4. 医薬品・医療機器の承認審査等

(1) 医薬品・医療機器の承認審査

現状等

 (1)  医薬品・医療機器の承認状況

 平成17年は新医療用医薬品として新有効成分18成分を、新医療機器として8件の承認を行った(平成17年11月末現在)。


 (2)  承認審査体制の充実に向けた取組

 新医薬品及び新医療機器の承認審査期間(標準的事務処理期間)については12か月としており、現在、(独)医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)における審査担当者の増員を積極的に進めるとともに、海外臨床データの利用の円滑化を図る等、審査体制等の充実に努めている。

 医療機器については、民間の登録認証機関による認証制度を導入し、大臣承認品目を限定し、審査業務の効率化を図っている。

 医薬品・医療機器の優先審査等について、平成16年2月に「優先審査制度等に関する検討会」において、優先審査品目及び優先的な治験相談品目選定の考え方が最終報告書としてとりまとめられた。これを受けて、適応疾病の重篤性と医療上の有用性とを総合的に評価して、優先審査及び優先的な治験相談に係る品目の選定を行っており、平成17年2月から現在までに17品目が対象とされている。

 新医薬品・新医療機器の承認時点における有効性・安全性の評価等に関する十分な情報を迅速に医療関係者等に提供することにより、当該医薬品の適正使用を推進するため、新医薬品については、審査報告書に当該医薬品の試験成績等をとりまとめた資料を加えて「新薬の承認に関する情報」として承認後に公表し、新医療機器については、審査報告書を承認後に公表しているところである。

 新医薬品、新医療機器等の審査の滞留を防止し、審査の迅速化を図るため、平成16年6月4日付で承認申請に係る取下げに関し、申請の取下げを依頼する事由や取下げ後再申請された場合のタイムクロック等の取扱いを示した。


 (3)  未承認薬使用問題等への取組

 欧米諸国で承認されているが、国内では未承認の医薬品について、(1)確実な治験の実施、(2)医師主導治験の支援体制の整備、及び(3)追加的治験の導入等に取り組んでいる。

 具体的には、患者の切実な要望に迅速かつ的確に対応する観点から、専門家からなる「未承認薬使用問題検討会議」を設置し、(1)欧米諸国での承認状況及び学会・患者要望を定期的に把握し、(2)臨床上の必要性と使用の妥当性を科学的に検証するとともに、(3)国内未承認薬について確実な治験実施につなげることにより、その使用機会と安全確保を図っている。

 「未承認薬使用問題検討会議」は、昨年1月24日の第1回会議以後、10月末までに6回開催したところであり、これまでに16品目について、治験を早期に開始すべき等の結論を得、企業への要請等を行っている。

 また、「がん」の治療法として、複数の抗がん剤の併用療法が有効であるとされているが、薬事法で承認された抗がん剤であっても、がんの種類等によっては効能が承認されていないため、事実上、併用療法に用いることができないものがあるという問題があった。この問題について検討するため、平成16年1月に「抗がん剤併用療法に関する検討会」を設置し、関係学会等から要望のあったものの中で、国内及び海外で有用性が確認されている延べ30の抗がん剤に関する報告書をとりまとめた。その後、平成17年9月までに、全て(延べ30)の抗がん剤について効能追加等の承認を行い、保険診療で用いられている。


 (4)  小児に対する薬物療法の根拠情報収集事業

 医薬品の多くで、小児のための用法・用量が明確でなく、使用上の注意において「安全性が確立していない」等とされているため、小児への使用が制限されている状況にある。このため、学会や医療機関等と連携して処方情報や文献情報を収集・解析し、5年間で約100薬剤について使用法の評価・整理を行い、製薬企業に承認申請等を指導することとしている。


 (5)  臨床評価ガイドラインの公表

 平成3年2月4日に通知された「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」について、関係学会の協力の下に改訂作業を行い、通知(平成17年 11月1日薬食審査発第1101001号)として発出した。



(参考)
 過去5年間の新医薬品承認状況(新有効成分数)

  (平成17年11月末現在)
年次 製造 輸入 合計
13年 8 15 23
14年 7 17 24
15年 3 12 15
16年 5 10 15
17年 7 11 18


 過去5年間の新医療機器承認状況(品目数)

