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1 医療制度改革(医療提供体制関係)について

 平成14年度医療制度改革については、昨年9月25日厚生労働省として「医療制度改革試案」を公表し、これを基に、政府・与党において議論を進めた結果、11月29日に政府・与党社会保障改革協議会により「医療制度改革大綱」が取りまとめられたところである。
 医療制度改革を進めるに当たっては、今後の医療のあるべき姿を踏まえながら、医療の質の向上と効率化を図り、医療提供体制の改革を進めることが重要である。このため、昨年9月の「医療制度改革試案」の中で「21世紀の医療提供の姿」として、我が国医療の将来像のイメージと当面進めるべき施策を示したところである。
 また、昨年11月に政府・与党社会保障改革協議会が決定した「医療制度改革大綱」の中では、情報開示に基づく患者の選択を尊重しながら、医療の質の向上と効率化を図り、国民の医療に対する安心と信頼を確保することとしており、具体的には、
(1) 電子カルテ・レセプト電算化などの医療のIT化の推進
 電子カルテ等について目標と達成年次を年内に策定し、その実現に向けた支援措置を講ずる。
(2) 医療に係る広告規制の緩和や国民に対する医療機関情報の提供の推進
 医療に係る広告規制の緩和を今年度中に実施するとともに、医療機関情報の提供の充実を図る。
(3) 診療ガイドラインの策定などEBM(根拠に基づく医療)の推進
 EBMに基づく標準的診療ガイドラインを優先順位に沿って計画的に策定するとともに、早急にデータベースの構築を図る。
(4) 医療機関の経営の近代化・効率化のための早期検討
 医療機関の経営の近代化・効率化のための方策について、早期に検討を行い、必要な措置を講じる。医療法人の理事長要件については、今年度内に更に緩和する。
を行うこととしている。
 厚生労働省としては、別添の「医療提供体制の改革スケジュール」に基づき、医療提供体制の改革を進めていくので、各都道府県におかれては、管下医療機関、関係団体への指導等を通じて、御協力をお願いしたい。

2 医療安全対策の取組について

 医療事故を防止するためには、医療従事者の意識向上に加え、個々の職員の誤りが事故に発展しないように、各医療機関が組織的に取り組むことが重要である。このような観点から、厚生労働省では、以下のような取組を行っているところであり、各都道府県におかれても、管下医療機関、関係団体等への周知、指導、支援など積極的な協力をお願いしたい。

(1)医療安全対策に関する情報の提供

 → 医療事故防止に関するマニュアル等を作成・配布するとともに、厚生労働省のホームページにおいて、以下のような医療安全対策に関する様々な情報を提供している。
 これらの情報を各医療機関等が活用し、効果的な取組がなされるよう、各都道府県におかれても、管下医療機関等への周知をお願いしたい。

(1)医療安全対策ネットワーク整備事業(インシデント事例収集)の結果について
・ 昨年10月より、特定機能病院や国立病院・療養所を対象として、インシデント事例(事故には至らない“ヒヤリ”としたり“ハッ”とした事例)の収集を開始し、発生要因や改善方策等について検討を行っており、結果については適宜ホームページ等を通じて提供しているところである。
(2)医療安全管理体制確保に関する調査研究の結果について
・ 「医療のリスクマネジメントシステム構築に関する研究」(主任研究者:杏林大学 川村治子教授)の結果を掲載している。

(2)医療安全推進週間の制定(本年度は11月25日からの1週間)

 → 厚生労働大臣提唱の「患者の安全を守るための医療関係者の共同行動(Patient Safty Action)」の一環として、本週間を中心として、シンポジウム等を開催することとしている。
 各都道府県におかれても、本週間にあわせて様々な事業を実施し、関係者の意識啓発を図っていただきたい。

