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2022年10月28日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第7回議事録
○日時
令和4年10月28日(金)13:00~
○場所
オンライン開催
○出席者
田倉 智之委員長 斎藤 信也委員長代理 池田 俊也委員 木﨑 孝委員 |
新谷 歩委員 新保 卓郎委員 中山 健夫委員 野口 晴子委員 |
花井 十伍委員 飛田 英祐委員 米盛 勧委員 |
弦間 昭彦専門委員 山口 正雄専門委員 福田 敬専門委員 |
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官 |
<事務局> |
中田医療技術評価推進室長 他 |
○議題
○アリケイスに係る総合的評価について
○議事
○費用対効果評価専門組織委員長
続きまして、アリケイス吸入液について、公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析及び企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析の結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
では、アリケイス吸入液について企業からの意見聴取をした後に御議論いただきます。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局・国立保健医療科学院より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る公的分析の再分析結果に対する意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方の準備が整いましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でアリケイス吸入液の総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、お願いいたします。
○意見陳述者
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
それでは、早速意見陳述をさせていただきます。
左上の番号でスライド2の資料を御覧ください。
再分析いただいた中で、QOL値については弊社の意見を陳述させていただきます。
まずは、肺MAC症患者のQOL値の考え方について御紹介いたします。
スライド4を御覧ください。
企業報告書内でも触れているとおり、Shahらの検討によって、本分析の追加的有用性の根拠とした212試験で測定したEQ-5D-3LによるQOL値は、統計学的な観点から肺MAC症の改善増悪に伴う経時的なQOLの変化を正確に捉えられていないことが報告されており、今回私たちはこの論文を根拠にTTO研究を実施した経緯がございます。
スライド5を御覧ください。
一方、FDAは212試験の喀痰培養による菌陰性化のデータを基にアリケイスを承認しておりますが、クリニカルベネフィットを追加で評価するよう指示しています。
その背景ですが、1点目に、肺MAC症患者に対する臨床効果を適切に評価できるQOL尺度が現時点でないということ。2点目に、肺MAC症患者に最も特徴的であり、かつ重要である呼吸器症状及び疲労感を含めた評価ができるよう、既存の評価方法を修正適合させるか、新たな尺度を構築する必要があるとの見解を出されています。その指示に従い、現在PRO評価を指標とした臨床試験を実施中です。
○意見陳述者
続いて、スライド6を御覧ください。
先生方も御存じのとおり、EQ-5D-3Lには幾つかの課題があろうかと思います。今回、EQ-5D-3LによるQOLが肺MAC症の改善/増悪に伴う経常的なQOLの変化を正確に取られなかった理由には、各属性に3水準しかなく感度が低いこと、呼吸器疾患の症状を直接反映する属性がないこと、想起インターバルが「今日」であり、肺MAC症のような症状が間欠的な疾患に適していないこと等が挙げられるのではないかと考えております。
すなわち、EQ-5D-3Lによる測定値は、肺MAC症の臨床上重要な変化を過小評価している可能性が高いのではないかと考えております。もちろん、TTO研究による推定値が逆に過大評価になっているのではないかという御批判があって当然だとも考えておりますので、その妥当性について御議論いただきたいと考えております。
続きまして、スライド7を御覧ください。
今回実施したTTO研究の概要についてお示ししております。今回は、アリケイスの適用となる前治療において効果不十分な難治性の肺MAC陽性患者とMAC陰性患者について調査しております。
