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2022年4月22日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第1回議事録

○日時

令和4年4月22日(金)14:30~

 

○場所

オンライン開催

○出席者

田倉 智之委員長 斎藤 信也委員長代理 池田 俊也委員 木﨑 孝委員
新谷 歩委員 新保 卓郎委員 中山 健夫委員 野口 晴子委員
花井 十伍委員 飛田 英祐委員 米盛 勧委員
石原 寿光専門委員 島田 朗専門委員 福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
 

○議題

○リベルサスに係る総合的評価について

○議事

 


 
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、続きまして、リベルサス錠について公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析及び企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
リベルサス錠について企業からの意見聴取をした後に御議論いただきますので、まずは事務局から説明をお願いいたします。
○事務局
(事務局より説明)
○国立保健医療科学院
(国立保健医療科学院より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それではまず、本製品に係る公的分析の再分析結果に対する意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
事務局でございます。
企業のほうの準備が整いましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長の費用対効果評価専門組織です。
早速ですが、10分以内でリベルサス錠の総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきますので、そちらへの御対応もよろしくお願いいたします。
では、始めてください。
○意見陳述者
ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
資料に沿って一通り御説明をさせていただきます。
早速ですが、スライド2ページ目をお願いいたします。
本剤の概要です。リベルサス錠は2型糖尿の適用にて承認を取得しており、用量は7mg、補正加算としてGLP-1受容体作動薬で初の錠剤化を実現し、製剤工夫による有用性加算5%を取得している製剤でございます。
3ページ目をお願いいたします。
分析枠組みについて、対象集団AはDPP-4阻害薬を含む経口血糖降下薬で効果不十分で、他の経口薬が投与対象となる患者、集団BはDPP-4を含まない経口薬で効果不十分な患者、集団Cは経口薬で効果不十分で注射のGLP-1製剤が対象となる患者です。
それぞれの比較対照技術は、AがDPP-4+SGLT2の組合せ、BがSGLT2、Cは注射GLP-1でそれぞれ最も安価なものとなっております。
公的及び企業分析のデータソースとして、集団AとBについては本剤と直接比較のデータがないため、ネットワークメタアナリシスによる間接比較、CはPIONEER 10試験のデータを用いて追加的有用性の評価が行われております。
4ページ目をお願いいたします。
公的分析並びに企業分析の結果です。対象集団A及びBについて、企業分析では追加的有用性ありとした一方、公的分析では追加的有用性がなしと評価され、費用最小化分析により費用増加と結論づけられました。集団Cはどちらの分析においてもドミナントと評価されております。
5ページ目をお願いいたします。
繰り返しになりますが、公的分析の結果、集団A及びBは追加的有用性なし、またはありとは判断できないとされました。これに対し、企業側での確認の結果、公的分析には複数の疑義があり、正しい分析が行われていないと考えられることから、公的分析の結果を本剤の費用対効果評価の結論として用いることはできないと考えます。そのため、最終的な評価に際しては、分析枠組みに沿っており、かつ科学的に妥当と思われる企業分析の結果を用いることが妥当であると考えます。
6ページ目をお願いいたします。
公的分析において正しい分析が行われていないとする主な根拠をスライドにお示ししております。枠内右列にお示しした6つの点を順に御説明させていただきます。
7ページ目をお願いいたします。
まず第一に、分析枠組みと合致しない不適切な研究が追加されている点です。分析対象集団Aについて、問題点の1ポツ目、合意された分析枠組みはDPP-4を含む経口血糖降下薬で効果不十分な患者ですが、公的分析では分析対象集団Aの評価においてDPP-4を含まない前治療で効果が不十分な患者に対する研究が用いられています。これらの研究は分析対象集団Aの定義と合致しない試験デザインのものであることから、集団Aの評価にこれらの研究を含めることは分析枠組みの考えを反映していないと言えます。
