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残留農薬等対策について
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ポジティブリスト制度の施行について
食品中に残留する農薬等(農薬、動物用医薬品及び飼料添加物)については、これまで食品衛生法第11条に基づく規格基準(残留基準)を設定し、その安全確保を図ってきたところであるが、残留基準が設定されていない農薬等に対しては基本的に規制ができないことなどから、残留農薬等に対する規制強化が求められてきた。
このため、平成14年6月、与党において取りまとめられた「食の安全確保に関する提言」等を踏まえ、平成15年5月の食品衛生法の一部改正において、残留基準が設定されていない農薬等が残留する食品の流通を原則禁止する、いわゆるポジティブリスト制度を公布後3年以内(平成18年5月末まで)に導入することとされたところである。
本制度を導入するに当たり、国際基準であるコーデックス基準、農薬取締法などの関係国内法令、及び国際的に科学的評価に必要なデータに基づき基準を設定していると考えられる米国、豪、EU等の基準を参考に、
ア |
「人の健康を損なうおそれがない量」(一律基準)、 |
イ |
「人の健康を損なうおそれのないことが明らかである物質」(対象外物質)、 |
ウ |
国民の健康の保護を図るとともに、ポジティブリスト制度の円滑な施行を図るため、農薬等の食品に残留する量の限度(暫定基準) |
を設定することとし、平成15年6月から薬事・食品衛生審議会において審議を行い、審議の過程で3回にわたり基準案等を公表し、国内外からの意見を募集した。
その結果、同審議会から平成17年10月24日に、
ア |
一律基準を0.01ppmとすること |
イ |
対象外物質として65物質を指定すること |
ウ |
758物質について基準を設定すること |
について答申がなされた。これを受け、平成17年11月29日、本制度に関する関係省令等を公布したところであり、残留基準が設定される農薬等の数は従来の283から799となった。また、本制度は平成18年5月29日から施行される(平成17年11月16日政令第345号)。
なお、本制度については、内閣府食品安全委員会において調査審議が行われ、いわゆる暫定基準を設定した農薬等については、今後、食品安全委員会に計画的に食品健康影響評価を依頼することとしている。
今後は、意見交換会の開催等により、本制度の普及啓発に努めるとともに、引き続き分析法を開発するなど、本制度の適切かつ円滑な実施を推進していくこととしているので、御理解と御協力をお願いする。
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農薬等の一日摂取量調査等について
国民が日常の食事を介してどの程度の農薬等を摂取しているかを把握するため、従来より、都道府県及び保健所設置市の御協力を得て、残留農薬等の一日摂取量調査(国民健康・栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところである。
この調査は、実際の食生活における農薬等の摂取量を把握するものであり、食品の安全性を確保する上で重要である。平成16年度からは、ポジティブリスト制度の導入に伴い新たに残留基準を設定した農薬等の評価に資するよう、品目を増やして、広く調査を実施しているところである。
調査には多くの自治体の御協力が不可欠であり、平成17年度は18の自治体に参画していただいたところであるが、平成18年度においては、より多く参画していただけるよう一層の御協力をお願いする。 |
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食品添加物の衛生対策について
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国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている添加物の指定について
平成14年7月、諸外国で食塩に固結防止の目的で食品添加物として使用されるフェロシアン化物(当時、未指定添加物)が含まれた食品に対する食品衛生法上の対応を検討する中で、添加物の規制に関し、国際的に安全性評価が確立し、広く使用されているものについては、国際的な整合性を図る方向で、我が国の指定制度のあり方についても見直しを行ったところである。
具体的には、(1)FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA:注)で一定の範囲内で安全性が確認されており、かつ、(2)米国及びEU諸国等で使用が広く認められていて、国際的に必要性が高いと考えられる添加物については、企業からの要請がなくとも、指定に向け、個別品目毎に安全性及び必要性を検討していくとの方針が、平成14年7月26日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において了承された。
