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2023年3月24日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第12回議事録

○日時

令和5年3月24日(金)13:00~

 

○場所

オンライン開催

○出席者

田倉 智之委員長 斎藤 信也委員長代理 池田 俊也委員 木﨑 孝委員
新谷 歩委員 新保 卓郎委員 中山 健夫委員 野口 晴子委員
花井 十伍委員 飛田 英祐委員 米盛 勧委員
樅山幸彦専門委員 船崎俊一専門委員 福田敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
 

○議題

○Micra AVに係る総合的評価について

○議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 続きまして、Micra AVに係る総合評価について御議論をいただきます。
 公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析及び企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果を踏まえ、費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
 では、Micra AVについて、まずは事務局から御説明をお願いいたします。
(事務局・国立保健医療科学院より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、まず、本製品に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
 企業の方の準備が整いましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内で、Micra AVの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
○意見陳述者
 それでは、Micra AVの企業意見表明を始めます。
 次の2ページ目を御覧ください。企業分析ではICER500万円以下、公的分析では1000万円以上であり、増分効果が大幅に小さくなっております。なお、スライドには評価対象Micra AVをL-PM、比較対照の経静脈ペースメーカをTV-PMと記載しておりますが、それぞれリードレス、経静脈と読み上げます。
 次の3ページ目を御覧ください。公的分析では、aからcの3点でパラメータが変更され、企業からはそれぞれに対して提案があります。分析モデル上、重要度の高いbから説明します。
 bでは、臨床エビデンスがないため、植え込み後12か月以降の長期群間のQOL差分はゼロに変更されております。企業としては、リードレスの長期QOL向上は高い蓋然性があり、群間差分ありの分析を提案します。その根拠として、複数名の専門医から、むしろ長期のほうがリードレスと経静脈のQOLの差が広がるとのコメントがあり、また、最新の長期比較試験でリードレスの有意な合併症発症率の低減が示されております。
 aは、植え込み後12か月までのQOL値データソース変更です。企業としては、より信頼性が高い企業分析のデータソースの使用を提案します。
 cでは、NDBの再解析を提案します。
 以上3点について、以降、詳細を説明します。
 スライドを2枚めくって5ページ目を御覧ください。b、植え込み後12か月以降のQOLについて、公的分析の主張では、臨床専門家より群間の植え込み後12か月以降のQOLベネフィットはほとんどないとのコメントがあり、臨床エビデンスが存在しない設定は不確実性を増大させるため、差分をゼロとすることに対し、企業としては、リードレスの長期的なQOL向上は高い蓋然性があり、差分ゼロは明らかな過小評価と考えます。
 その根拠は3つあります。①リードレス植え込み患者を長期診察されている複数名の専門医より、むしろ長期になるほどリードレスと経静脈のQOLの差が広がるとのコメントがあります。②既存研究でもリードレス植え込み後12か月まではQOLが高い値で推移することが示されています。③最新の長期比較試験にて、時間とともに群間の合併症発症率の差が広がることが示されています。
 また、一般的に分析結果へ大きく影響を与える値は、安易に差分をゼロにするべきではなく、慎重に値を検討するべきと考えます。さらに、本品は上市から間もないため、長期エビデンスが限られることは十分勘案いただきたく思います。
 以上、リードレスの長期QOL改善を認め、12か月以降のQOLを群間差分ありでの分析を提案します。
 次の6ページ目を御覧ください。こちらは○○医学部付属病院○○科教授、○○先生のコメントです。○○、世界的に最も見識の高い先生のお一人です。青字を読み上げます。経静脈ペースメーカ植え込み患者では、常に感染やポケット、リードトラブルを意識した生活が求められる。日常生活で経静脈を植え込んだ患者から多くの不安感を聞く。日常生活でポケットのすれを気にすることが多く、このような経静脈植え込み患者の日々の苦労は、慢性期を診ている臨床医であれば誰もが認識していることである。リードレスは直接心臓内へ留置するため、患者はペースメーカを植え込んでいることを意識することなく生活できるため、長期になるほどリードレスと経静脈のQOLの差は大きくなっていくとコメントいただきました。
 次のページを御覧ください。こちらは○○大学医学部○○准教授、○○先生のコメントです。○○、Micraの患者を多く診察されながら、ほかの先生方へのトレーニングや講演会を数多く実施される日本の第一人者のお一人です。青字を読み上げます。経静脈は、リード断線、ポケット感染などの長期で発症する合併症がありQOL低減につながる。リードレスは、ペースメーカが入っていることを忘れてしまうぐらい患者のストレスが少なく、満足度の高さを感じるため、実感としても長期にわたってリードレスのQOLの高さを感じるとコメントいただきました。
 また、資料にはありませんが、○○大学病院○○科○○センター長、○○先生からも、リードレスは長期的に合併症発症率の低減がされ、その差が長期になるほどQOL改善につながるとコメントいただきました。
 次のページを御覧ください。こちらは公的分析後に新規公表された追跡期間3年の比較試験の結果となります。経静脈と比較してリードレスでは有意に合併症発症率が低減し、時間とともに群間の合併症発症率の差が広がることが示されております。このことは先生方にコメントいただいた、長期になるほど群間のQOLの差が広がるということを裏づけると考えます。
 以上の根拠より、b、12か月以降のQOLを群間差分ありでの分析を希望します。
 次のページを御覧ください。これらの最新の知見を踏まえ、企業から追加的な変更として、企業分析の植え込み後12か月以降のQOLの設定方法変更を希望します。変更前は、12か月以降の比較エビデンスがないことを理由に、経静脈群では長期単群試験の値を採用し、リードレス群では6か月時点の群間差分を4分の1した値を経静脈のQOLへ足しておりました。この4分の1は過大推計を避けるための仮定値です。変更後は6か月時点の両群のQOLを12か月以降もそのまま採用することを希望します。理由は、最新の知見を勘案すると、そのままの値を用いても過大推計ではなく、むしろ妥当な仮定と判断したためです。また、一般的にデータソースが少ないほうがより一貫性が高い分析モデルになると考え、この変更によりQOLのデータソースは一つの臨床試験になります。
