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第4節 人事制度等の動向

 長期雇用慣行は、現在のところ企業、労働者双方で大方の支持を受けており、部分的な修正はあるものの今後も多くの企業が維持することが予想されるが、長期雇用慣行の下におかれる正社員は、当面、減少が見込まれる。
 正社員の人事制度については、個別化・多様化が進んでいる。昇進格差のつき始める時期が早期化する動きもみられ、今後一層選別が厳しくなることも予想される。成果主義の下で重要となる人事考課制度について、評価基準の明確化や公開制度等の充実により、労働者の納得性を高めることが重要である。
 また、正社員への転換制度を始めとした非正社員の評価・処遇を充実させていくことは、企業にとっても、増加する非正社員の就業意欲の維持向上やその能力の有効活用を通じて、事業活動の活性化に資するものであるといえよう。

(長期雇用慣行についての意識)
 いわゆる終身雇用について企業の意識をみると、「原則としてこれからも維持」と「部分的な修正はやむを得ない」の合計は大半を占めており、1999年と比べてもほぼ同水準となっている(第44図)。また、労働者の意識についてみても、長期雇用慣行は、若年層での支持はやや低いものの、全般的には支持されているとみることができる(第45図)。ただし、経済情勢が厳しい中で、長期雇用慣行の下におかれる正社員は減少しており、また今後も、当面、減少が見込まれることに留意が必要である。

(採用・転職)
 企業間競争の激化や経営環境の変化のスピードの速まり等に対応するため、企業の人材戦略において即戦力重視の中途採用志向の高まりがみられ、今後は、新卒重視の企業も多いものの中途採用の増加が見込まれる(第46図)。さらに、通年採用、職種別採用、紹介予定派遣及び勤務地を限定した採用など多様な採用方法を導入する企業割合が増加している。一方、労働者の側でも、就業意識の多様化が進む中で、若年層において転職率が上昇する傾向がみられる(第47図)。

(配置・昇進)
 高齢化・高学歴化の中で役職ポストが不足し、労働者の職業生涯を通じた昇進可能性が低下する中で、労働者の競争意識を高める必要があること等を背景に、昇進に差がつき始める時期の早期化が進みつつあり、今後一層選別が厳しくなることも予想される。(第48図)。
 また、企業の人材ニーズや労働者の意識の多様化、昇進機会の減少等の中で、専門職制度等の導入により人事配置制度の多様化が図られてきているほか、人事配置について、従業員の自律性を重んじ、就業意欲の向上を図る仕組みとして、自己申告制度や社内公募制度等を導入する企業が、大規模企業を中心に増えている(自己申告制度16.2%(5,000人以上規模79.7%)、社内公募制度3.4%(5,000人以上規模57.7%)(いずれも2002年))。
 さらに、成果主義的賃金・処遇制度の導入が進みつつある中で、同制度の下では評価によって賃金・処遇が決まる割合が高まることから、人事考課制度における従業員の納得性の確保がより重要となってくる。人事考課制度については、評価方法・基準、考課者訓練の在り方等が課題であり、評価基準の明確化や公開制度等の充実が重要である(第49表)。

(短時間正社員制度)
 正社員以外の多様な就業形態が広がってきている中で、個人がライフスタイルに合わせた多様な働き方を選択できるような仕組みとして、フルタイム正社員とパートタイム非正社員の間の中間的な働き方である短時間正社員制度を導入する企業もみられている。育児・介護以外を理由とした正社員を対象とした制度の導入率は4.3%であるが、20.0%が今後検討の可能性ありとしている。

(非正社員の能力発揮のための人事制度)
 非正社員が、今後、量的にも増加が見込まれ、質的にもより高度な役割を果たすことが期待されている中で、生産性を高めるためには、非正社員の評価・処遇の充実により、その仕事に対する意欲を喚起し満足度を高めることが課題となる。
 パートタイム労働者が希望する制度としては、「能力に応じ処遇を決める」、「教育訓練や研修の機会」の次に「フルタイム正社員への登用の機会」が挙がっており、また、会社や仕事に対する不満・不安については、「正社員になれない」が上位に挙がっている。
 さらに、非正社員の評価・処遇に対する満足度についてみてみると、正社員への転換制度、非正社員間の転換制度、自己啓発支援、研修制度のいずれについても、制度がある場合は「パートタイマー」の評価・処遇の在り方に対する満足度(D.I.)は上昇する等との結果となっている(第50表)。非正社員の仕事に対する満足度を高め意欲を喚起する上で、転換制度や教育訓練関連制度を充実させることがポイントの1つとなることが示唆される。
 正社員への転換制度をはじめとした非正社員の評価・処遇を充実させていくことは、企業にとっても、増加する非正社員の就業意欲の維持向上やその能力の有効活用を通じて、事業活動の活性化に資するものであるといえよう。


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