TTOによる価値づけを行った具体的な健康状態記述は、青い表にお示ししているとおりですが、この記述は212試験において測定されていたSGRQという尺度の質問表から実際の試験で観察された中央値になるよう選定いたしました。基準としたSGRQスコアは、MAC陽性の場合は50ポイント程度、MAC陰性の場合は30ポイント程度です。御覧のように、「月に1回程度は非常につらいと思うほどの症状を起こし」とあるなど、肺MAC陽性状態の症状は間欠的であることが御理解いただけるかと思います。
このように作成した健康状態について、今回、私たちは直接国民に対して価値づけを行っていただき、EQ-5D-3Lでの推定値が0.7といったところに対し、0.535という推計値を得ることができ、この推定値のほうが国民の価値観を適切に反映した分析と、それに基づく意思決定になり得ると考え、採用させていただいた次第でございます。
スライド8を御覧ください。
一方で、今回のTTO研究と同じくSGRQが40~50ポイント程度だった先行研究において、同じEQ-5Dでも水準を5つにしたEQ-5D-5Lが測定されていた事例を御紹介させていただきます。これらの先行研究は、他疾患にはなりますが、私たちが実施したTTOの結果と同様に0.5付近の推定値になっていたり、またはそれ以上に低い推定値になっている事例であり、必ずしも今回のTTO研究による推定値が不当に過大評価になっているわけではないという解釈ができる参考情報ではないかと考えております。
○意見陳述者
次に、スライド9で○○のコメントを読み上げさせていただきます。
EQ-5D-3Lによる難治性肺MAC症患者のQOLの測定値には違和感があります。
TTO研究で用いられた健康状態の記述は、SGRQスコアで用いられる記載をベースに作成したものです。また、その記述は、アリケイスの適用となる難治性肺MAC患者のうち、中等症程度の患者の標準的な実態をよく表しており、そのQOLはMAC陰性患者と比べかなり悪いというのが臨床医としての印象です。
そのため、TTO法によって測定したQOL値のほうが、患者を直接診ている立場としては感覚的にも正しく反映していると考えます。
また、実臨床におけるこれまでの報告例の多くは重症例であり、その実態と比較すると、本分析で中等症を想定したQOL値を用いたのはconservativeであり、アリケイスの有効性をむしろ過小評価していると感じます。
続いて、本日同席いただいております○○先生にコメントをいただきます。
○意見陳述者(専門家)
○○でございます。
EQ-5D-3LはジェネラルなQOL尺度のために、呼吸器疾患である肺MAC症に対しては感度が悪いように思います。肺MAC症のQOL尺度に決定打はありませんけれども、疾患特異的なSGRQのほうがより正確に肺MAC症の健康関連QOLを反映すると思っております。
今回利用したSGRQ質問票で臨床試験で得られた中央値から作成された健康状態の記述には、説得力があると私も感じました。そのような意味で、今回実施されたTTO法は非常に興味深い方法だと思いました。
以上です。
○意見陳述者
ありがとうございます。
次に、スライド10より、分析ガイドラインから見たTTOを用いることの妥当性についてお話しさせていただきます。
スライド11を御覧ください。
我々は分析ガイドライン第2版に基づいて分析を進めてまいりましたが、分析ガイドライン第2版においてはPBMあるいはTTO法のいずれで測定したQOL値を用いてもよいとされてございます。
スライド12を御覧ください。
第2版にはQOL測定対象者の人種について記載があり、QOL値は国内での調査結果を優先的に使用することを推奨するとされております。
新たに実施したTTO法を用いた調査では日本人319名を対象としており、国内で調査されているTTO法が用いられることはガイドライン上も妥当ではないかと考えております。
最後に、スライド13を御覧ください。
ガイドライン第2版について御説明してきましたが、仮に改訂された第3版を踏まえても、TTO法を用いることは妥当と解釈することができると我々は考えております。212試験ではEQ-5D-3Lを用いていましたが、第3版ではEQ-5D-5Lが第一推奨される記載に改訂されております。
しかしながら、今回の論点は、TTO法を用いて測定してよいとされている対象者本人からQOL値を得ることが困難な場合に本分析が該当するかどうかであると考えております。対象者本人からQOL値を得ることが困難と解釈できる状況には①~③で記載しているケース等が該当すると考えており、今回、EQ-5D-3Lの結果を分析に採用しなかった経緯は、③の利用可能なPBMによって臨床上重要な変化を適切に反映した推定値を得ることが困難な場合に該当すると考えております。
以上となりますが、スライド14以降に参考資料としてNICEのTTOが採用された分析事例と分析の折衷案及び第1回目の専門組織で御心配いただいた本剤の販売実績の推移等について参考までに記載しております。
