魚類:血清毒
1 | 有毒種 | ウナギ目魚類(ウナギ、マアナゴ、ウツボなど) ウナギ |
2 | 中毒発生状況 | わが国では食中毒の正式記録はない。 |
3 | 中毒症状 | ウナギの新鮮な血液を大量に飲んだ場合、下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされ、死亡することもあるといわれている[1]。 |
4 | 毒成分 | |
(1)名称および化学構造 | 特別な名称はない。英語ではichthyohemotoxinとかfish serum toxinと呼ばれているが、どちらも魚類血清毒という意味である。毒成分はタンパク質で、ウナギAnguilla japonicaの血清から陰イオン交換HPLC、ヒドロキシアパタイトHPLC、ゲルろ過HPLCにより精製されているが[2]、構造は明らかにされていない。なお、ウナギの血清は緑色をしているが、緑色色素(ビリベルジンを色素団とするリポタンパク質)は毒性とは無関係である[3]。 | |
(2)化学的性状 | ウナギの血清から精製された毒成分は、分子量10万、等電点6.1の単純タンパク質で、サブユニット構造を持たない[2]。ウナギ毒およびマアナゴ毒は、いずれも60℃、5分の加熱で完全に毒性を失う[4]。 | |
(3)毒性 | ウナギの血清から精製された毒成分のLD50:670 μg/kg(マウス、静脈投与)、450 μg/kg(サワガニ、体腔内投与)[2]。 血清のLD50(マウス):静脈投与ではウナギ0.30-0.74 ml/kg、マアナゴ0.37-0.74 ml/kg(両魚種の毒性は同程度で、血清1 mlで体重20 gのマウスを60-150匹殺すことができる)。経口投与では両魚種とも約15 ml/kg。[4] |
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(4)中毒量 | 不明である。ヒトの感受性がマウスと同じであると仮定すると、マウス経口投与でのLD50から体重60 kgのヒトの致死量はおよそ1000 mlと見積もられる。[4] | |
(5)作用機構 | 不明 | |
(6)分析方法 | 毒性試験(マウス静脈投与またはサワガニ体腔内投与)のみで、化学的分析方法はない。 | |
5 | 中毒対策 | 普通の食生活をしていれば、ウナギ目魚類の血清毒による食中毒は考えられない。興味半分にもウナギ目魚類の血液(血清)を飲まないこと。 |
6 | 参考事項 | 血液が目や口、傷口に入ると局所的な炎症が引き起こされる。目に入ると激しい灼熱感を覚えるとともに、結膜炎、流涙、まぶたの腫れが引き起こされる。目に異物が入った感じは数日残る。口に入ると灼熱感や粘膜の発赤、流涎が、傷口に入ると炎症、化膿、浮腫などが引き起こされる。こうした症例はウナギ調理人の間では有名で、ウナギ血清毒は食品衛生よりむしろ公衆衛生の点で問題。 |
7 | 文献 |
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