(3)医療安全対策のグランドデザインの策定

 → 医療安全対策検討会議において検討を行っており、本年春には、医療安全体制の確保に当たっての問題点の解決方法等についてグランドデザインとして策定する予定である。

3.医療分野のIT化について

 情報技術を活用した今後の望ましい医療の実現を目指して、「保健医療情報システム検討会」において検討を進めてきたところであるが、昨年12月26日、平成14年度から概ね5年間の「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」がとりまとめられたところである。
 厚生労働省としては、このグランドデザインを踏まえ、電子カルテ、レセプト電算処理システムの目標の達成に努めることとしており、2次補正予算において「電子カルテ導入施設整備事業」等を実施するなど、その普及に向けて各般の施策を行っていくこととしている。
 各都道府県におかれては、電子カルテ、レセプト電算処理システムの普及に向けて、医療機関に対する指導・支援など格段の御協力をお願いしたい。

◇医療情報システム構築のための達成目標の設定

【電子カルテ】
平成16年度まで 全国の二次医療圏毎に少なくとも一施設は電子カルテの普及を図る
平成18年度まで 全国の400床以上の病院の6割以上に普及
全診療所の6割以上に普及
【レセプト電算処理システム】
平成16年度まで 全国の病院の5割以上に普及
平成18年度まで 全国の病院の7割以上に普及

4 地域医療体制の確保について

(1)医療計画

 地域における医療体制については、各都道府県において医療計画を策定し確保しているところである。
 昨年度の第4次医療法改正において、各都道府県において地域の実情がより反映された基準病床数を算定できるよう、入院率や流入・流出患者数の設定を一定の範囲内で都道府県知事の裁量により設定できることや、平均在院日数の短縮化を踏まえた平均在院日数推移率の新設などの改正がなされたところである。各都道府県におかれては、改正の趣旨を踏まえ、できるだけ速やかに医療計画の見直しを行っていただきたい。
 計画の見直しに当たっては、各医療圏における公的医療機関の位置づけや役割について、地域の関係者から幅広く意見を聞き、十分な議論が行われるよう図られたい。

(2)小児救急医療

 地域における小児救急医療の確保については、安心して子どもを産み、健やかに育てる基礎となるものと位置づけている。
 新エンゼルプランにおいて、全ての二次医療圏で小児救急医療支援事業を推進することを目標としているところであるが、小児科医の確保が困難なことなどから全国で約100地区の実施となっている。(関係資料8参照)
 平成14年度予算(案)においては、二次医療圏単位での体制確保が困難な地域において複数の二次医療圏をカバーする小児救急医療拠点病院を新たに制度化するほか、小児初期救急対応のモデル的取組(3年間)を推進するため、地域の初期救急医療を担う在宅当番医制事業に特別加算を設けることとしている。
 各都道府県においては、各二次医療圏における小児救急医療の実態把握に努めるとともに、補助制度の積極的活用等により必要な体制の早期確立に努力いただきたい。

(3)へき地医療

 へき地医療の確保については、今年度からスタートした「第9次へき地保健医療計画」に基づいて、引き続き、各種施策を推進することとしている。
 なお、第9次計画では、都道府県単位の「へき地医療支援機構」及び「へき地医療拠点病院」の整備により、広域的なへき地医療支援体制を構築することとしているが、全般的に体制の切り替え・整備が遅れている状況にあり、同計画の2年目である平成14年度については、積極的な取り組みをお願いしたい。

5 医師臨床研修の必修化に向けた検討状況について

 医師の臨床研修については、平成12年12月に医師法が改正され、平成16年4月から、診療に従事しようとするすべての医師に対して必修化されることとなった。
 将来の専門性にかかわらず、患者を全人的に診ることのできる基本的な診療能力を修得した医師をつくるため、今後、必修化に向けた研修体制の整備を行っていくこととしている。
 現在、医道審議会医師分科会に医師臨床研修検討部会を設置し、必修化後の研修目標、研修プログラム等に係る具体的な在り方について検討を行っているところであり、平成14年度末までに具体的な在り方をとりまとめることとしている。
 各都道府県におかれては、地域における臨床研修実施体制の整備に向けて、管下医療機関等への指導・支援等引き続きご協力をお願いしたい。
(審議会の検討状況については、厚生労働省ホームページに掲載)


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