我々といたしましては、本分析及び議論が今後の日本での費用対効果評価の発展に貢献できれば幸いと考えてございます。
どうも御清聴いただきありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
○○先生、お願いいたします。
○○○委員
○○と申します。
この方式をTTO法と呼んでPBMと比較するのはちょっとミスリードのような感じがします。特に2番目の論点で出された、TTOを使ってもいいとガイドラインに書いてあるではないかというところの直接法というのは、患者さんから直接聞くという意味の直接法だと思います。なので、ビネットをやって、それを一般の者に聞いて価値づけをTTOでやるというものをTTO法と呼ぶのはいかがなものでしょうか。もっと言うと、EQ-5DだってTTO法で価値づけているわけですから、ちょっとミスリードな上に、ガイドラインの読み方が違うのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○意見陳述者
ありがとうございます。私から回答させていただきます。
今回は、御指摘のとおり、ガイドラインの記載からある程度企業側で拡大解釈というか、こういう解釈もあり得るのではないかというところでの提案と御理解いただければと思います。
私たちの見解といたしましては、はっきりと現行のガイドラインで指定されているものではない状況かと思いましたので、あと、ガイドライン上の位置づけはもちろんそうなのですけれども、やはり私たちの思いとしては、患者様の実態を反映し、そして、それが国民の価値観を反映した分析になり得ているのかどうかというところで、今回はEQ-5D-3Lには非常に課題があると感じましたので、今回Time Trade Off法によって代替させていただいたと御理解いただければと思っております。
○○○委員
丁寧な御説明でよく分かりました。
念のために確認ですけれども、普通、EQ-5Dがあまり適切ではないと考えたら、SGRQという疾患特異的なQOL尺度からマッピングしたら、どうなるかという発想になると思うのですが、そうしたマッピング換算みたいなものはないのですか。
○意見陳述者
ありがとうございます。引き続き私から回答させていただければと思います。
今回、EQ-5D-3Lが臨床試験上で測定されたかと思うのですけれども、マッピングをしたとしても、マッピングは恐らく疾患特異的な尺度とPBMを測れたときに、この関連性について統計学的に技術的な橋渡しをするという技術だと思います。そういった技術面に関しては非常にすばらしい技術だと思うのですけれども、そもそも測定しているEQ-5D-3Lのデータに課題があると、この2つのスコアをうまく関連づけられたとしても、測定された3L自体が適切に患者さんの状態を反映していなければ、マッピングで橋渡しをしても適切な分析にはならないのではないかと思いまして、今回は思い切ってTTO法を採用させていただいと御理解いただければと思います。
○○○委員
私の意図は、もともと両方のデータがあることから、これを使ってマッピングしてくださいと言っているのではなくて、EQ-5Dは直接取っているのだから、それを使えばいいと思っています。そうではなくて、さっき同じ肺疾患ということでCOPDとかそういうものをいろいろ出されましたが、SGRQというのは肺MACに使うものではなくて肺疾患一般に使うものだと理解しているのですけれども、そういうものからEQ-5Dにマッピングした先行研究みたいなものはないのでしょうかという質問です。
○意見陳述者
両者を測っていてというところの研究に関してはあるのですけれども、マッピングアルゴリズムとしてしっかりとした技術を用いて評価した分析というのはなかったかと。現時点では網羅的に調べている状況ではないので、そういう状況での回答になってしまって大変恐縮なのですけれども、現時点ではなかったと考えております。
○○○委員
これで最後にします。ご見解を伺いたいのですが、EQ-5Dがinappropriateだとかになったときに、次は別のPBMを使う。その次にマッピングがあればということで、このビネットは最終手段のように優先される順番を理解しているのですけれども、その理解は共有できていますでしょうか。
○意見陳述者
ありがとうございます。引き続き私から回答させていただければと思います。
今回、212試験の結果を分析に活用して分析している状況なのですけれども、EQ-5D-3Lのデータがどうやら課題があって適切に評価できないのではないかというところに気がつきまして、それもShahらの論文が発表された以降になるのですが、そこから企業分析の期間中に代替するデータを取ろうと思ったときに、肺MAC症の患者さんもかなり人数が少ない、しかも難治性の患者様というところでいうとリクルートに非常に時間がかかる状況でございましたので、時間的にも企業として準備できる最大の努力をさせていただいたと御理解いただければと思っております。
