目次  前へ  次へ

生活習慣病対策室


1.生活習慣病対策

(1) 生活習慣病の一次予防について
 がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病は、日常の生活習慣を見直すことにより相当程度予防できる。しかし、痛みなどの自覚症状がないまま発症・進行し、結果として死亡や要介護状態につながる重篤な症状にいたる場合が多い。生活習慣病の患者は近年著しく増加傾向にあるにも関わらず、生活習慣病という言葉の意味を理解している者は3割にとどまるという状況(平成12年2月の総理府世論調査結果)にあり、無自覚を自覚に変え、生活習慣を見直す機会が得られるよう、生活習慣病に関する知識を普及啓発することが重要な政策課題となっている。
 このため、2月1日から7日の1週間を「生活習慣病予防週間」として、毎年新たに標語を定め、ポスターやシンポジウムを活用するなど生活習慣の見直しによる疾病の発症・進行の防止の意義などについて、国民の認識の醸成を図っていくこととしている。
 本年の標語は、一般公募の結果、「健康は日々の暮らしの積み重ね」に決定した。
 本週間の実施に関する実施要項はすでに通知しているとおりであるが、各地方公共団体におかれても広報・宣伝などの方法に創意工夫をこらし、効果的な普及啓発に努められるよう御協力をお願いする。
 
(2) がん対策について
 がん対策については、平成6年度より開始された「がん克服新10か年戦略」の一環である研究事業を着実に推進することとしている。
 また、我が国に多いがん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん等)について、住民がその日常の生活圏域の中で全人的な質の高いがん医療を受けることができる体制を確保する観点から、平成13年より地域がん診療拠点病院を整備することとしているが、その推薦及び積極的な整備に努めるようお願いする。 がん対策については、昭和59年度より開始された「対がん十カ年総合戦略」及び、それに引き続く第2次がん戦略として平成6年度より開始された「がん克服新10か年戦略」を中心にがん研究の充実を図ってきているが、さらに平成16年度より第3次がん戦略を開始することとしており、「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催し、その内容等につき検討を行っているところである。
 
(3) 脳卒中対策について
 脳卒中は、我が国の主要な死因であるとともに、後遺症を残し、寝たきりの原因の4割を占めるなど、社会的影響の極めて大きい疾病であり、医療費や介護の面からも深刻な課題となっている。脳卒中の発症は、喫煙、高血圧、糖尿病など、生活習慣が大きく関係しており、生活習慣の改善を促す対策が重要である。また、発症後については、急性期の治療、発症早期からのリハビリテーションが重要である。
 このため、平成10年6月に「脳卒中対策に関する検討会」を設置し、平成11年8月に検討会での議論を中間的にとりまとめた。
 本中間報告を踏まえ、脳卒中の正しい知識や予防の重要性等について、国民への普及啓発を行っていくこととしているので各地方公共団体におかれても、地域に密着した施策の展開をお願いする。
 
(4) 糖尿病対策について
 平成9年11月に実施された糖尿病実態調査では、糖尿病が強く疑われる人が690万人、可能性を否定できない人を含めると1,370万人と推計され、国民の健康上の深刻な問題となっている。
 このため、国民に対して、糖尿病の早期発見、早期治療の重要性等その予防・進行防止に関する普及啓発を行っていくこととしているので、各地方公共団体におかれても地域に密着した施策の展開をお願いする。
 本年度各地方公共団体の御協力により、平成14年度糖尿病実態調査を国民栄養調査とともに実施したところである。本調査結果を踏まえ、厚生労働省においても糖尿病対策の一層の推進を図ることとしている。なお、調査結果は平成15年度末までに各地方公共団体あて送付する予定であるので、地域の糖尿病対策の充実のため活用されるようお願いする。
 
(5) 国民健康・栄養調査等について
 本年5月1日より施行される健康増進法に基づき、本年11月に国民健康・栄養調査を実施する予定である。
 国民健康・栄養調査は、これまで栄養改善法に基づき実施されてきた国民栄養調査を拡充し、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするために実施するものである。
 現在、「健康日本21評価手法検討会調査分科会」において調査内容等のあり方について検討を行っているところであり、3月までにまとめる予定である。
 なお、昨年12月に、平成13年国民栄養調査の概要を公表したところであり、調査結果を踏まえ、国民の食生活の改善支援の効果的な推進をお願いする。
 
(6) 食生活指針の普及啓発について
 食生活指針は、国民の健康を保持・増進する観点から、国民一人一人が食生活の改善に対する自覚を持ち、実践できるよう、日常の食生活において留意すべき事項を具体的なガイドラインとして示したものであり、平成12年3月に、文部省、厚生省及び農林水産省の連携により新しい「食生活指針」を策定し、その推進について閣議決定したところである。
 さらに、同年12月には、食生活指針の策定趣旨等について解説した「食生活指針の解説要領」を3省共同で作成するとともに、食生活指針の推進について3省の連携内容等を示した「食生活指針の推進に係る文部省・厚生省・農林水産省の連携方策」を策定したので、これらの内容を十分に踏まえ、関係者が緊密に連携しつつ、各地域や対象者の実情にあわせ、食生活指針の効果的な啓発をお願いする。
 また、平成14年度中に、個人の特性に応じた食生活改善の支援方策等を検討し、平成15年度にはこれらをもとに、各都道府県等の行政栄養士等を対象とした研修を行う予定である。
 
