食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前質問・意見について
(妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しついての意見交換会(東京会場))

  質問者 質問の内容 回答
1 行政機関
関係者
一般の方から相談も多く、水銀についても毛髪や尿中水銀を測定してほしいという依頼がきます。妊婦について尿中水銀濃度の指標値は作成されるのでしょうか?毛髪についてはいかがでしょうか? 食品安全委員会の食品健康影響評価では、15歳〜49歳女性の毛髪水銀濃度を見た場合、99.9%が10ppm以下であり、耐容量の算出の出発点となった11ppmを下回っていることが示されています。欧米でも妊婦の髪や尿の水銀濃度測定を勧めている国はないと承知しています。このようなことから、妊婦であっても髪や尿の水銀濃度の測定、その指標値の設定は必要ないと考えています。
2 食品等事業者 妊婦への周知を行うのが流通業を含めた食品事業者の責務なのか、産婦人科などの医療関係者の責任なのかを明確にしてほしい。妊婦以外には大丈夫だという情報が十分に行き届いていない中で、商品周りに告知文書を加えると、マイナスイメージのみが拡大していくことは間違いないと考えられるため。 注意事項(案)については、魚食のメリットに十分配慮し、妊婦が対象であることを明示した上で、妊婦にあっては一定の注意を払いつつ魚介類を摂食するよう留意して作成しています。厚生労働省としても、注意事項(案)を公表し、意見募集を行うとともに、リスクコミュニケーションを行い、正確な理解が得られるよう今後とも努めて参ります。
3 消費者 今回の見直しにより、より実態に近いデータに基づいた設定で評価、管理がされたものと捉えていますが、消費者の生活感覚からの実感は、他の汚染物質との複合汚染、交絡作用を考えるとき、平均値をとるのではなく、ハイリスクグループには最大値を基本とする視点で対象魚を指定、設定してほしいと思います。 注意事項(案)に示す「妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量の目安」については、1回に摂食する量が一般に80g程度(切身一切れ、刺身一人前にほぼ相当)であることを踏まえ、妊婦の体重やその変動、魚介類ごとの水銀摂取量のばらつき等の不確実性に配慮して作成しています。なお、食品健康影響評価では、複合暴露や交絡作用については研究結果に基づく知見がなく、検討に耐えうる知見が集積した時点で、リスク評価を行う必要があろうとされています。
4 食品等事業者 10年間の平均水銀摂取量が8.4μg/人/日と低いレベルであれば(厚生労働省資料)、「健康への悪影響はない」と主張することでよいのではないか。
細部にわたってコメントしてかえって問題を複雑にしているのではないか。
今回の見直し案でも示しているとおり、一般的な状況として胎児への影響が懸念されるような状況ではないと考えていますが、15歳〜49歳女性の水銀摂取分布を見た場合、必ずしも多くはないものの、食品健康影響評価に示される妊婦を対象とした耐容量を超えることが試算されていること(平成17年8月12日開催乳肉水産食品部会資料No.3ご参照)、同一週にこれらの魚介類を複数食べるような事例などいろいろな事例も考えられることなどから、今回の案をとりまとめたところです。
5 食品等事業者 食品安全委員会での食品健康影響評価の結果、また、先日行われた薬事・食品衛生審議会乳肉水産食品部会の結果を鑑み、妥当な見直しと評価します。
ただし、Q&A(案)等で、メチル水銀をわざわざ水銀に置き換えているところがありますが、無機の水銀はほとんど吸収されず、誤解を与えるおそれがありますので、最後までメチル水銀で表現を統一してほしいと思います。
また、前回の食品安全委員会主催の魚介類のメチル水銀に係る食品健康影響評価に関するリスクコミュニケーションにおいて、JECFAとの違いを丁寧に説明したにもかかわらず、その点の質問が多かった。今回のリスクコミュニケーションでそれが蒸し返されないことを期待します。
Q&Aの理解のしやすさの観点から、特段の必要がない場合にあっては「メチル水銀」とせず、単に「水銀」と記載しました。なお、この点についてはQ&Aの問1に注1として記載しています。