○○○委員
ありがとうございます。よく理解できました。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、先ほど手を挙げられていらっしゃいましたけれども、お願いできますでしょうか。
○○○委員
TTO法に関してどのくらい正確にQOLが測れるのか分からず、質問させていただきます。この疾患は患者ごとの差も大きいですし、結構いい状態のこともあるし、波があって悪いときもあります。そういう間欠的な症状は先ほど説明の中でもありました。TTO法の文章で、患者は良いときもあるけれども悪いときもあるという文を入れるのはあり得なかったのでしょうか。良いこともあるという文を入れるのは適切ではないと考えられたでしょうか。その辺を教えてもらえればと思います。
○意見陳述者
ありがとうございます。こちらも引き続き私から回答させていただければと思います。
先生の御指摘のとおり、212試験のデータを見ましても、SGRQスコアが非常に軽度な方から重度な方まで幅広くいらっしゃいました。212試験はもちろん難治性の患者様に限定された試験なのですけれども、それでもやはりばらつきというのは確認することができました。TTO法の全体的なデザインといたしましては、軽症な患者様と中等症の患者様と重症の患者様の記述案を別々に分けて測定しております。これは212試験の患者様のSGRQスコアを同じサンプルサイズになるように3分割したときに、軽症、スコアが低い方は30ポイント程度でした。真ん中の値がです。次に、中等症と定義させていただいたスコアが50ポイント程度で、重症と定義させていただいた患者様には関しましては70ポイント程度の患者様という3つのシナリオを御用意させていただきまして、それぞれ一般の人々に価値づけしていただいたというデザインで行っております。
御指摘のとおり、軽症の患者様、30ポイント程度の想定をした記述案では0.8台のQOL値になっておりまして、これは陰性の状態の患者様とも同じぐらいの推定値になっておりまして、この数字に関しましては、もしかしたら先生のイメージに近い数字になっているのではないかと考えたのですけれども、今回、212試験の全体集団を代表する値として、ちょうど全体集団のSGRQスコアの中央値も50ポイント程度だったのです。なので、今回は全体の代表値として50ポイント程度の記述案から推定された0.535という数字を利用させていただいたという経緯がございます。
答えになっておりますでしょうか。
○○○委員
説明ありがとうございます。
かなり差が大きいということは言えるわけですね。
○意見陳述者
はい。
○○○委員
SGRQとかいろいろなQOLのスコアに関して日本人集団も48名入っていたと書かれていますが、日本人と日本人以外の方とで質的あるいは数字の上で差、傾向はあったのでしょうか。
○意見陳述者
私から答えさせていただきます。
日本人集団での数値を見ましたけれども、大きな違いは特になかったという結果だったと思います。
○○○委員
ありがとうございました。
もう一つ教えていただきたいです。QOLの改善が、菌が陰性化して、その後もずっと陰性を保つ方だけでみられるのか、その後陽性化するとQOLが下がるといった、菌の経過とQOLの変化はリンクしているのかどうか、分かりますか。
○意見陳述者
また私から解説させていただきます。
現状、利用可能だったデータとして、再発した後のQOLのデータの実測データというのは活用できておりません。なので、分析上は、再発すると、もともと最初に陽性だったときのQOLに戻るという設定にしておりまして、もし再発したときは前よりも軽くするというようなことであれば、少し保守的な分析になっているかと思いますし、もし逆にもっと状態として悪くなっていくという病態であれば少し過大評価しているという分析になっている可能性があるのではないかなと推察いたします。
○○○委員
菌の培養結果によって違いが出てきますね。
ありがとうございます。
○意見陳述者
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、お待たせしました。どうぞよろしくお願いします。
○○○委員
