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全般コード化情報の分析について

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第4回全般コード化情報の分析について


 全般コード化情報の収集状況

  報告施設数 88事例
  全般コード化情報事例数 9580事例


 分析方針

 分析は以下の方針に基づき実施した。
1) 収集した事例について、頻度を単純集計した。なお、患者の年齢、勤続年数、部署配属年数については、年代別など範囲を設定して集計した。

2) 収集した事例について、発生場面と内容の相互関係が重要と考えられるため、それらのクロス集計を行った。

3) その他の重要な項目として、当事者の職種と発見者、発生場面、発生要因、影響度についてクロス集計を行った。


 分析項目

 以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表とグラフに整理した。

  <単純集計>
 以下の項目について単純集計を行った。
・発生月(A)
・発生曜日(B)
・発生時間帯(C)
・発生場所(D)
・患者の性別(E)
・患者の年齢(F)
・患者の心身状態(G)
・発見者(H)
・当事者の職種(I)
・当事者の勤続年数(J)
・当事者の部署配属年数(K)
・ヒヤリ・ハット事例が発生した場面(L)
・ヒヤリ・ハット事例が発生した要因(N)
・間違いの実施の有無および事例の影響度(O)

<クロス集計>
 下記の項目について、クロス集計を行った。また、各クロス集計を行う際の分析の視点を以下に示した。

集計項目(カッコ内はコード番号) 分析の視点
発生場面(L)
×発生内容(M)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、発生内容にはどのような関係があるか
発見者(H)
×当事者の職種(I)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種と、その発見者にはどのような関係があるか
当事者の職種(I)
×発生場面(L)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種とその発生場面にはどのような関係があるか
当事者の職種(I)
×発生要因(N)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種とその発生要因にはどのような関係があるか
発生場面(L)
×発生要因(N)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、その発生要因にはどのような関係があるか
発生場面(L)
×影響度(N)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、その影響度にはどのような関係があるか


 分析結果

1) ヒヤリ・ハット事例の発生状況 (単純集計:9,580事例)
 各月とも3,000件前後のヒヤリ・ハット事例が報告された。
 平日に比較して休日はヒヤリ・ハット事例の発生が少なかった。
 発生時間帯別にみると、6時から19時台までの発生が多く、10時から11時台の発生が最も多かった。
 発生場所では、病室やナースステーションが圧倒的に多く、次いで集中治療室や薬局・輸血部での発生が多かった。
 患者の性別は、男性のほうがやや多かった。
 患者の年齢は、50歳から80歳代が多く、また、10歳以下の小児も多かった。
 患者の心身状態は、障害なしが最も多く、次いで床上安静、歩行障害の順であった。
 発見者は、5割以上が当事者本人以外であった。
 当事者の職種は看護職が最も多く、次いで医師、薬剤師であった。
 職種経験年数が1年未満の従事者によるヒヤリ・ハット事例が約2割、3年未満の従事者による事例が約4割を占めた。
 部署配属年数では、1年未満が約3分の1を占め、さらに、3年未満が約6割であった。
 発生場面では、処方・与薬が最も多く、次いで、ドレーン・チューブ類の使用・管理、療養生活の場面、療養上の世話が多かった。
 発生要因では、約3割が確認不十分によるものであり、以下、「勤務状況」、「心理的条件」、「観察」の順であった。
 間違いが実施される前に発見された事例は全体の約4分の1であったが、そのうち約2割の事例は、間違いが実施されていれば中等度以上の影響が出た可能性のある事例であった。

2) 事例の発生場面と発生内容のクロス集計
 処方・与薬
注射・内服ともに「無投薬」、「投与量間違い」が多く、また、注射では、「投与速度間違い」、内服では「与薬時間・日付間違い」が多かった。
 医療機器の使用
人工呼吸器及び輸注ポンプに関する事例が多く、人工呼吸器では「組立」、「点検管理」のエラー、輸液・輸注ポンプでは「設定忘れ」、「不適切使用」が多かった。
 ドレーン・チューブ類
約半数が自己抜去であった。中心静脈ライン、末梢静脈ラインでは接続はずれも多かった。
 検査
発生場面としては、採血時のエラーが約3分の1を占め、「検体採取時のエラー」、「患者取り違え」が多かった。一般撮影やポータブル撮影では、「患者取り違え」が多かった。
 療養上の世話
転倒・転落が多かった。移動中、排泄介助時や移動介助時の転倒が多かった。

3) その他のクロス集計
 当事者職種 x 発見者
 医師、薬剤師が当事者である場合、当事者本人よりも同職種者や他職種者による発見が多いのに対して、看護師が当事者の場合、半数近くは当事者本人による発見であった。
 当事者職種 x 発生場面
 医師、看護師ともに処方・与薬に関するヒヤリ・ハット事例が最も多いほか、医師はオーダー・指示だしや検査、看護師はドレーン・チューブ類の使用・管理や療養上の世話、療養生活に関するものが多かった。
 当事者職種 x 発生要因
 各職種とも確認不足による事例が多かった。その他、医師では連携の悪さ、看護師では勤務状況、薬剤師では心理的条件によるものが多かった。
 発生場面 x 発生要因
 多くの場面で、「確認」の問題に起因する事例が多数を占めていたが、「ドレーン・チューブ類の使用・管理」、「療養上の世話」、「療養生活の場面」では、「観察」の問題を要因とする事例が最も多かった。
 発生場面 x 影響度
 輸血、療養上の世話、医療機器等の使用・管理の場面等では、間違いを実施していた場合には中等度以上の影響があったと考えられる事例が多かった。


 考察

 単純集計結果及びクロス集計結果とも、前回結果と同様な頻度分布を示しており、ヒヤリ・ハット事例の発生傾向に顕著な変化は無いと思われる。
 ヒヤリ・ハット事例の合計件数に対する「間違いが実施された」割合もおよそ6割程度と大きな変化はなく、(前回=2681/4820=55.6% 今回=6024/9579=62.9%)誤りが未然に防止されているとはいえない。
 今回も、経験の浅い従事者による事例が多く、当事者の属性に合わせた人員配置や院内教育の拡充が必要である。
 要因を「確認不十分」としている事例は、今回の集計では3割程度まで減少したが、未だ最も多いことから、根本的な要因の分析にまで至っていない事例が多いのではないかと考えられる。


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