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自然毒のリスクプロファイル:魚類:ビタミンA

魚類:ビタミンA

1 有毒種

ハタ科のイシナギStereolepsis ishinagi が特に有名であるが、サメ、マグロ、カツオなどの大型魚も中毒原因となる。有毒部位は肝臓のみである。

イシナギ

(東京都市場衛生検査所提供)
イシナギ

2 中毒発生状況 わが国での最初の中毒記録は明治時代にみられる。魚類の肝臓が肝油原料として使用されるようになって中毒は途絶えた。ビタミンAとDの合成品が出現した1955年ごろから肝油の需要が減少して肝臓が市中に出回り、一連の中毒が発生した[1]。最近10年間(2006年-2015年)では3件(患者数26人、死者数0人)が発生している。
3 中毒症状 食後30分から12時間で発症し、激しい頭痛、発熱、吐き気、嘔吐、顔面の浮腫がみられ、下痢、腹痛を伴うこともある。特徴的な症状は2日目ごろから始まる顔面や頭部の皮膚の剥離で、軽症では顔面,頸部などの局所的な落屑に止まるが、重症の場合は落屑は全身に及ぶ。回復には20〜30日を要する[1-3]。
4 毒成分
(1)名称および化学構造

ビタミンA(ビタミンA以外の物質も中毒に関与しているといわれているが、詳細は不明)。ビタミンAの生物作用を示すすべての物質の総称で、レチノール(ビタミンA1、図1)、3-デヒドロレチノール(ビタミンA2、図2)およびこれらの誘導体を含む。

(2)化学的性状  
(3)毒性  
(4)中毒量 ビタミンAのヒトに対する中毒量は100万IU以上(IUとは国際単位のことで、1 IUは0.3 μgのビタミンAに相当)と推定されている[1]。イシナギの肝臓中のビタミンA含量は10-20万IU/g程度であるので、肝臓5-10 gの摂取で中毒する可能性がある。
(5)作用機構  
(6)分析方法  
5 中毒対策 イシナギの肝臓は1960年に食用禁止。
6 参考事項 食品安全委員会で「ビタミンAの過剰摂取による影響」というファクトシート(http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf#search)がまとめられている。
魚類のほかに、ホッキョクグマやアザラシの肝臓を摂取してもビタミンA過剰症は起こる[4-6]。すなわち,北極圏に生息するホッキョクグマ、やヒゲアザラシなどは、ヒトやラットの20倍から100倍もの高濃度のビタミンAを肝臓星細胞に貯蔵している[7, 8]。イヌイットはビタミンA中毒を経験的に知っており、ホッキョクグマの肝臓を決して食べない。また、かつて北極探検隊が、ホッキョクグマの肝臓をシチューにして食べて中毒した例もある。
7 文献
  1. 橋本芳郎: 魚貝類の毒. 東京大学出版会, 1977, pp. 121-130.
  2. 阿部 甫, 海沼 勝,近藤 茂: イシナギ肝臓による食中毒について. 食品衛生研究, 7 (3), 19-25 (1957).
  3. 海沼 勝: 魚の肝臓で皮膚のむける疾患. 食品衛生研究, 10 (11), 91-95 (1960).
  4. Rodahl K: Toxicity of polar bear liver. Nature, 164, 530-531 (1949).
  5. Rodahl K: Vitamin sources in Arctic regions. Norsk Polarinstitutt Skrifter, 91, 1-64 (1949).
  6. Rodahl K, Moore, T: The vitamin A content and toxixity of bear and seal liver. Biochem J, 37, 166-168 (1943).
  7. Senoo H, Wake K, Imai K, Kojima N, Matano Y, Miura M, Sato M, Roos N, Berg T, Norum KR, Blomhoff R: Vitamin A-storing system in mammals and birds in Arctic area -A study in the Svalbard archipelago-. Cells Hepatic Sinusoid, 7, 34-35 (1999).
  8. Higashi N, Senoo H: Distribution of vitamin A-storing lipid droplets in hepatic stellate cells in liver lobules -A comparative study-. Anat Rec, 271A, 240-248 (2003).

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