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10.化学物質・毒物劇物安全対策

(1)毒物劇物対策
 毒物及び劇物については、各都道府県、保健所設置市及び特別区に置かれた約3,400名の毒物劇物監視員が、毒物及び劇物取締法に基づき、毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び業務上取扱者について、(1)登録・許可・届出状況、(2)製造・販売、取扱場所の状況、(3)譲渡・交付手続き、(4)表示の適否、(5)盗難紛失の防止措置、漏洩防止措置等の監視を行うとともに、貯蔵、運搬、廃棄に関する技術基準等を遵守するよう指導を行っている。

 
平成15年に実施した事項
  ○ 登録・届出・許可施設94,283施設のうち延べ35,869施設(検査率38.0%)及び届出の不要な施設のうち5,104施設、合計41,448施設に対して立入検査を行った結果、5,579施設において違反が発見されており(発見率13.5%)、これらに対し改善の指導を行った。(平成14年度実績)
  ○ 現下のテロ情勢、とりわけ最近におけるイラクをはじめとする中東地域等のテロ情勢にかんがみ、改めてテロ情勢に的確に対応し、万全を期すため、平成15年12月、毒物劇物の保管管理の徹底等について、関係業者・団体等に対し一層の周知徹底等を要請した。

 
都道府県への要請
  ○ 事故が発生すると被害が大きくなる傾向にある製造業及び運送事業者、届出義務はないが毒劇物を大量に使用している化学工場等及び取扱量は少量であるものの保管管理に関する意識が薄いと言われている研究機関・病院等における業務上取扱者の把握に努め、立入検査を重点的に行うようお願いする。
  ○ 毒物又は劇物の盗難や運搬中に紛失する事例が散発している。こうした事件が発生しないよう、毒劇物を取り扱う事業場等における毒劇物の保管管理や盗難防止の徹底に御協力をお願いするとともに、そのような事故が発生した場合には、関係機関や住民等に対して、速やかに情報提供を行うなどにより、当該毒劇物による事故等の未然防止に努めるようお願いする。
  ○ 毒物劇物営業者等が販売等にあたって行うべき毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報(MSDS)の提供が適正に行われるよう一層の指導をお願いする。


(2)化学物質安全対策

(1) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)について
 難分解の性状を有し、継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれのある化学物質による環境の汚染を防止するため、昭和48年に制定された法律。新規の化学物質の事前審査制度を設けるとともに、化学物質の性状に応じて、製造、輸入、使用等に関する規制を行うことを定めている。厚生労働省、経済産業省及び環境省の3省が共管している。

 
平成15年に実施した事項
  ○ 化学物質の審査・規制制度を巡る国際的な動向、14年1月のOECDによる環境保全成果レビューの勧告等を踏まえ、化学物質の環境中の生物への影響に着目した新たな対応を図るとともに、リスク評価・管理の観点から更に効果的な制度とするため、所要の法律改正に向けた準備を進めてきた結果、化審法の一部を改正する法律が15年5月28日に公布された。改正化審法は、本年4月1日に施行されることになっており、必要な省令改正等の準備を現在行なっている。

(改正化審法のポイント)
 ○ 環境中の動植物への影響に着目した審査・規制制度の導入
 化審法の目的に、動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境汚染の防止を追加し、環境中の動植物への被害の防止の観点からも化学物質の審査・規制を行うこととする。
 ○ 難分解・高蓄積性の既存化学物質に関する規制の導入
 現行法においては、難分解性で高蓄積性の性状を有し、その毒性が不明な既存化学物質については、統計調査による製造・輸入実績の把握や行政指導により環境中への放出の抑制を図ってきた。今般の改正において、これらの化学物質の毒性の有無が明らかでない段階においても、第一種監視化学物質として、製造・輸入実績数量の届出義務を課すなど法的な管理の下に置くこととし、併せて、必要に応じて製造・輸入事業者に対して毒性の調査を求めることができることとする。
 ○ 環境中への放出可能性に着目した審査制度の導入
 現行法においては、原則的に化学物質の環境中への放出可能性にかかわらず事前審査を義務づけているが、この点に着目して以下の措置を講じることにより、一層効果的・効率的な審査制度とする。
 全量が他の化学物質に変化する中間物や閉鎖系の工程でのみ用いられるものなど、環境中への放出可能性が極めて低いと見込まれる化学物質については、現行の事前審査に代えて、そうした状況を事前確認・事後監視することを前提として、製造・輸入ができることとする。
 高蓄積性がないと判定された化学物質については、製造・輸入数量が一定数量以下と少ないことを事前確認・事後監視することを前提として、毒性試験を行わずにその数量までの製造・輸入ができることとする。

