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(30)
事業評価書(
事前
・事後)
平成15年8月

1.評価対象となる事務事業の内容(プロジェクト概要等の詳細資料は別途添付)

事務事業名 食品の安全性高度化推進研究経費(仮称)
担当部局・課主管課 医薬食品局 食品安全部 企画情報課
関係課 基準審査課、新開発食品保健対策室、監視安全課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 1.研究を支援する体制を整備すること
2.厚生科学研究補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・
一部新規
<事業内容を具体的に記載、詳細は別途添付>
1.安全管理体制の高度化研究
 最新の情報通信技術を応用し、食品監視ネットワークと安全性情報の機動的な連携・活用を中核とした安全管理システムの高度化に関する研究、危機管理体制の強化のための研究、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築に係る研究や、安全管理体制に関する研究者・技術者の育成等、安全管理体制の高度化のための研究を行い、より高度な食品の安全確保に資する研究を強力に推進することにより、安心・安全に係る国民理解の徹底的浸透を図る。
2.安全性に係る調査研究や検出技術等の開発
 IT、バイオ、ナノテクノロジー等の先端科学を融合・応用した検出技術等の開発や、BSE、遺伝子組換え食品、食品添加物などの健康へ影響を科学的根拠に基づき評価するために必要な安全性に係る調査研究等を推進する。いわゆる健康食品については、食を通じた健康増進の観点から、安全性・有効性の評価に資する調査研究を推進する。

 予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16
2,892 2,942 2,855 1,477 1,772

(3)問題分析
(1)現状分析
1. 国立医薬品食品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所との間、さらに国際的な研究機関との間で食品衛生関連情報を双方向的にやりとりする仕組みがない。
2. 最近のリスクコミュニケーションの問題として、ある特定の種類の魚、例えば、メカジキや金目鯛等により多くの水銀が含まれるとの研究結果が新聞やテレビ等マスコミを通じて報道されたことによる食品業界に対する風評被害が生じている。
(2)原因分析
1. これまで食品の安全性確保に係る研究として推進してきた研究のうち、国内外で必要とされる研究関連情報のネットワークの重要性は認識されるも、そうしたネットワークが密に構築されていなかったことが原因と考えられる。
2. かつてのかいわれ大根によるO157食中毒事件等でもこうした風評被害の問題が生じたことがあるように、政府、国民、食品業界の関係を配慮した適切なリスクコミュニケーションのあり方がこれまであまり研究されてきていなかったことが原因のひとつと考えられる。
(3)課題と問題点
 今後の課題として、食品分野におけるリスクコミュニケーションのあり方、いわゆる健康食品の効果・安全情報の分析に関する研究、添加物及び汚染物質に関する研究、食品中の微生物対策に関する研究等に力を入れて開拓すべきことが挙げられる。それに伴う問題点としては
 1.これまでよりもさらに高度な情報収集をいかに効率的に行うか
 2.政府、国民、食品業界の関係を配慮した適切なリスクコミュニケーションを今後どのように推進していくべきであるか
が挙げられる。
 その解決のためには、上記ネットワークを用いて、現在不足しており、強化が必要と考えられる研究や将来的に必要と予測される研究の分析・収集がまず必要とされる。そこで得られた情報が厚生労働省食品安全部に提供されるとともに、その情報から必要とされる研究自体を国内の食品衛生関連研究機関へ振り替える体制を構築することが必要である。また、そうしたネットワークシステムを活用することで、政府、国民、食品業界の関係を配慮したより適切でわかりやすいリスクコミュニケーションの構築をすることが必要である。