QOLの評価について、3Lについて少し一括しては不十分ではないかということに関しては基本的にあり得ると思うのですけれども、私はどちらかというとがんのメディカルオンコロジーの試験はかなりやっているのですが、QOLそのものに関して専門家ではないのですけれども、そういった意味では常に関わってはいるのですが、やはり検証がかなりきっちりされていないと新たなものというのは、なかなか特にピボタルな試験というものはなされていて、そうすると、ピボタル試験の質の根本に問題が起きると思うのです。ただ、それにおいても、それがかなり限定的な評価として評価されるというのももちろんあると思うのですけれども、その検証が対象と尺度というものでしっかりなされていないと、やはりジェネラルのものを使わざるを得ないというのがオンコロジーでは普通だと思っているのですけれども、だから、かなり言っていることがチャレンジングと思っていて、それなら検証からちゃんとやって、そこから話をされないと、いきなりこれを出されても、僕らからすると検証されていない尺度というのは一切認めないので、それは駄目なのでしょうか。その考えは違うということなのでしょうか。
○意見陳述者
私の理解として恐縮なのですけれども、大変おっしゃるとおり、通常のQOL尺度を選ぶときも、こういった介入によってどういった改善があるだろうという仮説を測定するのに適切な尺度、バリデートされた尺度を選ぶというのが通常かと思います。そういった中で医療経済の範囲に踏み込むと、急にEQ-5D等を使って測定できるか検証されないまま、実際の検証がないまま使われて臨床試験が実施されているという課題は一般的にあり得るかと思います。今回特にそういう課題が浮き彫りになった分析かと思っております。
そこに対して、先ほどの回答と重複しますけれども、私たちとして限られた時間の中で代替する値を提案できる方法として、今回このTTOという方法しか選択肢がなかったと考えております。もちろん理想的にはまた肺MAC症の患者さんを集めて、より適切なQOL尺度を用いて評価できればよかったのですけれども、例えば3Lよりは5Lのほうが感度がよいという報告がございますので、こういった方法もできないかというところに関しましては相談はさせていただいたのですけれども、どうしてもリクルートで十分なサンプルサイズを集めることができないだろうということで断念させていただきまして、今回Time Trade Off法という方法で代替させていただいたと御理解いただければと考えております。
一方で、SGRQをベースに作成した健康状態記述案に関しましては、臨床の先生方からも高く実態を反映していると評価いただいていると思っておりますので、その辺りの妥当性に関しては一定の限界点はあるものの、御評価いただけるところではないかと感じております。
御回答になっておりますでしょうか。申し訳ありません。
○○○委員
がんを相手にしていると検証して当たり前と思っているので、それではやったことはないので、感覚がちょっと違うかもしれないです。
○意見陳述者
ありがとうございます。おっしゃるとおりかと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員の先生方はいかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
今回TTO法を使われて、シナリオといいますか健康状態については臨床の専門家の方が作られたので、患者の病態の記述については実態をきちんと表しているような表現になっていると思いますが、何せ内容が多いというか長いというか、これを全部頭に入れて、さあTTOと一般の方がどこまでそれに対して適切に評価できるのかということは、やはりかなり疑問なところがありますが、限られた時間であっても同じ方に例えば2回やる、つまり再現性を見るような検証はできると思うのですけれども、どこまでこの測定値に対してのそうした妥当性、信頼性の検証がされているのか、やれることはたくさんあると思いますが、どのようなことをされたのか教えてください。
○意見陳述者
こちらも私から回答させていただきます。
大変厳しい御意見だと思っております。大変残念ながら、今回、○○先生のほうで御期待いただいているような検証的な解析や、2回同じ方に御回答いただくというような客観的な検証は行っておりません。ただ、インタビュー調査を対面で実施させていただきまして、実際に一般の方々の回答されている状況を見学していたのですけれども、非常に真剣に回答いただけている様子は、論文等にするときにはなかなか表現は難しいかと思うのですけれども、大変真剣に取り組んでいただいたと感じておりまして、そういった意味では、妥当性というところに関しましても、定性的な回答になりますけれども、自信を持って御評価いただけると考えている次第でございます。
○意見陳述者
追加させていただきますと、立ち会いさせていただきました立場から言いますと、1対1で調査員がつきまして、約1時間かけてみっちりとどんなレベルの方でも分かるまで説明しているというのは立ち会っていてよく理解したところでございます。
○○○委員
