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1.年齢制限緩和の努力義務規定を設けた背景

 現在我が国では、IT革命の進展、経済のグローバル化、経済構造改革などにより、経済・産業構造が大きく転換する時期を迎えており、労働移動の増加、離職を余儀なくされる者の増大が懸念されています。このような中で、職業生涯を通じて労働者の職業の安定を図るためには、労働者が離職を余儀なくされた場合に円滑に再就職できるようにすることが重要です。
 しかしながら、雇用失業情勢は厳しい状況が続いており、特に中高年齢者については、他の年齢層と比較して有効求人倍率が非常に低く、再就職が難しい状況にあります。
 この背景として、求人に関して上限年齢を設定している企業は9割を超え、また、求人の上限年齢の平均が41.1歳となっており(日本労働研究機構「求人の年齢制限に関する実態調査」12年4月)、中高年齢者の再就職が厳しい大きな要因となっています。



年齢別の有効求人倍率(平成12年度)の図




求人職種に関する上限年齢設定の有無

(%)
規模 合計(社) 設けた 設けなかった 無回答
合計 3,598 90.2 7.7 2.1
29人以下 1,811 87.9 10.0 2.1
30〜99人 820 92.1 6.5 1.5
100〜299人 460 93.0 4.6 2.4
300〜999人 219 95.0 2.7 2.3
1,000人以上 171 91.8 5.3 2.9
無回答 117 90.6 6.0 3.4

(資料出所)日本労働研究機構「求人の年齢制限に関する実態調査」(平成12年4月)




求人職種の上限年齢の図




2.年齢制限緩和の努力義務のあらまし(改正雇用対策法の関係条文と指針)

 1のように、特に厳しい雇用環境におかれている中高年齢者を始め、労働者の再就職を促進するために、平成13年4月、雇用対策法が改正され、事業主の募集・採用における年齢制限の緩和の努力義務(第7条)が規定されるとともに、この努力義務規定に事業主が適切に対応するための指針(「年齢指針」と呼びます。)を厚生労働大臣が定めること(第12条)とされました。
 これらの規定や年齢指針は、平成13年10月1日から実施されます。

●雇用対策法第7条

 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるとき※1は、労働者の募集及び採用※2について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない※3

※1  「労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるとき」に、事業主が努力義務を負うこととされており、我が国の雇用慣行と調和した規定となっています。これを受けて、現下の社会経済情勢にかんがみ、年齢制限を設けることが認められる場合(具体的には、年齢指針の3に定める場合です。)に該当しないときには、年齢制限を行うことは認めないとするものです。
※2  「労働者の募集及び採用」が、この努力義務の対象です。
※3  「努めなければならない」として、努力義務を定めています。

●雇用対策法第12条

 厚生労働大臣は、第7条に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針※4を定め、これを公表する※5ものとする。

※4  この「指針」を「年齢指針」と呼ぶこととします。
※5  厚生労働大臣が告示したものです。(次ページ参照)


※ 改正雇用対策法第12条の規定に基づき、同法第7条に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要なものとして、「労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて事業主が適切に対処するための指針」(年齢指針)が制定されました。制定に当たっては、法律案の国会審議を踏まえ、労働政策審議会の調査審議(諮問答申)及びパブリックコメント手続を経ています。


労働政策審議会における議論、報告(平成13年7月10日)の概要

1 指針の策定における基本的考え方

(1) 今回設けられた年齢制限緩和の努力義務は、「年齢にかかわりなく働ける社会」の実現のための第1歩であること。

(2) 我が国の雇用慣行など現時点での募集・採用における現状を十分に踏まえるとともに、今後漸進的に見直しを図っていくべきものであること。

2 年齢指針の骨子

(1) 募集採用に当たっての基本原則

  • 労働者の年齢を理由として排除しないよう努めること。
  • 募集に当たり職務の内容や必要とされる能力などをできる限り明らかにするよう努めること。

(2) 例外的に年齢制限が認められる場合の列挙(年齢制限を設ける場合は事業主の説明が必要)