6 消費者 有機水銀問題は、水俣病以来の長期間の問題であり、事故や事故が予測される都度、事後処理的に政策が協議され、市町村の条例改正等が行われる実態がありますが、専門家集団の普遍的、総合的、時系列的研究結果と経過並びに今後の化学物質関係委員会の常時強化、企業等への周知徹底を含めて行政の指導と政策の実行をお願いしたい。
税金の無駄使いをなくし、外部監査(業務監査)をお願いします。
ご意見をいただき、ありがとうございます。
7 消費者 魚種毎の含有メチル水銀量は関係省庁のホームページをみてくださいと説明会などで聞かされるが、これは不親切。
通常の家庭の食卓で摂取される1週間分のメニューを具体的に10種類ほど例示してもらうとわかりやすい。総論の段階に止まっては不可。実生活の各論、具体的にどうするかについて説明してほしい。
説明会等においては、検討の概要をお示しするとともに、付属する関係資料に関しても同時に配布することとします。今回の注意事項は一定期間に摂食できる魚介類毎の量の目安をお示ししています。妊婦の方は、この量に注意しつつ、お好きな調理により摂食いただければと思います。なお、資料の量の多寡によって、一部省略せざるを得ない場合もあること、ご理解お願いします。
8 水産関係業者 12日公表された今回の注意事項(案)は、前回の注意事項に比べ「風評被害」防止の観点での配慮がなされており、その点評価させて頂きたいと思います。
現行制度では、リスク評価とリスク管理が別組織でそれぞれ議論がされ結論付けられていますが、双方の議論を参考に真の消費者(生産・流通を含めた)のためにどのような行政施策を行うかという総合的な判断を行うためのシステムの構築が必要と考えます。
リスク評価機関の科学的、公正中立な評価を受けて、リスク管理機関は、パブリックコメントやリスクコミュニケーションを通じ、広く国民の意見を踏まえた施策を行っているところであり、今後とも、このような対応を進めて参ります。
9 水産関係業者 前回の公表時には、消費者に魚そのものが危険であるかのような誤った理解等大きな影響が発生しました。特に、前回、事前に情報がなかったことから店頭で混乱しました。このため、早急に店頭で利用できるようなパンフレット等の作成配布をお願いします。 注意事項(案)については、魚食のメリットに十分配慮し、妊婦が対象であることを明示した上で、妊婦にあっては一定の注意を払いつつ魚介類を摂食するよう留意して作成しています。厚生労働省としても、注意事項(案)を公表し、意見募集を行うとともに、リスクコミュニケーションを行い、正確な理解が得られるよう今後とも努めて参ります。
また、注意事項の正しい理解を広くいただくためには、Q&Aの作成やリスクコミュニケーションのほか、妊婦の方々などへの情報提供に利用されるパンフレット等の作成が有用であると考えられますので、注意事項が確定した後、速やかにパンフレット等を作成することを検討しています。
10 水産関係業者 食品の安全と安心の徹底という国の政策を考えれば、その危険性が科学的な根拠に基づいて予測できるならば、当然、国民に知らせる義務があると思います。
しかし、魚の販売を業とする立場からいえば、公の発表には、もっともっと確実なデータを基に議論してからにしてほしかったと思います。新聞の記事を最後までよく読めば誰でもその真意は理解できますが、ごく一般的に考えて、魚=危いという観念が消費者に定着してしまうことが大きな問題です。
注意事項(案)については、魚食のメリットに十分配慮し、妊婦が対象であることを明示した上で、妊婦にあっては一定の注意を払いつつ魚介類を摂食するよう留意して作成しています。厚生労働省としても、注意事項(案)を公表し、意見募集を行うとともに、リスクコミュニケーションを行い、正確な理解が得られるよう今後とも努めて参ります。
11 消費者 まず、魚介類の含むメチル水銀について、情報がこのような意見交換会の場で公開討議されることは大変ありがたいことであると思っています。
ネットで公表された数値だけでなく、水産業関係者、販売業者、食の安全を考える消費者団体の方々のなまの声を聞いて、この問題について考えたいと思います。
私個人の意見としましては、先の世代を譲ることを考慮して暫定基準値の設定やその運用は厳しいものに、また、説明は実生活に沿ったわかりやすいものにすることを望んでいます。地方でイルカ肉やクジラ肉を勧められたことがありますが、含有水銀量が多いようです。観光客が食することを考えてこのことも取り上げて頂きたいと思います。
ご意見をいただき、ありがとうございました。
12 消費者 外国では、ハイリスクグループの範囲に16歳以下の子どもや授乳中の女性のみならず出産適齢期の女性を含めている例がある。
