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5.食品の安全確保対策の推進について

(1)都道府県等食品衛生監視指導計画の策定について
 食品等事業者に対する監視指導については、これまで政令で業種ごとに定められた監視回数に基づいて実施されてきたが、今回の食品衛生法の改正により、厚生労働省が、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針(平成15年厚生労働省告示301号)」(以下「指針」という。)を制定し、各都道府県等がその地域の食品の生産・流通・製造等の状況や、食品衛生上の問題の発生状況等を踏まえて「食品衛生監視指導計画」(以下「計画」という。)を策定し、これに基づいて重点的かつ効率的に行う仕組みが導入され、計画に基づく監視指導が平成16年度から実施される。
 厚生労働省では、各都道府県等が計画を策定する際の参考となるよう、一部の都道府県等の協力を得て計画のモデルを作成し、お示ししたところであるが、指針に基づく計画の策定に当たっては、住民の意見の聴取、公表、厚生労働省への提出及び実施状況の公表等施行通知(平成15年8月29日付け薬食発第0829002号)で示した事項に十分留意されるようお願いする。
 特に、農林水産物の生産段階における監視指導については、各都道府県等において農林水産部局との密接な連携の下で円滑な実施を図られるようお願いする。
 なお、厚生労働省から農林水産省及び(社)日本獣医師会に対し、法改正に伴う新たな食品衛生規制の実施に当たり生産者指導等、臨床獣医師の協力等必要な連携確保について協力を依頼している。
 また、平成10年度から実施していた社会福祉施設等給食施設の一斉点検については、ほとんどの施設において改善されていることが確認されていることから、本年度をもって終了することとしたが、これら社会福祉施設や学校、病院等の給食施設など高齢者、児童、病者等が主に利用する施設及び大量調理施設等については、指針において重点的に監視すべき事項としたので、計画における対応についてお願いする。
 食品衛生法に違反した者の名称等の公表については、指針にも考え方を示したところであるが、平成14年8月の食品衛生法の改正によって創設された第29条の2の規定に基づき適切に行われるようお願いする。当該規定では、厚生労働大臣並びに都道府県知事等は、食品衛生上の危害の発生を防止するため、法又は法に基づく処分に違反した者の名称等を公表し、食品衛生上の危害の状況を明らかにするよう努めることとしているが、本規定の対象から除外されるものは、軽微な違反であって当該違反について直ちに改善が図られたものとしており、趣旨を御理解の上、適切な運用をお願いする。

(2)牛海綿状脳症(BSE)対策について
(1) 国内対策
 食肉の安全確保及び国民の不安解消のため、引き続き「牛海綿状脳症検査要領(平成13年10月16日付け食発第307号)」に基づき、BSE検査を着実に実施するとともに、その実施に当たっては、農林水産部局との連携を密にするとともに、必要に応じて生産者等を所管する関係都道府県等との連絡を十分に図るようお願いする。
 牛の頭部を含む特定部位については、牛海綿状脳症対策特別措置法第7条第2項及び第3項、と畜場法施行規則第3条及び第7条並びに「食肉処理における特定部位管理要領(平成13年10月17日付け食発第308号)」に基づき、確実に除去・焼却されるよう、農林水産部局との連携を図りつつ、指導方お願いする。また、処理に当たっては、特定部位による枝肉及び食用に供する内臓の汚染防止の徹底について、と畜場の設置者、管理者、と畜業者又は従事者等に対して、引き続き指導方お願いする。
 とさつ解体工程の背割り前のせき髄除去技術の導入については、さらなる予防的観点からこれまでも推進をお願いしてきたが、、平成15年10月現在で、牛の処理頭数ベースでは約90%に達し、また、導入検討中を含めると処理頭数ベースで約97%が背割り前にせき髄を除去することとなる。せき髄除去を実施していないと畜場に対し、再度、導入について指導方お願いする。
 BSE対策に関する都道府県等への財政支援としては、平成16年度においてもBES検査用のスクリーニング検査キット(補助率10/10)、検査に必要な主要設備、機器(補助率1/3)、公営と畜場の衛生設備(補助率1/2)、検査設備の一部については、補助対象を追加することとしている。また、現在、都道府県等においてBSE確認検査を実施するに当たっての検査機関認定要領の検討を進めているところである。
 また、めん羊及び山羊の取扱いについては「伝染性海綿状脳症サーベイランスについて」(平成13年11月13日付け食監発第264号)」及び「めん羊及び山羊の取り扱いについて(平成14年4月1日付け食発第0401005号)」に基づきめん羊及び山羊の特定の部位(12ヶ月齢以上の頭部(舌、頬肉を除く)、せき髄、胎盤及びすべての月齢の扁桃、脾臓、小・大腸(付属するリンパ節を含む。))の除去及び焼却について、と畜場の設置者、管理者、と畜業者又は従業者等に対する指導をお願いしてきたところであるが、と畜場法施行規則を改正し本年2月27日から義務化することとしているので、関係者に対し周知等をお願いする。
(2) 輸入対策
 欧州諸国における牛海綿状脳症発生の増加等を踏まえ、現在、EU諸国等24ヵ国からの牛肉、牛臓器及びこれらを原材料とする食肉製品については食品衛生法第5条第2項に基づきBSE発生国からの輸入を禁止するとともに、衛生証明書の添付が必要とされない牛肉及び牛臓器を原材料とする食品及び添加物についても輸入自粛を指導しているところである。
 このうち、米国におけるBSEを疑う牛の発見については、平成15年12月24日に公表したところであるが、同年12月26日、BSEであるとの診断が確定したことから、米国産牛肉等について食品衛生法第5条第2項に基づき輸入禁止措置を講ずることとした。
 一方、既に輸入され国内に流通している米国産の牛肉及び牛肉等を用いた加工品のうち、特定部位を含む又はそのおそれがあるものについては、輸入業者に対する回収及び廃棄を指導するほか、せき柱を含むものについては、平成15年11月14日付け食安発第1114001号に基づき販売等の自粛を指導することとした。
 ついては、これら措置の対象となる食品については、別途、輸入者等の情報が判明次第、個別に関係都道府県等あて通知することとしているので対応方よろしくお願いする。

