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報告書の概要
○ 平成13年12月より3回にわたって有識者からなる専門委員会を開催。
○ 生物テロ発生に対して、厚生労働省が事前に行うべき対応を提言。
【対応の考え方】
- 生物テロ発生の脅威は、自らの問題としての取組が必要。
- 感染症対策の枠組みの充実・強化と必要に応じた見直しが必要。
- 発生予防、事前準備、被害の限局化といった一般的対策の基本を十分に踏まえることが必要。
- 特に、事前に十分な検討と準備を行うべき課題は以下のとおり。
− 政令制定等を含む法的対応の想定
− 精度の高い感染症発生動向調査体制の構築
− 十分な情報の蓄積、容易に入手可能な情報の提供
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【特に留意すべき感染症】
- 天然痘
- 肺炭疽
- その他(肺ペスト、ボツリヌス症、野兎病、ウイルス性出血熱)
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【事前対応の考え方】
- 「想定される状況レベル」と「迅速かつ的確な対応」を勘案して、 想定・準備し、必要な状況に応じて迅速な対応をとる。
- 対応を行うべき事項
(1) 生物テロ発生の迅速な把握(症候群別サーベイランス 等) |
(2) 法律に基づく対応(指定感染症の指定等の政令制定 等) |
(3) 必要とされる医薬品の確保、供給等(天然痘ワクチン 等) |
(4) 医療の提供(感染症指定医療機関以外での治療 等) |
(5) その他 |
- 発生時の対応 <別添資料:生物テロの対する対応の概要>
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【今後の課題】
- 技術的事項の具体化
(診断、治療等に関する情報提供、症候群別サーベイランス、政令制定等の手続き、予防接種の技術的指針、研究開発 など)
- 関係省庁との役割分担
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1.はじめに
(1)生物テロ発生時の対応を考える背景
- 米国においては、平成13年10月、炭疽菌を混入した郵便物によるテロ事件が発生し、死亡者を含む健康被害が生じた。わが国においても、その時点で対応可能な措置が講じたられたところである。その後、新たな生物テロ発生の報告はないが、この機会に、わが国における生物テロ発生時の対応を十分に整理し、実際に発生した際の対応方法を事前に検討しておく必要性が認識された。
(2)専門委員会 <資料1:委員名簿>
- これらの状況を踏まえ、厚生労働省は平成13年12月、生物テロの発生を想定した対応についての検討を行うため、厚生科学審議会感染症分科会感染症部会に有識者からなる専門委員会を設置した。
- 当委員会では、これまで3回にわたって専門家のヒアリングを含む検討を行い、厚生労働省としてとるべき必要な対応についてとりまとめた。
- 委員会開催状況は以下のとおり。
第1回 平成13年12月12日 |
生物テロへの認識に関する意見交換 天然痘に関する対応の検討 |
第2回 平成14年1月11日 |
感染症法に基づく取扱いに関する検討 天然痘以外の感染症に関する対応の検討 |
第3回 平成14年3月5日 |
報告書のとりまとめ 修正等 |
(3)報告書の位置づけ
- 厚生労働省においては、本報告書を公開するとともに、本報告書で指摘した厚生労働省が行うべき対応について事前の準備に努め、万が一、生物テロが発生した際には、政府全体の取組の中で求められる役割を十分に果たし、迅速かつ円滑な対応がとれることを期待する。
2.生物テロへの対応の考え方
(1)生物テロ発生の蓋然性
- 米国における状況、国内における生物テロ模倣事例の多発等を踏まえ、今や、生物テロ発生の脅威は、わが国自らの問題として認識しておく必要がある。
(2)感染症対策の充実・強化
- 生物テロは、天然痘ウイルスや炭疽菌といった感染性を有する病原体あるいはボツリヌス毒素のように微生物が産生する物質(以下「病原体等」)を使用することにより、人に感染症あるいは中毒等の健康被害(以下「感染症」)を生じさせるものという認識にたち、対応を検討する必要がある。