 スライドを2枚めくって11ページ目を御覧ください。a、植え込み後12か月までのQOL値データソース変更について説明します。
 ①企業分析Cabanas-Grandíoらの研究では群間で共変量調整がないに対し、企業の主張は、同研究は群間で患者背景、植え込み時のQOLに有意差がないため、群間バイアスの懸念は最小限と考えます。
 ②公的分析Palmisanoらの研究は共変量調整ありに対し、企業の主張は、同研究は単施設研究であるため、患者選択、医師の熟練度等のバイアス懸念があります。特にQOL評価は質問の仕方で結果が変わり得るため、結果の信頼性が懸念されます。他方、Cabanas-Grandíoは多施設研究となります。
 ③Palmisanoらは植え込み後1か月後のQOLを1週間後のもので代用したに対し、企業の主張は、同論文のメソッドに1か月後のQOL評価を行うと記載がありますが、その結果が開示されておらず、研究の信頼性が懸念されます。
 以上より、Palmisanoは共変量調整以外の点で複数の懸念がありますので、より信頼性が高い企業分析のCabanas-GrandíoのQOLの使用を提案します。
 スライドを2枚めくって13ページ目を御覧ください。c、植え込み時の入院費用算出に当たり、公的分析が行ったMDV解析に、単独ではペースメーカ適応ではない疾患コードが含まれますので、再解析を希望します。
 次のページを御覧ください。公的分析において誤記がありましたので、訂正を希望します。
 最後、15ページ目を御覧ください。企業としては、a、b、c及び誤記の訂正の上、再分析を希望します。特にbは専門医のコメント及び3年追跡研究の結果に基づき、12か月以降のQOLも群間差分ありの分析を提案します。
 最後に、○○センター○○部長、○○先生よりコメントを賜れればと思います。
 先生、どうぞよろしくお願いします。
○意見陳述者(専門家)
 ○○センターの○○でございます。
 このリードレスペースメーカ、○○、ペースメーカの治療というのはもう完全に確立した治療ですけれども、やはり植え込んだ後のリードのトラブルや、それから植え込み部位の感染、そういったトラブルが出てきます。特に高齢者に植え込まれるケースが多いので、そういったものを完全に解消してくれるこのリードレスペースメーカというのは、現場で今たくさん植え込まれている理由はそういったところにあります。
 先ほど○○先生や○○大学の先生がコメントされたように、長期に入れれば入れるほどそのメリットは確実に大きくなるので、ただいま企業さんが言われましたように、長期的な観点から見てもリードレスペースメーカの有用性は高いというのが私の実感でございます。
○意見陳述者
 ○○先生、ありがとうございます。
 企業からの意見表明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、委員の方々から御質問はございますでしょうか。
 では、○○委員、どうぞ。
○○○委員
 御説明ありがとうございました。
 すみません。私が十分理解していないのだと思うのですが、植え込み後12か月以降のQOL値の群間の差分の数字の設定の根拠がちょっと専門家の先生方のコメントを読んでも何でこの数字なのかというのが理解できませんでした。研究ガイドラインによりますと、QOL値、これはもう言うまでもないですが、満足度とかとは全然違う概念で、健康関連QOLを測る必要があって、健康関連QOLというのは対象者本人が回答することが原則であり、それが無理な場合には家族や介護者等による代理の回答を用いてもよいということになっております。これは家族や介護者などから代理の回答を得ているのでしょうか。医療者による代理回答は対象者本人の回答と乖離する可能性があるので避けることが望ましいとなっておりますので、ほかに取る方法があるのなら、これは避ける必要があると思います。
 あと、コメントを読ませていただきましたが、これは必ずしも健康関連QOLのお話ではないように思います。このペースメーカが患者さんにとって非常にありがたい製品だということはよく理解しました。ただ、QOLの差分がこの値を使うことについての根拠にはなっておらず、これを使って分析すると、例えば今後、似たようなまねをして日本からいろいろな論文が出てくると困ってしまうなというふうに、QOLの研究を一応は長年やっていた者の一人としては感じております。
 すみません。ちょっと私が勘違いしているところもあると思うので、この数字の設定の根拠、なぜ家族や介護者等からの代理回答などを使って数字を設定していないのか。やればできると思うのですが、それをせずにこの数字を設定した理由があれば教えてください。
○意見陳述者
 ○○先生、御質問、コメントいただきましてありがとうございます。
 まず、今回の分析におきましては、QOL値は既存の臨床研究から得てございます。直接的に企業からヒアリング等は行ってございません。既存の臨床研究が非常に限られておりまして、SF-36を取得したものしかございませんでしたので、本分析ではそちらを使用しているところでございます。
 12か月以降のQOL値の差分についてでございますが、スライドの8ページ目を御覧いただきたく思います。確かに長期的な12か月以降のQOL値を具体的に測定した臨床試験はございませんが、他方、そちらの臨床試験では合併症の発症は低減することが示されてございます。特に心不全入院率ですとか感染症発症率の低減も示されてございますが、これらの評価指標といいますのは、QOLと相関するということがメタ解析等で示されてございます。ですので、先生方のコメントに加えまして、こうした臨床試験の結果からも、企業としてやはり12か月以降もエビデンスはない中でも確かにQOLの差があると、追加的なQOLがあると考えてございますので、こちらを御検討いただきたく思ってございます。
○○○委員
 私の質問は、なぜこの数字にしたのかということです。差があるけれども、その差はこれより大きいかもしれないし、これより小さいかもしれないので、ある意味、根拠のある数字なのかなということですね。それを知りたいです。
 あと、合併症が低減したことについて、これは合併症が起きたらQOLがこのぐらい下がるといった形で、イベントごとにQOL値を設定してモデルに組み込んでいるのではなくて、これも込み込みで、この数字のQOLの差があるだろうというふうにされているのですか。そうするとますます根拠が心配になってくるのですが。
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。実際のQOL値につきましては、5ページ目を見ながら回答させていただければなと思ってございます。当初提出しました企業分析では、6か月目まではQOLのデータソースがエビデンスで示されておりますので、そちらを採用してございまして、12か月以降の設定根拠でございますが、経静脈群におきましては5年の単群試験の結果がございましたので、そちらの値を採用してございます。一方で、企業分析を行った当時は、先ほど御紹介したMicra CED試験の結果等がございませんでしたし、先生からのコメントもございませんでしたので、エビデンスがない中でどういった値を設定するのかというところを勘案しまして、6か月時点の群間の差分を4分の1にした値を経静脈群に足して計算をして0.76というふうに算出をしてございました。こちらが計算の設定根拠というところの御質問に対する回答でございます。
○○○委員
 計算の方法は分かりましたが、何で4分の1なのか。例えば専門家が集まってデルファイ法か何かで4分の1という値にしたとか、何の根拠で4分の1にしたのですか。