上記選定基準を満たすものについて調査したところ、香料を除き、46品目が挙げられ、これらにつき優先順位を付した上で情報収集等を行っている。情報収集の結果、食品添加物としての指定の可否を検討するために必要な資料が取り揃えられた品目については、順次、食品安全委員会に食品健康影響評価の依頼を行っているところであり、平成17年は、アルギン酸塩類3品目、リン酸一水素マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ケイ酸塩類4品目、L−アスコルビン酸カルシウムについて、食品安全委員会へ評価を依頼した。平成16年までに評価依頼をした品目を含め、平成18年1月現在、46品目の内、30品目について指定に向けた手続を開始したことになる。今後とも、資料の収集を図り、食品安全委員会への評価依頼など諸手続を進めていくこととしている。
上記46品目の内、食品安全委員会の食品健康影響評価の結果及び薬事・食品衛生審議会の答申を踏まえ、平成16年のステアリン酸カルシウムに続き、平成17年は、亜酸化窒素、ヒドロキシプロピルセルロース及びナタマイシンが食品添加物として指定され、平成18年1月現在、4品目がわが国で食品添加物として指定されている。なお、平成17年3月、「β−カロテン(糸状菌Blakeslea trispora由来)」は、指定添加物「β−カロテン」に該当することが確認されたことから、46品目のリストから除外された。
国際的に汎用される食品用途の香料については、平成15年11月、香料安全性評価法検討会(座長:井上 達国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長)において、「国際的に汎用されている香料の安全性評価方法について」が取りまとめられ、これに基づいて、優先順位を付した上で資料を収集し、食品安全委員会へ食品健康影響評価を依頼している。
(注): |
【JECFA(FAO/WHO食品添加物専門家委員会:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)】
食品添加物、農薬、残留動物用医薬品、汚染物質の1日許容摂取量/1日耐容摂取量の検討等を行っている国際専門機関。JECFAの評価は、コーデックスにおいて作成される食品添加物等の基準設定に反映されている。 |
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既存添加物の安全性確認について
長い食経験等があり、安全性上問題があるとの情報もないこと等から、平成7年の食品衛生法改正時以降特例的に使用が認められている既存添加物については、速やかに安全性の確認を行うことが求められている。また、平成15年5月の同法改正において、安全性に問題があると判明した、又は既に使用実態のないことが判明した既存添加物については、既存添加物名簿からその名称を消除し、使用を禁止することができることとされた。これら既存添加物の安全性確認については、継続的に実施してきたところであり、引き続き迅速かつ計画的に進めていくこととしている。平成17年は、14品目について、動物試験等の結果に基づき検討を行い、安全性を確認したところである。
また、平成17年2月には、使用実態のない既存添加物38品目を既存添加物名簿から消除する告示が適用となり、既存添加物名簿に収載されている品目数は450となった。なお、平成15年の調査においては販売等の実態があるが、その後流通実態等が確認できない47品目については、都道府県等を通じて調査を行ったところである。今後、流通実態の認められない品目については、消除予定添加物名簿に収載して公示し、消除の手続きを進めることとしているので、事業者への周知等、関係者の御協力をお願いする。
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食品添加物の一日摂取量調査について
食品添加物の安全性確保対策の一環として、従来から市販食品の分析による食品添加物一日摂取量実態調査(国民健康・栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところであり、食品添加物の摂取量は、安全性の観点から問題ないことが報告されている。平成18年度においても調査を実施することとしているので、引き続き関係者の御協力をお願いする。
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食品添加物公定書改正について
食品衛生法第21条に規定する食品添加物公定書については、食品添加物に関する製造・品質管理技術の進歩及び試験法の発達等に対応するため、従来から、おおむね5年ごとに見直しを行い、公定書の改正を実施しているところである。現在の第7版食品添加物公定書は、平成11年度にまとめられている。公定書の改正に際しては、一般試験法や成分規格の見直し、既存添加物の規格の設定、記載方法の改良等について検討し、食品添加物に係る規格基準を収載した「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の改正を併せて行ってきた。
平成15年8月より学識経験者による第8版食品添加物公定書作成検討会を開催し、検討を進めた結果、平成17年8月に同検討会の報告書が取りまとめられた。この内容に基づき、告示の改正について、厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会あてに諮問がなされ、平成17年11月の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において了承されたところである。今後、食品安全委員会による食品健康影響評価や、パブリックコメント及びWTO通報等の手続きの結果を踏まえて、告示の改正及び第8版食品添加物公定書の作成を行うこととしている。告示の改正及び新しい食品添加物公定書の作成に際しては、事業者及び関係機関に対する周知等につき、関係者の御協力をお願いする。 |