  (平成17年11月末現在)
年次 製造 輸入 合計
13年 2 4 6
14年 6 4 10
15年 3 14 17
16年 0 2 2
17年 0 8 8



(参考)
医薬品等製造(輸入)承認・許可状況の推移(平成17年11月末現在)

【改正薬事法施行前(平成17年3月末までに申請されたもの)】
年次 区分 製造(輸入)承認関係 製造(輸入)許可関係 合計
新規承認 一変承認 追加許可 業許可 更新許可
平成15年 医薬品 1,689 2,882 4,571 39 6 4 49 4,620
医薬部外品 2,308 634 2,942 0 0 0 0 2,942
化粧品 0 0 0 0 0 0 0 0
医療機器 1,391 1,806 3,197 3 0 0 3 3,200
合計 5,388 5,322 10,710 42 6 4 52 10,762
平成16年 医薬品 1,313 3,589 4,902 74 2 12 88 4,990
医薬部外品 2,234 575 2,809 0 0 0 0 2,809
化粧品 0 0 0 0 0 0 0 0
医療機器 1,307 1,644 2,951 0 0 0 0 2,951
合計 4,854 5,808 10,662 74 2 12 88 10,750
平成17年 医薬品 2,167 2,558 4,725 75 9 21 105 4,830
医薬部外品 1,776 404 2,180 0 0 0 0 2,180
化粧品 0 0 0 0 0 0 0 0
医療機器 1,071 1,287 2,358 0 1 0 1 2,359
合計 5,014 4,249 9,263 75 10 21 106 9,369

【改正薬事法施行後(平成17年4月1日以降申請分)】
年次 区分 製造販売承認関係 製造業許可関係 合計
新規製造
販売承認
製造販売
一変承認
製造
業許可
製造業
更新許可
平成17年 医薬品 171 75 246 9 1 10 256
医薬部外品 187 14 201 0 0 0 201
化粧品 0 0 0 0 0 0 0
医療機器 0 2 2 2 0 2 4
合計 358 91 449 11 1 12 461



今後の取組

 (1)  承認審査体制の充実に向けた今後の取組

 総合機構において、より有効でより安全な医薬品等がより的確に審査されるよう、その審査体制の一層の充実や新医薬品の治験相談の充実を進めていくこととしている。

 治験については、「治験活性化3カ年計画」の策定や医師主導治験の制度化にもかかわらず関係者から多くの課題が指摘されていること等から、治験に関する諸問題の解決に資するために平成17年3月に「治験のあり方に関する検討会」を設置したところである。同検討会において、これまで、医師主導治験の運用改善や治験審査委員会の見直し等について議論が行われており、その議論の状況を踏まえ、必要な措置を講じていくこととしている。

 リスクの低い医療機器については、「規制改革推進3カ年計画」(平成13年3月30日閣議決定)に示されている考え方に基づき、平成17年4月1日より、第三者認証制度を導入し、厚生労働大臣による承認から第三者認証に移行した。現在、12の登録認証機関が登録されているが、引き続き認証基準等の整備を進めることとしている。

 引き続き、申請者への審査状況の伝達制度の活用、新医療機器の審査報告書の総合機構ホームページ上での公表等を通じて審査の透明性確保に努めることとしている。


 (2)  承認審査の迅速化等に向けた取組

 ファーマコゲノミクスに関する、(1)国内外の医薬品の評価に係る文献の収集整理、(2)国内製薬企業における利用状況及びデータの収集(任意提出)を行い、併せて、遺伝薬理学等の専門家からなる検討会を設置し、これらのデータ等をもとに「承認申請におけるファーマコゲノミクスの利用及び承認審査における考え方」に関する指針の作成に向けた検討を行うこととしている。

 IT、バイオテクノロジーなど多様な最先端の技術を用いた医療機器をより速く医療の場に提供するため、医療ニーズが高く実用可能性のある次世代医療機器(5分野)について、審査時に用いる評価指標等を作成し、公表することにより、製品開発の効率化及び承認審査の迅速化を図ることとしている。

 遺伝子診断用体外診断薬について、我が国では評価基準が未整備であり、企業側の開発も進んでいないため、臨床性能試験の倫理性・データの信頼性を担保するための実施基準や審査を行うための評価基準を整備し、合理的な開発と審査の迅速化を図ることとしている。