(3)牛せき柱を含む食品等の安全性確保について
 牛のせき柱を含む食品の取扱いについては、OIE(国際獣疫事務局)において、国際動物衛生規約の改正が平成14年9月に公表され、食用とすべきでない部位として、新たに頭蓋及びせき柱が追加された。我が国では、頭蓋については上記のとおり「頭部」の一部としてと畜場での除去を実施しているところである。
 我が国においても、これまでのと畜場における全頭検査及び特定部位の除去に加え、伝達性海綿状脳症に関する食品等の安全確保に万全を期すため、平成15年4月より、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会伝達性海綿状脳症対策部会(以下「部会」という。)において検討が開始され、平成15年6月に牛のせき柱に含まれる背根神経節のリスクについては、現在特定部位とされているせき髄と同程度であるとの報告が取りまとめられた。
 また、本年8月には、我が国における牛せき柱の取扱いに関する実態調査及び牛せき柱を含む食品等の管理方法の試案に対する意見の募集を実施した。さらに、平成15年7月には食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、平成15年9月、上記の「背根神経節のリスクについてはせき髄と同程度であると考える」との部会における評価結果は妥当であるとの結果が食品安全委員会から通知されている。
 これらを踏まえ、平成15年11月14日に開催された部会の審議結果を通知し、関係営業者への周知方お願いしたところであり、最終的に平成15年12月25日付で薬事・食品衛生審議会から次のとおり答申を受けたところである。
(1) BSE発生国の牛肉であって、消費者に販売されるものについては、せき柱(胸椎横突起、腰椎横突起、仙骨翼及び尾椎を除く。以下同じ。)を除去しなければならない。
(2) BSE発生国の牛肉からせき柱を除去する場合は、背根神経節による牛肉及び食用に供する内臓の汚染を防ぐように処理しなければならない。
(3) BSE発生国の牛のせき柱を原材料として使用して、食品、添加物又は器具若しくは容器包装を製造し、加工し、又は調理してはならない。
(4) グリセリン、脂肪酸及びこれらのエステル類等、油脂を高温高圧の条件の下で、加水分解、けん化又はエステル交換したものにあっては、上記の限りでない。

 厚生労働省では、この答申を受け、本年1月中旬を目途に食品衛生法第7条及び第10条の規定に基づく告示の改正を行う予定(本年2月中旬に施行)であるので、引き続き関係業者の指導方、よろしくお願いする。