ありがとうございます。真剣にやっていただいて当然というか、そういうことではないと困るのですけれども、本当に昔、私がアメリカの大学で習った話ですが、このTTO法というのは、割とアジア人ではなかなかこういう数字を答えるような判断が難しいというか、結果が結構ぶれるということは実際にあるようでありまして、海外でこれが通用しても、果たして日本人でこの方法が通用して、2度3度測ったときに安定的に同じような回答をするかどうかというのは、まだ研究が不足しているのかなという印象を持っていますが、その点について何か御意見はありますか。
○意見陳述者
ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、その点、TTO法の再現性に関してはもちろん課題があるところかと思います。そういった意味でも、データを代替する方法として、近年、離散選択実験法等が出てきている背景もそういったところにあるのかなと思うのですけれども、今回TTO法を選ばせていただいたのは、EQ-5D等といったものもTTO法で測定されているという日本の現状がありますので、これまで利用されているEQ-5Dとの比較可能性も含めて、もちろんTTOで御検討いただく生存期間もEQ-5Dの設定と合わせて10年をスタートにさせていただいたくなど工夫はさせていただいている状況ですので、本当にいろいろ課題がある中でも、方法論的なところでほかの研究と比較したときに穴があるようなことがないようにデザインさせていただいたというところまでしか今回取り組むことができなかったと御理解いただければと思っております。
○○○委員
例えばこのMAC陽性難治性の患者さんは、通常はこの状態で大体何年ぐらい生存されるのですか。
○意見陳述者(専門家)
データとして実際にこの試験でというのは何とも言えないのですけれども、難治性の方でもなかなか一概に言えないというところかと思います。なので、そういう意味では、例えば空洞がどのぐらいあるかなどによってもかなり違ってきますし、なかなか平均はどのくらいとかと言えないというのがこの疾患の現状かと思います。
○○○委員
というのは、今、TTO法で10年と設定したというので、10年がこの病気にとって長過ぎるのか、短過ぎるのか、適当なのか、例えばとてもひどい健康状態が書いてあって、それが10年続くとか20年続くとかと想定するのはちょっと現実ではないですよね。この病気の場合、今、10年と設定されたということだったので、その設定が妥当かどうかと思って伺いましたが、いろいろばらつきがあるということが分かりましたので、結構でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員の方々はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。どうもお疲れさまでした。
(意見陳述者退室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方の退室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
闊達な御議論というか、意見聴取をありがとうございました。
企業からの意見聴取を行いましたが、科学院から追加で説明等はございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
企業の資料、費-3-3に沿いまして、少しお話をさせていただきたいと考えています。
まず4ページ目ですけれども、EQ-5DにおいてもMAC陰性患者のスコアは0.876、陰性患者のスコアは0.78と重症度的にきちんとスコアが分かれているものと認識しています。EQ-5DのMID、臨床的に意味のある最小差は約0.05程度であると考えられていますので、両者の健康状態というのは十分に弁別できているものと認識しています。
また、製造販売業者が引用しているShahらの報告においても、FEV等においてはEQ-5D-3Lで測定したQOL値において重症度を区別可能であるということは示されています。
5ページ目ですけれども、このガイダンスについては、引用元がよく分からない部分もあるのですが、現在公開されているFDAのガイダンスにおいてはEQ-5Dに関する直接の言及というのはありません。当該ガイダンスでは、PROで測定した臨床指標が主要なエンドポイントであるべきですが、肺MAC症患者に対する臨床効果を適切に評価できるPRO指標がないということをFDAの考え方として示しているものでありまして、ましてやTTO法による測定を許容するものではなく、企業の指摘というのは当たらないのではないかなと考えています。
6ページ目ですけれども、確かに企業が指摘するような課題というのはこのEQ-5Dにおいてはあるわけですが、このような課題がある中でも、本件については前述のとおり十分に評価が可能だと考えています。
また、感度についてですけれども、EQ-5Dは多くの疾患においてQOL値が測定できるように設計された質問票でありまして、特定の症状や病態に焦点を当てた疾患特異的尺度とは異なっています。その点で、EQ-5Dの感度が疾患特異的尺度より劣るということはある意味で当然でありまして、そのことを前提とした上で費用対効果の評価を行っているところであります。
