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臓器移植対策室

1. 臓器移植対策について

 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号。以下「臓器移植法」とい
う。)が平成9年10月に施行されたことに伴い、社団法人日本臓器移植ネットワークを中心として、公平かつ適正な臓器あっせん体制を整備し、臓器移植の円滑な推進を図ってきたところである。
 また、臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供については平成16年1月9日現在全国で26例行われたところであるが、心停止下での腎臓及び眼球(角膜)の提供による腎臓移植及び角膜移植の件数は、近年、減少傾向にあるといわれている。今後とも更なる臓器移植の推進を図るために関係機関の御協力を賜りながら取り組む所存である。
 臓器移植法については、法施行後6年が経過したところであるが、これまでの法の施行状況を踏まえ、臓器提供者(ドナー)適応基準等の制度の運用に関する事項について、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において議論いただきながら、改善を行っているところである。審議会の議事録等の詳細については厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp)を参照されたい。
 また、15歳未満の子供からの臓器提供の可否など制度の根幹に関わる問題については、賛否両論いろいろあり、実情を踏まえた国民的な議論が行われるべきものと考えており、今後、国会をはじめ各界での議論の動向を見ながら対応して参りたい。

 (1 )臓器移植の普及啓発について
 臓器移植法においては、臓器提供の要件として、心停止下での腎臓及び眼球の提供を除き、本人が生前に臓器提供の意思を書面により表示していることを定めており(臓器移植法第6条第1項)、「臓器提供意思表示カード」や医療保険の被保険者証又は運転免許証に貼付することのできる「臓器提供意思表示シール」の普及を図ることが重要な課題となっている。
 しかしながら、平成14年7月に行われた世論調査においては、臓器提供意思表示カードの認識度が前回調査に比べ低下してきている状況である。
 各都道府県におかれては、健康保険の被保険者証のカード化及び被保険者証の更新時等、適当な機会をとらえ、関係機関・団体と御協力の上、引き続きこれらのカード及びシールの普及について御努力をお願いしたい。
 なお、カードの配布状況や移植の件数等については、社団法人日本臓器移植ネットワークホームページ(http://www.jotnw.or.jp)又は、日本眼球銀行協会ホームページ(http://www.j-eyebank.or.jp)を参照されたい。

 臓器移植に関する広報については、各地方公共団体においても各種の活動に御尽力いただいているところであるが、国民への移植医療の理解を深めていくことが国及び地方公共団体の責務であることが法律上も明文化されている(臓器移植法第3条)ところである。
 また、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」として普及啓発を行っており、平成15年度においては10月18日に三重県津市で全国大会が開催されたところであり、来年度においては10月頃に香川県で開催される予定である。

 (2 )臓器移植の実施状況について
 平成16年1月9日現在、臓器の移植に関する法律に基づく脳死下での臓器提供事例は全国で26例行われているところである。また、平成14年度の移植実施件数は脳死下及び心臓停止下における提供を合わせて、心臓は4名の提供者から4件の移植が、肺は3名の提供者から3件の移植が、肝臓は4名の提供者から5件の移植が、腎臓は64名の提供者から118件の移植が、膵臓は2名の提供者から2件の移植が、角膜は942名の提供者から1,509件の移植が行われている。引き続き、臓器提供施設の整備等関係機関のご協力をお願いする。

