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第2章 失業と就業


 近年、欧米諸国の失業率が低下傾向にある中、我が国の失業率は上昇し続けている。
 日本の失業率の特徴として、若年者と男性高齢者の失業率が高い点にある。特に、若年者については、学卒入職時点における就職環境がその後の離職率に影響を与えている。
 都道府県別の失業率と有効求人倍率、就業率、産業構造、若年人口比率の間には相関関係がみられる。
 日本の就業率は、国際的に高い方であるが、女性はあまり高くない。近年、就業率の変動より失業率の変動が大きくなる傾向があり、景気後退期に、従来より失業率が上がりやすくなっている。


(高まる失業)

 我が国の失業率は、長期的にみて上昇傾向にあり、バブル崩壊後は上昇傾向が加速した。男性の非自発的失業者が急増しており失業の中身も悪化している。
 我が国の失業率を国際比較すると、かつてのように群を抜いて低い水準ということはなくなった。近年、多くの国で失業率が低下に転じており、このまま日本の失業率が上昇し続ければ、失業率の水準において「並の国」になる可能性がある(第89図)。


(失業の特徴)

 我が国では若年者と男性高齢者の失業率が高い(第10図)。また、近年、男性の失業率が女性の失業率を上回るようになっているが、この背景には企業の労働需要が一般労働者からパートタイム労働者にシフトしていることがあげられる。
 若年の失業率が高いのは、新卒者の入職後の離職が多いことによる。転職志向の高まりといった意識の変化だけでなく、いわゆる「世代効果」、つまり学卒入職時点での就職環境の厳しさが、その後の離職率の高さに影響している。


(失業・就業の地域構造)

 都道府県別失業率(2000年)をみると、全国が4.7%であるが、都道府県間でばらつきがあり、失業率の高低格差は最大3.2倍ある。高いのは、沖縄県や大阪府などで、一方、低いのは島根県、福井県、長野県などである。
 また、都道府県間における失業率の相対関係は時系列的にみて大きく変化しておらず、バブル崩壊後については総じて上昇傾向にある(第11図)。
 都道府県別失業率と有効求人倍率、就業率、産業構造、若年人口比率の間には相関関係がみられる。
 また、公共事業と建設業就業者の間には相関関係があり、公共事業の減少は、公共事業への依存の高い地方の雇用に大きな影響を与える。


(就業率の動向と失業率)

 就業率と失業率には相関関係があり、就業率の高い国は失業率が低い傾向がある(第12図)。日本の就業率は、国際的には高い方であり、特に男性の就業率は高水準にあるが女性の就業率は平均を若干下回っている。
 日本の女性の就業率が低い要因の一つとして、高学歴女性の就業率があまり高くないことが挙げられる。これは、一度出産等で退職した後、再就職しようとするとき、教育水準の高いことが必ずしも有利に働かず、能力を活かせる職場が少ないという構造的な問題があるからだと考えられる。
 近年、男性の就業率の低下と失業率の上昇が同時に起こっており、労働需要の減少が失業増に直結している状況になっている。また、就業率の変動より失業率の変動が大きくなる傾向があり、景気後退期に、従来より失業率が上がりやすくなっている。



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