また、2つ目の四角、企業分析への指摘について、公的分析班はこの2つの根拠を含む5つの研究が企業分析に含まれないことを指摘していますが、該当の5文献に関しては、企業分析においては分析枠組みの考え方に沿った事前定義に従い除外されたものであることから、企業分析では追加的有用性評価に重大な文献が欠けているとする公的分析班の指摘は適切でないと考えます。
公的分析においては、本資料の9ページ目でお示ししますとおり、分析枠組みに合致しない研究や間接比較の必要のない集団Cの研究がネットワークに含まれており、重大な文献が企業分析に含まれていないというよりは、むしろ不要な文献が公的分析に追加されていると解釈でき、加えて、それらの不要な文献が集団AやBの結果に影響を与える点で公的分析の結果は不確実性がより大きくなっているのではないかと考えます。
8ページ目をお願いいたします。
該当する5つの研究とその試験デザイン、企業分析に含まれなかった理由をお示ししております。
9ページ目をお願いいたします。
同じく公的分析にのみ含まれる文献についてです。Seino 2021については、試験デザインがSGLT2やDPP-4の上乗せ試験であるにもかかわらず、公的分析ではDPP-4対プラセボの試験として用いられており、分析枠組みとも合致しないことから、分析に含めるのは適当ではないと考えます。
10ページ目をお願いいたします。
公的分析において分析枠組みと異なる集団データが採用されている点です。本剤の臨床試験であるPIONEER 9は前治療として食事運動療法または食事運動療法と経口血糖降下薬で効果不十分な患者を対象とした研究です。企業分析においては、枠内右側のとおり、合意された分析枠組みにのっとり、薬剤で血糖コントロール不十分な患者である既治療例のみのデータを用いております。一方、左側、公的分析では未治療例が過半数、60%を占めるデータを用いています。これは分析枠組みと異なる集団であり、結果にも大きく影響し得ることから、未治療例を含めることは適切ではないと考えます。
また、枠内一番下、公的分析班は既治療例に限定した場合、ランダム化が失われると指摘しておりますが、本試験では未治療、既治療を考慮したランダム化が行われていることから、治療例に限定するとランダム化が失われるとする指摘は誤りであると考えます。
11ページ目をお願いいたします。
論文データが正しく引用されていない点です。公的分析で用いられているGantz 2017の論文では、追加的有用性の評価項目であるHbA1Cと体重両方のデータが報告されておりますが、公的分析では体重のデータが用いられておりませんでした。
問題点1の2ポツ目に書いてございますとおり、公的分析班は体重データの分析において、日本人データのみで集団Aの評価が不能であった。そして、国際共同試験を含めた評価を行っておりますが、本論文の体重データを用いれば日本人データのみで分析を可能と考えられます。ただし、7ページ目でも申し上げましたとおり、そもそも本研究は分析枠組みと合致しない研究であることから、企業としては本研究を分析に用いることは不適当ではないかと考えております。
ここで申し上げたかったことは、公的分析におけるデータ引用の誤りがその後の分析方針に影響を与え、最適でない方法により誤った結論が導き出されている点です。
また、問題点2つ目、公的分析報告書に記載されたHbA1Cの値について、論文データとの一致が確認できず、論文データが正確に引用されていない可能性が示唆されております。100ページを超える公的分析報告書の詳細を企業側では時間的な関係から網羅的に確認し切れておりませんが、後に述べます企業分析の点や参考資料に記載いたしましたQOL値の疑義も含め、公的分析ではデータ引用の誤りや疑義が随所に認められることから、公的分析報告書の網羅的な精査を行うことが必要ではないかと考えております。
12ページ目をお願いいたします。
ネットワークメタアナリシスの治療群に一貫性がない点について、スライドの下に図でお示しいたしますとおり、右側、企業分析においては、薬剤の用量及び製剤別にネットワークをつなげており、ネットワークに一貫性がある一方、左の公的分析のネットワークでは同じ製剤の用量別のネットワーク、用量や製剤が混在したネットワーク、薬剤クラスでひとまとめにされたネットワークが混在しており、分析の一貫性に欠けるのではないかと考えます。特に公的分析が異なる製剤を薬剤クラスとしてひとくくりにしている点について、企業分析のほうが適切であると考える理由を次のページにお示ししております。
13ページ目をお願いいたします。
