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水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項の見直しの検討について
(Q&A)(平成16年8月現在)

医薬食品局食品安全部基準審査課


問1 メチル水銀による影響を考えると、魚介類は食べない方がよいのですか。
 答
   魚介類は一般にヒトの健康に有益です。例えば、平成11年度漁業白書にも、「魚介類の脂質には、生活習慣病の予防や脳の発育等に効果がある高度不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれることが知られるようになってきている。また、魚介類や海草類が、カルシウムをはじめとする各種の微量栄養素の重要な摂取源になっていることがあらためて見直されている。」と記載されています。
 妊婦等にあっては、一定の注意が必要であると考えていますが、それ以外の方については、現段階で魚介類の水銀による健康への悪影響が懸念されるような状態ではないと考えています。


問2 何故、この時期に水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項の見直しを行うのですか。
 答
 1 平成15年6月、メチル水銀の毒性に関する資料、魚介類中の水銀濃度に関するデータ等に基づき、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会(以下「審議会」という。)において審議を行い、妊婦等を対象に水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項を公表したところです。

 2 その後、国際専門家会議(JECFA)において、発育途上の胎児を十分に保護するため、暫定的耐容週間摂取量(PTWI) 3.3μg/kgが1.6μg/kgに引き下げられ、また、米国、英国、アイルランド、オーストラリア及びEUにおいて、妊婦等への注意事項の発出あるいは改正が行われました。このようなことにかんがみ、前回の検討から1年が経過した現在、注意事項の見直しの検討を行うこととしたものです。
 その第1段階として、本年7月23日に食品安全委員会にリスク評価(食品健康影響評価)を依頼するとともに、8月17日に審議会において検討を始めたところです。


問3 今回の注意事項の見直しについて、今後の予定はどのようになりますか。
 答
 1 魚介類等に含まれるメチル水銀に関しては、7月23日、食品安全委員会にリスク評価を依頼しました。

 2 厚生労働省としては、食品安全委員会における議論と並行して、8月17日に審議会における注意事項の見直しについて検討を始めたところであり、あわせて、リスクコミュニケーションに努めたいことから、9月17日に意見交換会を実施する予定としております。


問4 今回、厚生労働省が食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼した事項は何ですか。
 答
 1 今回のメチル水銀のリスク評価に当たっては、通常、食品安全委員会に依頼している耐容量の設定に加え、ハイリスクグループ(健康への悪影響を受けやすいグループ)についても議論することを要望しました。

 2 これは、各国の注意事項を見ると、その対象者が妊婦のみである場合、授乳中の母親や乳幼児、小児も対象に含まれる場合など、必ずしも一致していないためです。

 3 なお、我が国では、平成15年の審議会における審議においては、母乳を通じた健康影響は無視できるとの意見を踏まえ、授乳中の母親については注意事項の対象とはしませんでした。また、乳幼児等もその対象としていません。


問5 現在議論されているメチル水銀の健康影響とはどのようなものですか。
 答
   メチル水銀は、非常に高いレベルでは水俣病などが報告されていますが、現在議論されているような低レベルで懸念される影響は感受性の高い胎児に対するものです。しかし、このレベルを超えたからといってすぐに明確に症状として現れるようなものではなく、様々な精密な検査によってはじめて検出されるようなもので、通常の社会生活をおくる上で支障をきたすようなものではないと報告されています。


問6 魚介類等による水銀の摂取量の試算が8月17日に公表されましたが、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。
 答
 1 魚介類等は、良質なたんぱく質を多く含み、飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等、健康的な食生活を営む上で重要な食材となっています。魚介類等はこのように利点が多い食材ですが、自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、特定の地域等にかかわりなく、一部の魚介類等については水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものも見受けられます。このため、水銀による胎児への悪影響を防ぐ観点から、妊婦等については魚介類等を通じた水銀の摂取に一定の注意が必要と考えられます。

 2 8月17日に公表した試算結果は、多くの仮定に基づくものであることをご理解いただきたいと考えます。厚生労働省としては、できるだけ速やかに注意事項の見直しを行いたいと考えておりますが、食品安全委員会の耐容量の評価や審議会による議論には一定の時間を要するものと考えています。それまでの間にあっては昨年公表した注意事項や今回公表した試算結果を参考に、例えば特定の魚介類等に偏ることなくバランスの良い食生活を送ることが大切と考えています。


問7 今回の注意事項の見直しでは、マグロについても注意事項の対象になるのですか。また、8月17日に公表された摂食量が昨年と異なるのはなぜですか。
 答
 1 マグロについては、平成15年6月の審議会において、いろいろなマグロに含有される水銀濃度、国民栄養調査から特別集計した我が国におけるマグロの摂食状況等について検討された結果、マグロの摂食を通じた水銀による健康影響は想定しがたいと評価されたため、注意事項の対象とはされませんでした。(平成15年6月3日に公表した「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」について(Q&A)問15参照

 2 しかしながら、マグロについてもその種類によって水銀含有量が高いものや低いものがあること等から、今回の見直しの検討においても議論の対象となると考えています。

 3 また、マグロの摂取量については、今回、マグロの摂食者の平均を見ると今回新たに公表した平成13・14年のデータと昨年用いた平成10・11・12年のデータとは大きな差はありません。しかしながら、より精密な評価を行う観点から、摂食者の平均ではなく、その悪影響が懸念される妊婦等を反映した20歳以上の女性の摂食量を用いることがより適当ではないかと考え、8月17日に公表した試算には、平成13・14年に調査した国民栄養調査における20歳以上の女性の平均摂食量のデータを用いたため、結果的に昨年のものとは異なっております。
 なお、刺身、鉄火丼等の形態で一度に多くのマグロを摂食される場合もあることから、一回分(いわゆる一人前)について新たに調査を行い、その結果に基づく試算も行っております。


(参考:水産物の栄養面での特徴(平成11年度漁業白書より抜粋))
水産物に含まれる成分と機能

エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)
 魚類、特にいわし、まぐろなど海産魚の脂質に多く含まれる脂肪酸の一種です。血栓を防ぐとともに血中のLDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、脳梗塞、心筋梗塞などの血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあります。さらに、DHAは、脳神経系に高濃度で分布し、情報の伝達をスムーズにするほか、脳の発育や視力の向上に関与しています。

タウリン
 たこ、いか、貝、えび、かに類などに多く含まれているアミノ酸の一種です。生活習慣病予防物質として注目されており、動物実験により高血圧の下降、血液中のコレステロールの低下など多くの生理作用が確認されています。

アスタキサンチン
 さけ、いくら、たい、えびなどの赤橙色の色素です。ビタミンEを上回る抗酸化作用を持つことが明らかにされており、活性酸素注)の作用による諸疾患を抑制することなどが期待されています。

注:活性酸素:呼吸により体内に取り入れられた酸素がエネルギーを生み出す過程でつくられる他の分子と結合しやすい状態の酸素分子。殺菌、解毒等の作用を持つ一方、老化、発がん、腎障害、動脈硬化、白内障などの促進にかかわる。



照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課(03-5253-1111 内線2488、2489)


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