I 介護保険の実施状況と今後の課題について
介護保険制度の実施状況
介護保険制度については、市町村や事業者などの関係者の努力により、概ね順調に実施されており、サービス利用が増加するなど導入による効果が現れている。
要介護者数・サービス利用者数等 |
(1)現在の状況
1.被保険者数
○ 第1号被保険者(65歳以上) | 2,317万人(14年3月末) |
○ 第2号被保険者(40〜64歳の医療保険加入者) | 4,255万人(14年度見込) |
2.要支援・要介護認定者数
○ 要支援・要介護認定者数 298万人(14年3月末) |
(うち65歳以上 288万人(被保険者の12.4%)) |
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3.サービスの利用者数
○ 居宅介護(支援)サービス受給者数 | 162万人 |
○ 施設介護サービス受給者数 | 67万人 |
(特別養護老人ホーム | 32万人) |
(介護老人保健施設 | 24万人) |
(療養病床等 | 11万人) |
※ 14年3月報告分(14年1月サービス分) |
(2)要支援・要介護認定者数の状況
○ 要支援・要介護認定者の高齢者人口に対する比率は、上昇傾向にある。
要介護(支援)認定者率(高齢者人口比) |
○ 一方で、要支援・要介護認定者の平均要介護度は、若干下降傾向にある。
(3)サービス利用者数の状況
○ 介護保険制度の導入前後では、各自治体が実施した調査によれば、新たな利用者が3割から5割増加しているとの結果が出ている。
自治体名 | 福島県石川町 | 横浜市 | 名古屋市 | 鳥取県 | 岡山県津山市 |
増加率 | 48.2% | 30.9% | 29.5% | 47.1% | 49.2% |
※ 12年4月厚生労働省調査(96市町村)では新たな利用者が約23%増加。
○ また、制度の施行後、特に在宅サービスの利用者数が増えている。
(居宅・施設別の利用者数の推移)
(要支援・要介護認定者のうちサービス利用者の割合)
サービス利用の状況 |
(1)介護保険導入前後の比較
ア 全国ベースの利用量 |
○ 介護保険の施行により、サービスの利用量が増加している。
11年度月平均※1 | 12年11月 ※2 | 13年10月 ※2 | |
訪問介護 | 355万回 | 539万回(52%増) | 743万回(110%増) |
通所介護 | 250万回 | 340万回(36%増) | 437万回( 75%増) |
※1 | 平成12年度老人保健福祉マップの集計値。 |
※2 | 全国の各国保連の給付実績の集計値(サービス提供月ベース)。 |
イ 個人でみたサービス利用量の変化 |
○ 個人でみた場合でも、介護保険の施行により、7割近くの方がサービス利用量を増やしている。
サービス量が増加した人 | ほぼ同じ人 | サービス量が減少した人 |
67.5% | 14.8% | 17.7% |
(注) | 108保険者(定点市町村)の1,263人について、平成12年3月と7月とのサービス利用量の変化 |
なお、調査対象(1,263人)のうち、「利用料負担が重いためサービスを減らした」という方は32人(2.5%)と少なく、むしろ、介護保険の導入により従来からのサービス利用者の7割近くがサービスの利用を増やしている。
(2)介護給付費の支払状況(暫定集計値)
○ 福祉用具購入費など市町村が直接支払う費用を含む平成12年度の給付実績は、予算の85%強である。
また、平成13年3月以降の各月の国保連の支払実績は、予算の9割を超え、順調に推移している。
[国保連における支払状況]
(単位:億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注1) | 各国保連の支払実績として1割の利用者負担を除く介護給付費(9割分)を集計したもの。 |
(注2) | 福祉用具購入費、住宅改修費など市町村が直接支払う費用は除く。 |
(注3) | 合計欄の下段の括弧書きは、各月の日数(30.4日)で補正したもの。 |
○ また、給付費の内訳については、在宅サービスの割合が増えている。
(日数補正後) |
(3)サービス種類別の利用状況
○ サービス種類別にみると、特に訪問介護、通所介護、福祉用具貸与の利用が伸びている。
(在宅サービス種類別費用(億円)の推移)
※ 日数補正後。なお、平成13年12月までの短期入所については、振替利用分を含まない。
(在宅サービス種類別利用率(各サービスの利用者数/在宅サービス利用者総数)) ※ 平成14年1月審査分(介護給付費実態調査) |
(要介護度別・在宅サービス種類別利用率(各サービスの利用者数/在宅サービス利用者総数))
※ 平成14年1月審査分(介護給付費実態調査) |
(4)支給限度額に対する利用割合
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※ 平成14年1月審査分(介護給付費実態調査) |
介護サービス事業者の状況 |
○ 在宅サービス事業者の参入は12年4月の施行後も進んでおり、全国的にみたサービス事業所の総数は増加している。