(3) 指針の周知徹底、必要な見直し





労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて事業主が適切に対処するための指針

厚生労働省告示

1.趣旨

 この指針は、雇用対策法第七条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、我が国の雇用慣行、近年における年齢別にみた求人及び求職の状況、特に中高年齢者の再就職をめぐる実態等を考慮して、必要な事項を明らかにするとともに、事業主が労働者の募集及び採用について講ずべき措置について定めたものである。

2.事業主が労働者の募集及び採用に当たって講ずべき措置

 事業主は、労働者の募集及び採用に当たって、次に掲げる措置を講ずるように努めること。

(1)3に該当する場合を除き、労働者の年齢を理由として、募集又は採用の対象から当該労働者を排除しないこと。

(2)事業主が職務に適合する労働者を雇い入れ、かつ、労働者がその有する能力を有効に発揮することができる職業を選択することが容易になるよう、職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能等の程度その他の労働者が応募するに当たり必要とされる事項をできる限り明示すること。

3.年齢制限が認められる場合(労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められる場合以外の場合)

 事業主が行う労働者の募集及び採用が次の(1)〜(10)までのいずれかに該当する場合であって、当該事業主がその旨を職業紹介機関、求職者等に対して説明したときには、年齢制限をすることが認められるものとする。

(1)長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、新規学卒者等である特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(2)企業の事業活動の継続や技能、ノウハウ等の継承の観点から、労働者数が最も少ない年齢層の労働者を補充する必要がある状態等当該企業における労働者の年齢構成を維持・回復させるために特に必要があると認められる状態において、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(3)定年年齢又は継続雇用の最高雇用年齢と、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要とされる期間又は当該業務に係る職業能力を形成するために必要とされる期間とを考慮して、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(4)事業主が募集及び採用に当たり条件として提示する賃金額を採用した者の年齢にかかわりなく支払うこととするためには、年齢を主要な要素として賃金額を定めている就業規則との関係から、既に働いている労働者の賃金額に変更を生じさせることとなる就業規則の変更が必要となる状態において、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(5)特定の年齢層を対象とした商品の販売やサービスの提供等を行う業務について、当該年齢層の顧客等との関係で当該業務の円滑な遂行を図る必要から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(6)芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(7)労働災害の発生状況等から、労働災害の防止や安全性の確保について特に考慮する必要があるとされる業務について、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

(8)体力、視力等加齢に伴いその機能が低下するものに関して、採用後の勤務期間等の関係からその機能が一定水準以上であることが業務の円滑な遂行に不可欠であるとされる当該業務について、特定の年齢以下の労働者について募集及び採用を行う場合

(9)行政機関による指導、勧奨等に応じる等行政機関の施策を踏まえて中高年齢者に限定して募集及び採用を行う場合

(10)労働基準法(昭和22年法律第49号)等の法令の規定により、特定の年齢層の労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について、当該禁止又は制限されている年齢層の労働者を除いて募集及び採用を行う場合

4.その他

(1)この指針は、事業主が募集及び採用に当たって、適切に対処するために必要な事項を明らかにするとともに、事業主が講ずべき措置について示すものであり、広く事業主その他の関係者の理解が深まるよう周知徹底が図られるものであること。

(2)この指針は、あくまでも現下の社会経済情勢等を踏まえて定められたものであり、今後、必要があると認められるときは検討が加えられ、その結果に基づいて必要な見直しが図られるものであること。




3.「年齢指針」の内容

(1)「年齢指針」の概要と基本的考え方

 年齢指針は、「1 趣旨」、「2 事業主が労働者の募集及び採用に当たって講ずべき措置」、「3 年齢制限が認められる場合(労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められる場合以外の場合)」、「4 その他」により構成されています。

●年齢指針1「趣旨」

 この指針は、改正雇用対策法第7条に定める事項(事業主の年齢制限緩和の努力義務)に関し、事業主が適切に対処することができるよう、定年等の我が国の雇用慣行、「1. 年齢制限緩和の努力義務規定を設けた背景」にある年齢別の求人及び求職の状況、特に中高年齢者の再就職をめぐる実態等を考慮して、必要な事項を明らかにするとともに、事業主が労働者の募集及び採用について講ずべき措置について定めたものであることが明記されています。