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。この4分の1といいますのは、明確に科学的、定量的な指標があるわけではございませんが、そのままの値を使うよりも、値が分からない中でしたので、仮にということで設定した値でございます。
○○○委員
 分かりました。では、出てきた数字も仮の値という理解でよろしいですね。
○意見陳述者
 企業分析としましては、当時そのように考えてございました。
○○○委員
 あと、イベント発生のときのQOLの低下などは、この数字の差分の中に含まれているのか、それは別途モデルを組んで、こういう合併症が起きたときはこのぐらいのQOLが下がるといった形で評価をされているのか、それはどちらですか。
○意見陳述者
 本分析におきましては、合併症個別のQOLを個別に設定しているわけではございませんで、イベント全体としてのQOLということで設定してございます。ですので、先ほど入院率ですとか合併症のQOLについても御説明さしあげましたが、個別に対して設定するということではございませんが、一方で確実に入院率の低減、合併症発症率低減ということが示されてございますので、そういったところを蓋然性を持って総合的に勘案しますと、QOLが低下するのではないかというふうに企業としては考えてございます。
○○○委員
 そうなのですね。臨床専門家の先生もこの値が妥当だというふうに全員が一致して御判断されたという理解でいいですか。
○意見陳述者
 はい。今回、今同席いただいている○○先生を含め、4人の先生方にコメントをいただきましたが、本当に臨床にすごく関わられている先生方から、皆様そのようにコメントをいただいてございます。
○○○委員
 要するに、差があるということに同意されているのは分かりましたが、この4分の1という値が極めて妥当であるというふうに判断されていると理解していいですか。
○意見陳述者
 ありがとうございます。こちらの4分の1についても、当時、企業分析を行っていた段階の設定でございまして、今回先生方にヒアリングした結果、もっとQOLの差があるだろうというところでコメントをいただいてございまして、むしろ長期になるほどQOLの差が広がっていくというところで考えてございます。
 その点を踏まえまして、スライド9ページ目で変更希望という形で、6か月時点のQOL値、0.12の群間の差をそのまま使わせていただきたいと考えてございます。
○○○委員
 すみません。私が十分理解していないのですが、この植え込みをしている方というのは、そもそもその他の点では完全に健康で、例えば頻繁に外出されたりとか、スポーツをされたりとか、そういう方なのですか。それとも、どちらかというと寝たきりに近いような方のような、そもそもそういったことでQOLが満点よりはかなり下がっている方のほうが中心なのか。このペースメーカの適応となる患者さんというのはどのような病態の方になるのでしょうか。
○意見陳述者(専門家)
 その点は僕が答えましょうか。○○センターの○○です。
 このペースメーカ、電池寿命が約10年です。10年入れた後に従来であれば経静脈リードの場合はバッテリー部分を取り外して新しいバッテリーを入れるということなのですけれども、このリードレスペースメーカは心内に残さざるを得ない場合が、まだ10年たっていないのでそういったケースはほとんどないのですけれども、取り出して新しいものを入れるということもできるかもしれないのですけれども、可能性として、そのまま入れて、その次に新しいものを横に入れるという形になると思います。
 そうすると、やはり若年者で入れるというのは、今後、将来何度もペースメーカを植え込む必要があるということで、患者さんに入れる年齢というのはおおむね75歳以上の症例が非常に多いということになります。そうすると、どうしてもフレイルであるとか身体的な障害を多少受けている患者、あるいは認知症、そういった患者さんが少し通常のペースメーカを入れるよりも多いというのは仕方がないと思います。
 以上です。
○○○委員
 分かりました。ありがとうございました。
○意見陳述者
 QOLに関してちょっと補足をさせていただきます。今、ちょうど○○先生から、仮定の妥当性と0.12の妥当性ということを多分問題提起いただいたのかなと理解しております。もちろん誰が効くかという問題点もあるというふうに理解しています。
 今回のポイントというのは、まさに○○先生が御指摘されたような点数の問題だけではなくて、そもそもこのQOL、6か月あるいは12か月までのデータがあるという状態で、その差が維持されるのか、あるいはさらに拡大されるのか、むしろ縮小していくのかという話。それがまず第一点だと思います。
 もともとの土台にあるのは、どちらか分からないときにゼロ、すなわちここから以降は改善がゼロになってしまうのが臨床的な観点からしてもおかしいのではないかというところが私は出発点だというふうに考えています。その意味で先ほどの○○先生や○○先生に、12か月でQOLの差があるものが、拡大こそすれ縮小することはないだろうというような話をいただいたと理解しております。なので、12か月の段階で観測されていた0.12という値が維持されるという仮定を置いているのであって、例えばそこで測定をしてないから0.12の差がいきなりゼロになるという仮定は、私はより不合理であるというふうに考えております。
 もちろん○○先生御指摘のとおり、以前、○○先生と一緒にやらせていただいたアブレーションの研究なんかでも、精緻にやるのであれば合併症が発症する、しないということをモデル化して、そこにQOLを当てはめてという形を取ってきたと思います。ただ、この研究の場合は、合併症がある程度の人に発症する。発症すればQOLが下がる。そこに関して異論はないと思いますが、そうしたことも加味してQOLの変化を入れたというふうに考えております。
 ですので、変化が維持されるか、あるいは拡大するかということが論点であって、拡大するのではないかという蓋然性を基にして0.12という値を引っ張ったというのが今回の仮定であると。前回はどのぐらい維持されるか分からないので、過大推計を防ぐために4分の1の圧縮を用いたというふうに我々は解釈しています。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の委員から御質問とか御意見はございますか。
 科学院さん、お願いします。
○国立保健医療科学院
 科学院ですけれども、事実関係の確認だけさせていただきたいのですけれども、長期になるほど合併症の発症率の差が広がるということなのですが、合併症の発症率に関してはモデル上でステートがつくられていて、合併症が起こるたびにQOLが下がるという設定になっているものと認識しているのですが、それは違うのですか。
○費用対効果評価専門組織委員長
 企業さん、お願いします。
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。おっしゃっていただきましたとおり、合併症発症率につきましては、植え込み後1か月時点、それから3年後時点というふうなところの2点で設定してございます。一方で、その2点しか設定しておらず、今の先生方のお話を踏まえますと、やはり長期になればなるほど合併症の発症率は差が出てくるといったところの追加的なQOLのよい効果につきましては、これまで含めてこられませんでしたので、そちらを今回含めていきたいと希望させていただいてございます。
○国立保健医療科学院
 つまり、合併症の発症率に関しては含まれていて、それが3年後、5年後といった長期の段階において考慮されているということでよろしいのですね。
○費用対効果評価専門組織委員長
 合併症というのは急性期の合併症も慢性期も含めてのことでしょうか。
