カルテがつながると、医療はもっと安全に ―電子カルテ情報共有サービスが目指す未来

連載「医療DX(マイナ保険証・電子処方でんししょほうせん・電子カルテ)」

医療DX後編

カルテがつながると、医療はもっと安全に ―電子カルテ情報共有サービスが目指す未来

連載
2025.10.20

「他の病院の検査結果を、今の病院でも見られたら……」。そんな声に応える仕組みを現在構築中です。医療機関間の情報共有により、より安全で効率的な診療が実現。今回は「電子カルテ情報共有サービス」をご紹介します。

「つながる医療」の基盤に ― 電子カルテ情報共有サービスの役割

令和7年2月から順次モデル事業を開始している「電子カルテ情報共有サービス」は、患者の同意のもと、電子カルテ情報や、健診結果をマイナ保険証を利用することで共有できる仕組みです。医師などが迅速かつ正確に患者の情報を把握でき、より適切な医療の提供につながります。(閲覧できる情報は患者が同意した範囲に限られ、利用目的外で患者の医療情報を閲覧することは認められません)

診療の「点」が「線」につながる ― カルテ連携で変わる医療のかたち

これまでは病院ごとにアレルギー情報や検査結果などが管理され、各医療機関内でしか確認できず、医療情報が「点」としてだけ存在していました。
 電子カルテ情報の連携により、これらの「点」が「線」としてつながります。患者の同意のもと、他院で管理している自身のアレルギー情報や検査結果などを医師等が閲覧でき、正確な情報を把握できることで、より質の高い医療につながります。

電子カルテの情報連携でできること 電子カルテの情報連携でできること

もしものときも、いつもの診療も ― 電子カルテ情報の共有が支える日常の医療

電子カルテの情報共有は、私たちの暮らしの中で、緊急時にも日常の診療にも役立ちます。以下のようなケースで、その効果を実感できるでしょう。

救急搬送時も安心して任せられる

突然の体調悪化などで救急搬送された際、本人では病名やアレルギーなどの必要な情報を正確に説明できないことがあります。そんなときでも、電子カルテの情報が共有されていれば、正確な情報を踏まえた、より質の高い安全な医療を提供することが可能になります。

転院・紹介時のやりとりがスムーズに

これまでは、紹介状を自分で受け取って持参する必要があり、手間や不安がつきものでした。情報連携が進むことで、紹介状の紛失・持参忘れがなくなるとともに、紹介先の医療機関が事前に内容を確認でき、より良い医療の提供につながります。

複数の病院にかかっているときも便利

異なる病院を受診している場合でも、それぞれの医療機関で他院の検査結果やアレルギー情報などを把握できるようになります。正確な情報に基づく治療が可能になり、より質の高い医療につながります。

救急・転院・複数受信で役立つ活用例 救急・転院・複数受信で役立つ活用例

プライバシーに不安? ― 安心して使えるための仕組みをご紹介

「電子カルテ情報が勝手に見られたらどうしよう……」といった不安に応えるため、電子カルテ情報共有サービスでは安心して使える仕組みが整えられています。

 電子カルテ情報の共有には必ず患者本人の同意が必要です。マイナ保険証で受診時に「どの情報を共有するか」を自分で選択でき、どの医療機関がいつ情報を閲覧したかもマイナポータルで確認できます。

 医療機関側では、権限を持ったスタッフのみが必要な情報にアクセスできる厳格な管理体制を整備。情報送受信には高度な暗号化技術を用い、情報漏えい対策も徹底しています。情報の取り扱いは厳格に制限されており、いつ・どの医療機関等が情報を閲覧したかは、本人がマイナポータルで確認できます。自分で選び、見える仕組みが整っているからこそ、安心して利用できる制度です。

よくある疑問Q&A

Q.

病名や検査結果が勝手に見られることはない?

A.

情報閲覧には必ず本人同意が必要になります。同意の範囲はご本人で選ぶことができ、利用履歴はマイナポータルで確認できます。医療機関でのアクセスは権限を持ったスタッフのみに制限されているため、安心して利用できます。

Q.

どんな情報が共有される?

A.

検査結果、アレルギー、病名、健診結果など。ご本人が同意時に範囲を選択でき、変更も可能です。

Q.

全国どこでも利用できる?

A.

2025年2月よりモデル事業を順次開始しており、2030年までに、概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指しています。

まとめ

医療情報が“つながる”と、医療はもっと安心に

電子カルテ情報共有サービスにより「切れ目のない医療」が実現し、より安全で質の高い医療の提供に役立ちます。また、電子カルテ情報共有サービスに登録された情報は、マイナポータルを使ってご本人も確認することができます。
 「マイナ保険証」を利用することで、必要時に情報が「つながる」ようになります。新しい仕組みを取り入れてみませんか。