労災保険事業月報及び主な用語の説明
1 労災保険事業月報の大要
この労災保険事業月報(以下「月報」という。)は、労災保険事業の運営状況を把握するため、厚生労働省労働基準局労災補償部労災保険業務室、都道府県労働局及び労働基準監督署で作成する各種データを一元的に集計して毎月一回発表する業務統計で、主な統計事項は、「保険給付支払状況」、「保険料徴収状況」及び「その他業務に付随する事項」である。
2 主な用語の説明
この月報で用いている主な用語は次のとおりである。
(1) 保険給付関係
イ 療養補償給付
労働者が業務上の事由により負傷し、又は疾病にかかった場合に行われる療養給付で、現物給付である療養の給付が原則であるが、例外的に療養の費用の支給が行われることがある(労災法第7条、第12条の8第1項第1号及び第13条参照)。
なお、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった場合には、療養給付として療養補償給付と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第1号及び第22条参照)が、この月報では、療養補償給付と療養給付とをあわせて「療養補償給付」として集計している。
ロ 休業補償給付
労働者が業務上の事由による負傷又は疾病の療養のため労働することができず、そのため休業し、賃金を受けない日の第4日目から支給される給付で、その額は、一日につき、当該労働者の給付基礎日額の100分の60に相当する額である(労災法第7条、第12条の8第1項第2号及び第14条参照)。
なお、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった場合には、休業給付として休業補償給付と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第2号及び第22条の2参照)が、この月報では、休業補償給付と休業給付とをあわせて「休業補償給付」として集計している。
ハ 障害補償給付
労働者の業務上の負傷又は疾病が治った場合において、身体に一定の障害が残存するときに行われる給付で、その種類には、障害補償年金と障害補償一時金とがある(労災法第7条、第12条の8第1項第3号及び第15条参照)。
(イ) 障害補償年金
障害の程度が最も重い障害等級第1級から第7級までの障害を残した者に対し、その障害の存する期間支給される。
給付の額は、障害等級に応じ下表のとおりである。
障害等級 |
給付の額 |
障害等級 |
給付の額 |
第1級 |
当該障害の存する期間1年につき |
313日分 |
第5級 |
当該障害の存する期間1年につき |
184日分 |
第2級 |
給付基礎日額の同 |
277日分 |
第6級 |
給付基礎日額の同 |
156日分 |
第3級 |
同 |
245日分 |
第7級 |
同 |
131日分 |
第4級 |
同 |
213日分 |
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なお、障害補償年金を受ける権利を有する者の請求に基づいて当該障害等級に係る前払限度額の範囲内で給付基礎日額の200日分きざみの額(下表の右欄の額)が一時金で前払いされる(労災法第59条及び労災則附則第24項乃至第30項参照)。
障害等級 |
給付の額 |
第1級 |
給付基礎日額の |
200・400・600・800・1,000・1,200・1,340日分 |
第2級 |
同 |
200・400・600・800・1,000・1,190日分 |
第3級 |
同 |
200・400・600・800・1,000・1,050日分 |
第4級 |
同 |
200・400・600・800・920日分 |
第5級 |
同 |
200・400・600・790日分 |
第6級 |
同 |
200・400・600・670日分 |
第7級 |
同 |
200・400・560日分 |
(ロ) 障害補償一時金
障害の程度が前記(イ)に比べて軽い障害等級第8級から第14級までの障害を残した者に対して支給される。
給付の額は、障害等級に応じ次表のとおりである。
障害等級 |
給付の額 |
障害等級 |
給付の額 |
第8級 |
給付基礎日額の |
503日分 |
第12級 |
給付基礎日額の |
156日分 |
第9級 |
同 |
391日分 |
第13級 |
同 |
101日分 |
第10級 |
同 |
302日分 |
第14級 |
同 |
56日分 |
第11級 |
同 |
223日分 |
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また、障害補償年金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者に支給された障害補償年金の額及び障害補償年金前払一時金の額の合計額が、当該障害等級に応ずる一定額(下表の右欄)の額に満たない場合には、その差額が一時金で支給される(労災法第58条参照)
障害等級 |
給付の額 |
障害等級 |
給付の額 |
第1級 |
給付基礎日額の |
1,340日分 | 第5級 |
給付基礎日額の |
790日分 |
第2級 |
同 |
1,190日分 |
第6級 |
同 |
670日分 |
第3級 |
同 |
1,050日分 |
第7級 |
同 |
560日分 |
第4級 |
同 |
920日分 |
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なお、労働者の通勤による負傷又は疾病が治った場合において、身体に一定の障害が残存するときは、障害給付として障害補償給付と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第3号、第22条の3、第61条及び第62条参照)が、この月報では、障害補償給付と障害給付とをあわせて「障害補償給付」として集計している。
ニ 遺族補償給付
労働者が業務上の事由により死亡した場合に、一定の範囲の遺族に対して行われる給付で、その種類には、遺族補償年金と遺族補償一時金とがある(労災法第7条、第12条の8第1項第4号及び第16条参照)。
(イ) 遺族補償年金
遺族補償年金は、労働者の死亡の当時、その収入によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で、一定の年齢又は障害の要件(妻については、年齢又は障害の要件はない。)に該当する者(遺族補償年金を受けることができる遺族)がある場合に、これらの者のうち法定の順位による最先順位者(遺族補償年金を受ける権利を有する者)に対して支給されるが、その額は、遺族補償年金を受ける権利を有する遺族及びその者と生計を同じくしている遺族補償年金を受けることができる遺族の人数の区分等に応じ、給付基礎日額の153日分に相当する額より最高245日分に相当する額である(労災法第16条の2及び第16条の3参照)。