英国NICEにおける2型糖尿病の薬剤治療レジメン評価に際し、薬剤をクラスでひとまとめにする方法は不均質性をもたらし、結果の解釈を困難にすることから、同一クラスの薬剤であっても個々の製剤別に評価すべきことを指摘しており、2点目のCADTHにおける本剤の評価時にも同様の方針が示されております。これら諸外国のHTA期間の方針は企業分析と一致するものである一方、公的分析の方法はこれと一致しないことから、公的分析を用いた本剤の費用対効果評価や分析結果の公表に際しては、その方法を正当化する科学的な根拠が必要ではないかと考えます。
14ページ目をお願いいたします。
最後に費用分析の問題点です。
問題点1、今回の費用対効果モデルでは脳卒中や四肢切断など、急性期の手術費用などとその後のリハビリ費用を区別する必要があるようなものがイベントとして定義されており、手術とリハビリでは費用と時期が異なることから、費用分析においては急性期である1年目と2年目以降の維持療法の費用をそれぞれ別の方法で推計することが求められます。公的分析ではその区別がなされておらず、Fukuda 2016の手法をそのまま1年ごとに適用していることから、2年目以降の費用が正しく推計されず、誤った費用をモデルのインプットとして用いていると考えられます。
また、2点目、同一イベントに対して分析対象集団ごとに異なった費用が用いられており、費用分析の一貫性にも欠けているように見えます。
15ページ目をお願いいたします。
以上、公的分析においては正しい分析が行われていない点が複数あることを述べさせていただきました。こちらの表ではその概要を改めてお示しするとともに、枠内右に企業分析の対応を記載しております。
16ページ目をお願いいたします。
こちらは、今回、企業と公的分析で解析方法に相違が見られた分析対象集団AとBについて、対象集団ごとに公的分析の問題点をまとめたものです。特に本専門組織で決定された分析枠組みに沿った分析がなされたのはどちらなのか、委員の皆様にはぜひこちらの内容を十分に吟味いただき、御判断をいただけましたら幸いでございます。
まとめです。
○事務局
お時間です。終了してください。
○費用対効果評価専門組織委員長
お疲れさまでした。
では、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
御説明いただいたところは、御主張はよく分かったというか、検討しなければいけない点については理解いたしましたが、お話しいただいたことと違うことの質問で申し訳ありません。
今回の分析は、分析期間はどのようにされているのですか。
○意見陳述者
御質問ありがとうございます。
念のため確認をさせていただきたいのですけれども、今回のネットワークメタアナリシスの分析期間になりますでしょうか。
○○○委員
費用対効果分析の分析期間です。ガイドラインでは評価対象技術の費用や効果に及ぼす影響を評価するのに十分長い分析を用いるということなので、この薬がどのくらいの期間効くのかということによるのですけれども、どのぐらいの期間効く薬なのですか。
○意見陳述者
ありがとうございます。
今回の費用対効果分析については、30年の期間で分析を行っております。
○○○委員
30年先の話になると不確実性もかなり大きいと思いますが、不確実性の点も考慮した上で今回の結果は適切と判断しますか。つまり、ネットワークメタアナリシスなどでやられている効果というのは、30年先の効果は見ていないものだと思いますけれども、いかがですか。
○意見陳述者
ありがとうございます。
今回、企業分析としましては、感度分析として分析期間を15年、20年、25年というところで見たものも行っております。この結果から問題がないと判断しております。
○○○委員
多分、15年先の結果もネットワークメタアナリシスでは実際の臨床効果は見ていないわけですよね。
○意見陳述者
ありがとうございます。
ネットワークメタアナリシスから引っ張ってきているデータといたしましては、公的分析も企業分析も26週ないし52週のものと認識しております。
○○○委員
だから、どちらも正しくないのかもしれないので、例えば体重変化量などは本当に20年後や30年後も当てはまるデータと理解していいのですか。
○意見陳述者 ありがとうございます。
○○先生、お願いしてもよろしいでしょうか。
○申請者(専門家)
時間がなく申し訳ありませんが、今、○○先生からいただいた、そもそものいわゆる分析期間の時間、タイムホライズンの設定方法ですね。その薬剤の効果を検証するのに十分長い期間という話と、その薬剤における有効性が何年目まで担保されているか、あるいは何年目まで実証されているかというのは同値には捉えられない問題だと思っております。もちろん、どのような解析を用いても、例えば生涯にわたる効果が実証されているかと言えば恐らくノーだと思います。