- 従って、厚生労働省が、生物テロ発生の把握及び発生後の対応をするためには、平時の感染症対策の枠組み及び知見を最大限に活用することが有利である。
- そのため、現在行っている感染症対策を平素より着実に実施するとともに、円滑な運用がなされているかを不断に見直し、状況に合わせて十分な機能を発揮できるようにしておく必要がある。
(3)主な事前対応
- 大規模な生物テロを想定した事前対応の検討にあたっては、その他の大規模災害と同様、発生の予防、十分な事前の準備、被害を最小限とするための対応が基本である。
- わが国の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」)は、常識的に考えられる最大限の感染症の発生を想定して、これに対する健康危機管理を念頭に制定されたものである。生物テロが発生した際には、事前に、同法を最大限に活用し、迅速に対応ができるよう検討しておく必要がある。
- 生物テロの発生初期のもっとも重要な被害拡大防止策は早期把握とその確認である。そのため、犯行声明がある場合あるいは犯行が明らかな場合の迅速な検査体制、発生が明らかでないが、異常な感染症発生等により生物テロの発生が疑われる状況を察知するための感染症発生動向調査体制等の必要な体制を構築しておく必要がある。
- さらに、生物テロに使用される可能性の高い感染症は、主に発生が稀少で知見の乏しいものが想定されるため、平素より十分な情報の蓄積および提供を行うとともに、これらの情報を医療関係者等が容易に入手できるようにし、生物テロによる感染者に対する適切な診断・治療等が提供されるようにしておく必要がある。また、これを可能とする医薬品等の整備、備蓄等を行っておくことが望ましい。
- 具体的な事前対応については、「4.事前対応の考え方」に示す。
(4)発生時対応
- 万が一、生物テロが発生した際には、厚生労働省は、診断、治療、その他の公衆衛生上必要な措置に関して、医療関係者、行政担当者への的確な支援を行うとともに、国民に対して正しい情報提供を行うことが必要である。
- 生物テロの被害者は、重篤な感染症患者であることが想定され、その場合、感染症に対する治療と呼吸・循環を中心とする全身管理、栄養管理、合併症の予防等の集中管理が必要となる。そのため、治療にあたる医療機関において、これらの医療が十分に提供されることが必要である。
- さらに、対応可能な感染症対策の規模を逸脱した対応が必要な場合は、関係省庁と協力し、厚生労働省としての役割を十分に果たす必要がある。
3.特に留意すべき感染症
(1)基本的な考え方
- 生物テロには、実行した際の被害規模が大きく、かつ、使用が容易である病原体等が使用される可能性が高い。特に、被害規模の観点からは、感染性が高いこと、症状が重篤であること、テロの対象者が免疫を有していないこと、等が考えられる。
- 世界保健機関(WHO)では、生物テロに使用される可能性の高いものとして29の病原体をあげている。また、米国疾病管理センター(CDC)においては、感染症の特徴や過去の生物兵器としての研究開発状況等に関する情報を踏まえ、特に危険性が高く、優先して対策を立てる必要があるものをカテゴリーAとしている。
<CDCにおけるカテゴリーAの感染症>
天然痘、炭疽、ペスト、ボツリヌス症(ボツリヌス毒素による中毒)
野兎病(ツラレミア)、ウイルス性出血熱※
|
- 本委員会では、これらの情報等も踏まえ、特に、天然痘、肺炭疽、肺ペスト、ボツリヌス症、野兎病、ウイルス性出血熱※について検討した。
※ | ウイルス性出血熱:
特に、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、マールブルグ病、ラッサ熱を対象に検討を行った。 |
(2)各感染症における主な留意点 <資料2:感染症別概要>
主な感染症の詳細については資料2を参考されたい。
ここでは、感染症の概要と対策上の主な課題を以下に要約する。
-
(1)天然痘
- 空気感染によりヒトからヒトへの感染性が高い。
- 1980年に世界保健機関(WHO)が全世界における根絶宣言を行い、わが国では、同年より天然痘ワクチンの法律に基づく接種は中止し、青年層以下の免疫獲得者はほとんどいない。
- 実際に診断、治療等の経験を有する医師等がほとんどいない。
- 治療法は、対症療法のみ。
- 入手可能な安全なワクチンがない(現在、生産中)。
- 対応法律(感染症法、予防接種法)上の対象疾患になっていない。
(2)肺炭疽
