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各国の視点 |
たばこ規制のためのインフラや資源はそれぞれの国によって異なるが、効果的な禁煙政策の実行能力を強化し、確立するという目的は共通であり、各国の代表者が一堂に会し、禁煙のための効果的な政策と戦略をどう実行するかについてそれぞれの経験を発表し、手法についての情報交換を行った。具体的には、禁煙政策やベストプラクティスを実施するうえでの各国のこれまでの経験を発表し、国の禁煙政策やプログラム作成の課題と機会について話し合い、さらに包括的な禁煙政策についての実用的な提言を行った。
各国の取り組み
禁煙戦略が成功を収めた国の経験や実例は、本書の各章に記されている。これらは各国の参加者による発表をもとにしているが、各参加者からその経験についてより詳細な情報の入手を希望する場合は、その問い合わせ先を、その本書の付録IIに添付した。
共通の課題
モスクワ会議では、禁煙とたばこ依存症治療について様々な国の取り組みが発表されたが、そこでは以下のように、政策やプログラムを実行するうえでの共通の課題や機会がいくつも明らかになった。
・ | これまで禁煙やたばこ規制は、たばこ規制政策という関連において総体的に取り組むべき国家政策の一環としてではなく、他と関連性のない特殊な活動として扱われてきた。 |
・ | 医療従事者には、予防手段として禁煙とたばこ規制に取り組もうという意欲が欠如している。 |
・ | 禁煙やたばこ依存症治療への効果的な介入について、医療従事者が提供する情報が誤っている(そのため、医療従事者にベストプラクティスについての詳しい情報を伝えるとともに、その情報を正しく解釈する必要がある)。 |
・ | 医療従事者へのトレーニングが不十分なため、あらゆる医療施設で、禁煙やたばこ依存症治療についての効果的な介入が行われていない。 |
・ | 医療施設における通常の健康診断で、たばこ依存症かどうかを調べるための支援策が医療従事者に与えられていない。 |
・ | 禁煙やたばこ依存症治療への効果的な介入を実施するための資源や、政府による財政援助が欠如している。 |
・ | 薬物療法製剤を入手、利用できない国がほとんどである(NRTその他の禁煙のための薬剤の値段が高いため)。 |
・ | 禁煙のための薬剤の費用が、保険会社によってカバーまたは補助されていない。 |
・ | 禁煙やたばこ依存症治療への介入に関して、様々な部門間の調整が行われていない。 |
最終的に各国の専門家は、禁煙やたばこ依存症治療への様々な介入法をさらに拡大し、より幅広く利用できるよう、それぞれの国で以下の領域を改善すべきだという認識に達した(ただし、これに限るものではない)。
・ | 集団や個人への効果的な禁煙介入を支援するため、政治的な関与を深めるとともに、さらに多くの財政援助を行い、医療施設の資源を効率化して、たばこ依存症治療の実施をモニターし、評価する。 |
・ | たばこ規制法を導入し、場合によっては法の執行を厳格化する。 |
・ | 包括的なたばこ規制戦略という文脈の中で幅広い政策を用いて、禁煙とたばこ依存症治療に関する活動を強化・維持する。 |
・ | 全国委員会とたばこ規制局を設置し、人員と予算を与える。 |
・ | 禁煙介入を基本となる医療プログラムに組み込む。 |
・ | 保健医療センターを禁煙とたばこ依存症治療の支援センターとして登録し、機能させる。 |
・ | 禁煙の可能性を高める適切な措置として、ニコチン依存症を慢性疾患として治療することを医療従事者や患者に納得させる。 |
・ | たばこのない社会を作り、喫煙者に禁煙する意欲を起こさせるよう社会や家族の支援を促す動きを、マスコミを通じて展開・普及させる。 |
・ | モデルを作成して、あらゆる医療施設(特にプライマリーケア施設)の医療従事者に向けた技術の提供をはかる。 |
・ | 地域や国の指導者に社会の手本になってもらう。 |
・ | すべての公共の場や職場の禁煙化の法律の施行を支持する。 |
・ | 禁煙率を高める他の方法を開発する。 |
・ | 軽度や中程度の喫煙者など、特定の集団にもアプローチし、禁煙を成功させるための方法やどこで支援を得られるかなどの情報を与える。 |