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2018年11月1日 第3回「労災保険の業種区分に係る検討会」議事録

労働基準局 労災管理課 労災保険財政数理室

○日時

平成30年11月1日(木)9:59~11:39

 

○場所

経済産業省別館1111号各省庁共用会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)

○出席者

委員(五十音順)

岡村 国和 (獨協大学経済学部教授)

片寄 郁夫 (株式会社りそな銀行年金業務部主席数理役(アクチュアリー))

小西 康之 (明治大学法学部教授)

酒井 正      (法政大学経済学部教授)

中益 陽子 (亜細亜大学法学部准教授)

花岡 智恵 (東洋大学経済学部准教授)

皆川 農弥 (東京海上日動火災保険株式会社企業商品業務部保有企画グループ担当課長(アクチュアリー))

森戸 英幸 (慶應義塾大学大学院法務研究科教授) (座長)
 

事務局

松本審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)、田中労災管理課長、久野労災保険財政数理室長、石原中央職業病認定調査官、平田労災保険財政数理室長補佐

○議題

 (1)第2回検討会における指摘事項について
 (2)業界ヒアリング状況
  (ア)「9432社会福祉又は介護事業」に係るヒアリング状況
  (イ)「9434保育所」に係るヒアリング状況
  (ウ)「9435認定こども園」に係るヒアリング状況
  (エ)「9433幼稚園」に係るヒアリング状況
 (3)その他

