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VI 市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直し

○ 医薬品・医療機器等に係る市販後安全対策の一層の重要性や、産業構造の変化等企業を巡る一層の環境変化等を踏まえ、医薬品・医療機器等の開発者が自ら製造所を保有して製品化することを前提とした、現行の製造承認制度の見直しを行う。

○ 見直しに当たっては、製造所単位の製造行為に着目した現行の承認・許可制度について、市販後安全対策をより一層重視する観点から、元売行為(=製品を出荷・上市する行為)に着目した承認・許可制度へと再構築する。

注) 「元売」の用語・呼称は、現段階では、仮称。


[現状]

1 現行の医薬品・医療機器製造業に対する制度体系について

(1) 現行の「承認・許可制度」は、医薬品・医療機器の開発者が、自ら製造所を保有して製品化することを前提とした、製造所単位の制度体系。

(2) 一方、製品が市場に流通して以降は、その製品の安全性についてのフォローが求められるが、現段階では、企業側の市販後体制が必ずしも十分ではない、という指摘もある。


2 現行の承認・許可制度に対する主な問題意識

(1) 現行では「製造行為」への制度的ウェイトが大きいが、市販後安全対策が十分に行える組織体制になっているか、という点に、もっと着目すべきではないか?

(2) 国際的な同時研究開発が進む中で、欧米の許認可制度(=販売行為に着目した制度)との乖離には、無視できない問題があるのではないか?

(3) 産業構造の変化に対応し、分社化や製造の委受託を行おうとする企業が許認可を受けにくい構造となっているのではないか?

(4) 輸入品について、製造所が海外にあることにより、問題が発生した場合の迅速な対応に困難を来たす場合があるのではないか?


[具体的な見直し項目(案)]

1 元売行為と市販後安全対策に着目した許可体系の構築
2 元売承認制度の導入等承認制度の見直し


[見直し(案)の概要]

1 元売行為と市販後安全対策に着目した許可体系の構築

(1) 元売業許可制度の創設と市販後安全対策の充実

〔製造許可から元売許可へ〕

(1) 国際整合性の確保等の観点を踏まえ、医薬品・医療機器等を市場に提供するに当たっての厚生労働大臣の関与について、製造行為に着目し個別承認品目ごとに行っていた従来の製造許可制度を廃止し、実際に出荷・上市する者が行う元売行為に着目した許可体系に再構築すること。

〔元売業の許可〕

(2) 医薬品・医療機器等の元売業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可(※)を受けなければならないこと。

※ 薬事法に基づく厚生労働大臣の許認可は、政令で定めるところにより都道府県知事が処理することができるものとされている(法定受託事務)。実際の元売業許可の実施主体については、現行の製造業許可における状況等を踏まえつつ、都道府県の意見を聞きながら、政令において決定する予定。

〔元売業の許可区分〕

(3) 元売業の許可は、その元売を行おうとする医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器(クラス分類ごと)、医薬部外品及び化粧品の区分ごとに、分類して与えられるものとすること。

〔元売業の許可要件〕

(4) 市販後安全対策を重視する観点から、元売業の許可要件として、法人であること、品質管理体制及び市販後安全管理体制等を定めることとし、具体的には、市販後安全対策に係る必要業務の量や質等を勘案して、厚生労働省令において、許可区分に応じた段階的な要件を設定すること。

〔元売業許可の更新制〕

(5) 元売業の許可は、更新制とすること(原則5年ごとを想定。)。

〔元売業者の遵守要件〕

(6) 元売業者による市販後安全対策業務等の確実な実施のため、元売業者の遵守要件を定めることとし、具体的には、厚生労働省令において、市販後安全対策業務の適正実施・業務記録の保存等の要件を設定すること。

〔品質管理・安全対策総括責任者(仮称)の設置〕

(7) 元売業者が医薬品・医療機器等を市場に供給するに当たっての最終責任を有する立場であることを踏まえ、元売業者は、品質管理・安全対策総括責任者(仮称)を設置しなければならないこと。

〔市販後安全対策業務等の外部委託〕

(8) 元売業者は、市販後安全対策業務等のうち、医療機関等における情報収集や職員の教育訓練の実施等、厚生労働省令で定める定型的な業務等について、当該業務等を円滑に実施する観点から厚生労働省令で定める要件に適合する卸売販売業者等に対し、業務委託を行うことができること。

(2) 製造等関連施設の認定

〔製造等関連施設認定の趣旨〕

(1) 製造所の保有を前提とした許可制度の廃止により、元売業者は製造行為を全面的に委託することが可能となるが、実際の製造行為が、医薬品・医療機器等を製造するための要件(構造設備基準等)を確実に具備している施設において行われることを確保するため、製造等関連施設の認定制度を導入すること。

〔製造等関連施設の認定〕

(2) 医薬品・医療機器等の製造等を行おうとする者は、製造等関連施設ごとに、当該施設が必要な構造設備等(※1)を具備していることについて、厚生労働大臣の認定(※2)を受けることができること。