(7) 管理栄養士・栄養士制度の見直しについて
 生活習慣病が国民の健康面における大きな課題となっている中で、個人の身体状況や栄養状態等を総合的・継続的に評価・判定し、適切な栄養指導を行うことが重要であることから、こうした業務に対応できる管理栄養士を養成するため、平成12年に栄養士法が改正された。これに伴い、高度な専門的知識及び技能をもった管理栄養士の養成を行い、栄養士の資質の向上を図るために、管理栄養士養成施設及び栄養士養成施設に係る指定の基準を改めるなど、所要の規定整備を行い、平成14年4月1日より施行されたところである。
 また、改正後の管理栄養士国家試験については、管理栄養士国家試験出題基準の改定を行い、8月に報告書として取りまとめたところである。
 なお、毎年5月に実施している管理栄養士国家試験については、平成15年5月実施の試験より、試験業務の一部を地方厚生局に移管したので、受験者等へ周知方お願いする。
 
(8) 地域における行政栄養士の業務について
 地域における行政栄養士の業務については、平成12年12月に保健医療局長から通知するとともに、行政栄養士が果たすべき具体的役割について、「地域における行政栄養士業務の基本方針」を定め生活習慣病対策室長から通知しているところである。
 今般、健康増進法が施行されるにあたり、健康日本21の地方計画推進、都道府県及び市町村における栄養指導業務の充実、国民健康・栄養調査の実施及び特定給食施設の栄養管理指導等の業務の重要性にかんがみ、行政栄養士の専門性をいかした体制の整備に特段の御配慮をお願いする。


2.たばこ・アルコール対策

(1) たばこ対策について
 喫煙は健康に与える悪影響が大きいこと、受動喫煙の危険性やニコチンの依存性を踏まえると喫煙習慣は個人の嗜好にとどまらない健康問題であること等から、平成7年4月に公衆衛生審議会から意見具申された「たばこ行動計画検討会報告書」を受けて、広く国民に対して喫煙と健康に関する正しい知識の普及啓発を中心とした対策を講じてきたところである。
 また、平成12年4月から開始した「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」において、(1)喫煙が及ぼす健康影響について十分な知識の普及、(2)未成年者の喫煙をなくす、(3)公共の場及び職場での分煙の徹底及び効果の高い分煙に関する知識の普及、(4)禁煙支援プログラムの普及、の4つの目標を掲げ推進しているところである。このため、平成14年度事業として、(1)年間を通じた普及啓発(ポスター、インターネットによる喫煙の健康影響に関する情報提供)、(2)禁煙習慣期間中の普及啓発、(3)禁煙指導者養成のための研修会の実施を行っているところである。
 第154回通常国会において「健康日本21」の法的基盤の整備として健康増進法が成立したところであり、その中でたばこ対策については、同法第25条に受動喫煙の防止として「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」という規定を設けたところである。これについては、広く民間事業者にも努力義務規定を設けて受動喫煙の防止の協力を要請するものであることから、具体的な措置について、今後、法の施行通知等で示すこととしている。
 さらに、昨年12月には厚生科学審議会において、たばこ対策に関する基本的な認識や今後のたばこ対策についての基本的な方向をまとめた「今後のたばこ対策に関する基本的考え方について」が厚生労働大臣へ意見具申されたところである。
 その中では、国民の健康増進の観点から、今後、たばこ対策に一層取り組むことにより、喫煙率を下げ、たばこの消費を抑制し、国民の健康に与える悪影響を低減させていくことが必要であるとしている。
 本年5月の採択を目途とする「たばこ対策枠組条約」に関する最後の政府間交渉が2月17日から予定されており、今後のたばこ対策の一層の強化が求められることから、今後ともたばこ対策への一層の御理解と御協力を御願いする。
 
(2) アルコール対策について
 現在、多種多様なアルコール飲料が販売されるとともに、飲酒機会が増大する中で、がんや循環器疾患等へのり患など生活習慣病患者などの増加をはじめアルコールに起因する様々な事柄が大きな社会問題となっている。
 このことから、厚生労働省では、アルコール関連問題の解決のため、各種の調査研究や平成5年10月の公衆衛生審議会アルコール関連問題専門委員会の提言等を踏まえ、各種施策を推進しているところである。
 特に、未成年者の飲酒については、「未成年者の喫煙および飲酒に関する全国調査(平成12年度厚生科学研究報告書)」によると中学1年男子の13.7%が月に1回以上飲酒し、高校3年男子では、49.9%となっており、こうした成長期の飲酒は身体的、精神的、社会的に様々な害をもたらすとされている。
 このような状況に酒類販売要件の規制緩和の動きも相まって、政府は「酒類に係る社会的規制等関係省庁連絡協議会」を平成12年4月に設置し、「未成年者の飲酒防止等対策及び酒類販売の公正な取引環境の整備に関する施策大綱」を同年8月に策定し、同年10月2日付け通知をもって、各都道府県知事、政令市長及び特別区長あてに、協力依頼を行うなどしたところである。
 また、「健康日本21」において、(1)多量に飲酒する人(1日に平均純アルコールで約60gを超えて摂取する人)の減少、(2)未成年者の飲酒をなくす、(3)「節度ある適度な飲酒」(1日平均純アルコールで約20g程度)の知識の普及、を目標として掲げて推進しているところであり、健康増進法においても、国が定める基本方針に、「健康日本21」の目標を明確に位置付けることとしている。
 従来から、精神保健センター、市町村保健センター、保健所等を拠点として、国民に対するアルコール飲料及び飲酒に起因する疾患等の正しい知識の普及啓発、アルコール飲料を飲む場合の適正飲酒の推進、多量飲酒者等アルコール問題で悩んでいる者及びその家族に対する相談指導等を行っているところであるが、今後は、これらに加え、生活習慣病の一次予防を推進する観点から「節度ある適度な飲酒」のあり方についての普及啓発を重点的に行うこととしているので御理解と御協力をお願いする。



トップへ
目次  前へ  次へ