(2) 出生コーホート別の分析(世代による変化)
「コーホート」とは、ある期間に出生・婚姻等何らかの事象が発生した人を集団としてとらえたものであり、出生によるものを「出生コーホート」と呼ぶ。
従来の調査年ごとの集計では、出生年の異なる集団を対象とした調査時点での年齢別分析しかできず、時代による変化を中心に分析してきたが、出生コーホートとしてみることにより、同一世代を集団で追跡することが可能となり、世代による変化を分析することができる。
出生コーホート 昭和7年生まれの集団は、昭和22年には「15歳」で、昭和23年には「16歳」、昭和56年には「49歳」に移っているとみる。
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1) 累積出生率
昭和7年から昭和45年生まれまでの女子の出生年別に累積出生率をみると、49歳までに生んだ子供の人数は、昭和20年生まれの女子が2.10と最高で、「第1次ベビーブーム」期に生まれた昭和22年生まれは、1.81と少ない。
30歳までの累積出生率は、昭和25年生まれまでは、上下変動を繰り返していたが、昭和22年生まれ(1.51)を除くと1.6〜1.7台で推移していた。昭和25年生まれ以降は、「ひのえうま」の昭和41年生まれでの上昇を除くと、徐々に低下しており、昭和42年生まれからは、1を切っている。
世代を追うごとに、晩産化の傾向が見られる。(図9・表7)
図9 出生コーホート別にみた累積出生率 −昭和7〜45年生まれ−
表7 出生コーホート別にみた累積出生率 −昭和7〜45年生まれ−
出生年 | 累積出生率 | ||||
30歳 | 35歳 | 40歳 | 45歳 | 49歳 | |
昭和7年 | 1.65 | 1.96 | 2.03 | 2.04 | 2.04 |
8 | 1.66 | 1.97 | 2.05 | 2.05 | 2.05 |
9 | 1.64 | 1.95 | 2.02 | 2.02 | 2.02 |
10 | 1.63 | 1.94 | 2.00 | 2.01 | 2.01 |
11 | 1.62 | 1.96 | 2.03 | 2.03 | 2.03 |
12 | 1.62 | 1.95 | 2.01 | 2.02 | 2.02 |
13 | 1.70 | 2.03 | 2.09 | 2.09 | 2.09 |
14 | 1.66 | 1.99 | 2.04 | 2.05 | 2.05 |
15 | 1.61 | 1.92 | 1.96 | 1.97 | 1.97 |
16 | 1.66 | 1.96 | 2.00 | 2.01 | 2.01 |
17 | 1.72 | 2.00 | 2.05 | 2.06 | 2.06 |
18 | 1.72 | 1.98 | 2.03 | 2.04 | 2.04 |
19 | 1.73 | 1.98 | 2.03 | 2.03 | 2.03 |
20 | 1.79 | 2.05 | 2.10 | 2.10 | 2.10 |
21 | 1.66 | 1.91 | 1.97 | 1.97 | 1.97 |
22 | 1.51 | 1.75 | 1.80 | 1.81 | 1.81 |
23 | 1.64 | 1.91 | 1.97 | 1.98 | 1.98 |
24 | 1.61 | 1.89 | 1.95 | 1.96 | 1.96 |
25 | 1.65 | 1.96 | 2.02 | 2.03 | 2.03 |
26 | 1.63 | 1.95 | 2.01 | 2.02 | 2.02 |
27 | 1.60 | 1.93 | 2.00 | 2.01 | |
28 | 1.59 | 1.93 | 2.01 | 2.01 | |
29 | 1.59 | 1.94 | 2.02 | 2.03 | |
30 | 1.53 | 1.89 | 1.97 | 1.98 | |
31 | 1.52 | 1.89 | 1.97 | ||
32 | 1.49 | 1.87 | 1.96 | ||
33 | 1.41 | 1.79 | 1.88 | ||
34 | 1.40 | 1.78 | 1.88 | ||
35 | 1.34 | 1.73 | 1.83 | ||
36 | 1.29 | 1.69 | |||
37 | 1.23 | 1.64 | |||
38 | 1.17 | 1.58 | |||
39 | 1.12 | 1.52 | |||
40 | 1.06 | 1.46 | |||
41 | 1.13 | ||||
42 | 0.91 | ||||
43 | 0.97 | ||||
44 | 0.93 | ||||
45 | 0.89 |
2) 出生コーホート別にみた年齢別初婚率・出生率
昭和30、35、40、45年生まれの女子について、婚姻・出生の状況をおってみた。
昭和30年生まれの女子をみると、初婚率が23〜24歳で高く、出生率は第1子が25歳、第2子が27〜28歳、第3子が30歳前後で高くなっている。
昭和35年生まれをみると、初婚率が24歳、第1子が25〜26歳、第2子が28歳、第3子が31歳前後で高い。
昭和30年生まれと比べ、全体的に率が低下している。
