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全般コード化情報の分析について

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全般コード化情報の分析について

1 全般コード化情報の収集状況

報告施設数 : 99施設
全般コード化情報事例数 : 4820事例

2 分析方針

 分析は以下の方針に基づき実施した。

1) 収集した事例について、頻度を単純集計した。なお、患者の年齢、勤続年数、部署配属年数については、年代別など範囲を設定して集計した。
2) 収集した事例について、発生場面と内容の相互関係が重要と考えられるため、それらのクロス集計を行った。
3) その他の重要な項目として、当事者の職種と発見者、発生場面、発生要因、影響度についてクロス集計を行った。

3 分析項目

 以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表とグラフに整理した。

<単純集計>

 以下の項目について単純集計を行った。
・ 発生月(A)
・ 発生曜日(B)
・ 発生時間帯(C)
・ 発生場所(D)
・ 患者の性別(E)
・ 患者の年齢(F)
・ 患者の心身状態(G)
・ 発見者(H)
・ 当事者の職種(I)
・ 当事者の勤続年数(J)
・ 当事者の部署配属年数(K)
・ ヒヤリ・ハット事例が発生した場面(L)
・ ヒヤリ・ハット事例が発生した要因(N)
・ 間違いの実施の有無およびインシデントの影響度(O)

<クロス集計>

 下記の項目について、クロス集計を行った。また、各クロス集計を行う際の分析の視点を以下に示した。

集計項目(カッコ内はコード番号) 分析の視点
発生場面(L)
×発生内容(M)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、発生内容にはどのような関係があるか
発見者(H)
×当事者の職種(I)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種と、その発見者にはどのような関係があるか
当事者の職種(I)
×発生場面(L)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種とその発生場面にはどのような関係があるか
当事者の職種(I)
×発生要因(N)
ヒヤリ・ハット事例を起こした当事者の職種とその発生要因にはどのような関係があるか
発生場面(L)
×発生要因(N)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、その発生要因にはどのような関係があるか
発生場面(L)
×影響度(N)
ヒヤリ・ハット事例の発生場面と、その影響度にはどのような関係があるか

4 分析結果

1)ヒヤリ・ハット事例の発生状況 (単純集計 : 4,820事例)

(1)  2月、3月とも2000件以上のヒヤリ・ハット事例が報告された。
(2)  平日に比較して休日はヒヤリ・ハット事例の発生が少なかった。
(3)  発生時間帯別にみると、6時から19時台までの発生が多く、10時から11時台の発生が最も多かった。
(4)  発生場所では、病室やナースステーションが圧倒的に多く、次いで集中治療室や薬局・輸血部での発生が多かった。
(5)  患者の性別は、男性のほうがやや多かった。
(6)  患者の年齢は、50歳から80歳代が多く、また、10歳以下の小児も多かった。
(7)  患者の心身状態は、障害なしが最も多く、次いで床上安静、歩行障害の順であった。
(8)  発見者は、5割以上が当事者本人以外であった。また、患者本人や家族、他患者による発見も1割以上を占めた。
(9)  当事者の職種は看護職が最も多く、次いで医師、薬剤師であった。
(10)  職種経験年数が3年未満の従事者によるヒヤリ・ハット事例が約3分の1を占めた。
(11)  部署配属年数では、1年未満が約3割を占め、さらに、3年未満が約6割であった。
(12)  発生場面では、処方・与薬が最も多く、次いで、療養上の世話、ドレーン・チューブ類の使用・管理、療養生活の場面が多かった。
(13)  発生要因では、6割以上が確認不十分によるものであり、以下「観察」、「勤務状況」、「心理的条件」、「連携」、「判断」の順であった。
(14)  間違いが実施される前に発見された事例は全体の3割弱であったが、そのうち約2割の事例は、間違いが実施されていれば中等度以上の影響が出た可能性のある事例であった。

