戻る  前ページ

(6)苦情・事故事例を活用したサービスの質の向上について

○ 利用者からの苦情やサービス提供現場で発生する介護事故は、介護サービス事業者が個々の事例について適正な処理がなされることが必要であるとともに、苦情や事故を通じてサービスの改善・向上を図っていくことが重要である。

○ このため、介護サービス事業者においては、従事者との雇用形態の如何に関わらず、従事者研修の充実を図るなどにより、利用者が苦情を言いやすい環境を整えるとともに、苦情や事故が発生した場合には、速やかに管理者への報告がなされ組織的な対応が行われる必要がある。また、同種の苦情や事故が再発しないための根本的な改善策が検討され、組織全体で実践されることが重要である。(参考1

○ また、介護サービス事業者において解決困難な事例について、地域における苦情相談委員会や事業者連絡協議会等との協働による苦情解決ルールを構築することも有効であると考える。(参考2

○ このようなことから、厚生労働省としては、平成14年度において、老人保健健康増進等事業により、苦情及び事故に関する対応手法等を具体化するための調査研究(補助先:(社)シルバーサービス振興会)を行うこととしている。
 また、平成15年度予算概算要求においては、「介護サービス適正実施指導事業」の中で「苦情・事故事例活用研修事業」として、介護サービス事業者の管理・監督者層を対象とした苦情対応及びリスクマネジメント手法を普及・定着させるための研修事業を新規施策として計上しているので、御了知願いたい。

(参考)「苦情・事故事例活用研修事業」の創設
      (14’予算:0千円 → 15’要求:57,975千円)

○ 各自治体におかれては、苦情・事故に対する積極的な取組みにご配慮いただくとともに、地域における苦情対応の仕組みや先進的に取り組んでいる事業者等について、参考となる事例があれば幅広に情報提供願いたい。


(参考1)

【介護サービス事業者における取組】

○ 訪問介護や通所介護など多くのサービス拠点で事業展開している民間企業の一例を見ると、当該企業においては、雇用形態に関わらず年1回の苦情対応研修の受講を義務づけており、全従業員が共通認識をもって利用者の苦情に対応している。また、各事業所で受け付けた苦情や事故は適宜本社に報告され、その対応状況についてのアドバイスが本社から事業所に伝達される。
 苦情の内容によっては、本社が直接利用者に対して対応する体制がとられ、企業が一丸となって利用者の苦情に対応している。また、苦情や事故を本社が分類整理し、毎月報告書として各事業所にフィードバックされサービスの質の改善・向上に活かされている。

○ 介護老人保健施設の一例を見ると、当該施設においては、利用者からの声をより多く集約し、サービスの向上に役立てるよう支援相談員等を加配し、苦情や事故の再発防止に向けて職員間の勉強会が適宜開催されており、改善すべき点については常に施設長に提案できる体制が整備されている。各種のマニュアルの作成についても、全ての職員が共有できるよう適宜見直しがなされている。



(参考2)

【東京都東久留米市の取組】

  • 人口約11万人、高齢化率15.9%
    指定事業所数:訪問介護(17)、通所介護(7)、福祉用具貸与(3)、居宅介護支援(21)

○ 東京都東久留米市においては、介護サービスに関する情報交換やサービス内容の改善等の諸課題が円滑に解決されるよう、「東久留米市介護サービス事業者協議会」が設置され、事務局を東久留米市健康福祉部介護福祉課が担い、協議会と保険者が共同で「苦情処理委員会」を設置している。

○ 当該苦情処理委員会は、地域で起きた問題は地域で解決するという基本的な考え方の下に、苦情解決の地域ルールをつくり、潜在的な苦情を自由化させることが委員会創設の発端であった。委員会では各事業所に寄せられた苦情や事故の対応方法などについて情報交換が行われており、事例を通じて改善策が研究されている。

○ また、各事業者の苦情処理担当者を支援できるよう、意見交換会等が実施されており、苦情対応の後、事業者に改善が見られない場合や、事故が発生した際に利用者が真相の究明を求めた場合には、民間福祉オンブズパーソンである「福祉ライオンくるめ」が登録事業者に対して調査を行う仕組みとなっている。(別添参照)



(別添)

介護保険導入下の東久留米市におけるサービスに関する苦情解決の仕組み
(PDF:102KB)



トップへ
戻る  前ページ