厚生労働省

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6月月例労働経済報告

1  概況

(1)  一般経済の概況

景気は、厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きがみられる。

・輸出は、持ち直しの動きがみられる。生産は、持ち直している。

・企業収益は、極めて大幅に減少している。設備投資は、大幅に減少している。

・雇用情勢は、急速に悪化しており、厳しい状況にある。

・個人消費は、弱い動きとなっているものの、一部に下げ止まりの兆しもみられる。

先行きについては、当面、雇用情勢が悪化するなかで、厳しい状況が続くとみられるものの、在庫調整圧力の一層の低下や経済対策の効果が景気を下支えすることに加え、対外経済環境が改善することにより、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用情勢の一層の悪化が懸念される。加えて、世界的な金融危機の影響や世界景気の下振れ懸念など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、急速に悪化しており、厳しい状況にある(第1図)。

・完全失業率は、平成21年4月は前月差0.2ポイント上昇し、5.0%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、上昇している。

・新規求人数は、大幅に減少している。

・有効求人倍率は、大幅に低下している。

・雇用者数は減少している。

・製造業の残業時間は、4月は前月比で増加したものの、基調としては弱い動きが続いている。

・定期給与、現金給与総額は減少している。

2  一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、持ち直している。

2009年4月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、5.9%増と2か月連続で上昇した(第2図)。

業種別にみると、2009年4月は化学工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業等が上昇し、一般機械工業、石油・石炭製品工業、電気機械工業等が低下した。

出荷は前月比3.0%増と上昇した。在庫は前月比2.7%減と低下した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は5月8.8%増の後、6月は2.7%増となっている。

先行きについては、輸出の持ち直しや在庫調整の一層の進展などから、当面、持ち直しが続くことが期待される。

(2)   最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、弱い動きとなっているものの、一部に下げ止まりの兆しもみられる。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、3月0.2%減の後、4月0.9%減となった。うち勤労者世帯では、3月0.2%増の後、4月0.7減となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は3月75.5%の後、4月75.8%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2009年1〜3月期(季節調整済前期差)は1.5ポイント上昇し、28.4となった。なお、5月(原数値前年同月差)は1.8ポイント上昇し、35.7となった。

4月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.6%増、大型小売店販売額は0.5%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、4月22.8%減の後、5月17.4%減となった。

先行きについては、消費者マインドが持ち直している中で、経済対策による下支え効果が見込まれるものの、雇用・所得環境の悪化や新型インフルエンザ問題による影響を注視する必要がある。

[2]  設備投資は、大幅に減少している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2008年10〜12月期季節調整済前期比7.4%減の後、2009年1〜3月期同8.6%減(うち製造業同9.4%減、非製造業同8.0%減)となっており、全産業、製造業、非製造業で減少している。

今後の動向については、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の2008年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で5.4%減、製造業は4.3%減、非製造業は6.0%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2009年3月は1.3%増の後、4月は5.4%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、2009年3月は季節調整済前月比17.6%増の後、4月は同29.7%減となっている。

先行きについては、企業収益が極めて大幅に減少し、世界景気の下振れ懸念など先行き不透明感が高いなかで、企業の設備投資計画においても大幅な減少が見込まれており、一層の減少が懸念される。

[3]  住宅建設は、大幅に減少している。

新設住宅着工総戸数をみると、2009年3月は季節調整済前月比2.6%増、4月は同12.3%減の6.5万戸(年率77.9万戸)と2か月ぶりに減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、2009年3月は季節調整済前月比2.2%減の後、4月は同11.5%減となった。

先行きについては、雇用・所得環境の悪化などから、当面、減少傾向が続くと見込まれる。

[4]  公共投資は、平成20年度補正予算の効果もあって、このところ底堅い動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、2009年3月は18.1%増の後、4月は21.8%増となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、2009年4月は前年同月比20.5%増の後、5月は2.5%増となっている。

先行きについては、関連予算の執行により、強めの動きとなることが見込まれる。

[5]  輸出は、持ち直しの動きがみられる。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2009年3月は3.1%増の後、4月は3.4%増となっており、四半期別では、2008年10〜12月期16.8%減の後、2009年1〜3月期26.6%減となった(第6図)。