○意見陳述者
 繰り返しになってしまって恐縮ですけれども、急性期も慢性期も両方、合併症の発症率をこの分析には含めてございまして、1か月時点と3年時点の2点で発症率を設定してございます。
 一方で、QOLにつきましては、これまで1年以降のものにつきましては同じ値を設定するというふうに仮定してございましたので、今回のMicra CEDの結果を踏まえますと、より広がっていくということを勘案しますと、やはり追加的なベネフィットを分析に含めたいという考えでございます。
○国立保健医療科学院
 御社が分析されたモデルに基づいて我々は分析しているので、曖昧なことを言われると困るのですけれども、我々はマルコフサイクルが1か月ごとに回っていて、1か月ごとにイベントが発生するというモデルだというふうに認識しているのですが、それは違うのですか。
○意見陳述者
 そのとおりでございます。
○国立保健医療科学院
 では、毎月合併症のイベントが発生するようなモデルになっていて、そこで合併症に伴って生じるQOLの低下については、モデル上できちんと考慮されているということでよろしいのですね。
○意見陳述者
 そうでございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 科学院さん、いかがですか。
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。了解しました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ちなみに、私からも1点御質問なのですが、そうするとイベントが発生したら幾らQOLが下がるとかという差分の値みたいなものは設定されているということでよろしいですか。
○意見陳述者
 合併症発症に伴ってQOLが低下するというところは設定してございまして、合併症発症に伴いまして0.004低下するというふうに設定してございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。ありがとうございます。ちなみに、それは急性期であろうと慢性期であろうと全ての合併症について1カウントその値を乗せてモデリングしている、計算しているということですね。
○意見陳述者
 そちらにつきましては、個別の合併症の発症があったからQOLが低減するというモデルではなくて、むしろ合併症発症率というところをトータルで見たときの合併症が起こったときのQOL低下というところを併せて設定してございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 その他の先生方、いかがですか。御意見、御質問ございますでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
○○○委員
 ますます分からなくなってきたのですが、イベント発生率に差があって、イベントが起きたらQOLが下がるという設定が組み込まれていて、それも込み込みでQOLの差を追加的に反映させた場合って、何となく二重評価になるのかなと。合併症が多い分も含めてQOLの値に差をつけましょうとおっしゃっていたわけだけれども、イベントが起きるたびにQOLを減算しているわけですね。そこは二重評価になりませんか。
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。合併症につきましては、先ほどお答えしたようにモデルに含まれてございますが、他方、先生方にもコメントいただきましたとおり、ペースメーカ植え込み患者様の日常生活に伴う不安感ですとか行動制限についても多くコメントいただきまして、そうしたところがQOLの低減につながるというふうに考えてございます。
○○○委員
 それは多分、健康関連QOLではなくて、俗に言う広い意味でのQOLという側面のように感じます。効用値と言われている健康関連QOLに関して、何かそのようなデータがあるのですかね。
○意見陳述者
 少々お待ちくださいませ。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、ちょっとお待ちいただいてもよろしいでしょうか。テーマ的には今のお話とは多分異なるものかと思っているのですが、そういう理解ですよね。
 もしお時間かかるようでしたら、調べていただきつつ、○○先生から御質問をいただいてもよろしいですか。
○○○委員
 質問というかコメントというふうになるかもしれませんけれども、まず、スタートラインからお話をさせていただくと、これはもう今日、○○先生が先ほどコメントされたり、僕も昭和59年ぐらいからペースメーカの植え込みに携わって、長くやらせていただいてきましたけれども、Micraシステムというのは非常に画期的ですばらしいシステムだと思います。その点に関しては全く異論がありません。
 その上で、これはもう2019年以降、不整脈心電学会からのコンセンサスもそうですし、米国FDAからのレポートもそうですけれども、やはりMicraはそういうベテランの先生がやっても死亡事故があって、そのために手技的な問題がまずあると。
 ペースメーカの手術に携わって、当初、先ほどのサイズの大きさとかが気になるでしょうというのは、昔はよくそういう言い方をしたりしていたと思いますが、今はペースメーカのジェネレーターは小さいですよね。それは企業の方々の努力から始まって、我々もペースメーカが小型化する中でグラム数がどんどん小さくなってきて、そのサイズ自体が著しく小さくなってきているのに、昔言っていたような話でQOLの評価をするというのは、どうなんだろうなという気持ちが僕はします。
 だから、やはりすばらしいデバイスを導入するに際して、古いタイプのものを否定するというのは、これはある程度のものは容認できるのですけれども、それをQOLの分析であったり、専門家のコメントでああいうふうなものを載っけると、それは先生たちも本意ではないのではないかなと思うぐらいです。なぜかというと、ずっとそれで患者さんに提供してきたわけですし、それを悪いと言ったことはないわけですから。
 その上で、いわゆる一般ペースメーカ手術、CRTDとかICDというものではなくて、通常のペースメーカの手術で死亡事故って最近はないと思います。少なくともこの10年は僕が地域で調べたりした限りではありません。しかも、そのペースメーカ手術というのはみんながやっているので、ベテランの人だけではなくて、多くの一般フィジシャンもやっている、その手術で死亡事故がない一方で、エキスパートと言われている人がやっても死亡事故が出ている。その数が一定数出ている。ステートメントが出ている。そこがまずスタートなのだと思うのです。
 だから、患者説明をするときに死亡する可能性のある説明をしないといけないので、それはQOLがかなりスタートラインから怖いという話から始まるはずなのが、未来の話で終わっているというのは、何かいびつな気が個人的にはしています。
 その上で、さらにうまくいった後、ペースメーカが入った後、こすれて痛いでしょうとか、コスメティックにきれいじゃないですよね、見えないほうがいいですよねというふうなニュアンスは、心理的に、どうしてもこれは止めようと思っても止められないと思います。だから、QOLの評価をするというのはなかなか難しくて、やはり実行されるパフォーマンスですよね。ペースメーカが入ったことで通常の経静脈ペースメーカとMicraを使ったときにどれだけ身体的能力、パフォーマンスの差が出るかというのであれば、話はよく分かるのですけれども、それ以外のところを土俵に上げようとすると、かなりいびつな気が私はします。そうじゃないという御意見も当然あるのでしょうが、私は少なくともそのように感じています。
