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(整理番号 3)
事業評価書(
事前
・事後)
平成16年8月

評価対象(事業名) 献血手帳電子化事業
担当部局・課 主管部局・課 医薬食品局 血液対策課
関係部局・課  


1.事業の内容
(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 1 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 血液製剤の国内自給を推進するとともに、安全性の向上を図ること
I 血液製剤の国内自給の推進を図ること
III 血液製剤の安全性の向上を図ること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 現在紙製である「献血手帳」を磁気カード化し、パスワードによる照合を行うことによって本人確認の厳格化を図り、検査目的献血を防止するとともに、献血時の手続の簡素化及び献血履歴や血液検査記録の履歴管理など献血者サービスの充実を行い、献血者の利便性を向上させることにより健康な献血者をより一層多く確保することを目的として、日本赤十字社に対し、必要な関連機器類の整備、構築し、献血カードへの切り替えをすすめるための補助を実施する。
予算概算要求額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
203

(3) 問題分析
(1) 現状分析
 平成15年12月に発生した輸血によるHIV感染事故等を踏まえ、平成16年7月に薬事・食品衛生審議会血液事業部会において「輸血医療の安全性確保のための総合対策」がまとめられ、これに基づき、検査目的での献血の防止や健康な献血者の確保などの施策を強力に推進することとなった。
 検査目的献血については、平成14年度厚生労働科学研究において、都内の献血者の中でHIV陽性が判明した者の約半分は連絡がとれないことや、HIVの感染リスク行動についての問診では、調査対象者の約9%が虚偽の申告をする可能性があることが指摘されており、いわゆる検査目的献血者は虚偽の申告をして献血することが考えられる。
 また、「献血手帳」が紙製であるということは、現在の時代に則したものとは言い難く、現在、献血履歴や血液検査結果(GPT,GOT等)については、献血の都度検査結果記録を郵送しているが、献血者の側において容易に継続管理できるものとはなっておらず、血液検査結果の記録を自らの健康管理に生かそうとする上で不便であることから、なんらかの改善・改良が必要である。
(2) 問題点
 日本で唯一の採血事業者である日本赤十字社は、献血された血液について、できる限りの検査を実施し、その安全性の確保に努めている。しかしながら、検査でウイルスを検出するには技術的に限界があるほか、感染が成立しても検査でウイルスを検出できない「ウインドウ期間」があることから、感染のハイリスク行動を行ったことを自ら自覚しつつ、性行為感染症の検査を目的として献血を行う検査目的献血(者)の存在は、血液製剤の安全性確保にとって、重大な問題である。
 検査目的献血については、身分証明書の提示によって本人確認を行い、その防止を図ることが考えられるが、身分証明書を通常携帯していない又は一時的に所持していない者は献血ができないという問題が生じる。
 また、献血者が血液検査結果を自らの健康管理に生かそうとする場合にも特段の配慮はなされていない。
(3) 問題分析
 血液の安全性の確保のためには、献血された血液のウイルス検査の精度向上等を図るだけでは限界があり、献血血液にウイルスが混入しないような施策を講じる必要がある。この一環として検査目的献血の防止を図る必要がある。
 現在の紙製の献血手帳では、虚偽の申告をして献血を行うことが可能であり、また身分証明書の提示を厳格に行おうとすると献血に応じる人数の減少が見込まれる。
 このため、献血手帳と身分証明書を併せた手法を講じる必要がある。
 また、献血者への健康管理サービスを充実させるためには、紙製の献血手帳では記録の継続管理という点から限界があり、本人確認が確実にできた献血者に対してフロッピーディスク等に情報を入れて渡す等、本人及び採血事業者において継続した記録管理を可能とする方策を検討する必要がある。
(4) 事業の必要性
 献血手帳を電子化することにより、本人確認をより厳格かつ容易(献血カードを所持していない場合でもパスワード等で本人確認ができる等)なものとし、善意の献血者が献血できないという事態を防ぎつつ、検査目的献血(者)を減少させるため、献血手帳の電子化が必要である。また、同事業は、献血者に対してより適切なサービスを行うための基礎的インフラ整備としても必要なものである。

