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11.麻薬・覚せい剤等対策

(1)第三次覚せい剤乱用期と薬物乱用対策推進本部

 
現状

  ○ 我が国における薬物事犯は、覚せい剤事犯が最も多く、その検挙者数は平成14年において16,964人(前年:18,110人)と依然高い水準で推移している。また、覚せい剤の押収量も、減少傾向にあるものの大量押収が頻発するなど、依然として「第三次覚せい剤乱用期」の深刻な情勢が続いている。
 また、最近では、大麻事犯の急増、MDMAの大量押収など、乱用薬物の多様化が進んでいる。

  ○ 覚せい剤事犯における未成年の検挙者数は、平成14年は749人(前年:954人)、(うち、中学生44人、高校生66人)(前年:中学生45人、高校生83人)と、依然として高い水準にあり、また、薬物の入手可能性等の社会環境は改善されておらず、青少年の薬物乱用状況は、依然として厳しい情勢にある。

覚せい剤事犯検挙者数の年次推移
覚せい剤事犯検挙者数の年次推移のグラフ

  ○ 薬物乱用対策推進本部が昨年7月に策定した「薬物乱用防止新五か年戦略」に基づき、関係省庁が連携し、各種の薬物乱用対策を進めており、厚生労働省においても、取締りの強化、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進、国際協力の推進などの各種施策の充実強化に努め、引き続き総合的に取り組んでいる。

  ○ 政府の犯罪対策閣僚会議が昨年12月に策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても、誰もが安心して暮らせる安全な社会の実現のため、薬物犯罪を含む各種犯罪の予防、取締り等対策に積極的に取り組むこととしている。

 
都道府県への要請

  ○ 各都道府県に設置されている薬物乱用対策推進地方本部においても、国の取組を踏まえて、取締りの徹底、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進等、一層効果的・積極的な取組をお願いする。


(2)麻薬・覚せい剤等の取締りと適正管理

 
現状

  ○ 最近の薬物事犯の特徴は、従来の暴力団に加え、イラン人等外国人犯罪組織による組織的密売の増加や検挙者の国籍の多様化のほか、携帯電話やインターネットを用いた密売など、複雑かつ巧妙化している。
  ○ 地方厚生局麻薬取締部においては、これら薬物密売組織や末端乱用者に対する徹底した取締りに一層努力することとしており、関東信越厚生局麻薬取締部及び近畿厚生局麻薬取締部に特別捜査課を新設するなど取締体制の強化を図った。
 また、平成16年度においては、東海北陸厚生局麻薬取締部及び九州厚生局麻薬取締部に新たに捜査第二課を設置し、麻薬取締官10名を増員して取締体制の更なる強化を図ることとしている。
  ○ 病院・診療所及び薬局における向精神薬の盗難・所在不明事故件数は、平成14年は59件(前年:65件)であり、麻薬、向精神薬、覚せい剤原料等の製造業、卸売業者、医療施設、研究施設等に対する各都道府県の麻薬取締員等による立入検査等は、正規薬物の不正ルートへの横流れを防止する上で重要となっている。

 
都道府県への要請

  ○ 各都道府県に置かれている麻薬取締員について、麻薬取扱者等への立入検査に加え、麻薬等犯罪取締についても積極的な対応をお願いする。
  ○ 麻薬取締官が行う犯罪捜査についても引き続き協力をお願いする。
  ○ 都道府県の麻薬取締員等により実施されている薬局、医療機関等の麻薬取扱者等への指導監督にあたっては、一層の管理徹底の周知をお願いする。
  ○ 保険調剤薬局勤務の薬剤師による医療用麻薬等の大量持ち出し、譲り渡し事件など、医療機関に関わる事件も起きており、医療機関等への一層の注意喚起と共に、麻薬取締員による取締りの徹底についてあらためてお願いする。


(3)啓発活動の充実

 
現状

  ○ 薬物乱用の多くは、薬物に対する正しい知識が不十分でその恐ろしさを知らないことに起因しており、特に青少年に対しては、できるだけ早い時期から薬物乱用防止に関する啓発を行うことが重要である。

