○毎月勤労統計調査全国調査で作成している指数等の解説(平成22年3月版)
1 指数の作成
毎月勤労統計調査では、雇用、賃金及び労働時間の各調査結果の時系列比較を目的として、基準年の平均(以下「基準数値」という。)を100とする指数を作成している。
2 指数の算式
各月の指数は、実質賃金指数を除き次の算式によって作成している。
各月の指数 = |
各月の調査結果の実数 |
× 100 |
基準数値 |
指数と各月の調査結果の実数との対応は次のとおりである。
指数の種類 |
各月の調査結果の実数 |
常用雇用指数
現金給与総額指数
きまって支給する給与指数
所定内給与指数
総実労働時間指数
所定内労働時間指数
所定外労働時間指数 |
各月の本月末常用労働者数
各月の1人平均現金給与総額
〃 きまって支給する給与額
〃 所定内給与額
〃 総実労働時間数
〃 所定内労働時間数
〃 所定外労働時間数 |
実質賃金指数の算式
賃金の購買力を示す指標として、実質賃金指数を次の算式によって作成している。
各月の実質賃金指数= |
各月の(名目)賃金指数 |
×100 |
各月の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合) |
上記の算式により作成された指数に基づいて、前年同月比等の増減率を計算している。
3 指数の年平均等
指数の年平均、年度平均、半期平均及び四半期平均(以下「年平均等」という。)は、全て、各月の指数の単純平均により算出している。なお、実質賃金指数の年平均等は、名目賃金指数及び消費者物価指数のそれぞれについて、年平均等をとったものの比率で算出する。
4 指数の基準時
現在の指数の基準時は、平成17年(2005年)である。
5 指数の改訂
これらの指数は、(1)基準年の変更に伴う改訂(以下「基準時更新」という。)、(2)30人以上規模事業所(以下「第一種事業所」という。)の抽出替えに伴う改訂、という2つの事由で過去に遡って改訂する。
(1) 基準時更新
基準時更新とは、指数の基準年を西暦年の末尾が0又は5の付く年に変更する改訂のことをいい、5年ごとに行うものである(昭和56年3月20日統計審議会答申に基づく)。この基準時更新では、作成している指数の全期間にわたって改訂を行う。ただし、実質賃金指数を除き、増減率は改訂しない。
(2) 第一種事業所の抽出替えに伴う改訂(ギャップ修正)
本調査では、定期的に第一種事業所の抽出替え(調査対象事業所の入れ替え)を行ってきており、その際に調査結果に時系列的なギャップが生じるおそれがある。このため、過去の指数について、修正する処理を適宜行うことでより正確な時系列比較を行うことが可能と考えられるときは、指数を修正することとしている。この修正を通常、ギャップ修正と呼んでおり、原則として、第一種事業所の抽出替えに併せて実施している。
ギャップ修正の基本的な考え方は、以下のとおりである。
[1] 第一種事業所の抽出替え(新母集団枠に基づくもの)実施月の新サンプルによる調査結果が、最新の母集団情報を反映したより正確な水準とみなす。
[2] 一方、旧サンプルは、調査対象として数年間固定していることから、調査対象の陳腐化(相対的に開設時期の古い事業所ばかりが対象となり、新設された事業所の状況が反映されにくい等の問題点がある。)により、集計結果が正確な母集団の状況から少しずつずれてきたとみなす。
[3] このずれは、前回のギャップ修正以降に生じたものであり一定の割合でずれが累積してきたとみなし、過去に遡って少しずつ調整する。
賃金・労働時間指数を例に取れば、第一種事業所の抽出替え実施月において、旧サンプルと新サンプルとの調査を行い、新サンプルによる調査結果をより正確と考えられる水準とみなす。この水準と現行の指数の水準との間に生じるギャップについて、それをなくすために過去に遡って指数を修正する。
なお、指数を作成していない所定外給与及び特別に支払われた給与並びに夏季・年末賞与の増減率についても、全て同様の考えで、このギャップの調整計算を行っている。ただし、毎月の絶対的な水準を表す実数値については、改訂を行わないこととしている。そのため、公表されている増減率と実数から計算した増減率は必ずしも一致しないので、時系列比較をする際には注意を要する。また、パートタイム労働者比率及び入・離職率はギャップ修正を行わない。
6 平成21年1月分調査における抽出替えに伴うギャップ修正の考え方
平成21年1月のギャップ修正は、事業所・企業統計調査(以下「センサス」という。)の平成18年結果に基づく第一種事業所の抽出替えを平成21年1月分調査において行ったことに伴い、常用雇用指数、賃金指数及び労働時間指数の改訂を行った。また、それに併せて、これまで集計に用いている母集団労働者数を、平成13年センサスに基づく労働者数から平成18年センサスに基づく労働者数に変更した。その結果、労働者の産業構成の変動によるギャップと新旧の調査結果のギャップとが生じることとなり、この両方のギャップを修正することとした。