 (3 )関係医療機関の臓器提供に対する理解及び協力の確保について
脳死下での臓器提供については「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」において提供可能な施設を限定しており、平成15年7月10日現在、提供可能な施設は457施設であり、そのうち、厚生労働省の照会に対して臓器提供施設としての必要な体制を整えていると回答した施設は306施設(公表について同意した施設301施設)である。
 今後とも都道府県臓器移植連絡調整者(都道府県臓器移植コーディネーター)については、都道府県内の関係医療機関の医療従事者等に対し臓器移植に関する普及啓発活動を行い臓器提供のための体制を整えていただくなど、各都道府県内の臓器提供体制の拡充に努めるとともに、心停止下での腎臓提供も含めて臓器提供に協力いただいている施設等を定期的に巡回し、臓器提供に対する一層の理解及び協力が得られるようよろしくお願いしたい。
 都道府県連絡調整者設置事業に係る経費については、平成15年度より一般財源により措置されたところであるが、本事業の必要性はより強くなってきており、引き続き事業の推進をお願いしたい。
 また、都道府県臓器移植コーディネーターが、社団法人日本臓器移植ネットワークの指示に基づき、あっせん活動を行う際の活動費については、臓器移植ネットワークへの補助対象事業としているので、活用されたい。
 なお、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準については、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会の審議を踏まえ、「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正について」(平成13年12月25日厚生労働省健康局長通知)により、従来の「HLA型の適合度」に加え「待機日数」「搬送時間(阻血時間=地域要件)」を総合的に加味するよう変更されているところである。それぞれの地域における臓器提供件数等の状況が都道府県内の移植数に影響することとなるので、改正趣旨・内容について十分周知し、理解を深められたい。


2.造血幹細胞移植対策について

 (1 )造血幹細胞移植委員会について
 骨髄・さい帯血移植を始めとする造血幹細胞移植全体については、従来の施策を検証し、今後の対策を検討するため、平成14年3月、厚生科学審議会疾病対策部会に造血幹細胞移植委員会を設置し、(1)需給バランス、(2)実施体制、(3)ドナー・レシピエントの安全性確保対策、(4)財源についての検討を行っている。

 (2 )骨髄移植対策について
 白血病や重症再生不良性貧血等の血液難病患者に対する有効な治療法である骨髄移植の推進を図るため、平成3年12月から「日本骨髄バンク」事業を実施している。骨髄ドナー登録者数は平成15年12月末現在18万人を超え、骨髄バンクを介して行われた移植件数も累計で5,266例に上っているところである。(ドナー登録者数等の詳細については、骨髄移植推進財団ホームページ(http://www.jmdp.or.jp)を参照のこと)
 しかしながら、同事業を円滑に推進するためには骨髄提供者の確保が依然として最重要課題となっている。各都道府県におかれては、従前より普及啓発活動等により同事業の推進に御協力いただいているところであるが、来年度においても「ドナー登録者30万人」の目標に向け、一人でも多くの方に骨髄移植の機会を提供できるよう一層の普及啓発等に御尽力願いたい。
 また、平成6年度から実施をお願いしている一部保健所におけるドナー登録受付事業については、平成15年度より一般財源により措置されたところであり、これにより、全ての保健所において骨髄バンク集団登録事業を実施できると考えており、今後とも、移動献血併行型ドナー登録会など、ドナー登録受付事業の積極的な推進をお願いする。
 さらに、都道府県に「緊急地域雇用創出特別交付金」を交付し、地方公共団体が地域の実情に応じ、緊急かつ臨時的な雇用を創出する事業を実施しているところであるが、「緊急地域雇用創出特別基金事業の運用の改善について」(平成14年12月20日付厚生労働省発職第1220002号)により同事業実施要綱が改正され、推奨事業例として「ドナー登録会等に骨髄ドナー普及推進員を派遣し、骨髄ドナー登録者の拡大を図る事業」が追加されたところである。
 なお、多くの骨髄提供希望者を確保するため、毎年10月に実施している「骨髄バンク推進月間」においては、各都道府県の実情に応じて、効果的な普及広報を行うなどの御協力をよろしくお願いしたい。

 (3 )さい帯血移植対策について
 さい帯血移植とは分娩後、通常は廃棄されていた胎盤及びへその緒に含まれているさい帯血を採取し、その中に含まれている造血幹細胞を移植して、造血機能を再生させる方法であり、白血病や再生不良性貧血等の血液難病の有効な治療法として行われているものである。我が国では平成15年12月末現在、日本さい帯血バンクネットワーク加入さい帯血バンクを介した非血縁者間移植は1,387例が実施されている。この移植は産後のさい帯と胎盤から採取するため、母体にも児にも影響はなく、必要なときに移植できる等の利点を有している。(さい帯血保存個数等の詳細については、日本さい帯血バンクネットワークホームページ(http://www.j-cord.gr.jp)を参照のこと)


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