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事業評価書(
事前
・事後)
平成14年9月

評価対象(事務事業名) フリーター等若年者のキャリア形成支援機能の強化
担当部局・課 主管課 職業能力開発局キャリア形成支援室
関係課  


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともに、その能力を十分に発揮できるような環境の整備をすること
施策目標
雇用の安定・拡大を図るための職業能力開発の枠組みを構築すること
I キャリア形成支援システムを整備すること

(2) 事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 フリーター等若年者が集中する大都市部等(全国12都道府県)に、若年者キャリア形成支援コーナーを設置し、フリーター等若年者に対して、キャリア・コンサルティング、職業に関する適性、興味等の心理検査の実施、適職発見のための自主的なグループ活動(ジョブクラブ)の支援、若年者対策の技法・好事例集の収集・分析及び普及等を行う(実施主体:雇用・能力開発機構)。
予算額 (単位:百万円)
H11 H12 H13 H14 H15
1,021

(3) 問題分析
(1)現状分析
 近年、若年者については、フリーターの増加、無業者・失業者の急増、就業後早期離職の増加等の問題が生じ、若年者のキャリア形成上大きな問題となっている。このような、失業や漫然とフリーターである期間の長期化や、若年無業者、離職者等の増加は、若年者の能力蓄積や就業意欲向上を妨げ、本人の雇用安定上の問題を引き起こすだけでなく、将来的にも、経済社会を担うべき人材不足をもたらしかねない状態となっている。
(参考)
 ○無業者数  高卒無業者13万人、大卒無業者11.6万人
 (いずれも平成13年3月卒業者)
 (資料出所 文部科学省「平成14年度学校基本調査」より厚生労働省において算定)
 ○失業率  若年層(15〜24歳)で12.1%(平成14年3月)
 (資料出所 総務省「労働力調査」)
 ○就職後離職率  就職後3年以内の離職率が中卒約7割、高卒約5割、大卒
 約3割(いわゆる7・5・3問題)
 (資料出所 厚生労働省「職業安定業務統計」)
 ○フリーター数  約193万人(平成12年)
 (資料出所 日本労働研究機構「大都市の若者の就業行動と意識」(平成13年))
(2)原因分析
 (1)の背景として、(i)社会が複雑化し、職住分離した環境の中で職業意識や自分の適職イメージを描きにくくなっていること、(ii)厳しい学卒市場で自らの能力・適性に合致した就職先に遭遇する確率が低下していること、(iii)キャリア意識を涵養する職業教育や就職に当たっての職業情報の提供、指導・助言等の機能の欠如、(iv)企業においても、学卒者の受け入れ、育成体制が弱まり、即戦力志向が高まっていること等がある。
(3)問題点
 (2)でも記述したように、現在の教育、就職のシステムが、若年者自らが潜在能力、希望、動機を確認し、職業適性を考慮して、職業を選択する体制としては不十分であり、若年者が自分のキャリアを主体的に作り上げていくことができないことが問題である。
(4)事務事業の必要性
 このような問題に対しては、若年者がキャリア形成を主体的に行うための体制を整
え、キャリア・コンサルティングを実施したり、適職選択のための自主的なグループ活動を行うための場を提供することにより、職業情報の収集を容易にさせ、自己の職業の適性や能力について理解をし、希望の職業に就くための職業能力開発を適切に行うよう導いていくことが必要である。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成15年度
アウトプット指標 H15 H16 H17 H18 H19 目標値/基準値
若年者キャリア形成支
援コーナーの登録者数
           