※1 構造設備基準については、厚生労働省令において、現行のものをベースに必要な見直しを行ったうえで規定する予定。

※2 実際の認定権者については、(1)(2)※同様に、政令において決定の予定。

〔製造等関連施設認定の更新制〕

(3) 製造等関連施設の認定は、更新制とすること。

(3) 輸入に係る制度の見直し

〔輸入販売業の元売業への一本化〕

(1) 製造業許可制度の廃止と元売業許可制度の創設に伴い、医薬品・医療機器等の輸入販売業について、新たに創設される元売業に一本化すること。

〔国内管理人に係る要件の見直し〕

(2) 外国において医薬品・医療機器等を製造する者に対し厚生労働大臣が直接に承認を行う場合(いわゆる外国製造承認制度)においても、国内製品同様に市販後安全対策を一層充実させる必要があるため、当該外国承認取得者が選任する国内管理人の要件について見直しを行い、元売業者に係る諸要件同様とすること。


2 元売承認制度の導入等承認制度の見直し

(1) 元売承認制度の創設等

〔製造承認から元売承認へ〕

(1) 製造業許可制度の廃止と元売業許可制度の創設にあわせ、個別の医薬品・医療機器等を市場に提供するに当たっての厚生労働大臣の関与についても、製造行為そのものを承認する従来の仕組みを改め、元売業者が製品を市場に出荷・上市することについて承認する仕組み(元売承認)に改めること。

〔厚生労働大臣による元売承認〕

(2) 医薬品・医療機器等を元売しようとする者は、品目ごとに、厚生労働大臣の承認を受けなければならないこと。

〔承認拒否事由〕

(3) 厚生労働大臣は、以下に掲げる場合(※)には、元売承認を与えないこと。

イ 申請者が、承認申請品目に係る区分について、1(1)(2)による元売業の許可を受けていないとき。

ロ 承認申請品目を製造しようとする製造等関連施設が、当該品目の製造能力に関して、1(2)(2)による製造等関連施設認定を受けていないとき。

ハ 承認申請品目の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等についての審査の結果、申請に係る効能・効果・性能を有しない、有効性に比して著しく有害な作用を有する等、医薬品・医療機器等として不適当であると認められるとき。

ニ 承認申請品目の製造管理・品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準(GMP)に適合しないとき。

※ いわゆる「承認拒否事由」については、現行とほぼ同様であるが、製造業許可制度が廃止され元売業許可制度が導入されることに伴い、イ、ロ及びニに掲げる事由を追加。

〔承認時の査察〕

(4) 製造施設における製造能力を審査したうえで行われる品目(追加)許可を廃止することに伴い、品目の承認時に製造方法・品質を含めた製造能力を審査することとするため、厚生労働大臣(政令で委任された場合には都道府県知事(法定受託事務))は、(3)ニに掲げる事項に関し、承認前にGMP査察を行うことを原則とすること。

(2) 承認事項の軽微な変更に係る届出制の導入

○ 承認審査の効率化・迅速化を図る観点から、承認を受けた医薬品・医療機器等について、当該承認に係る事項のうち、名称・用量・製造方法・品質・効能効果等のうちの軽微な事項については、一部変更承認の手続きを行わなくとも、届出によってこれを認める仕組みを導入すること。

(3) 元売承認の失効等

○ 元売承認品目の承認の要件としての元売業許可、製造等関連施設認定又はGMPに関する査察結果効力が失われた場合には、承認自体も効力を失う等の措置を講じること。

(4) マスターファイル制度の導入

(1) 医薬品・医療機器等の原材料の詳細な製造方法に関するデータ等は当該原材料に係るメーカーの知的財産であることから、当該メーカーにおいては最終製品の製造者や元売業者から当該知的財産を守りたいという意向が働く一方、承認審査を行う厚生労働大臣としては、原材料に係るデータ等も含め、承認審査資料の一部として、必要に応じて審査しなければならない。

(2) そのため、承認申請資料の一部である原薬等のデータ等について、原薬メーカー等から厚生労働大臣(審査機関)に直接登録することができる仕組み(マスターファイル制度)を導入し、知的財産の保護承認申請のための添付データの簡略化を図ること。

(5) 体外診断用医薬品に係る承認制度の見直し

○ 人体の外部において専ら疾病等の診断に使用されることから、その他の医薬品と比べ、人体に対する直接的リスクが低いと考えられる体外診断用医薬品について、国際整合性等を勘案しつつ、診断情報リスク(※)に基づく類型化を行うとともに、当該類型ごとの特性を踏まえた承認制度の見直しを行うこと。

※ 診断情報リスク:確定診断に与える寄与度の大きさを勘案し、当該医薬品の不具合が確定診断に与えるリスク

 《体外診断用医薬品の類型化と承認制度の見直し》

〔低リスク製品のうち、精度管理が容易なもの〕診断情報リスクが比較的小さい体外診断用医薬品のうち、較正用標準物質による性能の確認が容易であるもの
 ⇒ 厚生労働大臣の承認を不要とする
[例] 一般健診等に用いられるGOT, GPT検査試薬等

〔低リスク製品のうち、基準を定めて指定するもの〕診断情報リスクが比較的小さい体外診断用医薬品のうち、先発品との相対比較試験による性能の確認が容易であるもの
 ⇒ 低リスク医療機器と同様に、第三者認証制度を導入する。
[例] 生体の酵素等の測定、一般感染症、生体機能の測定試薬等

注) 具体的な品目は、厚生労働大臣が指定。



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