○議事

○労災保険財政数理室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第3回労災保険の業種区分に係る検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 報道機関と傍聴の方々におかれましては、写真撮影は以上までとさせていただきますので、これ以後、写真やビデオの撮影、録音については御遠慮ください。
 それでは座長に検討会の進行をお願いいたします。
○森戸座長 皆さん、おはようございます。では、議事に入りたいと思います。まず議題(1)、第2回検討会における指摘事項について事務局より説明をお願いします。
○労災保険財政数理室長 それでは第2回検討会における指摘事項について、御説明を申し上げます。まず、2ページですが、「情報サービス業」における給付特性についてです。前回の検討会において、「情報サービス業」においては、長時間労働による過重ストレスなどによる精神疾患が発生していることから、その防止対策に取り組んでいる。もし非災害性(非突発性)の疾患などが原因であれば、現在業界として取り組んでいる防止対策を進めていけばいいと考えられるので、労働災害のデータのうち、非災害性(非突発性)のものがどの程度あるか把握できないか、という内容の御指摘をいただいたところです。
 第1回検討会でお示ししたとおり、細目「情報サービス業」においては、他の業種と比べて適用労働者数に占める新規受給者数が少ない、すなわち災害発生頻度が低いという特徴が見られたところであり、その新規受給者数のうち、精神障害に係るものがどの程度を占めるかについて、簡易的に推計してみたところです。(注)のところに記載していますが、平成26~28年度における、精神障害の支給決定件数を新規受給者数で除した比率を推計したところです。ここで、分子の支給決定件数は、日本標準産業分類の中分類単位のものでありまして、一方分母の新規受給者数は労災保険率適用事業細目単位のものであるため、分子分母のカバー率が異なっており、比率の評価には留意が必要ですが、「情報サービス業」における比率が顕著となっていることが見て取れます。御指摘いただいた内容に対して、必ずしも適当なデータがなく、十分な回答とはなっていませんが、この件については、以上です。
 次に4ページです。看護職の作業態様、労働災害防止対策等について御説明申し上げます。前回の検討会において、「医療業」の特徴を捉えるためには、従事者の中で大きな割合を占める看護師の状況についても、併せて把握すべきという御指摘をいただいたところです。そこで、御指摘を踏まえまして、公益社団法人日本看護協会が公表している資料に基づき、看護職における作業態様及び労働災害発生状況等について、整理したところです。
 まず、日本看護協会ですが、看護職の資格を持つ個人が加入する日本最大の看護職の職能団体でありまして、約73万人の看護職の方が加入しています。
 看護職の作業態様ですが、平均年齢は約43歳で、11人に1人が60歳以上となっており、高齢化が進んでおります。病院勤務における年間の離職率は常勤看護職で10.9%、新卒の看護職で7.6%となっています。夜勤時間の長い病院や小規模病院ほど離職率も高い状況です。
 また、交代制が導入されているものの、多くの職場で時間外勤務が発生している。出産、育児のために夜勤を引き受けられない者も多く、引き受け可能な者に集中しやすい。職業柄、家族の介護において過度の期待を寄せられる場合も多く、仕事と家庭の両立が困難となりがちである。夜間のオンコールは、結果的に対応がなかったとしても、熟睡が困難となり、睡眠リズムが崩れるという状況です。
 次に労働災害発生状況ですが、業務上のハザードは大きく7類型に区分されるとされており、感染症、消毒剤、減菌剤、薬物等の化学物質によるもの、エチレンオキシド、ホルムアルヒド、グルタルアルヒド、ラテックスアレルギーなどがあるということです。
 不安定な姿勢での作業動作に伴う腰、首、肩、手首の痛み、シフト制であるにもかかわらず、時間外の勤務が常態化していて、夜間や時間外勤務の総時間数が長い。また患者、同僚等によるハラスメント、生命に直面することに伴う精神的ストレスなどが挙げられております。また、メンタルヘルスが課題となっている。それからハラスメントが表面化しにくい職場環境。腰痛が多いものの労働災害として認識されていない可能性があるという状況です。
 以上が今回整理しました看護職における作業態様及び労働災害発生状況等についてですが、前回の検討会において御報告申し上げました日本医師会に御協力いただいたヒアリング内容と今回整理いたしました内容とを比較いたしますと、労働災害のリスクファクター及び課題として、感染症、化学物質によるもの、病院勤務の医師、看護師のいずれについても、夜勤や時間外労働による長時間労働が発生していること、それから生命に直面することに伴う精神的ストレス等共通する事項を挙げられております。このようなことから、「医療業」が直面している労働災害のリスクファクター及び課題等については、病院経営者としての医師とそこで働く看護職のいずれの目線においても、両者の間で異なるものではなく、共通性が高いと考えられます。