 (3)  その他

 第十五改正日本薬局方が本年3月末に告示、4月1日から施行される予定である。第十五改正日本薬局方では、保健医療上重要な医薬品を収載することとし、102品目を新規収載、275品目を改正するとともに、通則、製剤総則、生薬総則、一般試験法について全面改正を予定している。また、399品目について日本名(いわゆる正名)を変更することとしている。

都道府県への要請

  ○  昨年4月より、医薬品等新申請・審査システムの運用が開始されたところであるが、承認審査事務の効率化のため、受付・施行時における入力作業等、当システムの適宜適切な運用について、引き続き協力をお願いしたい。

  ○  第十五改正日本薬局方の制定に伴う医薬品製造販売承認・許可申請等の取扱いについては、別途、通知する予定であるので、今後、関係者に対する指導について協力をお願いしたい。


(2) 医薬品等の再評価

 (1)  薬効再評価

現状等

  ○  抗菌薬については、平成16年9月に再評価結果を通知し、適応症や適応菌種の読替え及び一部削除を行い、適応菌種等の読替えが必要となる有効成分等の範囲及びその取扱いについても通知した。
 これに伴い、再評価結果等に基づく一変申請(読替え一変申請も含む。)及び適応症の追加のための一変申請を行ったところである。

今後の取組

  ○  引き続き、国内外の情勢を踏まえ、再評価制度による有用性確認を行う必要があるものを、随時、指定し、再評価を進めていく。それとともに、近年、エビデンスに基づく診療ガイドラインの整備等に伴い、薬事法上の効能効果との違いが注目されてきており、再評価制度を、薬事法上の承認内容を医療の実情に即したものとしていくための制度に再構築していく。

  ○  今後、予算事業として、
 ・  診療ガイドラインで取り上げられた医薬品に関するエビデンスをデータベース化するとともに、
 ・  関係学会の協力の下、臨床的な有用性を専門的に評価する委員会を設置し、  再評価のためのデータ収集、臨床的な有用性の評価及び追加的臨床試験や情報提供の必要性等について検討する
こととしている。


 (2)  品質再評価の状況

現状等

  ○  医薬品の品質再評価については、平成7年4月以降に申請された医療用内服固型製剤の医薬品について、溶出規格の設定を行い、当該医薬品の後発品について、既承認品目(先発品)との有効成分の同一性に加え、溶出性の同一性についても確認した上で承認することとしている。平成7年4月以前に申請された内服用医薬品についても品質の信頼性を確保するため、平成10年度より品質再評価を着実に実施している。

  ○  平成15年8月の時点で予試験を行う対象である全857成分の指定が計画どおり終了し、各成分ごとに予試験の通知、再評価の指定、公的溶出試験(案)の通知に係る作業ステップを進め、順次、溶出試験規格を策定しているところである。

  ○  これまで24回にわたり品質再評価結果を公表している(合計:459成分・処方、1004規格、3685品目)。また、結果通知の都度「医療用医薬品品質情報集(日本版オレンジブック)」を公表するとともに、品目リストをインターネット(医薬品医療機器情報提供ホームページhttp://www.info.pmda.go.jp/)において公開している。結果として、現在までに全指定対結果成分数比で約54%について品質再評価が終了している。

今後の取組

  ○  引き続き、品質再評価結果を通知することにより、溶出試験規格の策定を順次進めていくこととなるが、予試験等で溶出試験の条件や溶出規格の設定が困難なもの、溶出試験等の設定に時間を要している成分・品目については、その原因を類型化し、薬剤特性により溶出試験の設定が困難なものとして対象から除外することとしている。
 最終的には、平成18年度を目途に品質再評価を終了する予定である。

都道府県への要請

  ○  品質再評価の結果については、通知の都度、情報提供しているところであるが、各都道府県におかれても、その周知につき協力をお願いしたい。

  ○  今後、平成18年度の品質再評価終了に向けて、溶出試験規格の策定や妥当性検証の品目数が増加することが予想されるため、国立医薬品食品衛生研究所及び10都府県(埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)の衛生研究所におかれては、引き続き協力をお願いしたい。