一部の民間事業者にサービス拠点を削減する動きもあったが、施行後1年以上を経過し、こうした事業者の運営も軌道に乗ってきたものと見られる。
12年4月 | 14年4月 | |
訪問介護 | 9,185件 | 15,008件(63%増) |
通所介護 | 5,621件 | 9,921件(76%増) |
居宅介護支援 | 19,466件 | 23,321件(19%増) |
(注)WAM−NET掲載ベースの12年4月1日、14年4月1日の比較
保険料の徴収の状況 |
○ 高齢者の保険料徴収は、順調に行われており、13年10月からの本来額での徴収開始後も、高水準を維持している。
● 平成12年度の収納率(全国計) | 98.6% |
● 平成13年10月調定分の収納率(12月まで)(88市町村調査) | 98.9% |
○ なお、一部の市町村では、低所得の方の保険料の単独減免が行われている。
A 単独減免実施 市町村数 |
B うち3原則遵守 市町村数 |
B/A | |
12年10月1日現在 | 72市町村 | 4市町村 | 5.6% |
13年4月1日現在 | 139市町村 | 43市町村 | 30.9% |
13年10月1日現在 | 309市町村 | 191市町村 | 61.8% |
14年4月1日現在 | 431市町村 〔122(100%)〕 |
314市町村 〔123(100.8%)〕 |
72.9% |
(注)〔 〕は前回調査からの増加数
※ 低所得者への単独減免を実施している市町村数は431(全体の13.3%)であり、このうち3原則の範囲内で行っている市町村数は314。
昨年10月1日現在からの単独減免実施市町村の増加数は122であるが、3原則遵守市町村の増加数は123と多くなっている。
※ 3原則
(1)保険料の全額免除
(2)資産状況等を把握せず収入のみに着目した一律の減免
(3)保険料減免分に対する一般財源の繰入れ
による保険料の単独減免は、制度の主旨から不適当と考えている。
介護保険制度についての取組
(1)施行後指摘された課題への対応
○ 訪問介護の在り方 (→ 保険給付としての家事援助の範囲を周知)
○ 短期入所サービス (→ 訪問通所サービスとの支給限度額を一本化)
○ 要介護認定(痴呆性高齢者の評価の問題等) (→ 一次判定の在り方についての検討会や実態調査の実施。二次判定変更事例集の配布)
(2)介護サービスの質の向上に向けた取組
○ 痴呆介護の充実 (→ 全国3か所に高齢者痴呆介護研究センターを開設し、痴呆介護技術向上のための専門研修、痴呆介護の研究等を推進)
○ 特別養護老人ホームにおける全室個室・ユニットケア化 (下記)
○ ケアマネジメントの質の向上 (→ ケアマネジメントリーダーの養成・活動支援、現任研修の充実等を実施(14年度予算))
○ 介護サービスの評価の検討 (→ サービス選択のためのチェックリストの作成。痴呆性高齢者グループホームにおけるサービスの自己評価項目の参考例取りまとめ)
○ 福祉用具・住宅改修の普及・適切な活用の促進 (→ 関係者への研修の充実、身近な相談援助体制の整備(14年度予算))
○ 「身体拘束ゼロ作戦」の推進 (→ 推進会議の開催、介護現場用の手引き作成、都道府県推進会議・相談窓口設置等)
(3)介護サービスの基盤整備
○ 介護サービスの基盤整備は、ゴールドプラン21に基づき着実に推進。
○ 全室個室・ユニットケアを特徴とする新型特別養護老人ホームの整備を推進。(施設整備費補助(14年度予算〜)。なお、設置準備の状況を勘案して、当面、新型又は従来型のいずれかを選択可)
これに伴い新型特養の入居者については、低所得者に配慮しつつ、ホテルコストの負担を求める。(15年度〜)
○ ケアハウスについて、設置主体を民間企業等に拡大し、PFI制度を活用した公設民営型による整備を促進。(13年度第1次補正予算)
当面のスケジュール
事業計画関係 | 介護報酬関係 | その他 |
5月9日 介護保険事業計画策定のための基本指針の改定告示 6月 介護サービス量等の見込み(中間値)とりまとめ
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〜4月 審議第1ラウンド・関係事業団体ヒアリング 5月〜 審議第2ラウンド |
・要介護認定モデル事業
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7月 介護報酬骨格設定 | (〜3月 審査支払システムの設計変更) 8月 15年度予算概算要求 |
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10月頃 介護サービス量等の見込み(最終見込み値)とりまとめ 12月頃 最終見込み値の集計結果公表、ゴールドプラン21の見直し |
秋 介護報酬新単価の設定に向けての議論
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12月 15年度予算案決定 |
3月頃 介護保険事業計画の策定完了、保険料率の改正 |
1月 介護報酬新単価の諮問・答申 | |
4月 第2期事業期間スタート | 4月 介護報酬改定 | 4月 認定ソフト(改訂版)の使用開始 |