地域別には、アジア向けの輸出は持ち直している。アメリカ向け、EU向けは、ともに下げ止まりつつある。先行きについては、世界的な在庫調整の進展や中国等における景気刺激策の効果の発現などから、当面、持ち直しの動きが続くとみられる。

輸入は、緩やかに減少している。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2009年3月は0.8%減の後、2009年4月は5.6%増となっており、四半期別では、2008年10〜12月期4.7%減の後、2009年1〜3月期13.4%減となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は、緩やかに減少している。アメリカ、EUからの輸入は、ともに減少している。

(3)   国内企業物価は、緩やかに下落している。消費者物価は、緩やかに下落している。

5月の国内企業物価(速報)は、前月比0.4%下落(前年同月比5.4%下落)となり、輸出物価は同1.6%下落(同11.6%下落)、輸入物価は同2.2%下落(同28.5%下落)となった。

4月の消費者物価は、総合が前年同月比0.1%下落(前月比0.1%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.1%下落(同横ばい)となった(第7図)。

先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、緩やかな下落傾向で推移すると見込まれる。

(4)   企業収益は、極めて大幅に減少している。また、企業の業況判断は、極めて大幅に悪化している。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2008年10〜12月期64.1%減の後、2009年1〜3月期69.0%減(製造業141.7%、非製造業22.1%減)、季節調整値で2008年10〜12月期49.3%減の後、2009年1〜3月期28.0%減(製造業795.0%減、非製造業2.1%増)となった。

また、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の2009年度の経常利益計画(前年度比)は、2009年度通期では全産業9.0%の減益、製造業22.2%の減益、非製造業2.9%の減益となっている。なお、2009年度上期では、全産業35.0%の減益、製造業53.0%の減益、非製造業19.0%の減益の後、下期では全産業60.5%の増益、製造業は利益、非製造業17.7%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、規模計で、全産業−46ポイント(22ポイント悪化)、製造業−57ポイント(32ポイント悪化)、非製造業−38ポイント(15ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれもで悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2009年5月1,203件で、前年同月比6.7%減となった。

(5)  2009年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比3.8%減(年率14.2%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は2.3%減、財貨・サービスの純輸出の寄与度は1.4%減となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比2.7%減となった(第10図)。

3  雇用・失業

(1)[1]  4月の就業者数(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、3月に前月差62万人減となった後、4月は同6万人減と減少し、6,305万人(原数値は6,322万人、前年同月差107万人減)となった。男女別には、男性が3,664万人(前月差9万人減)、女性が2,641万人(同2万人増)となった(第11表)。

4月の雇用者数(季節調整値)は、5ヶ月連続で前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、3月に前月差47万人減となった後、4月は同12万人減と減少し、5,451万人(原数値は5,464万人、前年同月差72万人減)となった(第13図)。男女別には、男性が3,148万人(前月差13万人減)、女性が2,303万人(同1万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,729万人(前年同月差73万人減)、臨時雇が630万人(同10万人増)、日雇が104万人(同9万人減)となった。

4月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月と同水準となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.3%増、パートタイム労働者は同0.5%減となった。

[2]  4月の完全失業率(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で上昇した。

完全失業率(季節調整値)は、3月に前月差0.4ポイント上昇の4.8%となった後、4月は前月差0.2ポイント上昇の5.0%(原数値は5.2%、前年同月差1.1ポイント上昇)となった。男女別には、男性が5.3%(前月差0.4ポイント上昇)、女性が4.6%(同0.1ポイント低下)となった。

4月の完全失業者数(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、3月に前月差25万人増となった後、4月は前月差14万人増の334万人(原数値は346万人、前年同月差71万人増)となった。男女別には、男性が206万人(前月差17万人増)、女性が129万人(同2万人減)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、4月は非自発的理由による離職失業者は154万人(前年差58万人増)、自発的理由による離職失業者は103万人(同8万人増)、学卒未就職者は20万人(同7万人増)、その他の理由による失業者は65万人(同3万人減)となった(第11表)。

