4月 月例労働経済報告



1 概況


(1) 一般経済の概況

景気は、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている。



先行きについては、企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。一方、情報化関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。


(2) 労働経済の概況

労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。



2 一般経済


(1) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。

2月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、2.1%減と3か月ぶりに減少となった(第2図)。生産は、資本財の持ち直しや情報化関連生産財における生産調整の進捗を受けて、横ばいとなっている。

業種別にみると、2月は、電気機械工業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等すべての業種で低下した。出荷は3.8%減と4か月ぶりで低下し、在庫は1.4%増と2ヶ月連続で増加した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は3月0.9%増の後、4月は3.6%増となっている。


(2) 最終需要の動向をみると、

(1) 個人消費は、持ち直しの動きがみられる。

全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は1月季節調整済前月比4.3%増の後、2月は同1.8%減となった。勤労者世帯では1月季節調整済前月比8.2%増の後、2月は同4.1%減となった(前年同月比3.8%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、2月の財(商品)は実質で前年同月比6.1%減、サービスは同1.5%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は1月季節調整値74.8%の後、2月同71.6%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、平成16年10〜12月期は季節調整済前期比0.2ポイント低下し、45.6となった。なお、2月は前月差(原数値)0.2ポイント上昇し、47.6となった。

2月の小売業販売額(速報、以下同じ)は季節調整済前月比2.7%減、大型小売店販売額は同2.1%減となった。

乗用車(軽を含む)の新車登録台数は、2月前年同月比0.4%減の後、3月同1.9%減となった。


(2) 設備投資は、緩やかに増加している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、7〜9月期季節調整済前期比1.2%増の後、10〜12月期同2.8%減(うち製造業同1.5%増、非製造業同4.8%減)となっており、製造業は2四半期連続で増加、非製造業では2四半期連続で減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の17年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で2.2%減、製造業は0.4%増と3年連続の増加となっている。非製造業は3.4%減で3年ぶりに減少となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で1月は2.2%減の後、2月は4.9%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、1月は季節調整済前月比33.9%増の後、2月は同11.5%増となっている。

先行きについては、企業収益の改善が続いていることから増加傾向で推移するものと見込まれる。


(3) 住宅建設は、このところ増加している。

新設住宅着工総戸数をみると、1月季節調整済前月比9.9%増の後、2月は同9.9%減の9.8万戸(年率117万戸)と3か月ぶりに減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、2月季節調整済前月比13.0%減となった。

先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などが回復していけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。


(4) 公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で1月19.9%減、2月1.5%減と26か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、1月前年同月比12.6%減のあと、2月同3.2%減となっている。


(5) 輸出は、弱含みとなっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で1月0.3%増の後、2月は2.4%減となっており、四半期別では、7〜9月期0.6%減の後、10〜12月期1.7%減となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は弱含みとなっており、アメリカ向け輸出は持ち直しており、EU向け輸出は弱含みとなっている。

輸入は、横ばいとなっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で1月3.8%増の後、2月は4.5%減となっており、四半期別では、7〜9月期0.6%減の後、10〜12月期0.7%増となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は緩やかに増加しており、アメリカからの輸入は緩やかに減少しており、EUからの輸入は緩やかに減少している。


(3) 国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。

2月の国内企業物価(速報)は、前月比0.2%上昇(前年同月比1.3%上昇)となり、輸出物価は同1.5%上昇(同1.0%上昇)、輸入物価は同2.8%上昇(同7.6%上昇)となった。

2月の消費者物価は、総合が前年同月比0.3%下落(前月比0.2%下落)、生鮮食品を除く総合が同0.4%下落(同0.1%下落)となった(第7図)。


(4) 企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、減少している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、7〜9月期全産業37.8%増の後、10〜12月期全産業17.6%増(製造業25.3%増、非製造業12.4%増)、季節調整値で7〜9月期前期比5.0%増の後、10〜12月期同2.4%減(製造業1.8%減、非製造業2.7%減)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の17年度の経常利益計画(前年同期比)は、17年度通期では全産業3.3%の増益、製造業2.0%の増益、非製造業4.4%の増益と、製造業、非製造業とも4年連続の増益を見込んでいる。なお、17年度上期では、全産業2.9%の減益、製造業5.3%の減益、非製造業0.9%の減益の後、下期では全産業9.3%の増益、製造業9.1%の増益、非製造業9.5%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模で全産業-2ポイント(3ポイント悪化)、製造業6ポイント(5ポイント悪化)、非製造業-6ポイント(1ポイント改善)となっており、製造業は悪化、非製造業は改善となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2月1,014件(前年同月比12.5%減)となっている。1,100件を下回り、2月としては1992年以来の低い水準となっている。


(5) 平成16年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.1%(年率0.5%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は▲0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.2%増となった(第10図)。


3 雇用・失業


(1)(1) 2月の就業者数(季節調整値)は、3か月ぶりに前月比で減少した。

就業者数(季節調整値)は、1月前月差47万人増の後、2月は同28万人減となり、6339万人(原数値は6224万人、前年同月差15万人増)となった。男女別には、2月は男性が3710万人(前月差16万人減)、女性が2632万人(同10万人減)となった。