●年齢指針2「事業主が労働者の募集及び採用に当たって講ずべき措置」

 6ページ以下で詳しく説明します。

●年齢指針3「年齢制限が認められる場合(労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められる場合以外の場合)」

 7ページ以下で詳しく説明します。

●年齢指針4「その他」

(1) 年齢指針は、年齢にかかわりなく働くことが可能となるよう、募集及び採用における年齢制限の緩和を漸進的に実現するために、その趣旨及び内容について広く事業主その他の関係者の理解が深まるよう十分に周知徹底が図られるべきことが明記されています。

(2) 年齢指針は、あくまでも現下の雇用慣行等を含めた社会経済情勢を踏まえて定められたものであり、今後、雇用慣行等を含めた社会経済情勢の変化等を踏まえながら、必要があると認められるときは検討が加えられ、その結果に基づいて必要な見直しが図られるものであることが明記されています。


年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて

 上記のように、雇用対策法の改正で年齢制限緩和の努力義務が規定されましたが、急速な少子高齢化が進展する中、我が国の経済社会の活力を維持していくためには、将来的には、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働ける社会を実現していくことが必要です。
 現在、高齢者の雇用・就業の促進という観点を含め、将来の社会の在り方について、採用から退職までの雇用慣行のイメージや条件整備のあり方を含めて幅広く意見交換を行うため、国民各層を代表する方々の参集を求めて「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」を開催しており、今後議論を深めていく予定です。



(2)事業主が労働者の募集及び採用に当たって講ずべき措置(年齢指針2関係)

● 事業主の皆様が労働者の募集・採用※1を行うに当たっては、年齢を理由に対象から排除※2しないように努めてください。ただし、例外的に年齢制限を設けることが認められる場合※3が示されています。(年齢指針2(1) 関係)

※1  「募集・採用」とは、公共職業安定所に求人をする場合だけではなく、事業主自ら労働者の直接募集を行う場合や民間職業紹介機関に求人を出す場合、新聞や求人情報誌等で募集広告を掲載する場合等のすべてを含みます。
※2  「排除」とは、募集(求人)の場合の対象の年齢を制限することであり、採用の場合は、特定の年齢の者に採用試験を受けさせない、応募書類を受け付けないなどを指します。
※3  「例外的に年齢制限を設けることが認められる場合」であって、やむをえず年齢制限を行うときにあっても、事業主の皆様には年齢に係る要件を緩和し、より多くの労働者に応募の機会を与えていただくことが望ましいものです。

● 労働者の方が有する能力を有効に発揮できる職業を選択でき、事業主の方が必要な人材を確保できるよう、募集・採用をしようとする際は、職務の内容や、労働者が応募に当たり必要とされる事項、すなわち、職務の遂行に必要な適性、能力、経験、技能等の程度を、できる限り詳細に明示するよう努めてください。(年齢指針2(2) 関係)

※これが年齢に関わりない募集・採用を進めていくための最も重要なポイントです。また、これは公共職業安定所に提出する求人に限らずすべての募集・採用についてあてはまることは前述のとおりです。

募集の際に明示する事項の改善例

パソコンが使えること ワード・エクセル・パワーポイントを用いてチャートテーブル等が作成できること。イラストレーターを使用してグラフィックデザインができること。

営業

医療機関・福祉施設等への訪問によるリハビリ機器等の営業販売活動

  • 新規開拓営業が主ですが、既存客のフォローアップもあります。
  • 山手線内が主担当エリアで電車での移動が主です。
  • 客先での納品や簡単なメンテナンスの際には重量物の運搬などもあります。

体力がいる仕事です

○○(重量8〜10kg程度)の積み卸し作業を伴う長距離(東京−東北・北陸圏)
トラック(4t級)運転

など


(3)例外的に年齢制限が認められる場合(年齢指針3関係)

 事業主が行う労働者の募集及び採用が次の(1)〜(10)のいずれかに該当し、事業主がその旨を職業紹介機関※1、求職者※2説明※3したときは、例外的に年齢制限が認められます。

