5月 月例労働経済報告


 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、一部に弱い動きが続くものの、緩やかに回復している。

  ・ 企業収益は改善し、設備投資は緩やかに増加している。
  ・ 個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
  ・ 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。
  ・ 輸出、生産は横ばいとなっている。

 先行きについては、企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。一方、情報化関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。

  ・ 完全失業率は、3月は前月比0.2%ポイント低下し4.5%となった。
  ・ 就業者数は、2ヶ月連続で減少した。
  ・ 雇用者数は、持ち直している。
  ・ 新規求人数は、緩やかな増加傾向となっている。
  ・ 有効求人倍率は、横ばいとなっている。
  ・ 製造業の残業時間は、横ばいとなっている。

 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
 3月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.2%減と2か月連続で減少となった(第2図)。生産は情報化関連生産財が持ち直しているが、金属製品等で減少していることから、全体としては横ばいとなっている。
 業種別にみると、3月は輸送機械工業、金属製品工業、情報通信機械工業等が低下し、電子部品・デバイス工業、化学工業、プラスチック製品工業等が上昇した。出荷は0.7%増と2か月ぶりに上昇し、在庫は0.3%減と3ヶ月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は4月 3.5%増の後、5月は1.4%減となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
 全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は2月季節調整済前月比1.8%減の後、3月は同横ばいとなった。勤労者世帯では2月季節調整済前月比4.1%減の後、3月は同1.1%減となった(前年同月比1.7%増)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、3月の財(商品)は実質で前年同月比1.2%増、サービスは同1.8%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は2月季節調整値71.6%の後、3月同73.3%となった(第3図)。
 消費者態度指数の推移をみると、平成17年1〜3月期は季節調整済前期比0.1 ポイント上昇し、45.6となった。なお、4月は前月差(原数値)2.2ポイント上昇し、47.4となった。
 3月の小売業販売額(確報)は季節調整済前月比1.2%減、大型小売店販売額は同2.5%減となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数は、3月前年同月比1.9%減の後、4月同8.9%増となった。

(2)  設備投資は、緩やかに増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、7〜9月期季節調整済前期比1.2%増の後、10〜12月期同2.8%減(うち製造業同1.5%増、非製造業同4.8%減)となっており、製造業は2四半期連続で増加、非製造業では2四半期連続で減少している。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の17年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で2.2%減、製造業は0.4%増と3年連続の増加となっている。非製造業は3.4%減で3年ぶりに減少となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2月は4.9%増の後、3月は1.9%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、2月は季節調整済前月比16.8%増の後、3月は同25.1%減となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続いていることから増加傾向で推移するものと見込まれる。

(3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工総戸数をみると、2月季節調整済前月比9.9%減の後、3月は同0.6%減の9.7万戸(年率116.6万戸)と2か月連続で減少した(第5図)。
 新設住宅着工床面積は、3月季節調整済前月比2.6%増となった。
 先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などが回復していけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で2月1.5%減の後、3月40.5%増と27か月ぶりに増加となった。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、3月前年同月比3.1%減の後、4月同11.3%減となっている。

(5)  輸出は、横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2月2.4%減の後、 3月は3.4%増となっており、四半期別では、10〜12月期1.7%減の後、1〜3 月期1.0%減となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は弱含みとなっており、アメリカ向け輸出は緩やかに増加しており、EU向け輸出は弱含みとなっている。
 輸入は、横ばいとなっている。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2月4.5%減の後、3月は4.6%増となっており、四半期別では、10〜12月期0.7%増の後、1〜3月期0.5%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は緩やかに増加しており、アメリカからの輸入は横ばいとなっており、EUからの輸入は減少している。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇によりこのところ上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。
 4月の国内企業物価(速報)は、前月比0.6%上昇(前年同月比1.8%上昇)となり、輸出物価は同1.0%上昇(同3.5%上昇)、輸入物価は同6.0%上昇(同12.5%上昇)となった。
 3月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%下落(前月比0.3%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.3%下落(同0.3%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、7〜9月期全産業37.8%増の後、10〜12月期全産業17.6%増(製造業25.3%増、非製造業12.4%増)、季節調整値で7〜9月期前期比5.0%増の後、10〜12月期同2.4%減(製造業1.8%減、非製造業2.7%減)となった。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の17年度の経常利益計画(前年同期比)は、17年度通期では全産業3.3%の増益、製造業2.0%の増益、非製造業4.4%の増益と、製造業、非製造業とも4年連続の増益を見込んでいる。なお、17年度上期では、全産業2.9%の減益、製造業5.3%の減益、非製造業0.9%の減益の後、下期では全産業9.3%の増益、製造業9.1%の増益、非製造業9.5%の増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模で全産業-2ポイント(3ポイント悪化)、製造業6ポイント(5ポイント悪化)、非製造業-6ポイント(1ポイント改善)となっており、製造業は悪化、非製造業は改善となっている(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、3月1,140件(前年同月比14.2%減)となっている。1,200件を下回り、3月としては1992年以来の低い水準となっている。

(5)  平成17年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.3%(年率5.3%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は1.4%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は▲0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.6%増となった(第10図)。