月の雇用者数(季節調整値)は、2か月ぶりに前月比で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、1月前月差14万人増の後、2月は同1万人減となり、5351万人(原数値は5284万人、前年同月差2万人減)となった。男女別には、2月は男性が3139万人(前月差2万人減)、女性が2213万人(前月差2万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、2月は常雇が4545万人(前年同月差10万人減)、臨時雇が627万人(同9万人増)、日雇が112万人(同2万人減)となっている。

2月の常用雇用指数(事業所規模5人以上産業計、速報、季節調整済指数)をみると前月比0.1%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.3%増、パートタイム労働者は同0.6%減となった。


(2) 2月の完全失業率(季節調整値)は前月と比べ0.2%ポイント上昇の4.7%となった。

男女別には、男性が5.0%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.2%(同0.1%ポイント上昇)となった。

2月の完全失業者(季節調整値)は、前月差8万人増の310万人(原数値は308万人、前年同月差22万人減)となった。

男女別には、男性が195万人(前月差7万人増)、女性が114万人(同1万人増)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、2月は非自発的理由による離職者は105万人(前年同月差25万人減)、自発的理由による離職者は115万人(同1万人増)、その他の理由による失業者は71万人(同2万人増)となった(第11表)。


(3) 2月の労働力人口(季節調整値)は、前月差19万人減の6649万人(原数値は6532万人、前年同月差7万人減)となった。

非労働力人口(季節調整値)は、前月差30万人増の4351万人(原数値は4456万人、前年同月差35万人増)となった。男女別には、男性が1411万人(前月差14万人増)、女性が2939 万人(同16万人増)となった。

労働力率(原数値)は、2月は59.4%(前年同月と比べ0.2%ポイント低下)となった。男女別には、男性が72.4%(前年同月差0.4%ポイント低下)、女性が47.1%(同0.1%ポイント低下)となった(第11表)。


(2) 有効求人(季節調整値)は、前月比1.0%減と2か月ぶりに減少し、有効求職者数(季節調整値)も同0.9%減と2か月ぶり減少となった。

有効求人倍率(季節調整値)は、上昇傾向で推移しており、2月は0.91倍(前月と同水準)となった。

新規求人(季節調整値)は、前月比2.8%増と3か月ぶりに増加した。

新規求職者数(季節調整値)は前月比1.9%減と3か月連続で減少した。

新規求人倍率(季節調整値)は、2月は1.48倍と前月より0.07ポイント上昇した第12表)。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、2月は一般は前月比4.2%増と3か月ぶりに増加し、パートについては前月とほぼ同水準(前月比0.0%減)となった。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比1.1%減と3か月連続で減少し、パートについても同7.5%減と3か月連続で減少した。


(3) 産業別にみると2月の就業者数(原数値)は、サービス業は前年同月差38万人増、教育,学習支援業は同19万人増、医療,福祉は同14万人増、卸売・小売業は同13万人増と増加したのに対し、運輸業同27万人減、建設業は同26万人減、製造業は同21万人減、飲食店,宿泊業は同2万人減、情報通信業が同1万人減、と減少した。

2月の新規求人(原数値)は情報通信業は前年同月比29.3%増、サービス業は同21.6%増、運輸業は同15.2%増、建設業は同12.0%増、飲食店,宿泊業は同11.8%増、医療,福祉は同10.5%増、卸売・小売業は同5.1%増、製造業は同2.8%増と増加したのに対し、教育,学習支援業は同5.0%減と減少した。


(4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、横ばいとなっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では1月(確報値)は前月比1.8%増の後、2月(速報値)は同1.2%減となり、調査産業計では1月は前月比1.0%増の後、2月は同2.7%減となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-1%ポイント(12月調査より1%ポイント低下)と92年11月以来の不足超となり低下傾向にある(第13図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2004年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は15%となり7〜9月期と同水準となった(第14図)。また、2005年1〜3月期に実施予定の事業所割合は15%、2005年4〜6月期に実施予定の事業所割合は13%と低下が見込まれている。

内閣府「景気ウォッチャー調査」による2月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は54.2で前月を1.7ポイント上回った。


4 賃金・労働時間


(1) 2月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は274,742円で、前年同月比0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.4%増、パートタイム労働者は同1.4%減となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.2%減(一般労働者同0.1%増、パートタイム労働者同1.4%減)となったほか、所定外給与は同0.9%増、特別給与は同18.2%増となり、実質賃金は同0.5%増となった(第15図)。

なお、2004年年末賞与は、前年比2.7%増と8年ぶりの増加となった。


(2) 2月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は147.6時間で、前年同月比1.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.1%減、パートタイム労働者は同2.1%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は137.3時間で前年同月比1.4%減(一般労働者同1.3%減、パートタイム労働者同2.3%減)、所定外労働時間は10.3時間で同横ばいとなった。なお、月間出勤日数は19.2日で前年同月差は0.3日減となった。

2月の製造業の所定外労働時間(速報)は16.0時間で、前年同月比0.6%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.5%増、100〜499人規模で同1.2%増、30〜99人規模で同2.4%減、5〜29人規模で同横ばいとなった(第16図)。


4月の主要変更点

月例労働経済報告参考表


データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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