※1  「職業紹介機関」とは、公共職業安定所のみならず民間の職業紹介機関、学校等を含みます。
※2  「等」とは、新聞、求人情報誌、求人情報を掲載する広告媒体を含みます。
※3  「説明」とは、(1)〜(10)のいずれに該当するかを特定して行うことが必要です。広く媒体を活用して労働者を募集採用する場合にも、広告等に理由を明記することが望ましく、また、個々の求職者から問い合わせがあった場合は個別に回答していただくことになります。なお、この「説明」に当たっては、証明資料を提出すること等までは要求されません。

(1) 長期勤続によりキャリア形成を図るために新規学卒者などを募集・採用する

(2) 特定の年齢層が少ない場合に、従業員の年齢構成の維持・回復を図るために、特定の年齢層の者を募集・採用する

(3) 定年年齢や継続雇用の最高雇用年齢との関係で、採用しても、労働者に十分に能力を発揮してもらったり、必要な職業能力が形成される前に退職することとなるような場合に特定の年齢層以下の者を募集・採用する

(4) 賃金が年齢により決定され、そのことが就業規則に明示されており、年齢にかかわりなく一定の賃金で募集すると、採用した際にその額で賃金を支払うと就業規則違反となることから、特定の年齢以下の者を募集・採用する

(5) 取り扱う商品などが特定の年齢層を対象としていることから、顧客との関係で業務が円滑に遂行されるよう特定の年齢層の者を募集・採用する

(6) 芸術・芸能の分野の表現の真実性のため特定の年齢層の者を募集・採用する

(7) 労働災害の発生状況等から、労働災害の防止や安全性の確保のために特に考慮が必要な業務について、特定の年齢層の労働者を募集・採用する

(8) 体力、視力など加齢により一般的に低下する機能が、募集しようとする業務の遂行に不可欠であるため、特定の年齢以下の者を募集・採用する

(9) 行政機関の施策を踏まえて中高年齢者に限定して募集・採用する

(10) 労働基準法等の法令により、特定の年齢層の就業などが禁止・制限されている業務について、禁止・制限されている年齢層の労働者を除いて募集・採用する


公共職業安定所での取扱い

1.やむを得ず年齢制限を課してハローワークに求人を申し込まれる場合は、求人申込書の右下「事業所・求人条件にかかる特記事項」に前ページの(1)〜(10)の該当する項目番号を、例えば「指針理由(1)」という形で記入していただくことになります。

2.例外的に年齢制限が認められる場合としては、前ページの(1)〜(10)のいずれかに該当する旨を説明していただくことが必要です。

(1)記入いただいた「指針理由○」という記載内容は求人公開カード上そのまま記載され、公開されます。

(2)求職者から問い合わせがあった場合には、求職者に対して(1)〜(10)のいずれの場合に該当するか、その旨を説明して下さい。

求人カードの図




 「年齢制限が認められる場合」に該当しない不合理な理由や偏見による年齢制限は行わないようにしてください。

「不合理な理由による年齢制限」と考えられる代表的な例

代表的な例の図

 柔軟性・協調性などは個々人ごとに異なります。また、年下の上司であることなどについては、事前の説明で労働者が納得した上で雇い入れることによりスムーズに対応を図ることも可能です。

「年齢で一律」にではなく、「個々の労働者の適性・能力」に着目して募集・採用を行っていただくようお願いします。




例外的に年齢制限が認められる場合 (1)

 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、新規学卒者等である特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 我が国では、新規学卒者等を一括採用し、自社内でキャリア形成を図り、定年やその後の継続雇用を経て退職するという雇用慣行が広く定着しています。この雇用慣行との調和を図る観点から、新規学卒者等について特定の年齢層を採用するための募集・採用を行うことについて、例外的に年齢制限が認められる場合にあたることとしています。
 なお、これに該当するのは、年齢制限を行って新規学卒者等を募集する場合についてであり、新規学卒者に限定した募集をすること自体が年齢制限に該当するものではありません。

例:

●期間の定めのない労働契約で、新規学卒者を対象として募集する際に特定の年齢層の者に限る場合

●期間の定めのない労働契約で、新規学卒者と併せて同一の募集枠、条件で特定の年齢以下の新規学卒者以外の者を募集・採用する場合

ただし、例えば、

× 期間の定めのある労働契約のための募集・採用といった長期勤続を前提としないものは、この「場合(1)」に該当しません。
× いわゆる中途採用の募集・採用は、この「場合(1)」に該当しません。

例外的に年齢制限が認められる場合 (2)

 企業の事業活動の継続や技能、ノウハウ等の継承の観点から、労働者数が最も少ない年齢層の労働者を補充する必要がある状態等当該企業における労働者の年齢構成を維持・回復させるために特に必要があると認められる状態において、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 企業活動の継続や技能・ノウハウの伝承を継続的に行っていくために、従業員の年齢構成がバランスのとれたものであることが必要であり、このために特定の年齢層の労働者に限って募集・採用することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●一時的な経営難のため数年間新卒採用を控えていたために、特定の年齢層の者が他の年齢に比べて著しく不足し事業活動の継続に支障を生じていることから、その年齢層の労働者を募集・採用する場合

●中高年齢者中心に立ち上げたベンチャー企業において、企業を継続的に経営するために特定の若年層を募集・採用する場合

ただし、例えば、

× 20、30代の労働者のみで構成されている会社が、「若年者中心の会社」であることを理由に30代以下の労働者に限って募集するといった偏った年齢構成を維持するために行うものは、この「場合(2)」に該当しません。


例外的に年齢制限が認められる場合 (3)

 定年年齢又は継続雇用の最高雇用年齢と、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要とされる期間又は当該業務に係る職業能力を形成するために必要とされる期間とを考慮して、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 定年制度は我が国において広く定着している雇用慣行であり、この定年年齢又は定年後の継続雇用の最高年齢との関係で、雇入れ後の勤続可能年数が明確となることから、募集する労働者が十分活躍するために必要な一定年数は勤続できるように、上限年齢を一定程度定年年齢等より低く設定して募集・採用することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●未経験者がその業務を行う場合、少なくとも何年か経験を積む必要があるといった場合に、その経験を積むのに必要な年数(例えば3年)と定年年齢(例えば65歳)との関係で特定の上限(60歳以下)を設ける場合

●採用後に長期継続的なプロジェクト(5年計画等)に従事する者を募集するために、定年年齢との関係で特定の上限を設ける場合

ただし、例えば、

× 未経験者であっても通常の導入教育を経て短期間に能力発揮が可能な職務について、根拠なく熟練形成に必要な期間を理由として低い上限年齢を設けることは、この「場合(3)」に該当しません。
× 期間の定めのある労働契約など定年制度の適用を受けない者を募集・採用する場合は、この「場合(3)」に該当しません。


例外的に年齢制限が認められる場合 (4)

 事業主が募集及び採用に当たり条件として提示する賃金額を採用した者の年齢にかかわりなく支払うこととするためには、年齢を主要な要素として賃金額を定めている就業規則との関係から、既に働いている労働者の賃金額に変更を生じさせることとなる就業規則の変更が必要となる状態において、特定の年齢以下の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 賃金が年齢により決定されることが就業規則により定められており、年齢にかかわりなく一定の賃金で募集すると、採用した場合に就業規則違反となるような場合については、すぐに年齢制限を撤廃することは既に働いている労働者の賃金の変更を伴う就業規則の改正を要し、困難であることから、支払い可能な賃金額の範囲との関係において特定の年齢の者を募集・採用することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●就業規則で基本給の額が30歳30万円、40歳40万円、・・・といった賃金制度(年齢給)が定められている事業所が30万円で労働者を中途採用したいときに、40歳の人を30万円で採用すると就業規則違反となることから、30歳以下の労働者を募集・採用する場合

ただし、例えば、

× 年齢ではなく経験(勤続年数)で賃金が決定されるような賃金体系となっている場合は、この「場合(4)」に該当しません。
× 中途採用者について、個別に賃金額を決定できるような規定が就業規則にある場合は、この「場合(4)」に該当しません。