 雇用・失業

(1)
(1)  3月の就業者数(季節調整値)は、2ヶ月連続前月比で減少した。
 就業者数(季節調整値)は、2月前月差28万人減、3月同27万人減となり、6312万人(原数値は6260万人、前年同月差19万人減)となった。男女別には、3月は男性が3706万人(前月差4万人減)、女性が2607万人(同25万人減)となった。
 3月の雇用者数(季節調整値)は、前月比で増加した。
 雇用者数(季節調整値)は、2月前月差1万人減の後、3月同6万人増となり、5357万人(原数値は5313万人、前年同月差2万人増)となった。男女別には、3月は男性が3154万人(前月差15万人増)、女性が2204万人(前月差9万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、3月は常雇が4584万人(前年同月差23万人増)、臨時雇が620万人(同16万人減)、日雇が108万人(同6万人減)となっている。
 3月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると前月と同水準となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月と同水準、パートタイム労働者は同0.5%増となった。

(2)  3月の完全失業率(季節調整値)は前月と比べ0.2ポイント低下の4.5%となった。
 男女別には、男性が4.7%(前月差0.3ポイント低下)、女性が4.2%(前月と同率)となった。
 3月の完全失業者(季節調整値)は、前月差13万人減の297万人(原数値は313万人、前年同月差20万人減)となった。
 男女別には、男性が181万人(前月差14万人減)、女性が116万人(同2万人増)となった。
 なお、求職理由別(原数値)にみると、3月は非自発的理由による離職者は108万人(前年同月差15万人減)、自発的理由による離職者は110万人(同3万人増)、その他の理由による失業者は67万人(同6万人減)となった(第11表)。

(3)  3月の労働力人口(季節調整値)は、前月差43万人減の6606万人(原数値は6573万人、前年同月差39万人減)となった。
 非労働力人口(季節調整値)は、前月差33万人増の4384万人(原数値は4415万人、前年同月差49万人増)となった。男女別には、男性が1426万人(前月差15万人増)、女性が2958万人(同19万人増)となった。
 労働力率(原数値)は、3月は59.7%(前年同月と比べ0.5ポイント低下)となった。男女別には、男性が72.8%(前年同月差0.3%ポイント低下)、女性が47.5%(同0.5%ポイント低下)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、前月比0.8%増と2か月ぶりに増加し、有効求職者数(季節調整値)も同1.1%増と2か月ぶり増加となった。
 有効求人倍率(季節調整値)は、横ばいで推移しており、3月は0.91倍(前月と同水準)となった。
 新規求人(季節調整値)は、前月比1.0%減と2か月ぶりに減少した。
 新規求職者数(季節調整値)は前月比8.7%増と4か月ぶりに増加した。
 新規求人倍率(季節調整値)は、3月は1.35倍と前月より0.13ポイント低下した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、3月は一般は前月比1.5%減と2か月ぶりに減少し、パートについては前月比0.1%増と2ヶ月ぶりに増加した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比7.5%増と4ヶ月ぶりに増加し、パートについても同9.2%増と4か月ぶりに増加した。

(3)  産業別にみると3月の就業者数(原数値)は、卸売・小売業は前年同月差14万人増、サービス業は同14万人増、医療,福祉は同9万人増、教育,学習支援業は同3万人増と増加したのに対し、運輸業は同25万人減、製造業は同23万人減、飲食店,宿泊業は同10万人減、建設業は同8万人減と減少し、情報通信業は前月と同水準となった。
 3月の新規求人(原数値)は情報通信業は前年同月比16.0%増、医療,福祉は同16.0%増、サービス業は同13.3%増、運輸業は同9.9%増、建設業は同5.1%増、飲食店,宿泊業は同4.5%増、卸売・小売業は同4.5%増、製造業は同2.5%増と増加したのに対し、教育,学習支援業は同5.2%減と減少した。

(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、横ばいとなっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では2月は前月比1.8%減の後、3月は同0.4%増となり、調査産業計では2月は前月比2.7%減の後、3月は同1.2%減となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-1%ポイント(12月調査より1%ポイント低下)となり低下傾向にある(第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2004年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は15%となり7〜9月期と同水準となった(第14図)。また、2005年1〜3月期に実施予定の事業所割合は15%、2005年4〜6月期に実施予定の事業所割合は13%と低下が見込まれている。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による4月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は54.3で前月を0.1ポイント上回った。

 賃金・労働時間

(1)  3月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は283,831円で、前年同月比0.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同1.7%減となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同2.1%減)となったほか、所定外給与は同0.1%増、特別給与は同1.4%減となり、実質賃金は同0.4%減となった(第15図)。

(2)  3月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は151.4時間で、前年同月比2.9%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比2.6%減、パートタイム労働者は同3.3%減となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は140.8時間で前年同月比3.1%減(一般労働者同2.7%減、パートタイム労働者同3.4%減)、所定外労働時間は10.6時間で同0.9%減となった。なお、月間出勤日数は19.6日で前年同月差は0.6日減となった。
 3月の製造業の所定外労働時間(確報)は16.3時間で、前年同月比1.3%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.5%減、100〜499人規模で同2.8%減、30〜99人規模で同2.4%減、5〜29人規模で同1.8%増となった(第16図)。

5月の主要変更点

月例労働経済報告参考表


データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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