 あと、何歳ぐらいの人に入れているか。我々の病院でもMicraを入れさせていただいておりますけれども、先ほど○○さんが言ったみたいに、認知症で動けない、施設に入っている人とか、年齢は同じでも患者状態がかなり違うので、もしMicraのほうがよい、10年もってすばらしいのであればみんなにMicraを入れるはずなので、それをやはりかなりドクターサイドとしては選択して入れているというのは事実だと思うのです。それを踏まえた上で、ここは国民全体に国のお金を含めて保険としてそれを提供するときにどのくらいの価値が生まれるのかどうかというところを議論している場所なので、そういう立場で考えると、どちらがいいか悪いかは冷静な判断が必要なので、私はそちらのほうは専門ではありませんのでよく分かりませんが、10年たつと、僕たちの病院だと79歳から85歳に入れているので、10年だとみんな生きていらっしゃるか微妙なところで、しかも寝たきりの人のQOL評価をしないといけないので、みんな健康で動いている人たちを同等に評価しているQOL評価に、デザインとしての評価は正しいと思うのですけれども、実臨床的に考えたときにどうなんだろうなというのは、私としては素朴な疑問です。だから、ちょっとそういうことも含めて冷静に議論したほうがいいんじゃないかなと私は思っています。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 今の御意見も踏まえながら、何かコメントはございますでしょうか。
 では、どうぞ、お願いいたします。
○○○委員
 ○○先生と同じ意見でして、やはりこの植え込まれる対象の方というのは、先ほども出ていましたけれども、今は90歳まで平気で元気な方もいらっしゃるわけなので、やはり80代半ばぐらいの方が対象になると思うのです。企業が持ってきた大学の先生の2人のコメントにはちょっと違和感を覚えていて、要は80代の少し認知症の人が、例えば水泳や登山やゴルフと書いてあるのは、何か少しおかしな気がしますし、比較的寝たきりや認知症のような方がペースメーカに絶えず不安を感じているというのは、ふだん日常でそういった高齢の方は病院にたくさん来ますけれども、あまり聞いたことがないかなと思っています。そういう点で、やはりこういう適応というのを考えなければいけないかなと思っています。
 それから、もう一個、この前も企業の方に聞いたのですが、例えばスライドの10ページの追加資料がありますけれども、レセプトデータから持ってきてはいるのですけれども、やはり植え込む施設によって、特に急性期の合併症の差が非常に大きいかなと思うのですね。今でもやはりMicra AVを植え込んでいるところは比較的大きな病院や大学病院で植え込んでいるわけです。そういう意味で、レセプトデータもそういう植え込んでいる施設による差というのを、同じような施設で植え込んでいての差なのかどうか、そういうのを補正しているのかどうかを企業のほうにお聞きしたいのですけれども。
○意見陳述者
 ○○先生、御質問ありがとうございます。
 この点については、○○さん、御回答をお願いしてもよろしいでしょうか。Micraがどのような施設で植え込まれているのか、何か偏りがあるのかないのかという点について御回答いただけますと幸いでございます。
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。Micraにつきましては、学会さんのほうで植え込みの施設基準というものが設けられておりまして、そちらがペースメーカを年間10症例以上やられている施設と、あと心臓血管外科を併設、もしくは近隣の施設と連携できる施設。最近では心臓血管外科の先生が常勤している施設ということで実施されておりまして、現在、全国で○○施設ほどにおいて実施されている現状になっております。
○○○委員
 今みたいなそういった施設だけでの結果を見てみないことには、やはり普通の今までのペースメーカはどの病院でも気楽に植え込んでいると思うのですが、Micra AVはうちの施設でも植え込んでいますけれども、やはりかなり慎重にやると思いますので、急性期の差はそれをきちんと評価しない上には何とも言えないなと私は思っているのです。
○費用対効果評価専門組織委員長
 企業さん、よろしいですか。○○先生のコメントは、御意見としていただいておく形で、また後で御議論させていただければと思います。
 先ほど○○委員から御指摘のあった点について、御回答はいかがでしょうか。イベントごとのQOLの低下について、係数とか単価とかをセットした、どういう計算をされているかということだったと思いますが。
○意見陳述者
 すみません。回答が遅くなってしまっていて申し訳ございません。御指摘いただいた点について、もう少々確認させていただければと思ってございます。申し訳ございません。
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。
 ○○委員、それでよろしいでしょうか。
○○○委員
 結構です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
 その他の先生方、いかがでしょうか。ちょっと時間が押しておりますが、御意見があれば、重要なお話だと思いますので、お願いいたします。よろしいですか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。
 企業の方は御退室ください。どうもお疲れさまでした。
(意見陳述者退室)
○事務局
 事務局でございます。
 企業の方の退室が確認できましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、議論を進めさせていただきますが、いろいろと懸念点というか論点が出てきたところでありますので、実際にその分析をされている公的分析のほうから少し最初に御意見いただいたほうがいいのかなと思います。科学院から先ほども御質問とか御意見がありましたけれども、何か追加でございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
 科学院です。ありがとうございます。
 先生方に御議論いただいたことをサマライズするような形になるかもしれないのですけれども、少し御説明させていただきます。
 5ページ目に企業が長期のQOLに差をつける根拠というのを書いてきていると思うのですけれども、まず1点目、専門家への聴取により、長期になるほどQOLの差が広がるとの意見を得たという点については、先ほど○○先生、○○先生から御意見いただいたとおりかと思います。NDBを用いた解析においても、Micra VRというのを埋め込んだ患者の平均年齢は84歳ということになっていまして、○○先生から先ほどの議論がありましたけれども、こういうものはポケット管理が困難な認知症や寝たきりの患者さんに使うようなことが多いという話を聞いておりまして、少なくとも通常のペースメーカを植え込む患者さんとは患者像が異なっているということは御理解いただければと思います。
 もう一点ですけれども、Micra AVはDDDとぺーシングのモードが異なっていて、Micra AVというのはVDDと言われまして、ペーシング部位が心室に限られているということで、機能的には心室・心房両方刺激するDDDのほうが優れているということを勉強させていただきました。
 ポケット管理等に伴う長期のQOLの向上について検討するのであれば、DDDとVDDの差に伴う有効性等の違いについても詳細に検討を行うべきなのではないかなと考えるところです。