(4)食肉、食鳥肉の安全確保について
 食肉の衛生確保に関しては、平成8年の腸管出血性大腸菌による食中毒の多発を踏まえ、と畜場法施行令及びと畜場法施行規則の改正を行い、と畜場の構造設備基準及び処理の衛生管理基準の強化を行った。平成12年度までに牛又は馬を処理すると畜場、平成14年度までに豚、めん羊又は山羊を処理すると畜場について、適合を確認したところであり、今後とも、枝肉の汚染防止対策の推進を図るため、全国のと畜場を対象とした枝肉の細菌汚染実態調査について積極的な実施をお願いする。
 平成16年度厚生労働科学研究においては、食品製造の高度衛生管理に関する研究として、食肉処理時における微生物学的危害について国内外の文献調査を行い、HACCP構築のために必要な基礎データを収集、整理し、データベース化し、広く提供することとしている。また、と畜場における食肉処理時の病原微生物の危害コントロール方法を確立するとともに、標準的なHACCPモデルを作成する予定であり、関係都道府県等にあっては御協力をお願いする。

 昨年、生シカ肉の喫食によるE型肝炎ウイルスの食中毒が発生した。E型急性肝炎発症と特定の食品の摂食との直接的な関係が確認された最初の事例とされているが、本事例を踏まえ、E型肝炎の感染防止の観点から、野生動物の肉等の生食は避けることが望ましいこと、HEVは妊婦に感染すると劇症肝炎を発症し、死亡する率が高いという報告もあるため、妊婦は特に野生動物の肉等を生で食べることは控えるべきであることについて、周知方お願いする。なお、平成16年度厚生労働科学研究において、ウイルス性食中毒の主要原因となっているウイルスと食品(食肉等)について、汚染実態調査を実施するとともに、食中毒発生時の原因食品中に含まれる発症ウイルス量に関する調査を実施し、リスクアセスメントに必要となる基礎データの収集を行うこととしている。

 食鳥肉の衛生確保に関しては、「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」に基づく食鳥処理場の施設設備及び衛生管理基準の遵守について食鳥処理業者等に対する厳正な監視指導等に一層の御努力をお願いする。特に、認定小規模食鳥処理場には食鳥検査員が常駐しておらず、過去において処理羽数について虚偽報告の事例があったことも踏まえ、処理羽数、食鳥処理衛生管理者の配置状況、確認の状況等について、厳正な監視指導の実施をお願いする。なお、食鳥検査については、関係都道府県等の御努力により、早朝、時間外等の検査実施の弾力化に種々御配慮をいただいているところであるが、引き続き民間獣医師の活用を含め、特段の御配慮をお願いする。

 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)については、院内感染により易感染患者に重篤な菌血症を起こす重要な細菌の一つとして欧米において間題になっており、平成8年度から、輸入及び国産鶏肉等を対象に汚染実態調査を実施してきたところである。本年度においても、引き続き当該調査を実施することとしており、関係都道府県等にあっては、本調査への御協力方お願いする。

 今日の食品衛生法の改正により、家畜伝染病予防法に規定された家畜伝染病等とと畜場法等の検査対象疾病との関係を明確化するとともに、と畜検査等でも獣畜の肉等における汚染等の異常の有無も検査し、併せて、食品衛生法においても、販売等の禁止の対象となる獣畜又は家きんの疾病等について、独自に省令で定めていたものをと畜場法等を引用して平成16年2月27日に施行される。また、と畜検査の対象となる疾病及び異常並びに食鳥検査の対象となる疾病が新たに追加されることから、と畜場法施行規則及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則を改正し、それらについての措置基準を定めることとしたので、関係者等への周知方よろしくお願いする。

(5)食中毒対策について
(1) 法改正に伴う食中毒調査及び報告の整備等
 今回の食品衛生法の改正により、食中毒患者等の発生について医師の届出があった場合のほかに、保健所長自らその発生を認めた場合についても、保健所長は報告、調査を実施することとされたが、日頃より関係機関とも連携し事故発生の探知に努め、事件発生時には迅速な初動調査が行えるよう体制の整備等についてお願いする。
 食中毒事件の報告について、これまで食中毒処理要領等で規定していた報告を含め整理し、法的に位置付けたが、今後も新たな規定に基づき速やかな報告を行うようお願いする。
 最近、複数の都道府県等にまたがる食中毒事件の発生が増加しているが、調査に当たっては、関係都道府県等・関係機関との密接な連携の下、迅速かつ的確に食中毒調査を実施されるようお願いする。また、大規模広域食中毒が発生するおそれがある場合等に、必要に応じ、厚生労働大臣が都道府県知事に対して調査を要請できることとしたが、当該規定の発動時における各都道府県等の協力についてお願いする。