昭和40年生まれをみると、初婚率が25歳、第1子が26〜27歳、第2子が29歳、第3子が31歳前後で高い。
昭和30年生まれに比べ、全体的に大きく率が低下したとともに、出生順位のそれぞれのピーク時年齢が1〜2歳ほど上がっており、出生率の低下及び晩産化が顕著となっている。
昭和45年生まれをみると、初婚率が25歳、第1子が27歳で高い。
昭和40年生まれより更に出生率の低下及び晩産化が進んでいる傾向がうかがわれる。(図10)
図10 出生コーホート別にみた年齢別初婚率・出生率(女子人口千対) −昭和30・35・40・45年生まれ−
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3) 出生コーホート別にみた結婚年齢・結婚期間別出生数
昭和30、35、40、45年生まれの女子について、出生順位別に結婚年齢と出生までの結婚期間との関係をみた。
ア 第1子出生
第1子の嫡出出生数を結婚期間1年未満から4年についてみた。
昭和30年生まれの女子をみると、結婚年齢に関わらず結婚期間が1年未満もしくは1年での出生が圧倒的に多く、2年、3年、4年の順に続いている。
昭和35年生まれをみると、昭和30年生まれと同じように結婚期間が1年未満もしくは1年で圧倒的に多くなっている。しかし、昭和30年生まれは、結婚年齢21〜24歳で結婚期間1年未満が、1年を下回っていたのに対し、昭和35年生まれは、25歳以外の全年齢で1年未満が1年を上回っている。
昭和40年生まれをみると、結婚年齢24歳以下で結婚した層では1年未満が多く、結婚年齢が若くなる程、1年との差が大きくなっている。逆に、25〜28歳では、1年が1年未満を上回っている。また、25歳以上では、昭和30年生まれに比べ、2年、3年、4年の出生数が増加している。
概して、20代後半で結婚した層の出生までの期間は、長くなる傾向にあると考えられる。
昭和45年生まれをみると、昭和40年と同じ傾向であるが、結婚年齢24歳以下で更に1年未満の占める割合が多くなっている。(図11)
図11 母の結婚年齢・結婚期間別にみた第1子嫡出出生数 −昭和30・35・40・45年生まれ−
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イ 第2子出生
第2子の嫡出出生数を結婚期間2年から6年についてみた。
昭和30年生まれの女子をみると、結婚年齢に関わらず結婚期間3年での出生が多く、次いで4年もしくは2年が続いている。
4年と2年では、結婚年齢20〜22歳ではほとんど変わらないが、23〜25歳で4年が多く、26歳以降は2年が多い。また、年齢が上がるほど、3年と2年との差が少なくなっている。
昭和35年生まれをみると、昭和30年生まれと同様に、結婚期間3年が多くなっている。
4年と2年では、結婚年齢20〜23歳で2年が多くなっており、昭和30年生まれと比べると、結婚年齢が早い層での変化がみられる。また、年齢が下がるほど3年と2年との差が少ない。
昭和40年生まれをみると、結婚年齢20〜23歳で3年、2年が多いのに対し、24歳以降では3年、4年が多くなり、年齢が上がるほど5年、6年の割合も増えている。
昭和45年生まれをみると、結婚年齢20〜23歳では、昭和40年生まれと変わらない傾向であるが、24歳以降で4年が増え、26歳で3年とほとんど変わらない水準となった。5年も結婚年齢が上がるにつれて増え、25歳には3年、4年に次いで3番目となっている。(図12)
図12 母の結婚年齢・結婚期間別にみた第2子嫡出出生数 −昭和30・35・40・45年生まれ−
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ウ 第3子出生
第3子の嫡出出生数を結婚期間4年から8年についてみた。
昭和30年生まれの女子をみると、結婚年齢20〜22歳で結婚期間5〜7年が多く、23〜27歳で5〜6年、28歳以降で4〜6年と、結婚年齢が上がるほど期間が短くなっている。
昭和35年生まれをみると、昭和30年生まれと同じような傾向であるが、23歳以下の結婚年齢で結婚期間4年の割合が増えている。
昭和40年生まれをみると、結婚年齢に関わらず結婚期間5〜6年が多くを占めているが、結婚期間による差が少なくなっている。
昭和45年生まれをみると、昭和40年生まれより、更に結婚期間による差がなくなる傾向がみられる。(図13)
以上より、第1〜3子全体の状況をまとめると、出生数は、第1〜3子とも、昭和30年生まれの女子に比べ、昭和35年生まれ、昭和40年生まれと減少し続け、昭和45年生まれでは更なる少子化へと進んでいる。
出生数の減少は、世代を追うにつれ、晩婚化が進むとともに、20代後半で結婚した層で、第1子出生までの期間が長くなっていることが背景にあると推察され、それに伴う第2子への影響も反映されている。
世代による「婚姻」「第1子出生」「第2子出生」というライフサイクルの変化により、晩産化がもたらされ、出生数が減少したものと考えられる。
図13 母の結婚年齢・結婚期間別にみた第3子嫡出出生数 −昭和30・35・40・45年生まれ−
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