付録

付録I

メイヨ・クリニックの推奨

　1999年3月、米国ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨ・クリニック・ニコチン依存症センターは、「効果的で科学的根拠に基づいた治療によって、世界的なたばこの流行」に取り組むための専門家会議を開催した。先進国と発展途上国双方から専門家が参加し、政府や医療従事者に対して、たばこに関係した疾病に罹患する可能性を減らすための一連の推奨（メイヨ・クリニックの推奨）を作成した。以下はその推奨である。

（1）	喫煙治療を公衆衛生上の優先課題にすべきである：政府は、たばこ依存症治療を公衆衛生上の重要な優先課題とすべきである。
（2）	禁煙治療の利用可能性を高めるべきである：収入、年齢、性別に関わらず、あらゆる喫煙者に、医療制度を通じて実用的な介入を行うべきである。児童や青少年による喫煙の予防や治療、家族の受動喫煙を減らすこと、適宜投薬を行うことなどもこの中には含まれる。たばこ依存症治療を薬物依存症治療や妊婦・母子医療サービスなどのプログラムに組み込むことで、この対策をさらに推進することができる。
（3）	喫煙状況と治療の提供状況について調査すべきである：医療従事者は喫煙状況を調査・記録し、質の高い総合保健医療に不可欠のものとして、たばこ依存症治療を行う。医療従事者は喫煙と治療について学び、有効性の実証された介入を行う責任がある。医療従事者、教育者、地域指導者らは、様々な機会を利用して、喫煙の防止と介入について情報を提供するべきである。
（4）	医療従事者は、禁煙することによって同僚や患者の手本となるべきである：政府や医療従事者団体は、禁煙治療や医療従事者の教育プログラムに資金を拠出することで、この対策を推進することができる。
（5）	効果の高い治療に資金供与をすべきである：政府や医療従事者団体は、効果が実証された治療法に必要な資金を拠出し、このような治療を広く受けられるようにしなければならない。また、禁煙治療を提供する制度を充実させ、人材能力を高めるには、治療を提供する医療従事者をトレーニングし、医学専攻の学生のカリキュラムを適切に開発・実行し、禁煙支援センターを設置し、中核的研究機関の創設・維持を促し、たばこ依存症治療や喫煙者が治療を受けるうえでの障害を取り除くなどの措置が必要である。
（6）	喫煙者に禁煙を促すべきである：政府、医療従事者、地域団体は共に、喫煙者にたばこをやめさせ、禁煙を継続する気を起こさせる責任を負っている。これら三者は、喫煙が健康に及ぼすリスクについて一般の人々を教育し、喫煙者に治療を受けるように勧め、治療が手ごろな費用ですぐに受けられるよう支援しなければならない。
（7）	たばこの加工、マーケティング、販売を監視し、規制すべきである：政府はたばこの使用状況を監視・報告し、たばこ製品の販売とマーケティングに課税し、規制すべきである。このような努力によって、喫煙を開始する機会を減らし、効果的な治療実施のための資金供給にも一役買うことができる。たばこ製品に対し責任ある規制を行うことは、喫煙を減らし、そのリスクを抑えることになる。規制当局は、健康に対するリスクを軽視し、禁煙意欲をそらして消費者に偽りの安心感を与えるようなマーケティング戦略を禁止しなければならない。また、たばこ製品の有害な影響を減らすため、あらゆる手を尽くさなければならない。政府は、たばこ製品に含まれるニコチンやその他の化学物質のデータに基づく正確な含有率を算出し、これらの製品の毒性や依存性を減らすため、各方面と協力すべきである。治療は、人々がたばこ製品を入手するのと同じくらい、またはそれ以上に簡単に受けられるようにしなければならない。
（8）	新しい治療法を開発すべきである：治療の研究や技術に投資することで、様々な集団、特に恵まれない集団における治療効果を高めることができる。児童や青少年など、これまで治療を受けられなかった集団のための効果的な治療法を開発することが重要である。

　たばこ依存症治療には、これら8項目の措置を全世界的に行うことが最も効果的である。たばこの消費と、それに関連した死亡や疾病は、いまや加速度的な増加を見せている。この流れを変えるためには、たばこ依存症治療を含めた包括的なたばこ規制への努力を進めていく以外に方法はないのである。

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付録II

2002年6月14〜15日に開催された、禁煙のための世界政策に関するWHOモスクワ会議参加者リスト