事業評価書( |
|
・事後) |
評価対象(事務事業名) | 生物学的製剤に起因する感染症に関する安全性関連情報収集システムの構築、維持管理、その利用に関する事業 | |
担当部局・課 | 主管課 | 大臣官房厚生科学課(国立感染症研究所) |
関係課 | 医薬局安全対策課 |
番号 | ||
基本目標 | 1 | 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること |
施策目標 | 6 | 品質・有効性・安全性の高い医薬品・医療用具を国民が適切に利用できるようにすること |
III | 安全性を確保するために、医薬品の情報を医療関係者等へ広く提供すること |
|
||||||||
生物学的製剤に起因する感染症に関する情報について、国内外の学術会議、論文、感染症対策機関からの出版物より収集する。感染研内病原体専門部門からの生物学的製剤に起因する感染症の情報収集を行い、これらを統括、管理、評価する。情報源としては、情報センターでは、既存のサーベイランスデータ、国際機関及び外国の感染症対策施設からの出版物とメーリングリスト情報及び感染症対策に関する国内外の学会とし、感染研内病原体専門部については、該当する専門分野の学術雑誌及び国内外の学会とする。系統的な情報収集体制を樹立して、キーワードを設定して情報を収集し、内容を確認してその重要性を評価して、速やかに情報センター担当者に集約する。情報センターでは、集約された情報を抄訳とともに、データベースサーバに登録、管理、維持し、その重要度レベルに従って、研究所内評価委員会(仮称)あるいは即座に厚生労働省担当部局に情報提供を行う。必要で有れば、感染研内でさらに関連情報を収集、評価し、事例の確認に努める。また、既存のWWWサーバを強化して、上記のデータベースサーバとリンクすることことにより、厚生労働省をはじめとする関連機関との情報共有を行い、必要なときにWWWサーバを利用して、迅速で適切な情報提供が可能となるIT環境を樹立する。また、データベースサーバにリンクする解析ツールを作成し、膨大な情報からリスク評価・管理システムを樹立する。 | ||||||||
予算額 | (単位:百万円) | |||||||
H11 | H12 | H13 | H14 | H15 | ||||
− | − | − | − | 215 |
(1)現状分析 近年の感染症の問題としては、新興・再興感染症のみならず、その感染原因が自然感染に加えて、意図的な病原体散布、そして偶発的な病原体の食品あるいは医薬品への混入など多様になってきていることがあげられる。特に生物学的製剤への偶発的な病原体の混入は、予期できないものであると同時に探知することが非常に難しく、これまでも凝固因子製剤によるHIVウイルス感染、クロイツフェルトヤコブ病の脳硬膜移植による感染、あるいは血液製剤によるC型肝炎の感染などが大きな問題となった。このような問題に対しては、国の責務として国民に安全なものを供給するという観点から、また対策の遅れが、大きな被害につながることからも、こういった事実を早期に探知する情報収集システムが必要である。 (2)原因分析 偶発的な病原体の混入による生物学的製剤の副作用としては、感染症の発症という結果をとり、これは自然感染と何ら変わらない病態をとることが多く、またもともと疾病の治療として行われるために患者が基礎疾患を持つことも多く、これを探知するのは技術的に極めて難しい。 (3)問題点 こういった副作用は、あらかじめ予期できないものであり、その確認はきわめて難しいため、当初は原因不明の疾患集積や個別症例報告として報告されることが多く、ひとつひとつの情報だけでは、重要性が認識できないことも多い。どれだけ重要性があるかどうかもわからない情報も含め、膨大な情報をできる限り広い範囲で高い感度で収集し、ひとつひとつでは意義が不明の情報を集約して、評価、確認することによって、はじめてなんらかの意義を見いだすことができる。 (4)事務事業の必要性 偶発的な病原体の混入による生物学的製剤に由来する感染症から国民を守り、安全な製剤を提供するためには、感染症疫学に精通したスタッフにより、どれだけ重要性があるかどうかもわからない情報も含め、高い感度で収集し、集約して、それらを評価、確認することによってリスク評価につなげていくことが必要である。本事業は、国内でのサーベイランスにより広く疑い事例を拾い上げて、積極的な調査につなげるとともに、国内・国外での生物学的製剤に起因する感染症に関する疫学情報を系統的、持続的、そして積極的に収集し、集約・維持・管理・情報共有を行うメカニズムを樹立し、リスク評価システムを研究、立案、樹立することによって、我が国における生物学的製剤の安全性に寄与せんとするものである。 |
