(1) | 現状分析 |
・ | 児童虐待の動向を示す一つの指標と考えられる全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談処理件数はここ数年急増し、平成13年度は23,274件で、児童虐待防止法施行直前の平成11年度の11,631件の約2倍となっている。また、児童相談所の職権による一時保護や、保護者の意に反する児童福祉施設への入所措置を家庭裁判所に申し立てる件数(88件(11年度)→134件(13年度))の増加など 質的にも困難なケ−スが増加している。さらに、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、人間に対する根強い不信感等を抱えており、対人関係を図ろうとしない者もいるため、問題が一層深刻・複雑化している。
また、大阪児童虐待研究会の研究においても、虐待ハイリスク家庭(6歳未満児)に対して保健師が1年間継続支援した結果、リスク低下は1割、現状維持が7割、虐待発生は2割であった。このことから、いったん特段に援助が必要な状態にまで 至ってしまうと、その改善は容易ではなく、相当手厚い支援を必要とすることになる。
(主な訪問支援対象) |
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児童相談所において養護相談、育成相談等の継続指導を受けた件数・・・ | 288,016件 |
家庭児童相談室における虐待相談件数・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 80,433件 |
(2) | 問題点 |
・ | 虐待は、その後の子どもの発育障害や発達遅滞、情緒面や行動面の問題、さらには虐待の世代間連鎖などを引き起こすこともあると言われており、子どもの一生涯、さらには世 代を超えて大きな影を落とすものである。また、児童虐待にまで至る育児困難な家庭は、産後うつ病、育てにくい子どもやステップファミリー等の複雑な様々な問題を抱えており、また、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、人間に対する根強い不信感、否定的な自己イメージ、指導的態度に対する嫌悪感、育児ストレス等を抱えており、対人接触を図ろうとしない者もおり、通所型の支援では限界となっている。 |
(3) | 問題分析 |
・ | 社会保障審議会児童部会に児童虐待の防止等に関する専門委員会において、児童虐待に関する現行制度の実施状況等を踏まえた制度全般にわたる検討を行い、先般、その報告書がとりまとめられたところ。その中でも、『「待ちの支援」から要支援家 庭への「積極的なアプローチによる支援」』や『家族再統合や家族の養育の再生・強化を目指した子どものみならず親も含めた家庭への支援』が指摘されている。 |
(4) | 事業の必要性 |
・ | 児童虐待の特性(家庭(地域)内で発生、虐待と認めない親が多いなど)にかんがみ、その解決に向け、親の権利や個人のプライバシ−には最大限配慮しつつも、幅広い関係機関が、積極的に親・子にアプロ−チする形の新たな支援が必要である。特に出産後間もない時期の養育者は精神的にも肉体的にも過重な育児負担があり、この時期に効果的に手厚い支援を行うことが虐待予防に有効である。また、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、指導的態度に対する嫌悪感、育児ストレス等を抱えており対人接触を図ろうとしない者もいるため、通所型の支援では限界があり、訪問型の支援が必要である。 |