 次に8ページです。学校教育の作業態様、労働災害防止対策等について御説明申し上げます。前回の検討会において、「教育業」の特徴をとらえるために、社会人教育のみならず、学校教育の状況についても併せて把握できないかという御指摘をいただいたところです。学校教育については、幾つかの私立学校の団体に対してヒアリングの協力要請を行っているのですが、いずれの団体からも資料を公開することについて、了解をいただくまでには至っていない状況です。そこで、文部科学省の担当部局を訪問して、教職員の勤務実態等を把握できる各種資料の存在や、文部科学省における取組内容について教えていただき、それに基づいて学校教育現場の勤務実態等について整理したところです。
 なお、公立学校を対象とした調査等を基にしており、労災保険の適用労働者となる教職員の範囲とは必ずしも一致しないものの、学校教育現場の作業態様等を推察できる資料として今回整理したものです。
 まずは平成28年度の「教員勤務実態調査」についてです。この調査によれば、前回の平成18年度の調査と比べて、勤務時間が増加している。若年教員が増加している。総授業時間数の増加以外にも、周辺業務の時間数が増加している。中学校では部活動の時間も増加しているという状況です。
 なお、下の注釈2番のところに記載しておりますが、OECDの調査においても、日本の教員の1週間当たりの勤務時間が長く、とりわけ課外活動の指導時間が特に長いとされています。また、1週間当たりの学内総勤務時間、持ち帰りを含まず、というのを見ますと、小学校教諭が57.5時間、中学校教諭が63.3時間、それから小学校の副校長、教頭が63.6時間、中学校の副校長、教頭が63.7時間となっております。
 なお、この学内業務のほかにも、持ち帰りの業務だとか、学外で付随的に発生する業務、これは地域において学生が巻き込まれるトラブルの対応とか、部活動の顧問を引き受けるための勉強や講習会の受講等といったものですが、そういったものも存在するという状況です。
 また、教諭は平均的に7時半頃に出勤をして、19時台に退勤をしている。有給休暇の取得日数は6ないし10日が多く、中学校の教員は小学校教員に比べて取得日数が少ないという状況です。なお、この有給休暇の取得に際しては、夏期休暇期間等を利用して取得することが多く、学期中の取得は少ないという状況です。
 次の平成26年度の「教職員の業務実態調査」ですが、学習指導以外の分野、調査でありますとかアンケートへの対応、それから保護者・地域からの要望・苦情対応等ですが、そういったものでの負担感が大きいという結果が得られております。
 次の「平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査」、これは教育委員会を対象とした調査ですが、これによれば教育職員の精神疾患による病気休職者数は、平成19年度以降5,000人前後、これは全教職員の0.5%程度に相当しますが、5,000人前後で推移しているという状況です。これは毎年度5,000人前後が休職するというわけではなく、前年度以前に休職した者も含めたその時点で休職している者の人数が5,000人ということです。
 また、文部科学省が平成29年12月に取りまとめました「学校における働き方改革に関する緊急対策」においては、業務の役割分担・適正化として、部活動や授業準備等学校や教員以外の者でも担える業務の見直し、それから勤務時間管理の徹底・適正な勤務時間の設定のためのICTの活用、タイムカード等が挙げられています。教職員全体の働き方に関する意識改革、勤務時間上限の目安を含むガイドラインの検討、各教育委員会等における取組の徹底を呼び掛けるとともに、私立学校及び国立大学附属学校にも周知をするということが挙げられております。
 以上が今回整理した学校教育の作業態様、労働災害防止対策等についてです。
 また、その下のところに参考として、社会人教育との相違と記載してありますが、前回の検討会においては、全国産業人能力開発団体連合会(JAD)に御協力いただいたヒアリング内容について御報告申し上げましたが、社会人教育の現場と今回整理した学校教育の現場における作業態様、それから労働災害防止対策等を比較してみますと、学習指導以外の業務量、勤務時間の長さ、保護者・地域からの要望・苦情対応に対する負担感、それから精神疾患による病気休暇等の点について相違が見られるなど、両者が直面している労働災害のリスクファクター及び課題等については、違いが存在すると考えられます。
 以上が第2回検討会において御指摘いただいた事項についての説明となります。
○森戸座長 ただいまの事務局の説明について御意見のある方、又は御質問のある方はいらっしゃいますか。前回の御質問等に対してできる範囲ではありますが、なかなかちょうどいい資料等がない場合もあったようですし、事務局の側で調べていただいたものです。よろしいですか。御意見、御質問等はないようですので先へ進みます。
 次は議題(2)-(ア)「社会福祉又は介護事業」に係るヒアリング状況について、事務局より説明をお願いします。