(4)事務事業の目標
 安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築などを行う安全管理体制の高度化研究を進め、その成果をリスク管理機関として厚生労働省が担うリスク管理やリスクコミュニケーションに活用することを目標とする。
 また、多種多様な食品(いわゆる健康食品、遺伝子組換え食品)の出現、BSE対策、食品中の微生物、添加物や汚染物質等のリスク分析の考え方に基づく調査研究を進め、規格・基準の策定や、食品の検査・監視等の業務に活用することを目標とする。
 (これまでの報告書の活用状況としては、例えば、体細胞クローン牛の食品としての安全性については、14年度末に科学的結論を得たところであり、今後のリスク評価に活用することとしているほか、アレルギー性物質を含む食品の検査法として、「特定原材料検出法」を公定法として都道府県に通知、研究により明らかとなった表示の問題点は、厚生労働省のアレルギー表示Q&Aに反映、残留農薬迅速・一斉スクリーニング法の開発など、行政課題に適切に活用されてきたところ。)


2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
1.安全管理体制の高度化研究
 今国会で成立した食品安全基本法を踏まえ、今後厚生労働省ではこれまでよりさらに充実したリスク管理が求められることとなるため、安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者、技術者の育成に関する研究開発を重点的かつ集中的に進める必要がある。
 具体的には国内では、国立医薬品食品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所との間、さらに国際的な研究機関との間で食品衛生関連情報を双方向的にデータの交換を行うネットワークを構築し、その中で得られる情報をデータベース化し、データベース化された食品安全情報を基に、現在不足しており、強化が必要と考えられる研究や将来的に必要と予測される研究を分析・収集、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者・技術者の育成を充実させることが必要である。
2.安全性に係る調査研究や検出技術等の開発
IT、バイオ、ナノテクノロジー等の先端科学を融合・応用した検出技術等の開発や、BSE、遺伝子組換え食品、食品添加物などの健康へ影響を科学的根拠に基づき評価するために必要な安全性に係る調査研究等を推進する必要がある。具体的には、以下の分野で研究を推進する必要がある。
 (1) 食品安全推進総合研究分野
 (2) 健康食品等の安全性・有効性評価研究分野
 (3) 牛海綿状脳症(BSE)に関する研究分野
 (4) 遺伝子組換え食品の検知及び安全性評価に関する分野
 (5) 食品中の微生物のリスク分析手法の導入に必要な研究分野
 (6) 添加物及び汚染物質に関する研究分野
 (7) 食品中の化学物質対策研究分野

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 最新の情報通信技術を応用し、食品監視ネットワークと安全性情報の機動的な連携・活用を中核とした安全管理体制の高度化を行うことと、安全性に係る調査研究や検出技術等の開発を推進することは、BSEについては、診断及び検査技術の向上、いわゆる健康食品については、健康被害発生の科学的根拠が得られること、添加物及び汚染物質に関する研究は食品衛生法に基づく規格基準の作成に反映する等の成果が予想され、そうした成果が食品監視の強化・充実に繋がり、食品安全行政のリスク管理に資するとともに、国民の食に対する不安解消に繋がる効果は大きいものと考えられる。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
国立医薬品食品衛生研究所、地方衛生研究所、検疫所、保健所間での双方向的な食品衛生関連情報の交換を行うネットワークの構築
○食品を介した人の健康に影響を与える危害(BSE、残留農薬、食品添加物等)に関する関連情報のデータベース化、今後強化を要する研究、将来的に必要と予測される研究の分析を行う
○安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者、技術者の育成に関する研究開発を重点的かつ集中的に進める
○技術開発すべき内容(微量プリオン検出法、遺伝子組換え食品やアレルギー性食品の検知法の開発、食品添加物の安全性評価手法)に対する規格・基準の策定、より高度な検知法・評価法の開発等
○IT、バイオ、ナノテクノロジー等の先端科学を従来の検査技術に融合・応用した新しい検査技術そのものの開発や、検査の改良・開発に関わる研究者や技術者の育成を視野に入れた教育プログラムの開発