各指数の改訂の考え方は以下のとおりである。
(1) 常用雇用指数(就業形態計)
常用雇用指数については、従来、センサスの常用雇用者数をベンチマーク(正しい水準と考え、これに同一時点の毎月勤労統計調査の推計常用労働者数が合致するようにギャップ修正する)としており、前回のベンチマーク設定時点以降の期間の指数についてギャップ修正を行っている。
平成21年1月分の修正においては、ベンチマークを平成13年センサス(平成13年10月1日現在)から平成18年センサス(平成18年10月1日現在)に変更したことから、平成13年10月分以降についてギャップ修正を行う。
以下に、指数の修正方法を示す。
ア まず、平成18年センサスの常用雇用者数と毎月勤労統計調査の推計常用労働者数とのギャップを
G1(ギャップ率)= |
平成18年センサスの常用雇用者数 |
平成18年9月分本月末推計常用労働者数 |
として、平成13年10月分から平成18年9月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)× {1+ |
n |
(G1−1)} |
60 |
ここで、nは、平成13年10月から当該月までの月数とする(平成13年10月;n=1、平成18年9月;n=60)。
また、このギャップ率G1を用いて、平成18年10月分から平成20年12月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)×G1
さらに、この修正した指数の平成17年平均が100となるように、指数作成開始時点から平成20年12月分までの指数を次式により修正するとともに、基準数値を変更する。
I”=I’(修正後指数) × |
1200 |
修正後の平成17年各月の指数の合計 |
変更後基準数値=変更前基準数値× |
修正後の平成17年各月の指数の合計 |
1200 |
(2) 一般・パートタイム労働者別常用雇用指数
一般・パートタイム労働者別常用雇用指数は、基本的には、(1)の常用雇用指数(就業形態計)のギャップ修正の考え方と同様であるが、平成21年1月分について、新母集団労働者数を用いて新・旧の両サンプルそれぞれの集計を行った場合、旧調査結果と新調査結果とでは前月末の一般・パートタイム労働者数の推計値にギャップが生じるため、上記(1)の修正に加えて、このギャップについての修正を平成19年1月分以降の指数について行う。
以下に、パートタイム労働者の常用雇用指数の修正方法を示す(一般労働者の常用雇用指数の修正も同様)。
ア まず、平成13年10月分から平成18年9月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)× {1+ |
n |
(G1−1) } |
60 |
ここで、nは、平成13年10月から当該月までの月数とする(平成13年10月;n=1、平成18年9月;n=60)。G1は、上記(1)アにより算出したギャップ率。
また、このギャップ率G1を用いて、平成18年10月分から平成20年12月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)×G1
さらに、この修正した指数の平成17年平均が100となるように、指数作成開始時点から平成20年12月分までの指数を次式により修正するとともに、基準数値を変更する。
I”=I’(修正後指数) × |
1200 |
修正後の平成17年各月の指数の合計 |
変更後基準数値=変更前基準数値× |
修正後の平成17年各月の指数の合計 |
1200 |
イ 上記アにより修正された指数から逆算された平成20年12月末の推計パートタイム労働者数と、平成21年1月分の新調査結果による前月末の推計パートタイム労働者数との間にギャップがあるため、
G2(ギャップ率)= |
平成21年1月分新調査結果による前月末パートタイム労働者数 |
アにより修正された指数から逆算された平成20年12月分本月末パートタイム労働者数 |
をギャップとして、平成19年1月分から平成20年12月分までの指数を次式により再度修正する。
I’”=I” × {1+ |
n |
(G2−1)} |
24 |
ここで、nは、平成19年1月から当該月までの月数とする(平成19年1月;n=1、平成20年12月;n=24)。
(3) 賃金・労働時間指数
賃金・労働時間指数については、ギャップ修正の基本的な考え方に従い、前回のギャップ修正実施月の翌月である平成19年2月分に遡って指数の修正を行う。
以下に、賃金・労働時間指数の修正方法を示す。
抽出替えに伴うギャップを、
G(ギャップ率)= |
平成21年1月分新調査結果 |
平成21年1月分旧調査結果 |
として、平成19年2月分から平成20年12月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)× {1+ |
n |