  ○ 「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」、「麻薬・覚せい剤乱用防止運動」の全国的な展開、薬物乱用防止キャラバンカー(8台)の学校、地域の場への派遣等を通じて、啓発活動の推進を図っている。
 また、地域の中心的な指導員を養成するための研修会の開催や講演等に活用できるCD−ROMの作成とともに、指導員が主体となった地域での対話集会の開催等を通じて、薬物乱用防止指導員による地域における啓発活動の一層の推進を図っている。
 さらに、平成16年度より、未成年労働者等を対象とした予防啓発活動を展開し、児童生徒以外の青少年(有職・無職少年)に対する啓発活動の強化を図ることとしている。

 
都道府県への要請

  ○ 全国の各地域で、薬物乱用防止キャラバンカーや啓発用読本等の啓発資材を活用するとともに、薬物乱用防止指導員による活動や麻薬・覚せい剤乱用防止運動等の実施に当たり、効果的な啓発活動の取組をお願いする。

  ○ 平成13年度より開始した薬物乱用防止指導者研修事業については、各都道府県における薬物乱用防止指導員の積極的な参加について、引き続きご協力をお願いする。


(4)再乱用防止対策の充実

 
現状

  ○ 薬物犯罪の大きな特徴は、再犯性が高いことであり、本人の再乱用を防止するのみならず、新たな薬物乱用者を作らないという意味においても、薬物依存の治療と社会復帰への取組を行い、再乱用の防止対策を充実することが必要である。
  ○ 平成11年より、全国の精神保健福祉センターにおいて、(1)技術指導及び技術援助、(2)薬物関連問題に関する知識の普及、(3)薬物関連問題に関する家族教室の開催、(4)個別相談指導を行うことを内容とする「薬物関連問題相談事業」を実施している。

 
都道府県への要請

  ○ 各都道府県及び薬物乱用対策推進地方本部におかれては、引き続き本事業の円滑な推進に努められるとともに、保健所、精神保健福祉センター、医療機関、保護観察所、地方厚生局麻薬取締部、警察等の関係機関間における薬物乱用・依存に関する相談・指導業務ネットワークの整備をお願いする。
  ○ 「薬物関連問題相談事業」に取り組んでいない都道府県等においては、地域の薬物乱用の実情に即して本事業を活用するなど、再乱用の防止対策の充実に努められたい。


(5)国際協力の推進

 
現状

  ○ 平成10年の国連麻薬特別総会から5年目に当たる平成15年4月、国連麻薬委員会閣僚級会合がウィーンで開催され、平成10年の政治宣言に基づく薬物乱用対策のフォローアップが行われた。
  ○ 「海外麻薬行政官研修((社)国際厚生事業団実施)」及び「日米協力による開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修(国際協力事業団委託により(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター実施)」が開催されており、平成15年は東京都、大阪府に御協力をいただいたところ。
  ○ 本年2月には、覚せい剤等の原料物質の輸出入管理の強化を図るため、アジア地域の原料供給国及び米国関係機関、国連機関の担当者による国際フォーラムを日本で開催する予定である。


(6)脱法ドラッグ対策

 
現状

  ○ 近年、多幸感、快感等を高めるものとしてインターネット等で、「合法ドラッグ」と称して販売されているものがあるが、これらは、薬事法上の医薬品に該当するものも多く、行政としてはいわゆる「脱法ドラッグ」と呼んでいる。これらは、麻薬等の薬物乱用の契機となることが危惧されることから、従来より取締りを強化しているところである。
  ○ 近年における販売実態を踏まえ、平成13年度から予算計上し、(1)インターネット上の広告監視、(2)全都道府県での買上げ調査を実施している。

 
平成16年以降の予定事項

  ○ 平成16年度においても引き続き予算として、以下の対策を講じるための経費を計上しており、今後、取締りの更なる強化を図っていく予定である。
(1)インターネット上の広告監視の実施 128万円
(2)全都道府県での買上げ調査の実施 712万円

 
都道府県への要請

  ○ 今後も、全都道府県での買上げ調査を行うこととしているので、本事業の円滑な実施への協力方お願いしたい。
  ○ 買上げ調査に基づき必要な措置を講じる等、監視指導の一層の強化をお願いしたい。



(参考)

I エイズ訴訟の和解等

 1.エイズ訴訟の和解内容
 (1)一時金 1人 4,500万円 (製薬会社6割、国4割負担)
 (2)発症者健康管理手当 月額15万円 (製薬会社6割、国4割負担)
 (3)未提訴者の取扱い
 未提訴者についても、訴えの提起を待って、非加熱製剤の使用によるHIV感染の事実についての証拠調べを実施した上、順次和解の対象とする。