もちろん、○○先生の指摘されるように、今示されている効果とモデル分析によって外挿した効果がどこまで妥当なのかというのは、当然、前者が短ければ短いほど後者の不確実性は増していく。ただ、少なくとも、前者で示された効果が分析期間、いわゆるタイムホライズンの上限であるという考え方は、そうすると、ある意味でモデル分析という存在が成り立たなくなってしまいますので、そこは必ずしも今実証されているものだけで見るべき、それがタイムホライズンとして第一選択になるべきというのは、特にこういう生活習慣病みたいな領域では当てはまらないのではないかと私は考えております。
また、もちろん不確実性が増すという意見は、先生のおっしゃるとおりだと思います。
○○○委員
海外の分析などだと、実際に臨床試験で確認された期間を超えたら、効き目は追加的有用性はなしという前提を置いて非常に保守的な分析をするようなケースもあるので、今回はどのように考えられたのかなということで質問させていただきました。
○意見陳述者
○○先生、ありがとうございます。
今回の分析においては、治療期間は3年間というところで、それ以上を超えると、同じように同値で扱うようにモデル上はなっておりますので、タイムホライズンとしてはガイドラインとおり長い期間ということにはなっているのですけれども、決してセマグルチドがずっと長い期間治療効果があるというような設定のモデルではないということは補足させていただければと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員方、いかがですか。よろしいでしょうか。
それでは、質疑応答を終了いたします。
企業の方はお疲れさまでした。御退席をお願いいたします。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方が退室されましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、議事に先立ちまして、企業から幾つか公的分析についての御指摘がございましたので、まずは科学院からこちらについて御意見等があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
保健医療科学院です。ありがとうございます。
論点が6つほどあったと思うのですが、それぞれの論点について科学院からのコメントを申し上げたいと思います。
まず1点目ですけれども、企業側の主張はありましたけれども、我々、企業分析においてもDPP-4阻害薬の有無で層別された分析が行われているわけではないと考えています。なぜかといいますと、企業側のネットワークメタアナリシスに含まれている文献数、これは9報ありますけれども、この9報のうち、DPP-4治療歴のないものが5報、治療歴のあるものが3報、それらが混在しているものは1報となっています。企業側がどういう主張なのか判然としないところもありますけれども、一部にDPF-4治療歴ありあるいはなしの文献が含まれていても、治療効果というものはネットワーク全体を通じて相互に影響し合うため、それをもってDPP-4阻害薬によって層別化された分析がなされているとは言えないのではないかと考えています。
特にリベルサスの評価を行ったPIONEER試験というものがありますけれども、これについてはDPP-4の治療歴なしとありが混合しているものでありまして、リベルサスのようなネットワークの核心部分で層別化が行われていないことから、企業側の主張というのは当たらないのではないかなと考えています
また、次のページに企業分析に含まれない5試験について記載がありますけれども、これらについて、2試験についてはこれらの見解の相違から公的分析で含めたもの、それから、2試験、注射剤のGLP-1阻害薬を扱ったものについては、一般的にネットワークメタアナリシスを行う際のネットワークは広く取り扱うべきであるというのが一般に言われていることですので、これら2試験を含めて分析を行ったもの、残り1試験は公的分析ではクラスごとに分析をしているため、ネットワークに接続できたものであると考えているところです。
それから、おめくりいただいて、論点の2点目については企業側の御主張が理解できるものでありまして、御指摘のとおりかなと。少し分析の修正が必要なのかなと考えているところです。
それから、おめくりいただいて、論点の3点目については、ITT解析である治療方針estimandと欠測値等を補完した仮想estimandのどちらに基づいて解析したデータを用いるかによるものだと考えています。企業側は、一部の試験について、仮想estimandに基づき、臨床試験データを再解析して用いていますけれども、公的分析が治療方針estimandで解析を行う際には、臨床試験の再解析ということはできませんので、日本人集団のデータが不明であるということから御指摘のようなデータを用いることになったところであります。
いずれにしても、公的分析では治療方針estimandと仮想estimand双方の解析を行っていて、両者で類似した結果が得られていることから問題にはならないのではないかと考えています。