目標達成年度(又は政策効果発現時期) | ||||||
アウトプット指標 | H15 | H16 | H17 | H18 | H19 | 目標値/基準値 |
リスク評価・管理システムの構築状況 | ||||||
(説明) 定性的な指標である。 |
(モニタリングの方法) |
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から) |
|
||||
(理由) 本事業は国家の健康安全保障に関わることであり、その対策には行政的施策が不可欠であるため。 |
|||||
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から) |
|
||||
(理由) 本事業の達成には、国際機関あるいは外国の感染症対策機関との密接な連携が不可欠であり、行政との迅速な情報共有体制が必要であるため。 |
|||||
民営化や外部委託の可否 |
|
||||
(理由) 上記理由、および恒常的に行う事業であり、利潤を期待できるものではないので、民営化や外部委託に適さない。 |
|||||
緊要性の有無 |
|
||||
(理由) これまでの脳硬膜移植によるクロイツフェルトヤコブ病の感染や血液製剤によるHIV感染事例にしても、情報の遅れから対策自体が遅れる結果となり、甚大な健康被害が発生した。今年に入ってからも、インドにおけるポリオワクチンとビタミンAの一斉投与の際の死亡例、あるいはキューバにおける麻疹ワクチン投与に関連した感染症の発生例などが報告されており、幸運にもこれらは国際的なリスクとはならなかったものの、こういった危険な現在も常に存在しており、緊急を要すると考えられる。 |
政策効果が発現する経路 | ||||||||
迅速な情報収集システムの樹立により、生物学的製剤の安全性に関する情報が早期に把握することが可能になり、これにより、行政当局は最新の情報をもって、生物学的製剤の安全性に関する行政判断を行い、施策につなげることができる。これらにより、偶発的に病原体が混入した生物学的製剤による国民の健康被害を最小に押さえることができることが見込まれる。 | ||||||||
これまで達成された効果、今後見込まれる効果 | ||||||||
|
||||||||
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項 | ||||||||
生物学的製剤による感染症発生は、あらかじめ予期できないものであるため、なんらかの問題が探知されてはじめて、対策を行うことができるという制限より、本邦で頻用されている製剤の場合には、早期に探知したとしても、ある程度の被害は防止できない。 |
手段の適正性 | |||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||
効果と費用との関係に関する分析 | |||||||||||||||||||||||
当該事業を行わない場合は、無論全く費用がかからないが、本邦に多数の被害が出るまで、問題すら認識できない。上記の受動的な方法の場合、費用は少なくてすむが、行政対応は遅れる。本来病気の治療あるいは予防に用いられる生物学的製剤により、感染症を発症した場合、被害者の損失のみならず、生物学的製剤ひいては、医薬品全体についての信頼性が失墜し、結果としての社会的損失ははかりしれない。また、これにともなう行政機関に対しての信頼性の喪失は、国に対する信頼性の低下につながり、社会不安につながる。このことより、迅速な情報収集システムによる効果、あるいは、そういったシステムが存在するという事実による効果は、必要とする費用をうわまわることは明らかである。 | |||||||||||||||||||||||
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無 |
|
||||||||||||||||||||||
(有の場合の整理の考え方) 他の医薬品の安全に関する事業との連携が必須と考える。 |
本事業は、国家の健康安全保障に関わるものであり、現在の生物学的製剤の使用状況を勘案すれば、いつまた発生してもおかしくない状況であり、優先的に実施されるべきである。 |
(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項 なし (2)各種政府決定との関係及び遵守状況 なし (3)総務省による行政評価・監視等の状況 なし (4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等) なし (5)会計検査院による指摘 なし |