 和解に関する照会先


厚生労働省医薬食品局総務課医薬品副作用被害対策室
住所 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL(03)3595-2400



 2.健康管理費用について
 血液製剤によるHIV感染者であってエイズ発症前の者に対し、「健康管理費用」を支給し、健康状況を報告していただき、HIV感染者の発症予防に役立てる事業

  CDの値が200を越える者 月額 36,030円(平成15年度単価
CDの値が200以下の者 月額 52,030円(
 (CD4:免疫機能の状態を示すT4リンパ球の1μリットル当たりの数)

 健康管理費用の支給に関する照会先


医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 業務部 調査研究事業担当
住所 東京都千代田区霞が関3−3−2 TEL(03)3506-9415



II クロイツフェルト・ヤコブ病訴訟の和解等

 1.クロイツフェルト・ヤコブ病訴訟の和解内容

(1)和解金(定額部分3,650万円に年齢、療養期間、弁護士費用に応じた加算を行ったもの)のうち、
 企業
 ・昭和62年6月以前に手術を受けた患者については、全額
 ・昭和62年6月以後に手術を受けた患者については、2/3の金額を支払う。
 国
 ・昭和62年6月以後に手術を受けた患者について1/3の金額を支払う。

(2)国は、(1)の他、患者に一律350万円を支払う。

 この他、ヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」の移植の有無にかかわらず、患者・家族の負担を軽減する観点から、「国の法的責任」の問題とは別に、
  ・ 医療費の自己負担を全額公費負担
  ・ 訪問介護員の派遣
等の支援を行っているところであり、引き続き、現行の医療、介護、福祉の枠組みの中で最善の対応を図ることとしている。

 2.「ヤコブ病サポートネットワーク(略称;ヤコブネット)」について

 ヤコブネットは、クロイツフェルト・ヤコブ病患者の遺族等が行う電話相談を中心とした事業を行うものである。

 (主な相談内容)
  ・ ヤコブ病患者・家族に対する医療情報の提供、各種福祉制度の紹介
  ・ 遺族に対する精神的なサポート
  ・ 過去に脳外科手術を受け、ヒト乾燥硬膜移植の可能性があるために、将来のヤコブ病発症の不安に悩む者に対する相談 等

* ヤコブネットの照会先





〒508-0041 岐阜県中津川市本町4-2-28 TEL(0573)62-4970
 (支部の連絡先)東日本 TEL(03)5391-2100
中部 TEL(0573)62-4970
西日本 TEL(0748)72-1478







(参考)

麻薬・覚せい剤事犯の推移


1.法令別検挙人員(人)
  平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年
麻薬及び向精神薬取締法 280 286 254 271 327
うちヘロイン 65 52 48 36 43
うちコカイン 98 87 63 58 55
うち向精神薬 44 57 35 42 37
あへん法 134 128 67 49 55
大麻取締法 1,316 1,224 1,224 1,525 1,873
覚せい剤取締法 17,084 18,491 19,156 18,110 16,964
合計 18,814 20,129 20,701 19,955 19,219
注)厚生労働省・警察庁・海上保安庁の統計資料による。


2.主な薬物の押収量(kg) 但し、MDMA等錠剤型合成麻薬は(錠)
  平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年
ヘロイン 3.9 2.0 7.0 4.5 20.9
コカイン 20.8 10.3 15.6 23.7 17.0
あへん 19.8 7.7 9.0 11.4 5.7
乾燥大麻
(大麻たばこを含む)
120.9 565.9 310.3 844.0 256.5
大麻樹脂 214.6 200.3 185.4 73.5 275.3
覚せい剤 549.7 1,994.5 1,030.5 419.2 442.1
MDMA等錠剤型合成麻薬 11,419 23,221 78,006 112,568 190,280.5
注)厚生労働省・警察庁・財務省・海上保安庁の統計資料の統計資料による。


3.覚せい剤事犯における未成年検挙者の推移(人)
  平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年
覚せい剤事犯検挙者総数 17,084 18,491 19,156 18,110 16,964
うち未成年者 1,079 1,003 1,148 954 749
うち中学生 39 24 54 45 44
うち高校生 103 81 105 83 66
注)厚生労働省・警察庁・海上保安庁の統計資料による。


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