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4.出生時の職業
 (1)  出生時の父母の職業
 出生時の職業別に母の就業状況の変化をみる。
 出生時の母の職業の有無別にみると、有職であった母は23.0%と割合が少なく、無職であった母が圧倒的に多い。
 出生時に有職の母は、ほとんどが出生1年前にも有職であり、主として「I就業継続型」、「IV出産後離職型」の2パターンに分類されるが、有職全体でみると、「I就業継続型」が7割、「IV出産後離職型」が2割弱である。職業別にみると、特に「専門・技術職」がほかの職業に比べて「I就業継続型」の割合が多く8割弱となっている。
 一方、出生時に無職であった母の42.8%は出生1年前には有職であり、出産前に離職したり、一時離職中であったりしたことがわかる。

 父の職業から母の就業変化パターンをみると、ほとんどの職業で「V無職継続型」が最も多く4割前後であるが、父が「農林漁業職」では「I就業継続型」の母が多いという特徴がみられる。

表4-1 出生時の母と父の職業別にみた母の就業変化パターン

表4-1 出生時の母と父の職業別にみた母の就業変化パターン


 (2)  出生1年前の就業形態と企業規模
 出生1年前の母の就業形態についてみると、出生1年前に有職であった者のうち、出生時に有職の者では、常勤が8割弱、パート・アルバイト、自営業・家業がそれぞれ1割となっている。出生時に無職では常勤とパート・アルバイトが45%前後、自営業・家業が1割弱と、有職と比べパート・アルバイトの割合が多くなっている。
 出生時の母の職業別にみると、「専門・技術職」、「事務職」は常勤が9割弱と多いのに対し、「農林漁業職」は自営業・家業が8割を占めている。「管理職」、「販売職」、「サービス職」は常勤が5割程度と少なく、「販売職」、「サービス職」はパート・アルバイトの割合が他の職業に比べ多くなっている。「I就業継続型」についてみると、総数と同じ傾向であるが、全ての職業でパート・アルバイトの割合が少なくなっており、常勤や自営業・家業で就業が継続しやすい状況となっている。

 出生1年前に常勤である母の企業規模についてみると、出生時の有職では、「5〜99人」が3割、「官公庁」が2割であるのに対し、出生時に無職では、「5〜99人」が4割と1割ほど多く、官公庁が少なくなっている。
 出生時の母の職業別にみると、職業により企業規模の構成にばらつきがみられ、例えば、「販売職」は「500人以上」が多く、「サービス職」は「5〜99人」が多いといった特徴がある。
 「I就業継続型」についてみると、多くの職業で総数に比べ「官公庁」の割合が多くなっており、就業を継続しやすい環境が整っていることがうかがえる。

表4-2 出生時の母の職業別にみた出生1年前の母の就業形態と企業規模

表4-2 出生時の母の職業別にみた出生1年前の母の就業形態と企業規模


 (3)  出生半年後の常勤の状況と育児休業の取得状況
 出生時に有職の母について出生半年後の常勤の状況をみると、出生1年前に対する半年後の常勤の割合は、概ね8〜9割程度である。出生時の母の主な職業について図4-1でみると、若干「販売職」で少なく7割となっている。また、育児休業取得率は、「専門・技術職」が86.8%と高く、「販売職」が72.7%と低めになっている。概して、出生1年前に対する半年後の常勤の割合が多いと、育児休業取得率が高い傾向がみられ、育児休業を取得しやすい環境が常勤者に仕事を継続しやすくさせているとも考えられる。
 なお、「I就業継続型」では、出生1年前に対する半年後の常勤の割合が総数に比べ1割ほど多く、育児休業取得率は同程度となっている。

表4-3 出生時の母の職業別にみた出生半年後の母の常勤の状況

表4-3 出生時の母の職業別にみた出生半年後の母の常勤の状況

図4-1 出生半年後の母の常勤の状況
図4-1 出生半年後の母の常勤の状況


 (4)  出生1年前の有職−無職別標準化出生率の推計
 従来から、人口動態職業・産業別統計では、標準化出生率(年齢構成の差を取り除いて比較できるよう標準化した出生率)を出生時の父母の職業別に算出しており、その中で有職−無職別にも把握している。
 母の職業別標準化出生率は、各職業に就く女性の出産意欲の高さを反映したものと考えられるが、その背景として、職業の特性や母本人の就業継続意識、出産をめぐる職場環境等も少なからず影響しているものと想定され、職業ごとにその状況を観察することにより、出生の状況を社会経済面から分析することができる。平成12年度の結果をみると、母の職業別標準化出生率は、「管理職」が最も高くなっている。
 さて、今回の分析結果から、出生1年前の就業状況のうち有職−無職別についてのみ、出生時との関係が把握できる。そこで、参考までに、職業別にはわからないものの、出生1年前の有職−無職別の標準化出生率を粗く推計し、出生時と比較してみた。

表4-4 出生時の母の職業別標準化出生率-平成12年度-
1)推計の仮定及び方法
 今回の分析で、出生時に無職であった母の約4割が出生1年前には有職であった一方で、出生時に有職であった母の中にも、1年前には無職であった者がわずかながら存在することがわかった。このような有職−無職間の変化状況(出生時:無職(又は有職)に占める出生1年前:有職−無職別の構成割合)を年齢階級別にみたものが、表4-5である。

表4-5 出生時の母の年齢階級別にみた出生1年前と出生時の母の就業変化

表4-5 出生時の母の年齢階級別にみた出生1年前と出生時の母の就業変化


 表4-5に示した割合が平成12年度の出生全体について成り立つと仮定して、年齢階級別に、出生時の母の有職−無職別出生数から、出生1年前の母の有職−無職別の出生数を、次式により推計する。
  「出生1年前:有職の出生数」= 「出生時:有職の出生数」×a
「出生時:無職の出生数」×c
  「出生1年前:無職の出生数」= 「出生時:有職の出生数」×b
「出生時:無職の出生数」×d

2)推計結果
 前述の仮定及び方法に基づき推計すると、各年齢階級における出生1年前の有職−無職別出生数の推計値は表4-6のとおりとなる。

表4-6 出生1年前の有職−無職別出生数の推計

表4-6 出生1年前の有職−無職別出生数の推計


 さらに、この推計結果を用いて、出生1年前の有職−無職別標準化出生率(女子人口千対)を推計した。(表4-7)

表4-7 出生1年前の有職−無職別標準化出生率の推計

表4-7 出生1年前の有職−無職別標準化出生率の推計

 出生1年前の有職−無職別にみると、標準化出生率(推計値)は出生1年前:有職が24.4、無職が30.0となり、無職が若干高いという傾向がみられる。
 一方、出生時の有職−無職別標準化出生率では、有職で9.9、無職で52.9と有職−無職間の差が大きく開いている。これは、特に20代の年齢階級で出生率の格差が大きいことが影響しており、この層を中心に出生時までに離職していることがうかがえる。
 少子化が進む今、働く女性が安心して出産できるよう、より働きやすい環境の整備をすすめていくとともに、今後の動向をみまもる必要があると考えられる。


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