(2) 食中毒処理要領等の改正等
 食中毒事件については、食中毒処理要領(昭和39年7月23日付け環発第214号)、食中毒調査マニュアル(昭和9年3月24日付け衛食第85号)に基づき調査、報告していただいているところであるが、今回の食品衛生法の改正に伴い、食中毒処理要領等の改正を行った。各都道府県等におかれては、新たな処理要領等に基づき、円滑な情報伝達、調査の実施等に努められたい。

(3) 食品保健総合情報処理システムの運用
 食品保健総合情報システムは、厚生労働省、国立感染症研究所、都道府県等本庁、保健所を厚生労働行政情報処理システム(WISH)のネットワークを使用してオンラインで結び、食中毒情報等(食中毒発生速報、食中毒事件票等)の情報を相互利用するものである。本システム活用により都道府県等と厚生労働省間の情報交換が迅速化・効率化され、散発的集団発生事例(diffuse outbreak)の早期探知や食中毒の発生の未然防止、発生後の被害拡大防止に資するものである。
 しかしながら、現在のところ本システムの活用の状況は都道府県等毎で大きな差がみられ、未だオンラインに加入していない都道府県等や加入しているのにもかかわらず全く活用していない都道府県等がある。未加入の都道府県等については、速やかに加入されるようお願いするとともに、本システムの積極的活用及び情報処理体制の整備に特段の配慮をお願いする。

(4) ノロウイルスによる食中毒への対策
 先般、最近の学会等の動向を踏まえ、これまで「小型球形ウイルス」として集計されていたウイルスを、「ノロウイルス」として集計することとし、その検出法(平成15年11月5日付け食安監発第1105001号)を通知したところである。
 例年、12月から3月にかけてノロウイルスを含む小型球形ウイルスを原因とする食中毒が多数発生しており、カキ等の二枚貝を原因とするもののほか、調理従事者からの二次汚染が原因である場合も少なくない。また、ノロウイルスは少ないウイルス量でも感染するので、大規模な食中毒事件の原因となることがある。
 これらを未然に防止するため、カキ等二枚貝を加熱調理する場合は十分加熱してから喫食すること、カキ等二枚貝を調理した後は調理器具や手指をよく洗浄すること、嘔吐や下痢などの症状がある食品従事者は食品を取り扱う作業をさせないようにすべきこと等の対策を徹底するよう関係事業者に対し指導されたい。また、生食用カキにあっては、採捕海域の表示の徹底について指導されたい。ノロウイルスに関するQ&Aを厚生労働省のホームページに掲載することとしているので、事業者への監視指導、住民への啓発の際に活用されたい。

(6)都道府県等食品検査データネットワークシステムの構築について
 各都道府県等の「食品衛生監視指導計画」に基づく監視指導をより効率的に実施するため、平成16年度からWISHネットワークを使用した都道府県等食品検査データネットワークシステムを構築することとしている。
 本システムは、各都道府県等で行われた収去検査の結果について、違反となった食品又は問題がないとされた食品等の情報を厚生労働省及び各都道府県等が共有化することにより、全国的な違反状況の把握、同一食品に関する検査の重複の回避等が可能となり、的確な監視対象の設定に資することを目的としている。システムの構築に当たっては、各都道府県等の意見も十分に取り入れたいと考えているので、御協力をお願いする

(7)自主的な衛生管理体制の強化について
 食品安全基本法第8条では、食品等の生産、製造、加工、輸入、販売等に携わる食品関連事業者が、消費者に食品等を供給する者として、食品の安全性を確保する第一義的責任を有していると規定している。
 このことを受け、今回の食品衛生法の改正で、食品等事業者について、販売食品等の安全性を確保するため、販売食品等の安全性の確保に係る知識及び技術の習得、原材料の安全性の確保、自主検査の実施、記録の作成及び保存等の責務規定が設けられた。
 これらの責務規定はいずれも努力義務としているが、食品等事業者に対し、当該規定の趣旨を御理解いただき、的確な実施について指導されるようお願いする。
 特に、記録の作成及び保存は、違反の発見時や食中毒発生時における問題食品の早期の特定、排除を可能とし、問題食品の流通や食中毒の拡大の防止を迅速、効果的かつ円滑に実施するために導入されたものである。当該規定の運用の統一化を図るため、「食品衛生法第1条の3第2項の食品等事業者の記録の作成及び保存に係る指導(ガイドライン)」(平成15年8月29日付け食安発第0829001号、別添)を示したところであるが、これに基づく指導、周知についてよろしくお願いする。
 食品衛生責任者の設置、食品衛生指導員の活動等を通じた事業者自らによる衛生上の管理、指導体制の推進等についても引き続き指導、協力をお願いする。
 また、食品衛生の向上に関わる人材の育成及び資質の向上を図るために必要な措置は、各都道府県等が行うこととされたが、講習会の開催、ホームページによる最新の情報の提供等により適切に対応されたい。