- 米国において、実際に生物テロに使用されている。
- 芽胞は、生物兵器としての加工が容易とされている。
- 実際に診断、治療等の経験を有する医師等がほとんどいない。
- 感染症法上は四類感染症(消毒等を実施する際に法的規定がない)
(3)その他
○肺ペスト
- 飛沫感染によりヒトからヒトへの感染性が高い。
- 実際に診断、治療等の経験を有する医師等がほとんどいない。
- 感染症法上は一類感染症。
○ボツリヌス症
- 生物テロとして使用された場合、一般的な食中毒との鑑別が困難。
- 治療薬であるボツリヌス抗毒素の国内における備蓄が少ない。
(国内で通常発生するボツリヌス食中毒に対応するボツリヌス抗毒素は備蓄されている)
- 感染症法上は一部(乳児ボツリヌス症:4類感染症)のみが、発生状況把握の対象になっている。
○野兎病
- 実際に診断、治療等の経験を有する医師等がほとんどいない。
- 健康な人の皮膚や粘膜から侵入し、発症させる。
- 感染症法上の対象疾患になっていない。
○ウイルス性出血熱
(特に、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、マールブルグ熱、ラッサ熱)
- 血液や体液を介して、人から人に感染しやすい。
- 感染した場合の致死率が高い。
- 症状等についての知見が広く普及しているとは言い難く、実際に診断、治療等の経験を有する医師等もほとんどいない。
- 確定診断のためには特殊な検査を必要とし、症状や一般検査の成績から診断することが難しい。
- 感染症法上は、一類感染症
(3)その他の感染症
- その他にもいくつかの感染症が、生物テロに使用される可能性があると指摘もあり、状況、知見の集積等に努め、必要に応じて、適宜、検討を追加することが必要である。
4.事前対応の考え方
- 状況レベルを想定し、それぞれの状況について、発生時の迅速かつ的確な対応ができるよう、平時より対応方針を想定して準備するとともに、必要な状況レベルの的確な判断のもとに迅速な対応が行えるようにしておく必要がある。
- 事前に対応を行う事項の内容は、「国民の不安低減の観点」「公衆衛生対策としての妥当性」「生物テロの発生防止のための安全保障上の観点」を勘案し、適切な情報を公開する必要がある。
(1)想定される状況のレベル
レベルI. | 平常時
生物テロ発生の漠然とした危惧はあるものの、国内における発生の蓋然性が具体的にはない状態
現在は、この状況と考えられる。 |
レベルII. | 生物テロ発生の蓋然性が高いと判断されるに至った場合
例1: |
他国において、炭疽菌を用いた生物テロが発生し、国内での発生が強く危惧される場合 |
例2: |
他国において、天然痘患者が発生し、生物テロとの関係が強く示唆される場合 |
例3: |
国内において、生物テロの犯行予告がなされた場合 |
|
レベルIII. | 国内において異常な感染症の発生動向を察知し、生物テロの発生が強く疑われる場合
例:実際に、天然痘の患者が国内で発生した場合 |
現在、状況レベルについては、世界保健機関(WHO)の支援の下で、国際的な検討も行われていることから、これらの検討状況についても、適宜参考にしつつ、今後、修正等を行うことも必要である。
(2)対応を検討しておくべき事項
特に、事前の想定に基づき、必要な検討、準備を行っておくべき主な事項としては、以下のようなものが考えられる。
(1) 生物テロ発生の迅速な把握
- 現在、感染症法上で対象疾患となる感染症は、確定診断が行われた段階(一部、疑似症段階)での報告が法的に義務づけられている。
- しかし、実際に診断、治療等の経験を有する医師等がほとんどいない感染症や、他の一般的に発生する類似疾患との鑑別が困難な感染症は、生物テロが行われた際に当該感染症との認知が困難であったり、報告までに時間を要し、二次感染が拡大する可能性がある。
- そのため、当該事例が発生した際の察知精度の向上のため、当該感染症の確定診断前(疑い段階)での迅速報告体制や症状の類似した感染症の異常な発生動向を把握するための症候群別サーベイランスの手法を確立し、鋭敏にその発生を察知とそれに基づくまん延の防止を行えるようにしておく必要がある。
- さらに、生物テロ発生の蓋然性の高まった際には、必要な地域や期間を想定し、通常の感染症発生動向調査に加えて症候群別サーベイランスを実施する必要がある。
-
<症候群別サーベイランス>
