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事業評価書(
事前
・事後)
平成14年9月

評価対象(事務事業名) 天然食品添加物の規格基準策定及び残留農薬試験法等に関する研究
担当部局・課 主管課 大臣官房厚生科学課(国立医薬品食品衛生研究所)
関係課 医薬局食品保健部


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 安心・快適な生活環境づくりを衛生的観点から推進すること
施策目標 食品の安全性を確保すること
III 食品添加物の規格基準の整備及び1日摂取量調査等の実施により、
食品添加物の安全性の確保を図ること
IV 残留農薬の実体の把握及び残留農薬基準の整備により、食品の安全性の確保を図ること

(2) 事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 天然食品添加物に関する研究事業としては、公定書の整備に向け天然食品添加物のうち含有成分が未解明な品目を中心に、含有成分の解明と規格試験法の開発を行う。また、天然食品添加物に関する業界自主規格中の規格試験法の妥当性を検証し、問題点に対する改良試験法を開発する。さらに食品香料の品質試験の国際的動向に適切に対応した我が国の規格整備を行うために、食品用香料の規格試験法を検討する。
 残留農薬に関する研究事業としては、液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)等を用いた効率的な一斉試験法を検討し、公定スクリーニング法として確立する。また、残留農薬等の摂取量推定は従来マーケットバスケット方式で行われてきたが、モニタリングデータと食品摂取量から推定する手法を確立し、リスク評価の幅を広げる。
予算額 (単位:百万円)
H11 H12 H13 H14 H15
190

(3) 問題分析
天然食品添加物に関する研究事業
(1)現状分析
 天然系食品添加物は、長年食用に供されてきたという経験によって、平成7年の食品衛生法改正に伴う経過措置として使用が認められているものであり、安全性評価や品質規格、使用基準が未整備なままの許可であった。従って現在も多くは安全性評価や品質規格、使用基準が未整備なまま使用許可されているのが現状である。既存添加物489品目中、これまでに約69品目については検討されてきたが、420品目がいまだ公的規格基準未設定のまま残されている。
(2)原因分析
 上記の天然系食品添加物の承認課程に見られるような科学的根拠を伴わない行政政策、さらにはその後の公定書整備への対応の遅れが現在の食品添加物関連の不祥事を招くに至った原因であると思われる。社会的な後押しによって動くことで、後手に回った感があるものの、その遅れを一挙に取り戻さなければならない。
(3)問題点
 天然食品添加物の規格基準策定といった研究は地道な研究であり、それ自体決して魅力的な研究ではない。しかしながらこれらの研究を一刻も早く完成することにより、
最新技術を駆使した試験法の開発と共に時代遅れの試験法の淘汰が行われ、その結果迅速かつ効率的な食品検査が可能となり、ひいては速やかな食の安全確保につながるものである、
(4)事務事業の必要性
 (1)に記した様に、天然食品添加物に関しては現在も多くは安全性評価や品質規格、使用基準が未整備なまま使用許可されているのが現状であり、このような公定書の未整備、行政的措置のあいまいさが、最近の添加物に関する不祥事の温床になっていると思われる。このような実態を一刻も早く改善し、食品の安全性確保を図ることが急務であり、かつ国民の要請でもある。そのためにはこれら天然食品添加物の安全性評価とともに製品品質と使用法の安全性を確保するための規格・基準の整備を急がなければならない。

残留農薬に関する研究事業
(1)現状分析
 (1)  残留農薬検査の中でも特に高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定する農薬の検査は、現在は主に個別農薬試験法で対応しているが、検査対象農薬数が年々増加している現状では、個別検査は効率が悪い。
 (2) 残留農薬等の摂取量推定は、従来マーケットバスケット方式で行われてきた。
この方式では平均的な食事パターンについて調査するため、比較的少ない作業量で、行政担当者や国民に分かりやすいデータが得られる利点がある。しかし、この方法では、食生活の多様性の対応できず、年齢、性別のリスク評価が困難である。
(2)原因分析
 (1)  HPLCで測定する農薬について個別農薬試験法で対応せざるをえないのは、紫外線吸収検出器の選択性が低いからであり、LC/MSを使用すれば、複数農薬の同時分析が可能になる。さらに、LC/MS/MSを使用すれば、測定までの前処理が大幅に省力化される。
 (2)  従来のマーケットバスケット方式は食品を群にまとめて分析するため、個々の食品摂取量の個人差等には対応出来ない。
(3)問題点
 (1)  LC/MSによる一斉分析法を公定法とするには基準値設定された全農薬を対象に検討しなければならないが、対象農薬数は多く、そういった地道な検討はなされていない。
 (2)  農薬等汚染物の摂取量を推定する方法として、残留農薬モニタリングデータと食品摂取量から推測する手法があるが、日本ではこれまで検討されていない。
(4)事務事業の必要性
 (1)  今後基準値が設定される農薬を含む多数の農薬を対象に検討し、公定試験法として確立し、検査業務に役立てる。
 (2)  約20年間余りに集積したモニタリングデータと国民平均、幼小児、高齢者の食品摂取量から農薬等汚染物の摂取量を推定する。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期)  
アウトプット指標 H15 H16 H17 H18 H19 目標値/基準値
既存添加物の規格数
残留基準設定農薬数
           