(説明)
 若年者キャリア形成支援コーナーにお
いて情報提供、相談援助等を行った若年者の数
(モニタリングの方法)
 雇用・能力開発機構による調査


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 若年者に対するキャリア・コンサルティング、職業に関する適性、興味等の心理検査の実施等は、若年者のキャリア形成に対する意識の向上や、若年者の雇用の安定・拡大をもたらし、将来の経済社会を担う良質な労働力を提供することにもつながることから、公益性を有する。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 フリーターに対するキャリア形成支援は全国的な課題であり、地域によって取組に偏りが生じるのは適切でないため、国がコーディネートして、全国において対応する必要がある。
民営化や外部委託の可否
(理由)
 本事業は、若年者のキャリア形成を支援することを目指す事業なので、公平かつ公正な事業運営が要求されるため、事業全体の民営化は難しいが、個々の活動(例えば、ジョブクラブによる職場見学等)については民間を活用することも可能である。
 また、雇用・能力開発機構は、すでにキャリア形成に関してのノウハウの蓄積及び指導員の育成を行っており、若年者に対してのキャリア形成についてもそのノウハウ等を活用することができるため、国が直接実施するよりも、その管理の下、雇用・能力開発機構に事務を委託することが適切である。
緊要性の有無
(理由)
 若年無業者、離職者等の増加に加え、失業や漫然とフリーターでいる期間の長期化は、若年者の能力蓄積や就業意欲向上を妨げ、失業率の増加等、雇用安定上の問題を引き起こすだけでなく、経済社会を担うべき人材不足をもたらしかねないことから、緊要に対応することが必要である。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 全国12都道府県に、若年者に特化したキャリア形成の拠点を整備し、専門の相談員を配置し、若年者に対して相談員によるキャリア・コンサルティングや職業に関する適性、興味等の心理検査を実施する。また、適職発見のための自主的なグループ活動(ジョブクラブ)に対しては、相談員による助言や活動場所の確保等により支援する。
 その結果として、新しい職業や自分の適職の発見や、就職に必要な職業能力が明確化されることに加えて、キャリア形成に対する意識が涵養される。
 その成果として、自分が希望する最適な職業を発見し、その職業に就くための必要な職業訓練を受けることで、就業が容易となりミスマッチが解消され、雇用の安定・拡大が図られる。
 また、キャリア形成に対する意識が涵養されることで、就職後も引き続き自己のキャリアを主体的に作り上げていこうとする自覚が生まれるため、将来起こり得る、異動時や転職時においても、最適な選択によるスムーズな移行が図られる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 今後見込まれる効果として、若年者個人のキャリア形成の向上により、職業能力の開発・向上が促進され、その結果、職業能力のミスマッチが解消されることによる、若年者の雇用の安定・拡大が図られる。また、それにより社会全体として、生産性や国際競争力の向上が図られる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 なし


(3) 効率性
手段の適正性
 現在、一般の労働者を対象としたキャリア形成支援コーナーが全国47都道府県の雇用・能力開発機構都道府県センターに設置されており、若年者に対してのキャリア形成に関する相談援助も行っているが、キャリア形成支援コーナーは基本的に一般労働者を対象にしているため、若年者を対象とした専門的な相談援助が受けられないこと、また、ジョブクラブを運営していくための機能もないことから、若年者同士の情報交換等を行われないこと、などの問題がある。このため、若年者に対するキャリア形成支援の拠点として、若年者が集中する大都市部等に若年者キャリア形成支援コーナーを設置し、若年者に特化した情報提供、相談援助及び適職発見のための自主的なグループ活動の支援等を行うことは、効果的であり、手段として適正である。
 また、この事業の実施主体である雇用・能力開発機構は、すでにキャリア形成に関してのノウハウの蓄積及び指導員の育成を行っているため、国の管理の下、若年者のキャリア形成支援事業を雇用・能力開発機構に委託することは、実績にもとづく、より大きな効果が期待できることから、適正である。
効果と費用との関係に関する分析
 費用−効果分析によると、この事業を行う雇用・能力開発機構は、すでにキャリア形成に関してのノウハウの蓄積及び指導員の育成を行っている。仮に別の団体に同じ額の予算を組み、事業委託したとすると、雇用・能力開発機構では必要とされない、相談員の研修に係る講師謝金や、キャリア・コンサルティング時に使用するキャリアシートの開発費等の負担があり、その費用の分だけ本来事業にかけることができなくなる。
 よって、同じ費用で当該事業を雇用・能力開発機構と別の団体で行った場合とを比較すると雇用能力開発機構で実施した方が、より効率的でかつ効果的な事業を行うことができる。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他
 なし




3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし
(5)会計検査院による指摘
 なし


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