明らかな外傷や心疾患、脳血管疾患を除く皮膚、呼吸器、消化器、神経、非特異的症状等(症候群)を有する患者の発生を医療機関より毎日報告としてとりまとめ、各症候群の地域的・経時的発生状況を全体として把握・解析することにより、確定診断前の感染症の発生動向の異常を迅速に察知することを目的とした臨時的調査。
(2) 法律に基づく対応
-
(感染症法)
- 感染症法においては、感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から感染症を一類から四類感染症に分類し、それぞれについて、患者の人権擁護に配慮した入院、報告、その他まん延防止等の必要な措置を定めている。
- 感染症法制定時においては、生物テロのような人為的な感染症の発生を想定しておらず、天然痘のように自然界に存在しないと考えられる感染症の患者発生、炭疽菌の芽胞散布のような一般的な発生形態以外の患者発生は想定していなかった。
- 現法体制においては、法の対象となっていない感染症に対する必要な措置等を行う特段の理由がある場合には、政令により対象感染症の変更、措置の追加等を行うことが可能となっており、状況を踏まえた政令制定内容の検討を行っておく必要がある。
例: |
炭疽による生物テロ発生の蓋然性が高いと判断されるに至った場合、炭疽を感染症法の指定感染症に政令で定め、迅速報告、消毒等の対応を可能とする。 |
- なお、感染症法全般の見直し時においては、生物テロも想定した対象疾患の再検討を行う必要がある。
<資料3:感染症法条文別適用表>
(予防接種法)
- 天然痘については、患者に対する治療は対症療法のみであるが、感染予防にはワクチンが有効であることが明らかである。
- 平成13年度中に、国内で一定量の天然痘ワクチンの備蓄が完了することとなっているが、今後、このワクチンが、必要時においては、感染拡大防止対策として効果的かつ円滑に使用されるよう、予防接種法に基づく臨時接種が可能となる法的措置について、政令改正内容の検討を行っておく必要がある。
- 天然痘ワクチン等の予防接種を公的に実施する場合、生物テロ発生の蓋然性、効果、一定の確率で起こる可能性がある避けがたい健康被害の発生を考慮して接種を想定する必要があり、現段階では予防接種法に基づいて一般国民に対し、平時の定期接種として行う科学的根拠は乏しいと考えられる。
例: |
天然痘による生物テロ発生の蓋然性が高いと判断されるに至った場合、天然痘を感染症法の指定感染症、予防接種法の対象疾病に政令で定め、積極的疫学調査、医療の提供、予防接種等の法的根拠に基づく対応を可能とする。
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(その他)
- 生物テロ発生時の対応は、感染症法、予防接種法といった感染症対策に直接関連する法律に基づく対応の部分が大きいが、その他関連法規に基づく対応との連携も極めて重要であり、厚生労働省の迅速・柔軟な対応が求められる。その為、これらを含めた効果的な対応を事前に検討しておくことが望ましい。
- また、都道府県を越えた広域的な対応の必要性も想定されることから、厚生労働省が必要な支援、調整を行うことができるように技術的知見を蓄積するとともに、全国的な国及び都道府県間の連携・協力体制を構築する努力を更に進めるべきである。
(3) 必要とされる医薬品の確保、供給等
- 今後とも、生物テロに使用された感染症等の特性を踏まえ、有効なワクチン、治療薬等の確保方策について検討し、準備しておくべきである。
- なお、確保量について、実際に発生した場合の供給方法を踏まえた必要量を検討する必要がある。
- 特に、以下を踏まえた事前対応を図る必要がある。
<天然痘ワクチン>
(I) | 接種計画
○生物テロ発生前の接種
生物テロ発生時の社会的基盤の確保を想定し、関係機関等との連携のもと、特定職種等に対しては、生物テロ発生の蓋然性が高まった際等に事前接種することを検討すべきである。
○生物テロ発生後の接種
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(II)備蓄
(4) 医療の提供
- 生物テロによる感染者に対しては、全身管理、合併症の予防等、集中治療による重症者の救命をはじめ、使用された感染症の特性に基づいて的確な治療を行う必要がある。
- また、特に天然痘、肺ペスト、ウイルス性出血熱については、人から人への感染があることから、患者及び感染力を有する者については、他者への感染を防止するための措置を行うことが必要である。
