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第2章 企業行動、労働者の就業行動の変化と働き方の多様化

第1節 企業の雇用方針・労働者の就業行動の変化と就業形態の多様化

 就業形態の多様化とは、正規雇用以外の様々な就業形態の拡大を指す。就業形態の多様化の流れは中長期的に進展しているが、1990年代後半にやや加速している。
 就業形態の多様化の背景として、労働者側要因としては、中長期的には女性や高齢者が非正規雇用で就業するようになったことがあるが、最近では、非正規の雇用形態を希望する労働者が増加していること、正社員での雇用機会が減少し、やむなく非正規雇用で就職している者が増加していることが考えられる。企業側要因としては、非正規雇用比率の高い第3次産業の拡大の他、最近では、個々の企業における非正規雇用の活用拡大が考えられる。また、景気に対する不透明感が高まる中で人件費削減や雇用における柔軟性の確保といった目的から、非正規雇用が活用されている。
 非正社員の活用による影響について、企業は、「正社員が高度な仕事に専念できている」といった長所や、「ノウハウの蓄積・伝承ができていない」といった短所を挙げている。実際に働いている人は、非正社員の活用により、「正社員が高度な仕事に専念できている」といった長所を挙げる一方で、「正社員の労働時間が長くなっている」といった短所を挙げている。

(多様化の実態)
 就業形態の多様化とは、正規雇用(特定の企業と継続的な雇用関係を持ち、雇用先の企業においてフルタイムで働くこと)以外のさまざまな就業形態の拡大を指す。
 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」(2002年平均)によると、就業者数6,319万人のうち、雇用者は5,337万(就業者数の84.4%)、正規雇用は3,886万人(同61.5%)、「パート・アルバイト」、派遣労働者等の非正規雇用は1,451万人(同23.0%)となっている(第29図)。「パート・アルバイト」が1,053万人で非正規雇用の72.6%を占めている。
 正規雇用以外の就業形態をとる者の働き方は、賃金や労働時間といった面からみても一様でないが、特に自営業主や家族従業者で労働時間の長い者が多くなっている。

(多様化の進展状況)
 就業形態の多様化は、自営業主等の拡大ではなく、「パート・アルバイト」をはじめとする非正規雇用の増大により進展している(第30図)。
 また、就業形態の多様化の中長期的な動向を臨時・日雇比率でみると、1970年代後半以降中長期的に進展している。男女ともに1990年代後半以降上昇テンポが速まっているが、特に女性で水準が高くなっている(第31図)。

(就業形態の多様化の背景)
 就業形態の多様化の要因として、労働者側では、中長期的には女性や高齢者が非正規雇用で就業するようになったことがある。1994年頃からは男女の15〜24歳層及び男性の65歳以上で「パート・アルバイト」比率の上昇幅が大きくなっている。最近の傾向としては、特に若年層で就労に対する価値観が多様化し非正規の雇用形態を希望する労働者が増加していること、正社員での雇用機会が減少し、やむなく非正規雇用で就職している者が増加していることが考えられる。「パート」としての働き方を選んだ理由として「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」とする者の割合が依然として高いものの減少傾向にあり、「正社員として働ける会社がないから」とする者の割合が上昇している。企業側では、非正規雇用比率の高い第3次産業の拡大の他、最近では、個々の企業における非正規雇用の活用拡大が考えられる。また、景気に対する不透明感が高まる中で人件費削減や雇用における柔軟性の確保や、専門的人材、即戦力・能力のある人材の確保のために、非正規雇用が活用されているという面も強まっている(第32図(1)、(2))。
 就業形態別に直近の状況をみると、「パートタイマー(短時間)」では業務の繁閑に対応するために雇用されている面が強いのに対し、契約社員、派遣社員、出向社員では専門的業務への対応や即戦力・能力のある人材確保といった面から雇用されている。
 さらに、厳しい雇用情勢を反映して非自発パート(フルタイムを希望しながらやむなくパート就労を選ぶ者)も増加している。総務省統計局「労働力調査特別調査」により非自発パートの人数を推計すると、2001年2月において117万人となっている(第33図)。

(多様化が企業活動、正社員に及ぼす影響)
 非正社員の活用による影響について、企業は、「正社員が高度な仕事に専念できている」、「労働生産性が向上している」といった長所を挙げる一方で、「ノウハウの蓄積・伝承ができていない」、「職業訓練が行いにくくなっている」といった短所を挙げている。また、非正社員の活用上の課題としては、「良質な人材の確保」の割合が最も高くなっている。
 実際に働いている正社員は、非正社員の活用により、「正社員が高度な仕事に専念できている」、「仕事上の連携が円滑である」、「労働生産性が向上している」といった長所を挙げる一方で、「正社員の労働時間が長くなっている」、「ノウハウの蓄積・伝承が難しい」、「外部への機密漏洩の危険がある」といった短所を挙げている。


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