 それから、2点目ですけれども、既存研究でQOLが高い値で示されているという点ですけれども、こちらは企業が持ってきたスライドの19枚目です。企業が提出してきた右の表の研究、L-PMの研究については、植え込み時のQOLがほかの研究と比べてかなり低くて、先ほど御説明したような患者背景の違い、そういったものが反映されているのではないかと考えます。その後の経過の数値はほかの研究と同程度であって、この研究をもってQOLに長期的に差があるというのはかなり難しいのではないかなと考えるところです。
 それから3点目ですけれども、長期になるほど群間の合併症発生率の差が広がるということについては、合併症の発生に伴うQOLの低下については、先ほど企業側も同意したように分析に反映されているというふうに考えています。ですから、QOLの低下については考慮されていて、企業側の主張は誤解なのではないかなと考えているところです。
 それから、9ページ目ですけれども、企業側はQOL値の差をもともと提出した4分の1ではなく1としろということなのですけれども、4分の1という差を設定した理由は不明です。
 それから、11ページ目、植え込み後12か月までのQOL値については、企業側は3点主張されていますけれども、いずれも説得力に欠けるものと考えています。特にわざわざ共変量を調節した結果があるにもかかわらず、調整しないものを積極的に使用するという理由はないのではないかなと思っています。
 それから、13ページ目、NDBによる入院費用の算出についてですけれども、心不全については企業分析におけるレセプト解析においても含まれていたものであり、今さらこのような主張をされることについて少し戸惑っているところであります。
 なお、心不全の患者、非心不全患者の平均費用も全体の費用とほとんど変わらず、心不全患者を除外しても結果は変わらないものと考えています。
 それから、14ページ目は失礼しました。入れるパラメータが間違っていて、こちらは既に訂正した結果を本日の公的分析の資料として提出させていただいているところです。
 以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的に、なおかつより確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきたいと思います。
 改めて、○○先生と○○先生から最初にコメントをいただきたいと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
 ありがとうございます。
 ここに御参集の方はペースメーカは入っていらっしゃらないと思うのですけれども、どの手術もそうだと思うのですが、手術して直後というのは手術部位が気になるのですね。どうしても意識してそういう生活をすると思います。ただ、幸いにして6か月、1年を経て生活が普通に行われるようになると、スポーツをしたり、水泳をしたり、そういういろいろな運動をするようになると自然と忘れて、写真の中でもペースメーカが飛び出ている写真をあえて企業の方は出していらっしゃいましたけれども、全く気にならなくなります。ですから、気になるのは、気になるよねって言われるときだけだと思うのですね。気にしている人がいるというふうに他者から言われると気になるのではないかと思いますが、本人は気にならなくなると思います。
 ただ、手術をしたことについては、傷がありますので、そういう理解はすると思うのですが、QOLを評価するときに、さらにそういう意味で拡大してくるという事実は、まず通常は考えないことではないかと思います。
 あと、ペースメーカのトラブルに関して言うと、ペースメーカトラブルは感染の部分とリードのトラブルの2つがあります。リードトラブルというのはリードの寿命が大体メドトロのリードで通常15年と言われていますから、それよりも早くになる人はまれにおられるのですが、リードトラブルは通常15年から発生するというのは、今のリードの組成になってからはそのような理解をしています。ですから、一般的には15年の間は起こらないつもりで生活ができるわけです。ですから、いつも心配しなくてはいけないのは誰なのかどうかということがそもそもの問題なのではないかなと思います。
 したがって、ペースメーカを意識した生活を応用するのは誰かというと、患者ではなくて医師だと思いますので、そのような対応さえしなければ、普通に皆さん生活できて、アメリカのチェイニー副大統領もICDが入っておりましたけれども、みんな普通に活躍していて、ゴルフをやったりいろいろなことをやられたと思いますので、それをあえてQOLの評価でネガティブに反映させるというのは、僕は個人的には不適切ではないかなと思っています。
 企業分析に関してもいろいろと御議論があるかと思うのですが、比べてみたときに、こういう恣意的な部分が少ないのは確かではないかと思いますので、私は公的分析を優先すべきではないかと考えています。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 ○○先生、お願いできますでしょうか。
○○○委員
 今も○○先生からあったように、専門家の先生2人のコメントは全くこれを大々的に出すというのは非常に不適切かなと思っています。ペースメーカを植え込むと比較的、例えば70代の方なんかは具合がよくなったといって元気になって、テニスやゴルフや普通にしているのが普通であって、それから、逆にMicra AVを植え込んでいる人はほとんど寝たきりの人ですから、ペースメーカが気になるとかそんなことを言うことはまずあり得ないと思うので、この2枚の追加資料は全く不適切な資料だなと僕は思います。
 あともう一個気になる点は、企業が出したものは心不全の患者さんを除くと書いてあるのですけれども、逆にこのMicra AVみたいなものは高齢者でちょっとどうしても脈がうまくいかず心不全になるような人に入れたりするわけなので、心不全の方に入れるケースというのは、心不全が少しよくなってから入れるわけですけれども、心不全の方を除外してしまうというのは、日常臨床を結構反映しなくなってしまうので、少なくともそれを入れて解析する、もしくは別個に解析するにしても、除くというのはちょっとどうかなと思いますし、除きたいというのは何かそれなりの企業の理由があるのかというふうに思っています。だから、80代後半でペースメーカを入れるというのは、よほど家族の強い意思、もしくは心不全で困ってしまうとかそういうケースに入れるのだろうなと私自身は思っています。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 先ほど来の議論での論点の一つは患者さんの背景、適応をどのように考えるかという話でありました。お二人の先生に一応念のために確認させていただきますが、比較的高齢者の方で、複雑なケースが多いような患者像をある程度想定し、中心となるはそのような集団でよろしいという理解でしょうか。
○○○委員