 輸入食品については、昨年8月に厚生労働大臣から告示された食品衛生に関する監視指導指針に基づき、今後策定する輸入食品監視指導計画において、検疫所が輸入者等が行う自主的な衛生管理についての指導項目に基づき、指導強化する予定である。

 また、輸入食品関係業者の自主的衛生管理の推進を図るため、(社)日本輸入食品安全推進協会が輸入食品衛生管理者養成事業を実施しており、平成16年度においては、東京、大阪において講習会を開催する予定である。

(8)HACCPシステムによる衛生管理の推進について
 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による衛生管理方法に基づく総合衛生管理製造過程による食品の製造等の厚生労働大臣承認制度については、平成8年5月より施行されており、平成15年12月31日現在、乳156施設・264件、乳製品186施設・270件、食肉製品86施設・158件、魚肉練り製品24施設・32件、容器包装詰加圧加熱殺菌食品39施設・46件、清涼飲料水56施設・93件が承認されている。
 今回の食品衛生法の改正において、この承認に3年間の有効期間を定め、更新制を導入したが、更新手続の詳細については実施要領を改正し、近日中に通知することとしている。
 当該制度に係る業務については、地方厚生局において実施しており、承認審査、指導及び監督の実施体制の強化を図っているところであるが、監視指導における連携を図る観点から各地方厚生局が実施する現地調査等に各都道府県等の食品衛生監視員の同行等を依頼することがあるので今後とも御協力をお願いする。
 HACCPの推進に当たっては、行政の役割として、営業者にとって参考となる食品ごとの一般的なHACCPモデルの作成・提示や営業者に対する統一的かつ的確な助言・指導、承認後の監視が必要不可欠である。厚生労働省においては、各都道府県等の食品衛生監視員を対象としたHACCPに関する講習会をブロック毎に開催していたところであるが、今後は国立保健医療科学院における特別課程(食品衛生監視指導コース)を活用していくこととしているので、担当職員の研修への派遣について御配慮をお願いする。
 平成10年7月に施行された「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」は、製造過程の管理の高度化を図ることが容易となる施設整備を金融・税制面で支援するものであり、これを行おうとする事業者に対しても、必要に応じて、適切な指導、助言等をお願いする。なお、同法は5年間の時限立法であったが、食品産業におけるHACCPによる衛生管理の更なる普及・促進を図る観点から、昨年6月に同法の廃止期限が5年延長され、平成20年6月30日までとされた。

(9)その他監視指導等について
(1) 食品等事業者の管理運営に関するガイドラインの策定
 法第19条の18第2項に基づき都道府県が営業施設の衛生管理上講ずべき措置を条例で定める場合の技術的助言として、「管理運営基準準則」(昭和47年11月6日付け環食第516号、別記1)をお示ししてきた。
 今般、食品衛生法の改正を契機として、コーデックス(CODEX)が示している食品衛生の一般原則(General Principles of Food Hygiene CAC/RCP 1-1969, Rev.3-1999,Amd.1999)の内容等を参考に「管理運営基準準則」を全面的に見直し、新たに「食品等事業者の管理運営に関するガイドライン」として通知することとしているので、条例により新たな基準を策定する際に参考とされたい。
 なお、今回の食品衛生法の改正に伴い食品衛生法行規則別紙様式第5で定める監視票が廃止されるが、指針と併せて通知することとしているので業務の参考とされるようお願いする。

