5. 市販後安全対策等

(1) 医薬品、医療機器等の市販後安全対策の状況

現状等

 (1) 医薬品、医療機器等の適正使用のための情報収集及び副作用等の報告
 医薬品製造販売業者等による情報収集については、平成9年4月より、薬事法に基づき、医薬品等の適正使用のために必要な情報収集に努めることが義務づけられている。副作用等の報告件数については、医薬品は、平成15年度は28,004例、平成16年度は25,142例が報告されている。また、医療機器は、平成15年度は5,013例、平成16年度の報告は1社1製品(インスリン注入器)に関する報告が11,392例あったため、大幅に増加し、15,714例であった。
 なお、平成16年4月からは、医薬品製造販売業者等からの副作用等の報告は、(独)医薬品医療機器総合機構(以下、「総合機構」という。)に報告されることとなっている。

 また、医療機関・薬局からの情報収集については、平成9年7月に、従来の各種モニター制度を統合・拡充して、すべての医療機関及び薬局を対象に、医師、歯科医師、薬剤師等の医薬関係者を報告者とする「医薬品等安全性情報報告制度」を発足させ、さらに、平成15年7月の改正薬事法の施行により、医薬関係者から直接、国への副作用報告が法制化された。
 なお、医薬関係者からの医薬品の報告件数は、平成15年度は5,399例、平成16年度は4,594例、また、医療機器は、平成15年度は370例、平成16年度は622例であった。

 (2) 医薬品・医療機器等の副作用・不具合・感染症情報等の評価及び提供
 製造販売業者、医薬関係者から報告された副作用・不具合・感染症情報等については、迅速・的確な評価、それに伴う情報提供を行う必要があることから、必要に応じ「医薬品等健康危機管理実施要領」に基づき、総合機構と連携し、業務の円滑な実施を図っている。

 特に、緊急かつ重要な情報については、緊急安全性情報(ドクターレター)の配布、積極的なマスコミへの公表等により、迅速、的確に医療機関等への情報提供を行っている。

 また、毎月、「医薬品・医療機器等安全性情報」を発行し、使用上の注意の改訂などについて、医療機関等に対して情報提供している。

 (3) GVP
 改正薬事法の規定に基づき、新たに創設された製造販売業の許可要件の一つとして、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準(GVP)」が厚生労働省令として定められ、17年4月より施行されている。GVPではこれまでのGPMSPの内容のうち、市販後における安全対策部分を引き継いでおり、より内容を充実させたものとしている。これにより、企業による安全対策の一層の充実が図られることが期待される。

 なお、製造販売業の許可については、各都道府県に権限委任しており、GVPの適合性評価についての整合を図る等のため、17年11月及び12月に合同模擬査察研修を実施したところである。

 (4) 安全対策の充実・強化
 医薬品等の安全対策については、従来の製薬企業等を通じた事後的な対応のみならず、学会、医療機関、企業等との連携による予測・予防型の積極的な副作用対策など安全対策の充実・強化を図っている。

 平成17年度から重篤な副作用の早期発見、早期対応を図るため、関係学会等と連携の上、初期症状、典型症例、診断法等を包括的に取りまとめた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を作成(4年間で120疾患を予定)しているところであり、医療機関や患者等に情報提供することとしている。

 17年10月に国立成育医療センターに設置した「妊娠と薬情報センター」においては、相談業務を通じ、妊婦の服薬情報と出生児への薬の影響に関する情報を収集しているところである。

今後の取組

 ○  新規性が高く、国内での治験症例数が少ない新医薬品は、市販後初期の段階で承認時には予測できない重篤な副作用が発現することがあるため、現在、製薬企業に対しては新医薬品の販売直後6ヶ月間は、「市販直後調査」として、医療機関に対する適正使用情報の提供及び副作用情報収集の重点的実施を義務づけているが、国への情報提供は企業が把握した副作用報告に限られている。

 ○  このため、より慎重を期するため、新規性が高い新医薬品について、平成18年度から、市販後一定期間、使用状況や副作用等の臨床現場の情報を、国が直接収集し、評価した上で、適正使用に関する情報を迅速に医療機関に提供するなど、安全対策の一層の強化を図ることとしている。

都道府県への要請

 ○  平成17年度から施行しているGVP(製造販売後安全管理基準)については、昨年と同様に各都道府県と共同で模擬査察研修を実施することとしているので、積極的に参加いただくとともに、GVPの円滑な施行について協力をお願いする。


(2) 医療事故防止対策(医薬品・医療機器等関連事項)

現状等

 ○  平成13年5月に設置された「医療安全対策検討会議」の下に、同年8月、「医薬品・医療用具等対策部会」を設置し、医薬品・医療機器等の医療安全対策に関する専門的な事項を検討しており、平成17年は同部会を7月27日に開催している。
 また、昨年1月に医薬品・医療機器等対策部会の下に設置した「医療機器安全対策検討ワーキンググループ」において、医療機器の安全対策について検討している。

 ○  医療安全対策ネットワーク事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)の対象施設について、平成16年4月より全医療機関に拡大した。また、医療法施行規則が一部改正され、平成16年10月より医療法に基づき、医療事故事例の情報も収集されることとなった。

 ○  医薬品へのコード表示の標準化等を実施するため、平成16年5月に「コード表示標準化検討会」を設置するとともに、同検討会の下に「コード体系検討ワーキンググループ」を設置して、コード体系などの専門的な事項を検討してきたところである。17年9月に同検討会で報告がとりまとめられ、現在、関係者と調整しながら、コード表示の標準化の導入に向けた作業を進めているところである。

今後の取組

 ○  医薬品・医療機器等対策部会等における検討状況を踏まえ、具体的な改善策等を逐次とりまとめるなど、「もの」に関する医療事故防止対策を引き続き実施する予定である。

 ○  医薬品に対するコード表示の標準化の導入に関する作業を進め、コードを管理するためのデータベースを稼働する予定である。

都道府県への要請

 ○  医療事故防止の観点から、これまで、類似した販売名の医薬品について表示等の改善や二槽バッグ製剤の開通確認のための表示の指導などを行ってきているところであるが、今後も、名称変更やデザイン変更等の医療事故防止対策を行った医薬品・医療機器等の普及及び医療事故防止対策に係る理解の啓発を、引き続きお願いしたい。

トップへ