[3]  4月の労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で増加した。

労働力人口(季節調整値)は、3月に前月差36万人減となった後、4月は同8万人増と増加し、6,642万人(原数値は6,668万人、前年同月差36万人減)となった。

4月の非労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、3月に前月差32万人増となった後、4月は同4万人増と増加し、4,410万人(原数値は4,377万人、前年同月差42万人増)となった。男女別には、男性が1,473万人(前月差2万人減)、女性が2,935万人(前月差4万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、4月は60.4%(前年同月差0.3ポイント低下)となった。男女別には、男性が72.6%(同0.6ポイント低下)、女性が48.9%(同0.1ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、4月は57.2%(前年同月差1.0ポイント低下)となった。

(2)  有効求人数(季節調整値)は、前月比7.4%減と11ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比4.2%増と12ヶ月連続で増加した。

4月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.46倍と前月より0.06ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比0.9%減と4ヶ月連続で減少した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比2.3%減と2ヶ月連続で減少した。

4月の新規求人倍率(季節調整値)は、0.77倍と前月より0.01ポイント上昇した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.27倍(前年同月差0.27ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、4月は一般は前月比1.4%増と4ヶ月ぶりに増加し、パートについては同5.0%減と2ヶ月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比0.7%減と2ヶ月連続で減少し、パートについては同6.6%減と3ヶ月ぶりに減少した。

(3)  産業別にみると、4月の就業者数(原数値)は、情報通信業は前年同月差14万人増、宿泊業,飲食サービス業は同13万人増、運輸業,郵便業業は同12万人増、生活関連サービス業、娯楽業は同8万人増、教育,学習支援業は同4万人増と増加したのに対し、製造業は同63万人減、その他サービス業は同27万人減、建設業は同22万人減、卸売業,小売業は同5万人減、学術研究,専門・技術サービス業は同4万人減と減少した。なお、医療,福祉は前年と同水準であった。

また、4月の新規求人(原数値)は、製造業は同55.6%減、情報通信業は同39.6%減、サービス業は同36.9%減、運輸業,郵便業は同34.4%減、学術研究,専門・技術サービス業は同33.5%減、卸売業,小売業は同27.1%減、建設業は同26.5%減、宿泊業,飲食サービス業は同12.1%減、医療,福祉は同3.8%減、教育,学習支援業は同3.4%減とすべての主要産業で減少した。

(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では3月に前月比0.4%減となった後、4月は同1.9%増、調査産業計では3月に前月比2.8%減となった後、4月は同3.8%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では20%ポイント(12月調査より16%ポイント上昇)となり、2四半期連続で過剰超過となった(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2009年1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は47%となり2008年10〜12月期から12%ポイント上昇した(第15図)。また、2009年4〜6月期に実施予定の事業所割合は45%、2009年7〜9月期に実施予定の事業所割合は37%となっている。

4  賃金・労働時間

(1)  4月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は271,711円で、前年同月比2.7%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比2.3%減、パートタイム労働者は同横ばいとなった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比1.3%減(一般労働者同0.7%減、パートタイム労働者同0.1%減)となったほか、所定外給与は同18.3%減、特別給与は同10.0%減となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比2.6%減(一般労働者同2.0%減、パートタイム労働者同0.2%減)となった。

(2)  4月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は149.8時間で、前年同月比2.7%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比2.3%減、パートタイム労働者は同1.7%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は140.5時間で前年同月比1.4%減(一般労働者同0.9%減、パートタイム労働者同1.4%減)、所定外労働時間は9.3時間で同18.9%減(一般労働者同19.5%減、パートタイム労働者同9.1%減)となった。なお、月間出勤日数は19.6日で前年同月差0.3日減となった。

4月の製造業の所定外労働時間は9.0時間で、前年同月比45.8%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比54.0%減、100〜499人規模で同44.1%減、30〜99人規模で同43.6%減、5〜29人規模で同43.3%減となった(第17図)。

6月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版(PDF:127KB)

月例労働経済報告PDF版(PDF:492KB)

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:176KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:9,142KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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