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食品等の規格基準について
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米等のカドミウムに関する規格基準について
平成17年4月に開催されたコーデックス委員会の食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)での再検討においては、平成17年2月のJECFAでのカドミウムの暴露評価を考慮することとされたことから、JECFAにおいてカドミウム摂取量の評価が行われた。その結果、0.4mg/kgと0.2mg/kgなどいずれの基準値案を設定したとしても食品からのカドミウム摂取量の違いはほとんどなく、人の健康にもほとんど影響を及ぼさないと結論づけられたことから、CCFACにおいては、JECFAの摂取量評価の結果に基づき、精米の基準値原案を0.4mg/kgとし、ステップ5として総会に諮ることが合意された。
なお、続く7月に開催されたコーデックス総会においては、JECFAが実施した暴露評価の結果に基づいてCCFACで合意された基準値原案を支持すべきとする意見と基準値原案を支持できないとの意見に分かれたが、支持できないとした国の多くがステップを進めることについては反対しないと述べたことから、精米の基準値原案0.4mg/kgを原案どおり採択し、ステップ6に進めて本年4月のCCFACにおいて引き続き検討することとされたところである。
【ステップ(コーデックス規格作成の手続き)について】
コーデックス規格(カドミウムの場合は最大基準値)の作成手続きは、以下に示す8つの段階から構成されている。
ステップ1 |
総会が規格作成を決定 |
ステップ2 |
事務局が規格原案の手配 |
ステップ3 |
提案された規格原案について各国のコメントを要請 |
ステップ4 |
部会が規格原案を検討 |
ステップ5 |
規格原案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格原案の採択を検討 |
ステップ6 |
規格案について各国のコメントを要請 |
ステップ7 |
部会が規格案を検討 |
ステップ8 |
規格案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格案を検討し、コーデックス規格として採択 |
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水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項について
近年、国際的にメチル水銀の胎児期暴露における影響について評価が行われ、暫定的耐容週間摂取量(PTWI)を見直すとともに、妊婦等に対し食事指導が行われている。
我が国においても、平成15年6月に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会において検討がなされ、妊婦を対象にした注意事項等を公表したところである。
その後、魚介類等の水銀濃度や摂食状況等の把握を厚生労働科学研究等により継続して行ってきたこと、国際専門家会議(JECFA)において、平成15年6月に従来のPTWI3.3μg/kg/週が1.6μg/kg/週に変更されたことなどを踏まえ、平成16年7月に食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、平成17年8月2日に評価結果が示されたところである。厚生労働省としては、食品健康影響評価と並行して薬事・食品衛生審議会において注意事項の見直しを議論していただいていたところであり、これらの結果を踏まえ、平成17年11月2日、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」を公表したところである。
ついては、本注意事項の趣旨を正確に御理解いただくとともに、消費者に対する正確な情報提供についてもよろしくお願いする。 |
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食品の表示について
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食品の表示に関するパンフレットの作成・配布について
これまで、厚生労働省、農林水産省、公正取引委員会が協力して、各表示制度をわかりやすくまとめたパンフレットを作成し、配布しているところである。
このほか、個別の食品表示制度に関するものとして、アレルギー物質を含む食品表示制度や、遺伝子組換え食品表示制度を紹介するパンフレットも作成し、配布している。
食品等に係る表示の適正化を図るため、引き続き、関係業者等への周知徹底・指導方よろしくお願いする。 |
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