予防原則に立った施策が必要ではないか。
今回の注意事項(案)は、内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価結果に基づき作成されたものです。ハイリスクグループ等に関しては、(1)乳児については母乳にメチル水銀がほとんど移行しないこと、(2)小児については、メチル水銀を体外に排出する排泄機能が成人と同様に働くこと、子供の神経系の発達には有害影響が証明されなかったこと、(3)胎盤が完成するのは妊娠4ヶ月以降であって、妊娠に気がついてから食生活に気をつければメチル水銀は体外に排出されていくので心配ないことなどが食品安全委員会によて明らかにされています。
13 消費者 魚肉中の水銀の危険は、どんな経緯で人体に及ぶのか。
その防衛と解毒の方法についてご指導ください。
水銀は無機水銀とメチル水銀等の有機水銀の2つに大別されます。無機水銀は、体温計、血圧計等に用いられてきた天然に存在する成分で、地殻からのガス噴出によるものが環境中の主な発生源ですが、その他の人工的な汚染源としては、化石燃料の燃焼、硫化鉱の精錬、セメントの製造、ごみ焼却などがあると報告されています。無機水銀は一般にヒトの消化管からは吸収されにくいとされています。他方、有機水銀には種々のものがありますが、川や海の無機水銀が環境中の微生物によりメチル水銀に変化して、魚介類に取り込まれます。このため、多くの魚介類は微量のメチル水銀を含有していますが、その含有量は一般に低いので健康に害を及ぼすようなものではありません。しかしながら、一部の魚介類については、自然界の食物連鎖を通じて、他の魚介類と比較してメチル水銀濃度が高いものがみられます。このため、これらメチル水銀の懸念される健康影響は胎児に対するものであることに鑑み、妊婦への注意事項の案をとりまとめ、公表したところです。子供や一般の方々については、メチル水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません。魚介類をバランス良く食べてください。なお、ヒトの体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄されます。その半減期は約2ヶ月です。
14 消費者 食品安全委員会の「食品健康影響評価(案)のポイントについて」が薬食審部会に資料として提出された際、「通常の食生活をしている一般集団に対しては従来の評価を適用」という文章が何故削除されたのか。
一般人に対しては従来のPTWI(3.3μg/kg/week)が適用されるべきではないか。
本年8月4日の食品安全委員会に提出された資料(資料2−1の参考の2の8に対する回答)によると、「一般集団に対する評価は行われていません」と明記されていることから、削除したものです。
15 消費者 食品安全委員会答申は、「生物濃縮が起こりにくい小型の魚(イワシ、アジ等)」の摂取を推奨している。
これを受けて水銀の少ない魚類を多く摂取するよう、食事を指導していただきたい。
注意事項の(案)においては、ご指摘の点にも留意し、「水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀摂取量を減らすことで魚食のメリットと両立することを期待します。」を記載しています。
16 消費者 暫定的規制値(総水銀 0.4ppm、メチル水銀 0.3ppm)を守れない魚種はすべて過剰摂取を注意喚起すべきである。逆に濃度が低いとして注意喚起の対象外とする魚種は、暫定的規制値を適用すべきである。 注意事項(案)に示した検討対象の魚介類は、その選定基準として暫定的規制値を用いています。
17 消費者 「検体数が少ない」などの理由で対象外とされた魚種については、引き続き緊急の調査を行い、実態を把握すべきではないか。 魚介類の水銀濃度に関しては今後とも、調査を進めて参りたいと考えます。
18 消費者 今回の見直しにより、対象魚種が拡大され、世界の約3割を消費すると言われるマグロ等が入ったことは一歩前進といえる。
平成15年度の公表時に私はマグロが含まれていないことに驚き、魚介類の水銀濃度のデータの公表やさらなる汚染度調査の必要性を、マグロを例示して述べた経緯がある。
今後、水域や検体を増やすなど、一層調査の推進を図っていただきたい。
 

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