(説明) (モニタリングの方法)


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 食品衛生法上の規格基準の策定や公定スクリーニング試験法の作成は国の仕事であり、その基準・試験法は民間検査機関等で活用されるものである。製品品質と使用法の安全性の確保に資するものであることからそれらの公益性は明らかである。農薬摂取量調査も残留基準値設定の妥当性を検証する上でも役立つという観点から公益性がある。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 天然食品添加物業界では中小企業が多く、化学的安全性評価に必要な研究能力が不充分な企業が多い。また、地方衛生研究所は日常検査業務で忙しい上に、未知成分の構造決定と分析法の開発など既存添加物の化学的安全性評価研究に必要な能力を充分に持たない。まず国立研究機関が規格試験法案を開発することで、地方衛生研究所、民間検査機関、製品製造企業に規格試験法案の妥当性確認を依頼することはできる。また、食品衛生法上の公定スクリーニング試験法を作成するのは国の仕事である。地方の検査データを含む多数のモニタリングデータを国として集積しており、農薬摂取量調査はその活用の一環である。
民営化や外部委託の可否
(理由)
 公定法は国立医薬品食品衛生研究所が地方衛生研究所、指定検査機関等の意見をくみ入れながら確立するのが望ましく、外部委託はそぐわない。さらに民間検査機関では、規格試験法の新規開発は目的自体が異なる上に能力的な問題もあり、受託は不可能と思われる。
緊要性の有無
(理由)
 厚生労働省は平成14年度から食品添加物の安全性評価に関しては作業を加速させ、今後3年間で実験動物による毒性試験を終了させる目標を立てている。しかし当然ながら化学的安全評価が伴わなければ食の安全管理は不可能であり、意味をなさない。化学的安全性評価研究を並行して行い、出来るだけ早急に現在使用されている天然系食品添加物を公定書に収載することによって、法的整備を図らなければならない。
 一方農薬に関しても厚生労働省は今後3年以内に200農薬の基準値設定を予定しており、検査の効率化のために、公定スクリーニング試験法の開発は急務である。また、現在、基準値設定は幼小児への暴露量評価を基に進められており、マーケットバスケット方式に替わる、幼小児のリスク評価が可能な新しい手法を確立する必要がある。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 検討した規格基準が公定書に収載されることにより、あるいは試験法が食品衛生法上の公定スクリーニング試験法として発出されることにより民間検査機関及び地方自治体衛生研究所、さらに民間等で活用されることが期待される。マーケットバスケットに替わる農薬摂取量調査法が確立できれば、きめ細かなリスク評価が可能になり、残留農薬基準値設定にも反映させることができる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 天然添加物の公定書の整備により、安全な食品の提供への基盤が確立される。さらに規格基準の策定及び試験法の標準化等による国内法の整備により、現在活発化しつつある国際規格への迅速な対応が可能となる。また、検討した試験法が食品衛生法上の公定スクリーニング試験法として発出されれば、民間検査機関及び地方自治体衛生研究所等で活用されることが期待される。その結果、検査件数が増加し、毎年国が収集しているモニタリングデータ数も増加が見込める。
 モニタリングデータ数の増加は、マーケットバスケットに替わる農薬摂取量調査法にとっても有用であり、きめ細かなリスク評価が可能になり、残留農薬基準値設定にも反映させることができる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 なし


(3) 効率性
手段の適正性
 当事業を行わない場合、公定書の整備の遅れにより、現在社会的問題となっている食品添加物に関する不祥事の法的抑止力の基盤が確立できず、国民の食に対する不信感は益々増大すると思われる。また、残留農薬の公定スクリーニング法の確立ができず、摂取量推定も従来のマーケットバスケット方式から進展しない。
効果と費用との関係に関する分析
これらの研究を一刻も早く完成することにより、最新技術を駆使した試験法の開発と共に時代遅れの試験法の淘汰が行われ、その結果迅速かつ効率的な食品検査と大幅な省力化が可能となり、ひいては速やかな食の安全確保につながるものと思われる。
以上の意味で経済効率に及ぼす影響は大きいと推測される。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他
 食品の安全性に関する研究は、「科学技術」における重点分野の1つである「ライフサイエンス」のうちの主要な項目として例示されている。本件は、天然食品添加物及び残留農薬に関する安全性の確保のために必要な研究を行うものであり唆心で安全に暮らせる社会」を目指す施政方針演説の内容と、その実現を図るための新重点4分野の趣旨に、合致するものである。 


3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし
(5)会計検査院による指摘
 なし


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