なお、公的分析としては、ネットワークに含まれる多くの試験がITTで解析されているにもかかわらず、一部の試験においてのみ仮想estimandで解析を行うというのは解析上整合性が取れていないのではないかなと考えているところです。
それから、おめくりいただいて、論点の4つ目ですけれども、こちらについても論点の2点目と同じように御指摘のとおりかなと思っていて、修正が必要な部分であると我々は考えているところです。
それから、おめくりいただいて、論点の5点目ですけれども、これは少し誤解があるのかなと思っておりまして、企業側は薬剤ごとに分析をしておるわけですが、公的分析においては薬剤クラスかつ用量別、低用量、標準用量、高用量の用量別に分析を行ったものであり、企業側の言うように一貫性がないというような主張は当たらないと思っております。
経口血糖降下薬について用量等の記載がないのは、これは全て標準用量であるということから記載としていないというところです。
加えて、公的分析では薬剤クラスごとにまとめた分析を行った理由として主に2点あると考えています。
1点目は、分析枠組みにおいて立てられたリサーチクエスチョンが薬剤クラスごとの評価であるということであります。つまり、分析枠組みにおける比較対照技術はDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬のうち、最も安価な組合せのもの、あるいはSGLT2阻害薬のうち最も安価なものでありまして、薬剤クラス内の薬剤の有効性に差がないことを前提として、個別薬剤ではなく薬剤クラスごとの評価を行うことを想定しているというところでありますので、薬剤クラスごとに分析を行ったということです。
もう一点ですけれども、薬剤ごとにネットワークメタアナリシスを行うと、各ネットワークが細くなってしまって、今回はネットワークが密ではなくて粗いものであることから、設定やデータを少し変えただけで結果が大きく変わる不安定な推定値となってしまっているというところであります。薬剤クラスごとに設定すると、そのような状況は少し改善していくということであります。
それから、おめくりいただいて、海外の状況については、製造販売業者から御指摘がありましたけれども、薬剤クラスを用いるべきか、個別薬剤で評価すべきかはアプリオリに決まるものではなく、評価の目的やデータの性質等に依存するものであると考えています。NICEについてはSGLT2阻害薬の評価であり、状況が異なりますし、CADTHについてはPIONEER試験を中心にトータルとして症例数の多いデータを解析しているところであります。
本分析は既治療の日本人集団に臨床試験データを限定しており、症例数がそれほど多くないという状況を考慮する必要があるのではないかなと考えています。
それから、おめくりいただいて、6番目の論点ですけれども、こちらについては、どちらの分析手法が適切であるかというところは議論のあるところかもしれませんが、製造販売業者の提出した解析結果というのは、透析医療費や網膜症の治療費等において出来高で算出した費用と乖離した部分があると考えています。そのため、異なる分析手法を用いて推計したところであります。
いずれにしましても、当該部分で推計される費用によって分析対象Cの結果については大きな影響を受けないことを確認しています。
長くなりましたが、以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
企業側の提案された論点6つのうち、今の6つ目の話も伺うと、残ったのは1、3、5という3つぐらいの論点かと理解したところでありますが、その辺も含めながら、これから先生方に御議論をお願いできればと思います。
なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただくよう、よろしくお願いいたします。
○○○委員
なかなか難しいのですけれども、クラスで行くかどうかというのは確かにSGLT2も入れると物すごく古くからある薬ではないし、そんなにデータがなくて、ちゃんと分けてしまうと少なくなっていくということもあるし、DPP-4阻害薬にしろSGLT2阻害薬にしろ標準用量は大体決まっていて、だから、それはクラスで行くのでいいと思うのです。
セマグルチドのほうは3、7、14ということで、今のところだと3である程度使う人も多いし、すぐに7に行く人もいるので、そういう意味では、これはちゃんと分けている。だから、これは公的分析でやられているような感じのほうが妥当ではないかと思うのです。
あとは、実際の論文をまだちゃんと見ていないので、その辺はまだ評価しかねるというところです。すみません。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生、お願いいたします。
○○○委員
○○です。
まず、○○先生のおっしゃったクラスの話ですけれども、企業分析のほうではそれぞれの個別の薬剤別にやっていますが、これについて私は個人的にはクラス別でいいのではないかなと思いますので、僕は公的分析のほうで進めてよろしいのではないかなと個人的には思いました。
