切なサービスを行うための基礎的インフラ整備としても必要なものである。 |