8ページ目ですけれども、COPDのQOL値については、ほかにも多くのものが報告されていまして、必ずしも企業が実施したTTO法による測定値と近い値が報告されているわけではありません。
そもそも企業の主張によれば、EQ-5Dは感度が低くて、呼吸器症状の項目がなく、想起期間が本日に限定されていると。こういう尺度とTTOでなぜ同程度の尺度が得られるのかというのは少し分からないところであります。
9ページ目ですけれども、臨床の観点からQOL値の妥当性等を御検討いただくというのは非常に重要なことであると考えていますが、一方で、QOLというのはあくまで患者報告アウトカム、PROの一種でありまして、患者からの直接の報告に基づいているということが非常に重要なものであると考えています。このような患者報告アウトカムと医療者の評価というのは往々にして乖離することがありまして、必ずしも医療者の感覚が直接にこのスコアとして反映されるものではないということに御留意いただく必要があるかなと思っています。
12ページ目ですけれども、ここに引用されていますように、QOL値は8.2及び8.3を満たすものがある限り、国内での調査結果を優先的に使用することを推奨するという記載がありますが、8.3においては「測定が困難な場合に限る」と記載されていることから、このような解釈は当たらないものと考えています。
13ページ目ですが、これも繰り返しになりますが、臨床試験においてEQ-5Dが取得されている以上、測定が困難な場合には当たらないと考えます。企業側が記載している困難なケースの3点に同意するものではありませんが、いずれにしろ、本件は企業側の主張する②のアクセス可能な患者数が少ないということには該当しないのではないかと考えています。
科学院からは以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
今の御説明も踏まえながら、当該品目について御議論をお願いいたします。
なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらが科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきたいと思います。
いかがでしょうか。
○○○委員
○○です。
基本的にQOL評価ということが一番問題になるとは思うのですけれども、やはりしっかりした検証のなされているものが優先されるべきで、そういったものが、例えば弱いとは言っても、一応それはピボタル試験とかでもそもそも企業が採用しているものでありますし、ある程度それは検証されたものであって、もしそれではなくほかのものにするのであれば、しっかりした根拠というものが必要かなと思っているので、私としては公的分析でよいのかなと思っています。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生、お願いします。
○○○委員
○○です。
私も公的分析のほうでよいと思っています。会議の前はTTO法も併記するなど何かしら触れるほうがいいのかという気持ちもあったのですが、EQ-5Dがちゃんと今まで使われてきた実績があり評価がきちんとされて定評がありますので、公的分析が妥当と思っています。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の委員、いかがでしょうか。御意見、もしくは専門の先生の御質問とかはございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
企業はEQ-5Dの使用は不可能みたいな言い方をされたのですけれども、やはりNICEのほうを見るとunavailableとinappropriateをしっかり分けているのです。今、科学院のほうからも説明がありましたように、これはunavailableではなくてavailableなわけです。ちゃんと取ったEQ-5Dがあるわけですから、そこはそういう意味では議論の余地はない。ただ、企業は不可能ではなくて性能が悪いということを言っているわけです。それも私から言うと、性能が悪いのではなくて、企業が思うように大きく動かないということを言っていると思うのです。もし、そちらに関してそういうことを主張するのだったら、今、先生方の御意見にもあったように、企業側がEQ-5Dよりもビネットのほうが優れているというのをしっかり説明する責任があると思うのですけれども、今の説明を聞いても皆さんが納得できるようなinappropriateだという説明にはなっていないと思います。