今のは1、3、5の中の5だと思いますが、1と3についてなのですけれども、まず1のDPP-4阻害薬が前治療で入っていないものについてどう扱うかといった御議論がありましたが、これはそもそもA、B、Cの3つに分けられたときに、AとBで、AはDPP-4が最初に入っていて、コントロールが悪い人と。Bは入っていないのでコントロールが悪い人ということになっているのですが、これはそもそも同じインクレチン製剤でDPP-4阻害薬とGLP-1が併用できないということで恐らく分けられた経緯があると思うのです。
ですから、臨床の現場に出たときにDPP-4阻害薬を使っている患者さんはたくさんいるわけですけれども、その方が次にGLP-1のこの薬を使おうと思ったときに、取りあえずDPP-4阻害薬をやめて、さらに乗っけるということになるので、やめた分を差し引いて乗っけるということを考えてAの評価をしている。Bについては恐らくDPP-4阻害薬が入っていなければそのまま乗っけられるので、そのまま評価できるということなので、AとBはそういう意味で意味合いが違うと思うのです。その中でDPP-4阻害薬が入っていない、つまり、前治療でDPP-4が入っていないものをAの枠組みとして解析するというのは、臨床的な状況を考えた場合には不適切だという印象を臨床家として持ちますので、公的分析のほうでもDPP-4阻害薬が入っているものだけにしてAの評価はしたほうがいいと思いますし、数がちょっと少なくなるという議論があるのだと思いますけれども、できる限りDPP-4阻害薬が入っているもので、それをやめてGLP-1を加えた場合にどうだというのをAでは評価したほうがいい。
それに関連しますけれども、3の議論とも関わるのですが、企業が言っているように、確かに未治療、つまり、食事、運動だけの人が6割入っているデータをそのまま入れるというのは、未治療の人はただ薬を乗っければ、それだけでどんな薬でも大体下がってしまうので、そのデータを含めてしまうと診療上はつまり第一選択でこれを使え得るということをむしろ意味していて、ただ、企業側も、あるいは糖尿病学会としても、この薬剤というのはむしろラストチョイス的に最後のほうに本当に悪いから使うのだということになりますので、未治療例が入っている状況でのデータを採用するというのは不適切ではないかなと。診療現場でどのぐらいお金が使えるかということを議論するのであれば、そこは不適切だと思いますので、私は企業の1と3についての主張の一部は採用して再解析すべきではないかなと考えます。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、ありがとうございました。
○○先生も含めて、貴重な御意見をありがとうございます。
その他の先生方からコメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○○先生、お願いします。
○○○委員
○○でございます。
ネットワークメタアナリシスは、そもそもモデルというかネットワークの考え方で結果はいろいろ変わる非常に不安定なものであり、どちらが正しい、間違っているというのはなかなか言えないと思うのですが、それを定量的にこちらのモデルのほうがより妥当だとかということを確認する方法があるのかどうか。もちろん臨床的な視点からこちらというようなことも非常に重要な要素かと思いますけれども、統計的にこちらのほうがより安定的だということを示すような手法は何かあるのでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
これは科学院さんにお聞きしたほうがよろしいですよね。
もしよろしかったら科学院さんからお願いします。
○国立保健医療科学院
ネットワークメタアナリシスの前提となっているようなデータの均一性や一貫性といったものを検出するような統計的手法というのは、恐らく幾つか開発されているのと思うのですけれども、これといった決め手のあるようなものがないようなのが現状かなと思っていて、多くの場合、臨床的な状況あるいはデータの視覚的な状況等を勘案しながら、均一性だとか一貫性といったものが担保されているのだということを確認しながらやっていっているというのが現状なのではないかと考えているところです。
○○○委員
例えば海外のHTAの組織などですと、いろいろ不安定な結果が出たような場合には保守的なほうの結果を採用するとかといった考え方はあるのかどうか。つまり、治療効果を過大評価しないほうがより判断はよいという考え方もあると思うのですが、それはいかがですか。
○国立保健医療科学院
そういう保守的な結果を採用することもあるのかなと思っています。
○○○委員
分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
よろしいでしょうか。
その他の先生方、いかがでしょうか。
どうぞ。
○○○委員
もう一点よろしいですか。