検疫所、保健所、地方衛生研究所等において適切な食品の検査・監視等を実施

消費者の食品への信頼を回復、食品のより高度な安全性の確保


(4)その他
 特記事項なし



(5) 特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 平成15年5月に公布された改正法により、新食品衛生法第1条の2に国の責務として「食品衛生に関する研究の推進を図るために必要な措置を講じなければならない。」ことが規定された。
 また、食品安全基本法第16条に、「試験研究の体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成その他の必要な措置が講じられなければならない。」と規定された。
(5) 会計検査院による指摘

3.総合評価
<当該事業を推進すべきかどうかが明確に分かるように、また、事業推進の際の注意事項がわかるように記述してください。>

○公益性の有無
 国民の食品の安全性に対する不安は依然として大きく、食品による健康危害の可能性を軽減するために、最新の情報通信技術を応用し、食品監視ネットワークと安全性情報の機動的な連携・活用を中核とした高度な安全管理体制を活用する研究の高度化や高度な技術開発、検査の改良・開発に関わる研究者や技術者の育成を視野に入れた教育プログラムの開発は、検疫所、保健所、地方衛生研究所等において適切かつ高度な食品の検査・監視等を実施することに役立つことから、消費者の食品への信頼を回復、食品のより高度な安全性の確保のために必要であることから十分公益性がある。
○国で行う必要性の有無
 国民の食品に対する安全性を確保するために、リスク管理に資する研究や技術開発等を行い、行政が適正な検査及び規格・基準の策定を行う必要があることから国で行う必要がある。
○民営化や外部委託の可否
 本事業は、行政上必要な研究課題について公募を行い、採択課題に対し補助金を交付し、その研究成果を施策に反映させることを想定しているものである。従って、本事業そのものを民営化、外部委託することは困難であるが、事務的な手続きを外部に委託することは可能である。また、補助金を受けた研究者が、調査や資料の解析を外部に委託することは現状でも行っている。
○緊要性の有無
 今国会で成立した食品安全基本法及び食品衛生法の改正を踏まえ、今後厚生労働省ではこれまでよりさらに充実したリスク管理が求められることとなるため、安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者、技術者の育成に関する研究開発を重点的かつ集中的に進める必要がある。また、食品企業等による検査、また新たに検査を求められている分野等への対応を図ることが求められる。

○総括
 食品の検査法開発など、研究成果は食品安全行政に反映されており、科学的根拠に基づく規制を支える上で、本研究事業は大変重要かつ有益である。BSEや中国産野菜の残留農薬の問題など、食品の安全性に対する国民の関心は高く、引き続き安全確保に資する研究開発を強化する必要がある。