なお、遺族補償年金を受ける権利を有する遺族の請求に基づいて、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分又は1,000日分に 相当する金額のうち、遺族の希望する額が一時金で前払いされる(労災法第60条及び労災則附則第31項乃至第34項参照)。
(ロ) 遺族補償一時金
労働者の死亡の当時、遺族補償年金を受けることができる遺族がいないときは、給付基礎日額の1,000日分に相当する額の一時金が支給される(労災法第16条の6第1項第1号及び第16条の8第1項参照)。また、遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他に遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族補償年金の額及び遺族補償年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たないときは、その差額が一時金で支給される(労災法第16条の6第1項第2号参照)。
なお、労働者が通勤により死亡した場合には、遺族給付として遺族補償給付と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第4号、第22条の4及び第63条参照)が、この月報では、遺族補償給付と遺族給付とをあわせて「遺族補償給付」として集計している。
ホ 葬祭料
労働者が業務上の事由により死亡した場合に、葬祭を行う者に対し支給される給付で、その額は、31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分)である(労災法第7条、第12条の8第1項第5号、第17条及び同法施行規則第17条参照)。
なお、労働者が通勤により死亡した場合には、葬祭給付として葬祭料と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第5号、第22条の5及び同法施行規則第18条の11参照)が、この月報では、葬祭料と葬祭給付とをあわせて「葬祭料」として集計している。
ヘ 傷病補償年金
業務上の事由により負傷し、又は疾病にかかり療養補償給付を受けている労働者が、療養開始後1年6箇月を経過しても治らず、かつ、その障害の程度が傷病等級第1級から第3級に該当する場合に、その障害の状態の存する期間支給される(労災法第7条、第12条の8第1項第6号、同条第3項及び第18条参照)。
給付の額は、傷病等級に応じ次表のとおりである。
傷病等級 |
給付の額 |
第1級 |
当該障害の状態の存する期間1年につき給付基礎日額の |
313日分 |
第2級 |
同 |
277日分 |
第3級 |
同 |
245日分 |
なお、通勤により負傷し、又は疾病にかかり療養給付を受けている労働者が、療養開始後1年6箇月を経過しても治らず、かつ、その障害の程度が傷病等級第1級から第3級に該当する場合には、傷病年金として傷病補償年金と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第6号及び第23条参照)が、この月報では、傷病補償年金と傷病年金とをあわせて「傷病補償年金」として集計している。
ト 介護補償給付
労働者が業務上の事由により被災し、障害補償年金又は傷病補償年金の第1級若しくは第2級(うち精神神経障害又は胸腹部臓器障害)を受給する権利を有している者で、常時又は随時介護を要するものに対して支給される給付で、その額は、一定の上限額以内の、一箇月に要した介護費用の額である(労災法第7条、第12条の8第1項第7号、同条第4項及び第19条の2参照)。
なお、労働者が通勤により被災し、障害年金又は傷病年金の第1級若しくは第2級(うち精神神経障害又は胸腹部臓器障害)を受給する権利を有している者で、常時又は随時介護を要する者に対しては、介護給付として、介護補償給付と同一の内容の給付が行われる(労災法第7条、第21条第7号及び第24条参照)が、この月報では、介護補償給付と介護給付とをあわせて「介護補償給付」として集計している。
チ 二次健康診断等給付
労働安全衛生法に基づく健康診断のうち、直近のものにおいて、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査及びBMI(肥満度)の測定のすべての検査項目において、異常の所見があると診断された労働者に対し行われる給付である(安衛法第66条、労災法第7条及び第26条)。
リ その他
石綿による健康被害の救済に関する法律に基づく「特別遺族一時金」は「遺族補償一時金」に、「特別遺族年金」は「遺族補償年金」にそれぞれ含まれている。(平成18年度以降)
(2) 保険料関係
イ 徴収決定済額
労働保険加入者からの申告に基づき、政府が調査して納付すべく決定した労働保険料のうち労災勘定分の額をいう。
ロ 収納済額
前記イの徴収決定済額に対し保険加入者から納付があり、これを政府が収納した保険料(労災勘定分)の額をいう。
ハ 収納率
徴収決定済額に対する収納済額の割合をいう。その算式は次のとおりである。
(3) その他
イ 年金受給権者
傷病補償年金(傷病年金)、障害補償年金(障害年金)及び遺族補償年金(遺族年金)を受ける権利を有する者をいう。ただし、遺族補償年金(遺族年金)については、遺族補償年金(遺族年金)を受けることができる資格を有する遺族のうち法定の順位による最先順位者をいう。
ロ 労災就学等援護費
前記イの年金受給権者のうち一定の要件に該当する者及びその家族で、学校教育法第1条の学校(幼稚園及び大学以外の通信制のものを除く。)若しくは同法第82条の2の専修学校に在学する者又は公共職業能力開発施設において養成訓練を受ける者若しくは職業能力開発総合大学校において指導員訓練を受ける者であって、その学費等の支弁が困難であると認められるもの並びに保育を必要とする未就学の児童であり、かつ一定の要件に該当するものであって保育に係る費用の援護の必要があると認める者に対して労災就学等援護費が支給される。
ハ その他
この月報では、業種(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の別表第1の労災保険率表に掲げる事業の種類)の表示について、一部便宜上次例のような省略を行っている。
(例)機械装置の組立て又は据付けの事業→機械装置の組立て等の事業