例外的に年齢制限が認められる場合 (5)

 特定の年齢層を対象とした商品の販売やサービスの提供等を行う業務について、当該年齢層の顧客等との関係で当該業務の円滑な遂行を図る必要から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 特定の年齢層を対象とした商品の販売等において、商品のアピールや集客が円滑に行えるよう、特定の年齢層の労働者を募集・採用することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●10代向けのショップや高年齢者向けの呉服販売店などで店の戦略として店員が商品を着用しつつ販売することとしているため、顧客の年齢層に近い年齢層の者を募集・採用する場合

ただし、例えば、

× この場合は、特定の年齢層を対象とした商品の販売やサービスの提供であって、当該年齢層の顧客等との関係で宣伝効果の観点などから販売、サービス提供等の円滑な遂行を図る要請がある場合をいうもので、こうした事情の存在しない小売商品等で単に主な顧客が若年層であるからといって販売業務について高齢者を対象外とすることは、この「場合(5)」には該当しません。


例外的に年齢制限が認められる場合 (6)

 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 芸術作品のモデルや、演劇等の役者の募集・採用において、表現の真実性のために、特定の年齢層の労働者を募集・採用をすることについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●演劇の子役(○○歳の役)として○○歳程度の者を募集・採用する場合


例外的に年齢制限が認められる場合 (7)

 労働災害の発生状況等から、労働災害の防止や安全性の確保について特に考慮する必要があるとされる業務について、特定の年齢層の労働者を対象として募集及び採用を行う場合

 労働災害を防止し、本人や関係者の安全性を確保するために、その事業上の特定の業務について明らかに一定の年齢層の災害発生率が高い場合などに、これらの年齢層以外の労働者を募集することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●統計や事業所での経験上高年齢者の事故の確率が高いなどの危険性が認められる業務を行う者として、一定の年齢の労働者を募集・採用する場合

ただし、例えば、

× 事務所における一般事務、経理事務、小売商店における接客、販売など労働災害の危険性が低い業務について年齢制限を設けることは、この「場合(7)」に該当しません。

なお、事業主の方には労働安全衛生法令を遵守し、労働者の安全と健康を確保することが求められています。

 職務上の身体的能力は大きな個人差があります。こうした個人差を勘案して募集・採用を行うことが大切です。


例外的に年齢制限が認められる場合 (8)

 体力、視力等加齢に伴いその機能が低下するものに関して、採用後の勤務期間等の関係からその機能が一定水準以上であることが業務の円滑な遂行に不可欠であるとされる当該業務について、特定の年齢以下の労働者について募集及び採用を行う場合

 体力、視力等、一般的に加齢に伴ってその機能が低下するものについて、業務上これらの機能の水準を維持することが不可欠であるような場合には、加齢に伴い業務を遂行できなくなることを避けるため、特定の年齢以下の労働者を募集・採用することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●業務内容が短時間に大量の製品を検査し微細な欠陥を発見する業務であるため、視力の衰えが業務の遂行を著しく困難とすることから特定の年齢以下の者を募集・採用する場合

●深夜作業で立ち仕事が多く、重い荷物を運ぶといった業務内容であり、体力の衰えが当該業務の遂行に決定的な影響を与えることから、特定の年齢制限を設ける場合

ただし、例えば、

× 業務の内容が、眼鏡などを利用し、一定の水準の矯正視力を確保すれば十分業務が遂行可能であるといったような場合は、この「場合(8)」に該当しません。

 職務上の身体的能力は大きな個人差があります。こうした個人差を勘案して募集・採用を行うことが大切です。


例外的に年齢制限が認められる場合 (9)

 行政機関による指導、勧奨等に応じる等行政機関の施策を踏まえて中高年齢者に限定して募集及び採用を行う場合

 労働市場の状況等にかんがみ、政府では求人者に対する指導や助成金の支給等により中高年齢労働者の再就職を促進しています。これらの施策に応じて中高年齢者を募集することについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●中高年齢者の雇用促進を目的とする助成金の対象となる年齢層の労働者を募集・採用する場合