- 現在、ペストは感染症法上の一類感染症であり、患者は感染防止設備の整備された第一種感染症指定医療機関(及び特定感染症指定医療機関)に入院することとなっているが、天然痘についても同等の入院措置を行う必要がある。
- しかしながら、第一種感染症指定医療機関(及び特定感染症指定医療機関)は、全国で9都府県13医療機関24床(平成13年10月現在)しか存在しなことに鑑み、各都道府県においては、第一種感染症指定医療機関の整備を推進するとともに、発生時の対応を再度、検討しておく必要がある。
- そのため、生物テロにより現実に多数の感染者が発生し、これらの病床が不足した場合には、感染防止の必要な措置を講じた上で第2種感染症指定医療機関の活用、陰圧設備等院内感染防止設備を有する結核病床の活用等を検討するとともに、患者の自宅等における治療についても、その妥当性も今後、その実施可能性を検討することが必要である。
- 実際に診断、治療等の知見が乏しい感染症に対しては、これらに関する視聴覚資料の作成及び入手が容易な方策をとるとともに、専門家による支援体制を整備しておく必要がある。
(5) その他
- 今後とも、迅速、簡易な検査方法の開発、新たな治療法の開発等、生物テロに対する対応に必要な調査研究を、引き続き行っていく必要がある。
- また、以下のような整備に関し、厚生労働省が率先して行うとともに、各自治体においては、実際の生物テロの発生と生物テロを模倣したいわゆる「いたずら犯行」の鑑別等も想定し、地域の状況を踏まえた整備を行っておく必要がある。
− | 感染防護用具の備蓄、供給体制 |
− | 検査機関の想定と検査体制 |
− | 患者、検体等の搬送 |
(3)状況を踏まえた対応 <資料4:生物テロに対する対応の概要>
「3(1)想定される状況」を踏まえ、重大な生物テロが発生した場合の主な具体的な対応を、総括として以下に示す。
- 通常の感染症対策(感染症発生動向調査等)の充実・強化
- 検査法、診断・治療法、消毒法等に関する知識の普及
- 生物テロ発生の早期把握のための体制構築
- 必要な医薬品等の確保
- 法に基づく必要な政令制定等を想定した事前検討
レベルII. | 生物テロ発生の蓋然性が高いと判断されるに至った場合 |
- 蓋然性の判断は、厚生科学審議会等の専門家の意見もききながら、厚生労働省健康危機管理調整会議において的確に行い、迅速に厚生労働大臣に具申する。
- 平常時の準備事項の実施あるいは実施支援
− | 感染症法に基づく通常の感染症発生動向調査の強化 |
− | 症候群別感染症発生動向調査の実施 |
− | 必要な政令制定等の法的整備 (当該感染症の指定感染症への指定、予防接種法の対象への追加 等) |
− | 特定職種に対する感染症予防措置 (天然痘ワクチンの予防接種 等) |
- 当該事例に関する国民への十分な情報提供
レベルIII. | 国内において異常な感染症等の発生動向を察知し、生物テロの発生が強く疑われる場合 |
- レベルI→レベルII→レベルIII、あるいはレベルI→レベルIIIの場合が想定されるが、レベルIIにおいて行われる対応は、レベルIIIにおいても実施する。
- レベルIIに加えて行うべき対応
− | 必要な医薬品等の円滑な供給と配分 |
− | 医療の提供 |
− | まん延防止措置 (感染症法に基づくまん延防止措置、予防接種法に基づく予防接種 等) |
5.今後の課題
- 特に、本報告書で指摘した技術的事項については、厚生科学研究班等の協力を得て、早急に具体化する必要がある。
- 本報告書を参考に厚生労働省の取組を充実、強化するとともに、厚生労働省の取組と関係省庁との役割分担に基づく、政府全体での取組において、必要な役割をはたすことが必要である。
<早急に具体化すべき技術的事項>
− | 必要な調査研究を推進し、天然痘、炭疽等に関する診断、治療、その他の公衆衛生上必要な措置に関し、さらに知見の集積をすすめるとともに、これらを効果的に情報提供するための手法の検討。 |
− | 症候群別感染症発生動向調査等、生物テロの発生を鋭敏に察知するシステムの開発。 |
− | 政令制定等の迅速、適切な法的手続きの検討 |
− | 天然痘ワクチン接種の技術的指針(対象者の選定を含む) |
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