(4) 事業の目標
目標達成年度  −
政策効果が発現する時期 平成20年度
アウトカム指標 H17 H18 H19 H20 H21 目標値/基準値
献血でHIV陽性が判明した率       0.5人   献血者10万人に対する陽性者率0.5人
(説明)
 献血によりHIV陽性が判明した者の献血者全体に対する率は年々上昇しているが、本事業によりこれが減少に転じるか把握する必要がある。(平成15年における献血者10万人に対する陽性者率は、1.5人)
(モニタリングの方法)
 日本赤十字社からの情報に基づき把握する。
アウトプット指標 H17 H18 H19 H20 H21 目標値/基準値
カード切替率 開始 50% 65% 100%    
(説明)
 紙の献血手帳からの磁気カードへの切替率をアウトプット指標とする。
(モニタリングの方法)
 現在日本赤十字で把握している献血手帳の保有人数に対し、新たに発行する献血カード枚数が何パーセントを占めるかにより、普及状況を把握する。
参考指標(過去数年度の推移を含む) H11 H12 H13 H14 H15
           
(説明)

(モニタリングの方法)


2.評価
(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 血液製剤の安全性と安定供給の確保は、国民の生命・身体の安全に直結するものであり、高い公益性を有する。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 血液製剤の安全性及び安定供給の確保については、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に基づき、国が基本的かつ総合的な施策を策定し、実施することとされている。
民営化や外部委託の可否
   
(理由)
 本事業は、日本赤十字社への補助事業であり、民営化あるいは外部委託の可能性はない。
緊要性の有無
   無
(理由)
 血液製剤の安全性確保については、国民の医療に対する信頼を維持するために重要なものであり、早急に実施する必要がある。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 献血手帳を磁気カード化し、本人確認を厳格かつ容易にすることにより、虚偽の申告等による検査目的献血を防止する。また、献血履歴や血液検査記録を献血ルーム等に設置された端末やフロッピーディスクにより自分のパソコンから献血者自らが操作し、各種情報を引き出すことができるようにして、献血者自らの健康管理に役立て、また、利便性を向上させることにより、健康な献血者を確保を図ることができる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 検査目的献血者の減少と健康な献血者の確保により、血液製剤の安全性の向上と安定供給を図ることができる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 特になし

(3) 効率性
手段の適正性
(1)  当該事業を実施しない場合、本人確認の厳格化を十分図ることができず、検査目的献血者に対する牽制を行うことができない。また、献血者の管理を旧態依然とした紙製の媒体により行うこととなり、献血者に対するサービスの向上を図ることができない。
(2)  本事業と併せて、検査目的献血の危険性を十分に訴え、これを行わないように呼びかけるなどのキャンペーンを強化することにより、より一層の相乗効果が期待できるが、キャンペーンのみではその効果は限定されたものであるし、また、献血者に対するサービス向上を図ることができない。
(3)  本事業を行うことにより、検査目的献血の減少を図り、血液製剤の安全性確保につなげることができる。
費用と効果の関係に関する評価
 我が国における唯一の採血事業者である日本赤十字社に対し、当該補助金を交付することにより、全国統一的な本人確認のためのシステムや健康管理システムが計画的に導入でき、システムの重複や地域差が生じないなど、効率性の面からのメリットがある。また、本事業は、ウイルス検査施設・設備の整備費用や検査費用に比べて低いコストで血液の安全対策を推進できるものであり、また単に安全対策のみでなく、献血者の確保を図り、血液の安定供給の確保につながるものであるので、費用対効果の面でも評価できると考える。
他の類似事業(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
  
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他

 なし。


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「平成16年7月に輸血医療の安全性確保のための総合対策」として、薬事・食品衛生審議会血液事業部会の決定として示されたもののうち、「検査目的献血の防止」の中の主要な方策として「献血手帳のIT化推進」が示されている。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。


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