例外的に年齢制限が認められる場合 (10)

 労働基準法等の法令の規定により、特定の年齢層の労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について、当該禁止又は制限されている年齢層の労働者を除いて募集及び採用を行う場合

 各法令において、危険である等の理由により、年齢により就業が禁止・制限されている業務については、その法令の規定が優先されることについて、例外的に年齢制限が認められる場合に当たることとしています。

例:

●労働基準法において、使用者は満18歳に満たない者を危険物の取り扱い等を行う業務に就かせてはならないこととされています。

●警備業法において、18歳未満の者は警備員となってはならないこととされています。




事業主のみなさまへ

 今回、年齢制限緩和の努力義務を定めた改正雇用対策法・年齢指針が実施されるこの機会に、募集・採用について再度点検いただきますようお願いします。


● 募集・採用しているのはどのような内容の職務で、どのような適性や能力を持った労働者を求めていますか。

● その職務の募集・採用に当たり、どのような求人条件を提示していますか。その際年齢制限を行っていますか。

● 年齢制限を設けている場合、年齢指針の3に掲げる場合に該当していますか。

例えば、以下のQ&Aを参考にこれからの募集・採用を考えてみて下さい。
(以下のQは事業主の皆様から寄せられた声を基にしています。)

Q.中高年齢者では最新技術についていけるか?

A.最新技術はその前提となる技術の積み上げの上に成り立っています。最新技術の基礎となる技術を習得していればできる仕事もあり、中高年齢者にはかなりの技術を習得している人もいます。業務上必要な技術を労働者の募集時に明確にして、それを採用の条件とするようにしてください。

Q.中高年齢者で新しい発想ができるか?

A.発想力などは大きな個人差があるものです。積み重ねた経験からしか生まれない発想も多いものです。個々の労働者の方の個性をみるようにしてください。

Q.中高年齢者は頑固、協調性がないなど扱いにくいのではないか?

A.個性は人様々で、年齢にかかわりなく多様な人がいます。中高年齢者の方が社会経験を積んでいて社会性・協調性があるという声もあり、年齢等の属性によって一律に判断できるものではありません。面接によって個々の労働者の方を見て判断していただくことが重要です。

Q.職務内容が厳しく中高年齢者では遂行が難しいのではないか?

A.どういった職務内容であるか、「毎月○時間の深夜作業あり」、「3交代制」、「○時間の立ち仕事」、「○kgの荷運び」など、求職者の方にわかるように、できるだけ詳細に職務内容、労働条件を記載するようにしてください。その上で応募した方に職務内容を適切に遂行する体力など能力があるか見てください。

Q.中高年齢者への賃金は高くなければならないのではないか?

A.希望賃金額は、人によって異なります。賃金額が高くなくとも職務の内容ややりがいといった観点から応募のチャンスを希望する労働者もいらっしゃいます。高い賃金を払えないから高年齢者を募集・採用しないのではなく、幅広くチャンスを与えるようお願いします。


 労働者の募集・採用に際し年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めていただくことが重要です。仮に、年齢指針の3のいずれかに該当しており、「いきなり年齢制限の撤廃はなかなか難しい」という場合であっても、年齢上限をもう少し(例えば5歳)あげることができないか、検討いただくようお願いします。
 人材の確保についての相談、ご検討のお手伝いなど、ハローワークにお気軽にご相談ください。




求職者のみなさまへ

 今回の制度改正を機会に求職者のみなさまも、面接等の際には、ご自身の技能・経験等、求められる職務ができることを、是非、積極的にアピールしてください。
 ハローワークの受け付けた求人の場合、やむを得ず年齢制限を設ける場合もその理由が求人票に明示されるようになっています。これを参考にしつつ、少しくらいの年齢オーバーでも自分に合うと思うところにはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 ハローワークでは、申し込まれている求人について、求職者のみなさまの相談をうけ、年齢条件に当てはまらない場合であっても、個別の求人企業に連絡し、面接を受けることができるようお願いすることもできます。是非、窓口までご相談ください。




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