二枚貝:神経性貝毒
1 | 有毒種 | 神経性貝毒による中毒は、ミドリイガイやマガキ(図1)など二枚貝類が問題になることが多い。 神経性貝毒は渦鞭毛藻Karenia brevisによって産生されるので、他の貝毒同様二枚貝類などプランクトンを餌とする動物は毒化し、 アメリカ合衆国では肉食性巻貝の摂食で中毒が発生した。 ![]() (図1 マガキ) |
2 | 中毒発生状況 | 神経性貝毒による中毒は、アメリカやニュージーランドでときどき発生するが、他では問題になることは少ない。これまでのところ、 わが国では中毒例はない。 |
3 | 中毒症状 | 神経性貝毒による中毒症状は、口内のしびれとひりひり感、運動失調、温度感覚異常などの神経障害を特徴とする。 食後1〜3時間で症状があらわれる。吐気、腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸障害を伴うこともある。死亡例はない。 |
4 | 毒成分 | |
(1)名称および化学構造 | ブレベトキシン ![]() 図2 ブレベトキシンの構造式 |
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(2)化学的性状 | ブレベトキシンは脂溶性のポリエーテル化合物で、ポリエーテル環10個からなるものをブレベトキシンAタイプ、 11個からなるものをブレベトキシンBタイプとする。 | |
(3)毒性 | ブレベトキシンBのマウスに対するLD50値は、腹腔内投与で190 μg/kgである。 | |
(4)中毒量 | 不明 | |
(5)作用機構 | ブレベトキシンは神経や筋肉の興奮性膜に存在するナトリウムイオンチャネルのサイト5に特異的に結合し、 細胞内へのナトリウムイオンの流入を増大させ、活性化持続を亢進する。 | |
(6)分析方法 | わが国では神経性貝毒およびブレベトキシンについて検査、定量法は定められていない。アメリカ合衆国ではマウス試験法が行われており、 試料の脂溶性抽出画分をマウスに腹腔内投与し、930分でマウスの半数を死亡させる毒量を1マウスユニット(MU)と定義する[1]。 マウス試験法にかわる方法として、ELISA法[2]やシナプトソームなどを用いるレセプター結合試験[3, 4]が開発されている。 毒成分の分析にはLC/MSが汎用される[5]。 | |
(7)参考 | わが国では、神経性貝毒(ブレベトキシン)に対する監視体制や規制値は定められていない。アメリカ合衆国では、貝100 g当たり20 MU(80 μgPbTx-2/100 g)を超えるものは食用不適とされ規制される。 | |
5 | 中毒対策 | 毒化した貝類の見極めは外見からはできず、一般的な調理加熱では毒素は分解しない。現時点では有効な中毒対策法はない。 |
6 | 文献 |
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7 | 参考図書 |
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