(3) 承認審査に関する国際的調和の推進

 (1)  医薬品

現状等

  ○  新医薬品の承認審査関連規制については、「日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)」において、日、米、EUの規制当局及び産業界代表が参加して、調和が進められている。

  ○  既存のガイドラインの一部改正を含め、これまでに56のガイドラインが作成され、国内規制として取り入れられている。

  ○  平成15年7月1日より、CTDに基づく新医薬品の承認申請資料の提出が適用されており、また、平成17年4月1日以降に行われる新医薬品の承認申請については、電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)による提出も可能となっている。

  ○  平成16年11月には、横浜において、ICH運営委員会/専門家作業部会が開催され、新たに、「バイオテクノロジー応用医薬品の製法変更後の同等性比較(バイオコンパラビリティー)」と「医薬品安全性監視の計画」の2つのガイドラインが最終合意に達した。

(ICHガイドラインと関連情報はhttp://www.nihs.go.jp/dig/ich/ichindex.html)

今後の取組

  ○  平成16年11月に最終合意に達した上記2つのガイドラインについて、今後、速やかに国内規制として取り入れていく予定である。

  ○  ICHにおいては、今後も、開発から市販後までの一貫した安全対策、バイオテクノロジー応用医薬品や遺伝子治療用医薬品等の新技術、GMPを含む医薬品の品質システム、コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)の運用と電子化関係等の討議が行われることとなっている。


 (2)  医療機器

現状等

  ○  医療機器の承認審査関連規制については、「医療機器規制国際整合化会合(GHTF)」において、日、米、EU、加及び豪の規制当局及び産業界代表が議論して進めており、平成17年11月には、ロンドンにおいてGHTF運営委員会が開催された。

  ○  同委員会において、今後のGHTF活動として、クラスごとの基準適合性評価手続、不具合報告手続、設計管理、品質管理に係る行政査察、臨床評価に関する調和の議論を進めること等が合意されている。

  ○  GHTFにおいてこれまで合意された「医療機器のクラス分類」、「医療機器の基本要件」、「技術文書概要(STED)」等は、薬事法において措置済みである。これらガイドラインについては、GHTFのホームページ「http://www.ghtf.org」に掲載されている。

  ○  また、日米間の二国間協力としては、広く世界的に開発される医療機器について、治験相談の段階からの共同作業を行っており、現在は、その一環として、循環器治療機器につき試験的に進めている。

今後の取組

  ○  平成18年6月には、ドイツでGHTFのシンポジウム等も開催される予定である。今後は、GHTFにおいて、医療機器に付随し使用されることを目的としたソフトウェアのあり方についても議論される予定である。


(4) 家庭用医療機器の販売管理者要件等の見直し

現状等

  ○  平成14年の改正薬事法により、平成17年4月以降、高度管理医療機器の販売に当たっては医療機器販売業の許可が、また、管理医療機器の販売に当たっては届出が必要となったほか、高度管理医療機器又は管理医療機器の販売を行う場合には、新たに営業所毎に販売管理者の配置が必要となった。

  ○  現状の医療機器の販売管理者制度に関しては、医療機器のリスクや販売実態等を問わず一律に規制を適用している。一方、家庭用医療機器については、その安全性の確保に影響を及ぼさない範囲で、リスクの程度や販売実態等を踏まえたきめ細かな規制とする必要がある。このため、平成17年6月より「家庭用の医療機器等の販売管理者制度等のあり方に関する検討会」において検討し、また、パブリックコメントを行った結果、家庭用医療機器の販売管理者制度について、主に以下のとおり見直すこととしている。
 (1)  補聴器及び家庭用電気治療器を除いた家庭用の管理医療機器については、その販売にあたり販売管理者の設置を不要とする。
 (2)  コンタクトレンズのみ、補聴器のみ又は家庭用電気治療器のみを取り扱う販売管理者については、その資格要件として、これまで医療機器の販売等の従事年数3年を求めていたところ、これを1年とする。

都道府県への要請

  ○  販売管理者制度の見直しについては、薬事法施行規則等の所要の改正を行い、平成18年4月1日に施行予定である。各都道府県におかれては、今回の見直しの内容等について、管内事業者への指導をお願いしたい。

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