 恐らくMicraシステム、Micraペースメーカの期待するアウトカムというのは、脈をつくるということだと思います。つまり、ペーシングすること。一方、あくまで現状の立ち位置として考えると、経静脈ペースメーカは社会的生活レベルを上げることだと思います。あるいは生命の危険を回避すること。つまり、それはなぜかというと、社会的生活をしている方に優先的に入れられていて、従来から社会的適応がない患者にはペースメーカを入れないというふうに多くの施設では言ってきています。社会的適応がないというのは、寝たきりで、ある意味でそこに医療資源を投下することはかえって不適切だというふうに多くの医師が考えてきたので、そういう人たちにはペースメーカ手術をあえてせず、申し訳ないけれども、寝たきりのこの状態であればペースメーカを入れても入れなくても同じだよねといっていた群なのだと思います。そこがある意味でのマーケットになってしまうと、寝たきりの人たちで脈がちょっとゆっくりだからみんなMicraを入れればいいよねという、すごくそこは施設の考え方もあると思いますが、脈がゆっくりだと施設に入れられないのでペースメーカを入れてくださいというようなニーズがある程度発生してきているとも聞いておりますので、そういう意味で言うと、Micraを入れている現状の患者さんは、社会的生活が困難で、なおかつペースメーカを本来であれば入れてもよい患者というのがMicra、本当に入れねばならない人たちは経静脈ペースメーカになっているというのが現状としての事実ではないかと思います。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
 ○○先生の言うとおりで全く同感だというふうに思っています。やはりさっきも言ったように高齢者の方で、寝たきりの方で、どうしても今まで入れるかどうか迷っているケースであって、例えば脈も遅くて心不全になってしまうという人には、多分、今までよりは少し入れることが多くなるのかなと思いますけれども、QOLという点では、やはり今までのペースメーカ、70代の方にはまずそっちを今後もずっと入れていく形だなというふうに思っています。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。レギュレーション上、明確な線引きはされていないと思うのですけれども、臨床現場での診療選択ということに関して、すみ分けをして、適切な患者像に入れていくというのが本来あるべき姿であり、そのデバイスの有効性を社会的にも享受できるように留意すべきというメッセージだったのかなと思って伺っておりました。ありがとうございました。
 その他、分析の方法論等を含めてかなり議論がありましたが、先生方から御意見とかはございますでしょうか。
 ○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
 ありがとうございます。先生方のお話も伺いまして、やはり企業側のQOLの設定には極めて課題があるというふうに、改めてそのような思いを持ちました。もしこれをどこか論文に出すとすれば、きっと差がないという前提でやって感度分析でちょっと差をつけて、どこまで差がつけばこの機械は費用対効果がよくなるのかとか、多分学生に論文を書かせるならそういうふうにして出版をするのだと思いますけれども、こういった恣意的な設定で数字を出して、それを基に何らかの重要な意思決定をしていくということは全くあり得ないことだと思いますので、その点については公的分析のほうの考え方を全面的に賛成いたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。今のような観点についての御意見ですが。
 ○○委員、いかがでしょうか。
○○○委員
 私は本当に医学的なところが分からなくて、もうちょっとでだまされてしまうところで危なかったと思ってお話を聞かせていただきました。そもそも適応の集団が違うのにもかかわらず、ああいう写真ですとか、スポーツするときにとか、運転するときにということを言われると、私自身だったらやはり小さいほうがいいのかなという安易な考えで、長期的有用性が少しぐらいあるんじゃないかと思ったのですけれども、そもそもの分析対象集団が異なるというところで、非常に明確に理解することができました。公的分析の分析でよいと思います。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 その他の先生方、いかがでしょうか。
 今の先生方のお話を伺うと、QOLの差については比較的厳密というか、エビデンスに基づいたお話も含めてではあったと思いますが、さりとてリードレスということのイノベーションについての評価も、ある程度やはり考慮しなければいけないと思います。蓋然性とか合理的な観点で整理をするとしたときに、QOLがゼロに設定していていいのかどうかという点については、何人かの先生方からも御意見いただいているところですけれども、これについて何かコメントがあればと思いますが、いかがでしょうか。
 それがどの程度あるかという議論はなかなか難しいとしても、まったくなしのゼロでいいのかどうかというところについては、多分いろいろと御指摘があるのではないかなと思って、あえて先生方にお聞きするわけですけれども、この点に関していかがでしょうか。
 臨床の先生方からまずいただいたほうがよろしいでしょうか。
○○○委員
 企業が出してきている直近の論文は、Micra AVのAV機能をVR、もともとのMicraのVVI型というペースメーカに落とした場合と、DDD型、この場合にはVDDですけれども、心房をセンスして心室をペーシングするという順次性を持ったより生理的なペーシングモードにした場合と、あえてそれをしなかった場合で比べている論文を出してきています。この論文の最も大事なところは、AVセンス、つまり、DDD型として働いているときには患者さんの生活の質がよくなりますね、パフォーマンスもよくなりますねという報告です。
 ただ、このロジックで1つ問題になるのは、Micra AVの順次性を持つ生理的ペーシング機能というのは、入れてから経年的というか経時的に落ちていきます。つまり、入れたときは例えば100%AV機能として働いている。ところが、半年たつと7割ぐらいに下がっている。長期的予後の結果がまだ出ておりませんので、どのくらい下がっていくかが分かっていません。したがって、分かっているのは3か月から6か月で25%、論文によってはそれが40%くらい下がる。つまり、1年たったところで6割ぐらい、半分ぐらいの人しかもともと持っている機能を生かすことができなくなっているということです。
 つまり、本来の価値を1とすると、1年後は0.6くらいに下がってしまうということがあって、これを調整するためには病院に来ていただいたりして、それを調整するいろいろな工夫をしないといけないので、Micraに関してはそれもまたかなり難しいですので、そうだとすると長期的に見たときの価値が下がっていく、機能が落ちていくということでもあるので、設定するとき、Micra VRと比べるとAVのほうがよいのは分かるのですけれども、DDD型、あるいは経静脈ペースメーカと比べると、そちらのほうはほぼ間違いなく、100で入れても90以上は機能が生きているので、明らかにそこは劣化していくことが論文の上でも見えているので、その価値評価をどうするかというのは、ここはそれこそ先生たちのお知恵で解決していただかないといけないのかなと思っています。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
 さっきも出ていましたが、やはり患者の対象というのは80代半ばぐらい。要は10年ぐらいしか電池がもたないということを考えても、あまりこのペースメーカで長期予後、10年の予後を見るものではなくて、ある面、急場しのぎのためのものということを考えると、せいぜい5年ぐらいまでの評価、3年から5年ぐらいでどちらがいいかというのを評価していくのが一番妥当な線かなと思っていますし、例えば我々でも、心臓の中にこんなペースメーカが入って取り出さないものを自分としても植え込まれたくないわけです。まだペースメーカのほうが皮下に入っているわけですけれども、やはり心臓にこういった異物をずっとこれから、かえって僕だったらこのMicra AVが心臓に入っているほうが余計心配に思ってしまう。本当にあまり10年とかの予後ではなくて、3年からせいぜい5年ぐらいの予後で今後いろいろなことを評価していくのがいいのかなと思っているのです。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 そうすると、QOLの取扱いについては、公的分析が実施している条件が比較的妥当であるというような御意見だったのかなと思いますが、この辺りについて他の先生方、コメントございますでしょうか。いかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