ここの論点の中で、恐らく企業のほうがより妥当な主張だというものもあると思うのですが、分析結果に一番大きな影響を与えるのはどれなのか。つまり、これは別に企業を採用したって結果は覆られないというものであれば、そこはあまり神経質にならなくてもいいかもしれませんし、逆にこの部分は大きく結果を左右するというような要素、この中のどれが一番重要な要素になると考えたらいいでしょうか。あるいは、それを追加分析で確認されるということかもしれないのですが、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
どれか1つというとあれなのですけれども、論点1番目と5番目が恐らく結果に一番大きな影響を与えるのではないかなと考えています。
○○○委員
分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員、いかがでしょうか。
事前の意見書を拝見いたしますと、○○先生とか○○先生からは幾つかコメントをいただいていますけれども、先生方のほうはよろしいでしょうか。
○○○委員
○○です。
先ほどのネットワークメタ解析についてなのですけれども、どれぐらい不安定かというところをある程度数値として比較するやり方というのもあると思いますので、具体的にどれぐらい企業側のやり方が不安定なのかなというところを見せていただければ、判断の材料になるかもしれないなと考えております。ですので、例えばなのですけれども、AとBというお薬を比較するときに、Cを経由して比較する場合とDを経由して比較する場合で結果が合わないということになると、ネットワーク的には不安定だというような判断もなされる場合もありますので、そこは恐らく解析のほうには書いてあると思うのですけれども、ここがというところを御指摘いただければ助かります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
今の○○委員のコメントに対して、科学院さんのほうで何か御意見はございますか。そのような検証は海外などではいかがですか。どんな感じでやっていたりするのでしょうか。
○国立保健医療科学院
海外には恐らく感度分析のような形でいろいろやられているのは拝見するところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
○○○委員
あともう一点なのですけれども、コメントさせていただいた中に、仮想estimandを使わずにITTのほうで治療方針estimandのほうがいいのではないかなという意見を書かせていただいているのですが、今回、特に企業側が仮想estimandを持ち出した理由、治療効果的には仮想estimandのほうがクロスオーバーはなかったことにする、実際の薬が最後まで使われていたらどういう効果があったのかということで、効果的に出やすいほうの解析なのです。ですので、効果を大きく見せるために仮想estimandを選択的に使われたのであれば、そこはあまりよろしくないのかなと。今後のためにも、なぜ部分的に仮想estimandという話が浮上したのかなというところは興味があるところでもあります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
科学院さんには、今のような視点というか論点についても御検討された経緯とかがあれば、コメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
御指摘のように、仮想estimandでやられた評価よりも治療方針estimandでやられた評価のほうがリベルサスに対して不利な結果になっているということですので、何かいろいろ御検討された結果なのかなとは感じています。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、いかがでしょうか。
○○先生、よろしいですか。
○○○委員
○○です。
特に1番と5番につきましては、私、先ほどの科学院からの説明で納得しているところです。
分析全体につきましては、特に2番とか3番のところはもう一度確認していただければと思いますが、おおむね公的分析の方法で納得しているところです。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
今までの先生方の御意見をまとめますと、企業さんが指摘されている論点が6つあるうち、科学院さんのほうで修正いただく2を外し、なおかつ、費用のところはほとんど影響がないというコメントもありましたので、6を外すと残りは1、3、5で、その中で1番、5番が大きな影響があるという話がございました。この辺りについては、臨床の御専門の先生方からの御意見がありましたけれども、DPP-4阻害薬の併用療法とか、コントロールの悪い群の選択方法という臨床現場の観点からいっても、比較的、企業さんが実施している1番、3番のやり方をある程度考慮した検討をさらに深掘りすべき、というような意見と思っております。