もう一点だけ、さきほど企業はFDAのことに言及していましたが、FDAは薬事承認機関なので、一般国民に聞いたTTOなんかを使って薬事承認するというのは考えられません。薬事承認においてEQ-5Dをエンドポイントに使うことは慎重であるべきですが、ビネットを用いたTTOの妥当性にFDAのことを引っ張ってくるのは違うような気がするのです。以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。
○○委員、お願いいたします。
○○○委員
QOLの話でいつも考えるのですけれども、今回、明らかに企業はこの商品に関してEQ-5Dで自社商品の魅力が十分反映していないと考えてこういうことをおっしゃっているということで、結論から言うと、これはかなりチャレンジングな話であって、公的分析の主張が妥当と思っています。
ただ、それを前提とした上で、先ほど臨床の感覚といわゆる患者のPROの感覚の議論がございましたけれども、疾病オリエンテッドに考えれば、疾病前に一番QOLに影響することはこれだよねというのは、例えば患者からいろいろなこと聞いてみると、EQ-5Dを見せてこれで反映していますかと言ったら、いや、ちょっと感覚と違うねとなるのはあって、そういったことが費用対効果、現状は価格の問題なのですけれども、今後、患者、つまりユーザー側の欲しいという感覚が、この制度を公正に運用するためのルールというものとの距離感をどう考えるかというのは論点になっていくように思います。
なので、ここでは単なる意見になりますけれども、やはり疾病オリエンテッドな部分というのは、ある一定程度は患者の実感にはよるとも思うので、そういった可能性は企業としては思うのでしょうけれども、今回に関しては言ったとおりだと思いますが、やはり今後の課題だと認識しています。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
貴重な御意見として伺いました。
その他、いかがでしょうか。
先生方の今までの御意見を先ほど来挙げられている論点の観点から整理させていただくと、まずTTO法のガイドラインの解釈でありますけれども、これは明確で、国内データを優先しつつ、なおかつ患者さんから直接データを取っているものをやはり優先しましょうという話で、一般人の病態理解についてはいろいろな議論が出てくるという話だったのかなと思っています。
あと、肺MAC症のQOL値の測定については、今、御説明、御意見もあったとおり、多様な御議論がありますけれども、この費用対効果の制度において、これも科学院さんとかほかの先生もおっしゃっていましたけれども、各症例間を公平に評価していくということで、ある程度、汎用的なEQ-5Dで評価せざるを得ないというところなので、各疾患においては多少このような限界が出てくるのですが、EQ-5Dで評価することの妥当性は制度の中ではあるのではないかというような御意見だったのかなと私は理解したところであります。
あと、TTO法を用いることの妥当性については、先ほど来の議論の裏返しになるところもありますけれども、逆に言うと、疾患にある程度寄せた拡張性とか柔軟性を持つということから、これは○○先生がおっしゃっていたとおり、評価という指標であればバリデーションというのでしょうか、きちんとして検証をした上でないと、そのデータを活用し、理解、整理をしていくことは難しいということで、今回、TTOについては一定の制限があるというようなお話が御議論としてあったのかなと思っております。
大体先生方の御意見をまとめると、QOLについては以上の整理と思っておりますが、いかがでしょうか。
よろしいですね。
あと、今回科学院さんに行っていただいた再発の設定の辺りについて、特段御議論はございますでしょうか。直近の治療に依存した再発率を適用した調整をされていらっしゃいますけれども、臨床現場の先生というか御専門の先生などのご指摘を踏まえて、御意見があれば承りますが、いかがでしょうか。こちらもよろしいでしょうか。
それでは、大体議論は出尽くしましたが、いただいている意見を踏まえますと、基本的には公的分析を選択すべしというのが先生方の御意見だと思っております。
それでは、議決に入らせていただきたいと思います。
先生方の御意見を参考に、アリケイス吸入液に関する費用対効果については、公的分析による分析結果を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、以上の再分析結果を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告をいたします。なお、内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
本日の議題は以上です。
<照会先>
厚生労働省保険局医療課企画法令第2係
代表: | 03-5253-1111(内線)3140 |
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