○○○委員
 ありがとうございました。私も本当にいろいろお話を聞いていてかなりイメージが初めのお話と違うなということで了解いたしました。
 せっかくですので理解しておきたいので、例えばこのリードレスのQOLの話が、Tjongという文献では植え込みのときにユーティリティーが0.59ということなのですけれども、0.59というと完全な寝たきりではないですね。ですから、多分、寝たきりだと、分からないですけれども0.2とかそのくらいの人だとしたら、ちょっと脈拍が増えたからといって、その0.2が0.3になるということはあまり期待できないのかなと。実臨床の場のイメージとこの数字がちょっと乖離しているのかなということを一つ感じました。そういったような印象でよろしいでしょうか。
 あともう一つ、例えば80歳前後でそこそこ元気な方であれば、この方はこの2つの選択肢が両方あり得るというような理解でよろしいのかということを教えていただければと思いました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 よろしければ、○○先生と○○先生から、よろしくお願いします。
○○○委員
 ありがとうございます。
 先ほども申し上げましたように、長期活躍する方たちで心房センス、心室ペーシングの機能が残っていたほうが運動機能がよいというのは、企業が出しているデータもそうだと思います。そのとおりなのです。だとすると、その方たちがせっかくペースメーカを入れたときに、80歳で入れて、86歳、89歳、90歳になってもエージシュートをやろうというゴルファーがいるわけですので、そういう方たちがお元気で暮らすためにはどうしても心房・心室で順次ペーシングが機能していないといけないわけですね。そうすると経静脈ペースメーカのほうが間違いなくその機能は高く残ります。一方で、Micraに関しては、そこが落ちていくことが明白です。
 もう一つ問題は、心房細動という不整脈が高齢になってくると発症してくることが分かっておりますので、メドトロを含めて多くの経静脈ペースメーカは心房細動を予防するための機能を有しております。そこが付加的な価値の高いペースメーカということになっております。一方、Micraは心房のペーシングができませんので、それは一切できないわけです。ですから、高齢になると発症してくる心不全であったり心房細動であったり、こういう病気を予防しようということでペースメーカの会社がいろいろと歴史的に英知を結集して新しいデバイス機能を作ってきておりますが、これらが使えません。ですから、お元気な方たちにさらにお元気でいていただくのであれば、お嫌でなければ、DDD型、本来の経静脈ペースメーカを入れさせていただくのが最もよくて、ただ、種々の事情でどうしてもそれがかなわないという場合には、やむを得ずMicraを使うことが選択肢になるというふうに私は理解しています。
○○○委員
 私も大体同じような意見で、多分、イメージ的には、今は90代後半でも元気に歩いている方もいらっしゃるのですけれども、80代を超えていて、かつ、せいぜい室内がようやくつかまり歩きできるぐらいの方がきっとMicraの適応になって、90歳ぐらいの方でも元気に外を歩くような方であれば、普通のDDD型を植え込むような方が多いのではないかなと思っています。
○○○委員
 ありがとうございました。理解が深まりました。どうもありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。
 では、あと念のために共変量についても一応先生方とお話ししておきたいと思うのですけれども、○○先生、共変量についてはいかがですか。
○○○委員
 企業分析のほうは共変量を調整しない多施設のデータを使い、公的分析班のほうは単施設でありますけれども、傾向スコアマッチング等を使って共変量をきちんと調整されたものを使われたというところで、もちろん多施設でそろっているというのは一番よろしいのですけれども、通常は多施設と単施設の違いというのはやはり外部妥当性のところ、一般化のところで議論にはなるところになります。
 一方、背景のずれという、調整していない解析は内部妥当性のほうが問題になりますので、外部妥当性と内部妥当性、どちらを優先するかと言われれば内部妥当性のほうを優先するというところで、単施設でも背景がきちんと調整された結果を使うべきだと私は思っております。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。そうすると、公的分析のアプローチでよろしいという御意見だったかと思います。
 いかがでしょうか。その他の先生からこの辺に関してコメントございますか。よろしいですかね。
 あと残っているものは、入院費用の取扱いで、先ほど来、心不全の取扱いのお話がございました。これは伺っている話を考慮すると、心不全の多少軽症というのでしょうか、改善したような症例も含めて対象になり得るということでありました。○○先生、取扱いを少し考慮しながら心不全も入れた分析をしたほうが良いという、そのような御意見でよろしいですか。
○○○委員
 そうですね。やはり高齢者でどうしても困って入れるわけですから、心不全を合併するようなケースも当然入ってくるわけなので、それを全く除外したら、かなりの例が除外されてしまうことになりますので、取りあえずは入れて解析するのが妥当だと思いますし、それでいて、分けて分析するのはいいにしても、除外するのはちょっと、私はふだんの日常診ている適応になる方をかなり除外してしまうのではないかなと思うのです。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。この点について何かコメントございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうすると、総じて公的分析のアプローチ、条件とか方法が比較的妥当で受け入れやすいという話だったのかなと思いますが、こういうまとめ方で先生方、よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。それでは、その形で整理をさせていただきます。
 それでは、議決に入らせていただきますが、先生方の御意見を参考に、Micra AVに関する費用対効果評価については、公的分析案を採用して、Micra AVに係る総合的評価については、公的分析による案を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
 なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任いただくということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。

 

(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第2係

代表: 03-5253-1111(内線)3140

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