(G−1)} |
24 |
ここで、nは、平成19年2月から当該月までの月数とする(平成19年2月;n=1、平成20年12月;n=23)。
一般・パートタイム労働者別の賃金・労働時間指数についても同様の方法で修正する。
(注)賃金指数については、いずれの指数についても「きまって支給する給与」のギャップ率を用いる。
(4) 実質賃金指数
実質賃金指数については、上記(3)で(名目)賃金指数を修正した後、次式により修正する。
I’(修正後実質賃金指数)= |
(3)による修正後の(名目)賃金指数 |
×100 |
消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合) |
(5) 増減率の改訂
ギャップ修正を行った指数により、増減率を再計算する。
すなわち、常用雇用指数については、平成13年10月分以降、賃金・労働時間指数については、平成19年2月分以降について改訂する。
なお、指数を作成していない所定外給与及び特別に支払われた給与並びに夏季・年末賞与の増減率についても、全て同様の考えで、このギャップの調整計算を行い、改訂する。
7 指数以外の指標の作成
(1) 労働異動率
以上の指数のほかに、雇用の流動状況を示す指標として労働異動率を作成している。その算式は次に示すとおり、月間の増加労働者数又は減少労働者数を月初の労働者数(前月末労働者数)で除した百分比をそれぞれ、入職率、離職率としている。
入(離)職率 = |
月間の増加(減少)労働者数 |
×100 |
前月末労働者数 |
(2) パートタイム労働者比率
パートタイム労働者比率とは、調査期間末のパートタイム労働者数を全労働者数(本月末労働者数)で除した百分比をいい、次の算式によって作成している。
パートタイム労働者比率 = |
本月末のパートタイム労働者数 |
×100 |
本月末の全労働者数 |
8 指数等の季節調整
(1) 季節調整の方法
作成している指数等のいくつかの系列については、季節調整値(以下「季調値」という。)を作成している。季節調整には、センサス局法(X-12-ARIMAのなかのX-11デフォルト)を用いている。
なお、実質賃金指数及び入・離職率の季調値は、次の算式により算出したものをそれぞれの季調値としている。
季調済実質賃金指数= |
季調済名目賃金指数 |
×100 |
季調済消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合) |
季調済入(離)職率= |
季調済月間の増加(減少)労働者数 |
×100 |
季調済前月末労働者数 |
(2) 季調値の再計算の頻度及び対象期間
季調値は、年1回、毎年12月分までのデータが揃った時点で再計算し、原則として、1月分結果速報公表時に再計算の対象とした全期間の季調値を改訂している(季調替え)。
季調値の計算の対象とする期間は、原則として、指数作成開始時点から前年の12月分までであるが、指数作成開始時点が昭和29年以前である系列については、昭和30年1月分を始期としている。なお、事業所規模30人以上の実質賃金指数については、全て、昭和45年1月分を始期としている。
また、再計算の対象となった期間以降の季調値の作成には、季調値の再計算の際に計算される予測季節要素を用いている。
9 平成22年1月分からの表章産業の変更
(1) 表章産業の変更について
平成22年1月分結果速報から、平成19年11月に改定された日本標準産業分類(以下、「新産業分類」という。)に基づいて結果の公表を行っている。新産業分類に基づく表章産業は、別表1「毎月勤労統計調査全国調査における表章産業一覧」(PDF:158KB)に示すとおりである。
(2) 平成21年以前の結果との接続について
日本標準産業分類(平成14年3月改訂)(以下、「旧産業分類」という。)に基づいて表章している平成21年以前の結果との接続については、平成18年事業所・企業統計調査から把握される常用労働者数の新・旧間の変動を基準として、その変動が3%以内に収まる対応(別表1の「旧産業との接続」が◎、○、△、▲である対応)を単純に接続させている。その際、指数を作成する区分(後述の「10 指数等の作成状況」を参照)については、対応する旧産業分類で使用した基準数値をそのまま引き継いで平成22年1月分以降の指数を作成している。
(3) 平成22年1月分結果の旧産業分類に基づく集計について
時系列比較の便を図るため、平成22年1月分結果については参考値として旧産業分類に基づく集計を行い、その原表を政府統計の総合窓口(e-stat)(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011791)に掲載している。
10 指数等の作成状況
指数等の作成状況は、別表2「毎月勤労統計調査全国調査における指数等の作成状況」に示すとおりである。