(別添資料)
事業内容の詳細
1.安全管理体制の高度化研究
 今国会で成立した食品安全基本法を踏まえ、今後厚生労働省ではこれまでよりさらに充実したリスク管理が求められることとなるため、安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者、技術者の育成に関する研究開発を重点的かつ集中的に進める必要がある。
(1)安全管理体制の高度化
 これまで食品の安全性確保に係る研究としてこれまで推進してきた研究のうち、まず国内外で必要とされる研究関連情報の双方向的ネットワークの重要性は認識されるも、そうしたネットワークが構築されていなかった。具体的には国内では、国立医薬品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所との間、さらに国際的な研究機関との間で食品衛生関連情報を双方向的にデータの交換を行うネットワークを構築することである。また、そうした中で得られた情報をデータベース化し、データベース化された食品安全情報を基に、現在不足しており、強化が必要と考えられる研究や将来的に必要と予測される研究の分析・収集が必要である。また、その情報を厚生労働省食品安全部に提供するとともに、国内の食品衛生関連研究機関へ振り替える体制を整備することも併せて必要である。
(2)危機管理体制の強化
 今後の食品衛生に関連する危機管理体制を発展・強化するためには、国内の厚生労働省食品安全部をはじめ、国立医薬品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所とさらに国際的な研究機関との間で最新の食品衛生関連情報を迅速かつ双方向的な情報交換を行うことが重要で、そうしたネットワークシステムを構築する必要がある。
(3)わかりやすいリスクコミュニケーションの構築
 有効かつ効果的なリスクコミュニケーションのあり方を発展させていくことは、今後の食品衛生行政を行う際に重要である。具体的にどのような規模・どのようなやり方で行うのかに主眼を置き、実際に行う際の問題点、そしてその対処法までを視野に入れた調査研究を行い、それが地方自治体で施行できるマニュアル等の作成を行う必要がある。
(4)安全管理体制に関する研究者・技術者の育成
 食品衛生の分野は多岐にわたっており、その検査技術に関しては高度な専門的知識を必要とするものがある。
 特に近年、IT、バイオ、ナノテクノロジー等の先端科学の進歩は目覚ましく、そうした先端科学を従来の検査技術に融合・応用した新しい検査技術そのものの開発や、検査の改良・開発に関わる研究者や技術者の育成を視野に入れた教育プログラムを開発する必要がある。
2.安全性に係る調査研究や検出技術等の開発
(1)食品安全推進総合研究分野
 食品衛生における微生物学的リスク評価に関する調査研究、食品由来の健康被害対策の高度化に応じた対策のあり方に関する研究、特定保健保健用食品素材の安全性評価など新開発食品の安全性確保及び有用性の評価、残留農薬などの食品中化学物質等の安全性評価に関する研究など食品の安全性を確保するための調査研究を総合的に推進する。
・リスクアセスメントに関する基盤的研究
 食品に起因する健康危害を防止するため、危害確認、危害特性の同定、暴露評価、リスクレベル推定からなる安全性評価を行う。
・リスクマネジメントに関する研究
 リスクアセスメントの結果から、健康に危害を及ぼす各種因子(製造工程、食品用器具・容器等)によるリスク低減化を図るために採るべき管理手法の決定・実行を支援する。
・リスクコミュニケーションに関する研究
 危害の種類に応じた食品の安全性に関する情報及び意見を消費者、関係業界の間で相互に交換する手法の開発。
(2)健康食品等の安全性・有効性評価研究分野
 いわゆる健康食品については、その流通が増大しており、安全性・有効性についての科学的な評価の推進が強く求められている。このような社会的背景を踏まえ、バイオテクノロジー戦略大綱において、成分分析や実験・疫学データなどからその有効性の評価を推進することとしており、安全性・有効性の評価に資する研究開発を強化する必要がある。
 健康食品は、濃縮され、錠剤やカプセル等の形態をとることにより、通常の食品の摂取量を超えて、継続的に長期間摂取されうることから、安全性に関する知見に乏しい健康食品そのものの問題が生じたり、それを摂取している生体側の要因との関与を考える必要がある。無理なダイエットや極端な食事摂取などの栄養条件、加齢、医薬品の併用などが健康食品による健康被害の発生に大きく関与している可能性が否定できないことから、こうした健康食品と健康食品の利用対象者を考慮した調査研究が必要である。
 評価法の開発などの基礎的研究を研究費で行い、事業費では、情報提供に必要なデータベースの整備などを行う。(評価に必要な有効性のデータなどは申請者が収集する。)
(3)牛海綿状脳症(BSE)に関する研究分野