あと、ネットワークメタアナリシスについては、やはり不安定性というものについてより注意深く検証していただくべきという委員の方からの御提案もありましたし、海外を含めて感度分析でやっているものについてもさらに御検討いただくような話も必要と思ったところであります。
さらに、仮想estimandと治療方針estimandの選択のバイアスについても、保守的な分析をするという方針の中においてさらに詳しくきちんと見ていかないといけないのではないか、と伺ったところかと思います。
いかがでしょうか。その他、先生方からの御意見がなければまとめのほうに入らせていただきたいと思います。
○○先生にもコメントをいただいてはいるのですけれども、今、参加されておりませんので、また必要に応じて御意見をいただく機会があれば良いと思っております。
では、まず技術的なところについての御意見は大体終了しところで、もう一つ、価格引上げの該当性についてのお話がございましたけれども、分析対象集団Cの価格引上げ1.5というものについての主張について、これも科学院さんのほうの解釈と事務局からもコメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
公的分析としましては、注射剤の成分と経口剤の成分は全く同じものですので、引上げ条件には該当しないのではないかと考えています。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
事務局さんのほうからコメントがありましたらお願いします。
○事務局
事務局でございます。
今回、企業の分析結果の中で、ICERが200万円以下ということとドミナントというものがございました。それぞれの価格引上げの条件の中で、対象品目の薬理作用等が比較対照技術と著しく異なることということが規定上設けられてございます。今回の企業の主張されております分析対象集団のところでございますけれども、やはり薬理作用等が既存の注射薬であるGLP-1受容体作動薬と著しく異なるとは言えないのではないかと考えております。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今の説明は、引上げについては主張としては少し無理があるというようなお話であったかと思います。
その他、先生方から全体を通してコメントはございますでしょうか。よろしいですね。
それでは、議決に入らせていただきます。
その前に、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員御退席)
○事務局
事務局でございます。
○○委員の退席が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
今までの先生方の御意見は先ほど簡単にまとめさせていただいたところでありますけれども、事前にいただいた御意見も含めて、基本的には公的分析を中心に、さらに議論しなければいけないことが多々あるということで、追加分析のようなものをせざるを得ないのかなと考えているところであります。
そういった観点から、公的分析結果につきまして、議論に挙がりました点について公的分析による追加分析を実施するということでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。それでは、そういう形で進めさせていただきたいと思います。
公的分析は追加分析を実施した上で、速やかに報告書を次回の費用対効果評価専門組織に提示するという形にさせていただきたいと思いますが、1点、科学院さんに期間を確認するのを失念しておりましたが、追加分析をする場合、どれぐらいの時間がかかるか、御回答いただくことは可能でしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
次回の専門組織に間に合うように調整していきたいと思っています。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、次回の専門組織までに御提出できるようによろしくお願いいたします。
事務局さんのほう、その他何かございますか。
○事務局
特に事務局からはございません。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、公的分析は追加分析を実施した上で、速やかに報告書を費用対効果評価専門組織に提出することといたします。
事務局は、○○委員と○○委員に入室をお願いしてください。
(○○委員御入室)

 

(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第2係

代表: 03-5253-1111(内線)3140

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