二枚貝:アザスピロ酸
1 | 有毒種 | アザスピロ酸による食中毒はムラサキイガイ(図1)の摂食によるもの多いが、 ホタテガイ(図2)、アサリ(図3)、マガキ(図4)でも 毒化が報告されている。アザスピロ酸を産生する原因藻類としてプロトペディニウムProtopedinium属が推定されている[1]。
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2 | 中毒発生状況 | アザスピロ酸による中毒は、1995年オランダでムラサキイガイの摂食による食中毒が最初である[2]。 原因食品のムラサキイガイはアイルランドから輸入されたもので、その後、アイルランド、イギリス、イタリア、フランスなどヨーロッパで発生した。 これまでのところ、わが国では中毒例はない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 中毒症状 | アザスピロ酸による中毒症状は下痢性貝類によく似る。 吐気、嘔吐、腹痛、激しい下痢を起こす。症状は3〜18時間続くが、通常数日以内に回復する。死亡例はない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | 毒成分 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)名称および化学構造 | アザスピロ酸類 ![]()
図1 アザスピロ酸の構造 |
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(2)化学的性状 | アザスピロ酸は脂溶性のポリエーテルカルボン酸化合物で、熱に安定である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(3)毒性 | アザスピロ酸-1のマウスに対するLD50値は、腹腔内投与で200 μg/kgで、経口投与で500 μg/kgである[3]。 毒性は成分によって異なり,アザスピロ酸-2(110 μg/kg、マウス腹腔内投与)アザスピロ酸-3(140 μg/kg、マウス腹腔内投与)は アザスピロ酸-1より強い[4]。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(4)中毒量 | 不明 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5)作用機構 | アザスピロ酸をマウスに経口投与すると、マウスは小腸への液体の貯留や粘膜上皮細胞の損傷の他、リンパ組織の壊死、 TおよびBリンパ球の損傷、肝臓の脂肪化など多臓器に毒性を示した[3]。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(6)分析方法 | アザスピロ酸の検査、定量法は「食品衛生検査指針、理化学編」[5]に参考法として、マウス毒性試験法とLC/ESI-MS法が記載されている。 アザスピロ酸は中腸腺以外の筋肉部位にも顕著な量の毒が存在することがあるので、むき身全体を抽出用試料とする。マウス毒性試験法では、 試料をアセトンで抽出し、さらに抽出残さをメタノールで再抽出する。アセトン抽出液とメタノール抽出液を合一して減圧濃縮後、 酢酸エチルで溶媒分配する。酢酸エチル層を減圧濃縮後、n-ヘキサンと80%メタノールで溶媒分配し、メタノール層を減圧乾固させる。 これを1%Tweenに溶解してマウス毒性試験用検液とする。LC/ESI-MS法では、試料をメタノールで抽出する。溶媒留去後、クロロホルムと水で 溶媒分配し、クロロホルム層を固相カートリッジカラムでクリーンアップする。メタノール溶出画分を集め、窒素気流下乾固した後、 酢酸:メタノール:水(1:700:300)に溶解して、これをLC/ESI-MS用検液とする。アザスピロ酸の分析にはLC/MS/MS法が汎用される[6]。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(7)参考 | わが国では、アザスピロ酸に対する監視体制や規制値は定められていないが、EU向けに二枚貝を輸出する場合にはEUの規制値(可食部1 kg当たり160 μgを超えてはならない。)に従う。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 | 中毒対策 | 毒化した貝類の見極めは外見からはできず、一般的な調理加熱では毒素は分解しない。現時点では有効な中毒対策法はない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6 | 文献 |
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7 | 参考図書、総説 | 図書
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