チョウセンアサガオ
一般名 | チョウセンアサガオ (別名: キチガイナスビ、マンダラゲ) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ナス目 Solanales,ナス科 Solanaceae、チョウセンアサガオ属 Datura | ||||||||||||||||||||||||
学名 | Datura metel L. | ||||||||||||||||||||||||
英名 | downy thorn apple、horn-of-plenty | ||||||||||||||||||||||||
生育地 | インド原産で、江戸時代前期に薬用として導入され栽培されたが、現在はあまり栽培されていない。世界中の熱帯、亜熱帯、暖温帯広く分布。日本でも全国に分布する。 | ||||||||||||||||||||||||
形態 |
一年草で、茎は直立し、多くの枝にわかれ、淡緑色で高さ 1.5 m ほどになる。全草はほぼ無毛である。葉は互生するが、しばしば対生状になり長い柄をもち卵形から広卵形で長さ 8〜15 cm。先は尖り、全縁または深く切れ込んだ少数の鋸歯をもつ。8〜9月頃、葉のわきに短い花柄をもった大きな白色の花を開く。がくは長い筒形で先は 5 裂し、長さ約 4.5 cm,花冠は漏斗形で長さ 15〜20 cm、筒部長く、先は浅く 5 裂し、裂片の先端は尾状にとがる。5 本の雄しべと 1 本の雌しべをもつ。花が八重咲きで紫や黄色の色をつけるものもある。果実は球形のさく果で、径約 3 cm、太く短い多数のとげをもち、不規則に割れ多数の灰色のゴマに似て大きい種子をだす。
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毒性成分 |
ヒオスチアミンhyoscyamine, スコポラミン scopolamine などのトロパンアルカロイド。 トロパンアルカロイドは一般に副交感神経抑制作用,中枢神経興 奮作用を示す.アトロピンは副交感神経を遮断し,中枢神経を初め亢進,次いで麻痺させ,また血圧の上昇,脈拍の亢進,分泌機能の抑制,瞳孔の散大を起こ す.スコポラミンはアトロピンに類似の作用を示すが,アトロピンよりも散瞳作用が強く,分泌抑制作用が弱い。 |
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中毒症状 | 口渇,瞳孔散大,意識混濁,心拍促進,興奮,麻痺,頻脈 など | ||||||||||||||||||||||||
発病時期 | 経口後30分程度で口渇が発現し,体のふらつき,嘔気,倦怠感,眠気 | ||||||||||||||||||||||||
発生事例 |
(症例1)2008年1月、兵庫県内で、家の畑から引き抜いた植物の根を使って調理した「きんぴらごぼう」を食べた人(2名)が、約30分後にめまい、沈鬱となり、以後瞳孔拡大・頻脈・幻視等の症状を呈して入院するという食中毒事例が発生した。県の健康福祉事務所が調査したところ、「ごぼう」と「チョウセンアサガオの根」を間違えて採取・調理し食べていたことがわかった。 (症例2)2008年2月、福島県いわき市で一家 4 人がチョウセンアサガオの根をゴボウと間違えて混ぜご飯にして食べて中毒症状を起こし、一時入院したと発表した。4 人とも回復し、既に退院したという。 (症例3)2007年3月に福岡県遠賀保健福祉環境事務所管内で、1家族3名がチョウセンアサガオを誤食し、意識障害・幻覚などの症状を訴える食中毒が発生した。原因は、チョウセンアサガオの果実をオクラと間違え、かき揚にして食べたことによる。 (症例4)2006年4月、岡山県内で「きんぴらごぼう」を食べた人が食中毒症状を訴え入院した。県保健所が調査したところ、「ごぼう」と間違え「チョウセンアサガオの根」を食べたことがわかった。 (症例5)2005年6月、福岡県福岡市で野草を天ぷらとして調理し、近所にもおすそ分けしたところ、6名が中毒症状を呈した。救急隊により、患者の自宅から、チョウセンアサガオの実を天ぷらに揚げたものが発見され、これが原因と考えられた。気管挿管・胃洗浄などの処置の後、鎮静下で人工呼吸器等全身管理を行い、夫は病日11日、妻は同7日で後遺症なく退院した。 |
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患者数(過去5年間) |
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中毒対策 | 以前は薬用として盛んに栽培されていたが,最近では園芸品種としての栽培が多い.間違やすい野菜などの近くでの栽培をしない. | ||||||||||||||||||||||||
毒性成分の分析法 | 液体クロマトグラフィー (HPLC) 及び薄層クロマトグラフィー (TLC) によるアトロピン,スコポラミンの確認 参照(http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902285279027880) |
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その他の参考になる情報 |
2006年5月,沖縄県南城市において,自宅菜園でチョウセンアサガオを台木として,ナスを接木し,収穫したナスを使ってミートソースを作り,スパゲティにかけて食べたところ,家族2名が発症した.まず午後0時半頃妻(62)が摂食し,午後4時頃にふらつき,ろれつがまわらない,意識混濁,意味不明の話をするなどの症状を呈したため,夫に伴われて午後4時半頃医療機関を受診、治療を受けた.このとき輸液による経過観察のみで,症状が改善したため,7時頃帰宅した.同日8時頃,夫(67)は残りのスパゲッテイミートソースを摂食したところ,午後11時頃に同様の症状を発症,翌16日午前2時頃再度来院した. |
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間違えやすい植物 | ・ チョウセンアサガオの根とゴボウを間違える. ・ チョウセンアサガオの開花前のつぼみとオクラを間違える. ・ チョウセンアサガオの葉をモロヘイヤ,アシタバなどと間違える. ・ チョウセンアサガオの種子とゴマを間違える. |
作成:数馬恒平、紺野勝弘(富山大学和漢医薬学総合研究所)