なお、大分類及び中分類等のうち、旧産業分類と接続しない産業(別表1の「旧産業との接続」が×である産業)については、指数は基準時(現在は平成17年(2005年))を変更するまでの間作成しないが、増減率は実数を基に平成23年1月分から作成する。また、これらの産業の季節調整値については、当分の間作成しない。
11 公表
調査結果は、原則として調査月の翌月末の午前10時30分に、速報として公表している。さらに、確報を調査月の翌々月中旬の午前10時30分に公表している。
また、調査結果は、厚生労働省のWebページ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/index.html)にも掲載している。さらに、『毎月勤労統計調査月報−全国調査』及び『毎月勤労統計調査年報−全国調査』でも閲覧できる。
公表日程については、公表資料及びWebページに掲載している。
12 問い合わせ先
調査結果に関する照会については、厚生労働省大臣官房統計情報部雇用統計課企画調整係(Tel:03−5253−1111 内線7609、7610)で対応している。
参考 平成19年1月分調査における抽出替えに伴うギャップ修正の考え方
平成19年1月のギャップ修正は、事業所・企業統計調査(以下「センサス」という。)の平成16年結果(民営事業所のみを調査)が公表されたことに基づく第一種事業所の抽出替えを平成19年1月分調査において行ったことに伴って、指数の改訂を行った。
また、同時に賃金指数、労働時間指数及び雇用指数について基準年を平成17年(2005年)に変更した。
各指数の改訂の考え方は以下のとおりである。
(1) ギャップ修正
賃金指数、労働時間指数及び実質賃金指数について、新旧の調査結果のギャップの修正を、指数作成開始年から平成18年12月までの期間について行う。
(a) 賃金・労働時間指数
賃金・労働時間指数については、抽出替えに伴うギャップを、
G(ギャップ率)= |
平成19年1月分新調査結果 |
平成19年1月分旧調査結果 |
として、指数作成開始年から平成18年12月分までの指数を次式により修正する。
I’(修正後指数)=I(修正前指数)× G
ただし、賃金指数については、いずれの指数についても「きまって支給する給与」のギャップ率を用いる。
(b) 実質賃金指数
実質賃金指数については、上記(a)で(名目)賃金指数を修正した後、次式により修正する。
I’(修正後実質賃金指数)= |
(1)(a)の修正後の(名目)賃金指数 |
×100 |
消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)(平成12年基準) |
(2) 指数の基準時更新
(a) 賃金・労働時間指数
指数作成開始年から平成18年12月までの指数(平成12年基準、(1)の改訂後のもの)を、平成17年平均の指数が100になるように次式により改訂する。
I”(平成17年基準)=I’(修正後指数)× |
1200 |
(1)で修正した平成17年各月の指数の合計 |
(b) 実質賃金指数
実質賃金作成開始時点から平成18年12月までの実質賃金指数を次式により改訂する。
I’(修正後実質賃金指数)= |
(2)(a)の修正後の(名目)賃金指数 |
×100 |
消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)(平成17年基準) |
(c) 常用雇用指数
指数作成開始年から平成18年12月までの指数(平成12年基準)を、平成17年平均の指数が100になるように次式により改訂する。
I”(平成17年基準)=I(平成12年基準)× |
1200 |
平成17年各月の指数(平成12年基準)の合計 |
(3) 増減率
全期間の指数を一律に修正する処理を行っているため、平成18年12月までの対前年同月増減率などの各増減率は、実質賃金指数を除き改訂しない。実質賃金指数の増減率は、平成17年12月(平成17年平均、平成17年度平均等を含む)までは改訂せず、それ以降の期間については、(2)(b)において改訂した後の指数(平成17年基準)により再計算を行う。
なお、指数を作成していない所定外給与及び特別に支払われた給与並びに夏季・年末賞与の増減率についても、全て同様の考えで、対前年同月増減率などの各増減率は改訂しない。
(4) 平成17年基準数値変更
指数のギャップ修正や基準時更新を行ったことに合わせて、平成19年1月からの指数計算に用いる基準数値を変更する。
(a) 賃金・労働時間
以下の式により、新基準数値(平成17年基準)を算出する。
新基準数値(平成17年基準)= |
平成17年の各月の修正後実数の合計 |
12 |
ここで、「平成17年の各月の修正後実数」とは、平成17年の各月の調査結果実数値に(1)で算出したG(ギャップ率)を乗じた実数である。
(b) 常用雇用
以下の式により、新基準数値(平成17年基準)を算出する。
新基準数値(平成17年基準)= |
平成17年の各月の実数の合計 |
12 |