 ○ 事業者が入手した有害性情報の報告の義務付け
 現行法では、製造・輸入事業者は、新規化学物質の審査時以外には試験データ等の有害性情報を国に報告することは求められておらず、製造・輸入事業者が入手した有害性情報が有効に活用されていない。このため、化学物質の製造・輸入事業者が化学物質の有害性情報を入手した場合には、国へ報告することを義務付けることとする。

 
平成16年以降の予定事項
  ○ 4月1日の改正化審法施行に向け、引き続き、順次必要な省令改正等を行う予定。


(2) 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律について
 事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止するため、1)特定の化学物質の環境への排出量等把握に関する措置、2)事業者による特定の化学物質の性状及び取扱いに係る情報の提供に関する措置について定めた法律(平成11年制定)。厚生労働省は、業所管省としての立場に加え、経済産業省及び環境省とともに、第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質を指定する立場からこの法律を所管している。

 
平成15年中の実施事項
  ○ 平成14年度より、PRTR法の対象業種となっている事業者(従業員数21人以上)による第一種指定化学物質の排出量及び移動量(平成13年度実績)の届出が開始され、平成15年3月には、集計結果が得られたことから、厚生労働省が所管する業に係るデータの集計結果を公表した。

 
平成16年以降の予定事項
  ○ 平成15年度に引き続き、事業者より提出されるデータをもとに第一種指定化学物質の排出量及び移動量の集計作業を行い、結果を公表していく予定。
  ○ 現在の届出対象事業者は、5トン以上の対象化学物質を取り扱う事業者に限定されているが、平成16年度からは1トン以上を取り扱う事業者まで対象が拡大されることとなっている。

 
都道府県への要請
  ○ 第一種指定化学物質の排出量及び移動量は、対象となる事業所の所在地を管轄する都道府県知事あてに届出が行われ、その後、国に集積されていくことになっているので、様式の確認、本事業の理解促進等の取組について御協力願いたい。
  ○ 国に集積されたデータは、ニーズに応じて活用できるようにしていく予定であるので、貴管下の事業者への技術的助言、指導等が円滑に推進されるよう御協力願いたい。


(3) 内分泌かく乱化学物質対策の推進
 厚生労働省では主として健康影響の観点から、国際的な枠組みや他省庁との協力により、必要な調査研究及び検討を進めている。

 
平成15年中の実施事項
  ○ 「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」中間報告書追補に記された行動計画に基づき、平成15年度厚生労働科学研究において、調査研究等を実施した。

 
平成16年以降の予定事項
  ○ 引き続き、上記行動計画(スクリーニング試験系の試験法ガイドライン、生体試料の採取・分析法ガイドライン及びリスクコミュニケーションガイドラインの策定等)を実施する。

 
都道府県への要請
  ○ 上記実施結果や試験結果については適宜情報提供を行っていく予定であるので、関係各方面への周知等御協力をお願いする。


(4) 室内空気汚染対策の推進
 関係省庁間で連携・協力して、原因分析、基準設定、防止対策、相談体制整備、医療・研究対策などのシックハウス総合対策が図られているところであり、医薬食品局は室内濃度指針値の設定、測定方法の開発等を担当している。

 
平成15年中の実施事項
  ○ 厚生労働科学研究により室内汚染や健康影響の実態等に関する研究を実施した。

 
平成16年以降の予定事項
  ○ 化学物質による影響がより懸念される者(子供、妊婦等)を考慮した空気汚染の実態調査を実施する。
  ○ 測定マニュアル等の改訂を適宜行う。

 
都道府県への要請
  ○ これまでに策定した指針値やその他の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」における検討事項については、各都道府県、政令市、特別区あて通知し、関係者への周知等をお願いしているところである。今後とも適宜情報提供を行うこととしているので引き続き御協力をお願いする。


(3)家庭用品中化学物質安全対策
  有害物質を含有する家庭用品について保健衛生上の見地から必要な規制を行うことにより、国民の健康保護に資するため昭和48年に制定された法律。現在17物質が「有害物質」として定められている。

 
平成15年中の実施事項
  ○ 以下の2点について、薬事・食品衛生審議会の答申が出されたところ、
 ジベンズ〔a,h〕アントラセン、ベンズ〔a〕アントラセン及びベンゾ〔a〕ピレンを新たに「有害物質」として指定し、クレオソート油を含有する家庭用の木材防腐剤又は木材防虫剤中の濃度をそれぞれ10ppm以下とすること、並びにクレオソート油又はその混合物で処理された家庭用の防腐木材又は防虫木材中の濃度をそれぞれ3ppmとすること。
 ホルムアルデヒドの試験にガスクロマトグラフ法も用いることもできることとすること。

 
平成16年以降の予定事項
  ・ 上記の答申を受けて、平成16年前半に政省令を改正し、所要の経過措置を付して施行する予定。

 
都道府県への要請
  ○ 上記改正予定の内容について、御了知の上、関係団体等への周知徹底をお願いする。また、監視のための測定体制の整備等、周到な準備を図られたい。


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