(2) アレルギー表示
 アレルギー物質を含む食品については、平成14年4月から、消費者の健康危害の発生を防止する観点から、特に発症数、重篤度から勘案して必要性の高い5品目のアレルギー物質を含む食品について、これらを含む旨の表示を義務化したところである。
 しかしながら、表示の違反事例が相次いで発生したことから、平成15年4月にアレルギー物質を含む食品の表示の徹底及び違反事例の報告についてお願いしているところである。
 現在も本件に係る違反事例が継続して報告されており、昨年7月には、アレルギー物質を含む食品を原材料として含む旨の表示がなされていなかった食品を喫食したのち、健康被害が発生した事例も報告されていることから、各都道府県等にあってはアレルギー物質の検査体制の整備を推進するとともに、今後も引き続き本件に係る違反事例の報告についてよろしくお願いする。また、収集された違反事例については、消費者への情報提供及び意識の向上のため、定期的に厚生労働省ホームページにて公表することとしているので、御了知願いたい。
 最近では、原材料としてアレルギー物質を使用していない食品であっても、製造工程におけるアレルギー物質のコンタミネーションが原因でアレルギー症状を惹起する可能性が指摘されている。
 このような現状を踏まえ、「アレルギー物質のコンタミネーション防止対策等の徹底について」(平成15年11月18日付け)により、製造ラインの洗浄等のコンタミネーションの防止対策の実施及び注意喚起のための表示を行うよう貴管下の関係事業者に対する指導方よろしくお願いする。

(3) タール色素の製品検査実施機関の変更について
 タール色素の検査業務は、これまで国立医薬品食品衛生研究所大阪支所において行っていたが、昨年12月10日の政令改正により当該業務を登録検査機関が行うこととなった。(本年2月27日施行)
 これに伴い、今年度まで試験品のサンプリング等を関係自治体に委託契約を行いお願いしていたが、2月27日より当該業務のすべてを登録検査機関で行うこととなるため、来年度以降のタール色素検査に係る国と自治体との委託契約はなくなることとなるのでよろしくお願いする。
 なお、施行日前に国立医薬品食品衛生研究所で検査したタール色素の検査証紙などについては従前の例によることとしているので、監視指導等にあたっては留意してください。

(4) ダイオキシン摂取量調査結果について
 ダイオキシン対策としては、平成8年度よりダイオキシン類の推定一日摂取量調査を行っている。平成13年度の調査では1.63pg/TEQ/kg体重/日であり、耐容一日摂取量の4pg/TEQ/kg体重/日を下回っていた。平成14年度の結果についても現在取りまとめを行っており、まとまり次第ホームページ等で公表することとしている。

(5) 輸出水産食品検査の都道府県等における実施について
 EU域内及び米国に輸出される水産食品については、その加工施設等がEUや米国の定めた要件に適合しなければならないこととされている。このため、厚生労働本省において手続きを定め、各都道府県において地域産業の支援の観点から輸出を希望する施設について認定等の業務が行われており、現在までに対EU輸出水産食品の認定施設は15加工施設及び3保管施設、対米輸出水産食品の認定施設は85加工施設及び43保管施設がある。
 今後とも、対EU及び対米輸出水産食品に係る施設認定事務等について、各地方厚生局の食品衛生担当部局とも連携の上、実施方よろしくお願いする。
 また、我が国から中国に輸出される水産食品については、平成14年12月末、中国政府より、中国の水産物に関する衛生要件が改正され、対中国輸出水産食品に対して平成15年6月30日より新様式の衛生証明書の添付が必要である旨、各国に対して連絡があったところである。
 このため、我が国と中国当局と調整(中国の水産物の衛生基準、水産食品を取り扱う施設の施設登録要件、衛生証明書の発給機関など)状況を踏まえ、同7月18日から暫定的に各地方厚生局において新制度に対応した衛生証明書の発給を行ってきたところであるが、対米、対EU輸出関係事務同様、地域振興の支援の観点から本来都道府県等を中心に対応するべき業務でありことから、今後、対中国輸出水産食品に係る衛生証明書の発行業務については、都道府県等が行うこととする方向で検討を進めている。
 なお、現在、オーストラリア政府とも対豪州輸出水産食品に添付する我が国の衛生証明書について協議を行っていることを申し添える。

(10)組換えDNA技術応用食品等の安全性確保について
 組換えDNA技術応用食品・食品添加物(以下「遺伝子組換え食品」という。)については、近年、遺伝子組換え食品の国際的な広がりや新たな遺伝子組換え食品の開発が予想されること等から、平成13年4月から、国による安全性審査を食品衛生法に基づく規格基準として制度化し、法律上義務化している。
 具体的には、申請のあった遺伝子組換え食品について、食品安全委員会の健康影響評価を基に、個別の品種・品目ごとに安全性審査を行い、この手続を経た旨を公表することとしている。これまでのところ、大豆、とうもろこし等55品種の食品と12品目の添加物について安全性審査を行い、人の健康に影響がないことを確認している。
 また、安全性審査の手続が終了していない遺伝子組換え食品が、輸入・販売されないよう、検疫所においてモニタリング検査を行っている。


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