2)インシデントの発生場面と発生内容のクロス集計

(1) 処方・与薬
注射では「投与量間違い」、「投与速度間違い」、「薬剤間違い」が多く、内服では「無投薬」、「投与量間違い」、「与薬時間・日付間違い」が多かった。
(2) 調剤
注射・内服とも、薬剤の取り違いと数量間違いが多かった。
(3) 医療機器の使用
 人工呼吸器及び輸注ポンプに関する事例が多く、条件設定間違いが共通していたほか、人工呼吸器では「組立」、「点検管理」のエラーが多かった。
(4) ドレーン・チューブ類
半数が自己抜去であった。中心静脈ライン、末梢静脈ラインでは接続は
ずれも多かった。
(5) 検査
採血時のエラーが約3分の1を占め、「検体採取時のエラー」、「検体取り
違え」が多かった。
(6) 療養上の世話
転倒・転落が多かった。移動中、排泄介助時や移動介助時の転倒が多かった。

3)その他のクロス集計

(1) 当事者職種 x 発見者
医師、薬剤師が当事者である場合、当事者本人よりも同職種者や他職種者による発見が多いのに対して、看護師が当事者の場合、半数近くは当事者本人による発見であった。
(2) 当事者職種 x 発生場面
医師、看護師ともに処方・与薬に関するヒヤリ・ハット事例が最も多いほか、医師は検査や手術、看護師はドレーン・チューブ類の使用・管理や療養上の世話、療養生活に関するものが多かった。
(3) 当事者職種 x 発生要因
各職種とも確認不足による事例が多かった。医師では連携の悪さが原因とするものが多く、看護師及び薬剤師では勤務状況や心理的条件によるものが多かった。
(4) 発生場面 x 発生要因
多くの場面で、「確認」の問題に起因する事例が多数を占めたのに対して、「システム」の問題によるものは約2%のみであった。
(5) 発生場面 x 影響度
輸血、医療機器等の使用・管理の場面等では、間違いを実施していた場合には中等度以上の影響があったと考えられる事例が多かった。

5 考察

【報告に関して】

 前回に比較して、報告数及び報告施設数が少ないのは、今回の集計対象が2月、3月の2ヶ月間であったためと考えられる。ただし、2月、3月とも2,000件以上のヒヤリ・ハット事例が報告され、また、1施設あたり・1ヶ月あたりの事例報告数は増加している。(前回=5928事例/3ヶ月/113施設=17.5 → 今回=4820事例/2ヶ月/99施設=24.3)
 これは報告システムの定着が図られ、報告の意識が強化された結果と思われる。

【集計結果に関して】

1)  単純集計結果、クロス集計結果ともに前回結果と同様な頻度分布を示しており、ヒヤリ・ハット事例の発生傾向に顕著な変化は無いと思われる。
2)  ヒヤリ・ハット事例の合計件数に対する「間違いが実施された」割合もおよそ6割程度と大きな変化はなく、(前回=3617/5922=61.1% 今回=2681/4820=55.6%)誤りが未然に防止されているとはいえない。
3)  当事者では看護師が最も多いが、看護師の母数自体も他職種と比較して多いため、単純に数量で比較することはできず、継続的に評価していく必要があると考えられる。
4)  職種経験3年未満の従事者が約3割、部署配属年数1年未満が約3割、3未満が約6割であった。経験が浅い場合、知識不足や慣れない業務を実施するため、ヒヤリ・ハット事例を発生しやすい状況が考えられる。当事者の属性に合わせた人員配置や院内教育の拡充も必要である。
5)  「ドレーン・チューブ類の使用・管理」については「自己抜去」の防止、「療養上の世話」については「転倒」および「転落」の防止が重要である。
また、防止対策として、医療提供者側の観察等の徹底に加え、患者側のリスク要因把握と療養生活上の指導なども必要と思われる。
6)  事例の要因を「確認不十分」としている事例が6割以上もある一方で、「システム」の要因としている事例は5%程度と少なく、未だ根本的な要因の分析にまで至っていない事例が多いと考えられる。

【今後の課題】

 本事業の開始から半年以上が経過し、その間に、全般コード化情報として10,000件以上の事例が報告された。次回は、通常の集計に加え、これまでに報告された全事例の集計も行い、分析することが望まれる。

以上


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