 BSEリスクの解明に関する研究において、サル(カニクイザル)等を用いた感染実験によって、異常プリオンの動物体内における挙動を解明し、感染実験の充実を図り様々なモデル実験のデータを蓄積することが必要であり、取り組みを強化する。
 研究費については、リスク評価に必要なデータの収集、メカニズムの解明等を目的としており、事業費では、リスク評価結果に基づくリスク管理(検査の実施など)などを行う。
(4)遺伝子組換え食品の検知及び安全性評価に関する分野
 FAO/WHO専門家会議やコーデックス委員会等での議論を踏まえ、ヒト血清スクリーニング試験系やモデル動物を用いた試験実験系などの遺伝子組換え食品のアレルギー性評価手法や試験法等を確立するとともにし、抗生物質耐性マーカー遺伝子の移行性に関する評価を行う。
 また、後代での遺伝子の変化が遺伝子組換えに起因する変化であるか否かは明らかではないため、挿入遺伝子に係る後代種での変化が食品の安全性に影響を及ぼさないか等の調査・分析を行うことやその追跡調査(ポストマーケットモニタリング)に必要な手法・検査方法を検討・開発する。
 更に遺伝子組換え微生物や遺伝子組換え魚等の新たな食品の開発とその実用化が進んでいることから、これらの安全性評価手法の検討を行うとともに、適切かつ有用な検知法の開発を進めていく。
 消費者の漠然とした遺伝子組換え食品への不安に対しては、安全性等に関する情報をいかに正確に伝え、理解を得るかが大きな問題となりつつある。このため、国民に遺伝子組換え食品の安全性に関する理解を深め、これら食品等への安心感を持ってもらうためのリスクコミュニケーションに関する調査及び分析を行う。
(5)食品中の微生物のリスク分析手法の導入に必要な研究分野
 リスク管理とは、リスク評価の結果、リスクを科学的に洗い出し、そのリスクを軽減、回避、未然に防止するための施策決定をとることである。具体的には、どのようなリスクをどのように管理するかをデータに基づき、選択する必要があるが、この分野の研究の目的は、リスク評価の結果からとるべき管理手法を選択し、さらに実行された施策の評価に必要な研究である。
 健康被害の状況についてより正確に把握するためには、ハイリスクグループ(性別、年齢等)の有無、致死率、散発事例、地域差、通常の食中毒症状を呈さない食品由来疾病の調査等、従来の食中毒統計では把握することが困難な健康被害の状況について、正確に推測することが必要であり、そのための調査手法を開発する。
 危害の特徴付けとは、摂取した菌数によりどのくらいの確率で発症するかを解析することである。病原体をヒトに投与することができないことから、食中毒事例の検食等を用いて摂食菌量及びその発症率等を推定することは有用な手法である。
 リスク管理手法の選択に際し考慮すべき要因、すなわち、どこまでのリスク軽減を求めるべきか、各リスク軽減措置に要する費用、軽減措置の導入に伴い予想される新たなリスク、軽減措置による恩恵とそのもののリスク等、政策を決定するために必要な要因について量的に評価できるデータの収集及びその効率的手法の開発を行う。
 実行されたリスク管理手法が、遵守されているかを確認(モニタリング)し、再評価するリスク管理における施策評価も行う。
(6)添加物及び汚染物質に関する研究分野
 近年、重金属などの汚染物質が食品中に含まれていることが報告されており、その安全確保対策が強く求められている。食品への汚染が十分解明されていない汚染物質やその健康影響が不明なものについて、科学的データを得るための調査研究を早急に実施することが必要であり、取り組みを強化する。
 健康影響メカニズムの解明など衛生対策の必要性の検討などに必要な基礎的知見の収集などを研究により行い、基準の策定に必要な汚染実態の調査などは、事業費により行う。
(7)食品中の化学物質対策研究分野
 食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の試験法、毒性発現メカニズム、試料分析・モニタリング等に関する研究を行い、食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の健康影響の解明を強力に推進する。さらに、内分泌かく乱化学物質のリスク管理に関する研究を行い、もって内分泌かく乱化学物質が及ぼす毒性等が明らかになった場合の適切なリスク管理及び規制等の対策の実施に資する。
 食品に含まれるダイオキシンに分類される各種類縁化合物の正確な毒性把握をはじめ、食品の汚染実態調査、人体の汚染状況の把握、母乳による乳幼児への影響に関する研究、職域における健康影響把握等を一層推進することにより、ダイオキシン類の健康影響を体系的に解明する。
 ・ダイオキシン類や内分泌かく乱化学物質の消化管からの吸収調査
 ・人体からの排泄促進及び排泄機序
 ・食品や煙草煙、日用品の汚染実態
 ・容器包装からの溶出実験 等


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