○労災保険財政数理室長 「社会福祉又は介護事業」に係るヒアリング状況について御説明いたします。16ページを御覧いただきますと、細目「社会福祉又は介護事業」のヒアリングの対象とした団体や対応する主な日本標準産業分類を示しています。労災保険率適用事業細目「社会福祉又は介護事業」の事業の内容は、保育所を除く「児童福祉事業」、「障害者福祉事業」及び「老人福祉・介護事業」等、多岐にわたっています。このため、ヒアリングの対象とした団体は、それぞれの事業の業所管部局から、ヒアリングの目的及び業界の代表性等を考慮して紹介された団体としました。
 具体的には、保育所を除く「児童福祉事業」を代表する1団体、「障害者福祉事業」を代表する3団体、「老人福祉・介護事業」を代表する3団体の計7団体に対してヒアリングを行いました。それぞれの団体ごとのヒアリング状況についてはこの後御報告いたしますが、ここで、ヒアリングで把握したそれぞれの事業における労働災害の特徴等を簡単に整理しています。
 17ページですが、まず保育所を除く「児童福祉事業」における主な労働災害は、子ども及びその保護者との関わりの中で発生するものです。噛まれる、引っかかれる、腰痛、保護者からのプレッシャー等が挙げられています。なお、以下において「児童福祉事業」という場合には、保育所を除く「児童福祉事業」、日本標準産業分類でいう「8539その他の児童福祉事業」を指しています。
 次に「障害者福祉事業」における労働災害の特徴です。労働災害の頻度は高くないとしつつも、利用者との接触による負傷や、利用者である障害者の移乗介助による腰痛が挙げられています。なお、知的障害者福祉事業においては、腰痛等は大きな課題とはなっていません。また、介助という点では、障害者福祉と介護福祉には共通点も多いものの、障害者支援施設の利用者が有する障害には様々なものがあることから、個別の利用者の状況に応じて、柔軟に対応を変えていく必要性は障害者福祉のほうが顕著であるとされております。
 次に「老人福祉・介護事業」における主な労働災害は、腰痛等とされています。腰痛は、介護補助機器の使用により抑制可能とされ、技術やツール等の活用により防止対策を推進しております。また、在宅介護事業においては、利用者宅にある介護補助機器を使用することが前提となることを踏まえて、使用する機器の選択を工夫しています。短時間勤務者が多いことを踏まえて、研修を浸透させる工夫もしております。
 18ページからは、7つの団体に対するヒアリング状況です。団体ごとに1ページずつ、最後にまとめを付してあります。まずは7つのまとめを横断的に紹介した後、個々の団体のヒアリング状況について御報告いたします。
 22ページは、「児童福祉事業」について、一般社団法人全国児童発達支援協議会にヒアリングした結果をまとめたものです。作業態様における、「定期的に通所する子どもの療育及び親の支援」、「保育士、児童指導員等で構成」のところや、労働災害の種類及びその対策における、「子どもとの接触、噛みつき、引っ掻き等」、「相手への過度の感情移入等が原因となる共依存や燃え尽き症候群」というところは、「児童福祉事業」における特徴と考えられます。
 26ページは、身体障害者福祉事業について、全国身体障害者施設協議会にヒアリングした結果をまとめたものです。作業態様における、「介助という点では障害者福祉と介護福祉には共通点も多いものの、障害者支援施設の利用者が有する障害には様々なものがあることから、個別の利用者の状況に応じて柔軟に対応を変えていく必要性は、障害者福祉のほうが顕著であるとの認識」をしているというところや、労働災害の種類及びその対策における、「頻度は高くないものの、利用者の移乗介助による腰痛や、利用者との接触により負傷することがある」というところは、「障害者福祉事業」における特徴と考えられます。
 31ページは、知的障害者福祉事業について、公益財団法人日本知的障害者福祉協会にヒアリングした結果をまとめたものです。業界の組織状況における、「会員事業所が所属する法人の中には、知的障がい以外の障害福祉サービスや介護福祉サービスも併せて提供するところも多く、一つの法人がさまざまな団体に加入しており、障害福祉サービスをどのように区分するかについて一律的にとらえるのは困難」というところは、「障害者福祉事業」における特徴と考えられます。
 35ページは、全国社会就労センター協議会にヒアリングした結果をまとめたものです。障害を有する方々が、リハビリや職業訓練も含めて働き、社会参加を実現している施設の代表的存在です。労働災害の種類及びその対策における、「頻度は高くないものの、生産活動に用いる機器の操作に伴う負傷や、作業中の利用者との接触に伴う負傷、身体障害の利用者の介助に伴う腰痛等が挙げられる」のところは、障害者の就労支援事業における特徴と考えられます。
 40ページは、「老人福祉・介護事業」のうち、公益社団法人全国老人保健施設協会にヒアリングした結果をまとめたものです。いわゆる老健と呼ばれる施設の代表的存在です。労働災害の種類及びその対策における、「腰痛」、「無駄な力なしで介助できる技術やツールを活用することで省力化や安全性向上を図っている」、「ICTの導入。事務作業の縮減に加え、安全性向上にも寄与できる」のところは、「老人福祉・介護事業」における特徴と考えられます。
 44ページは、「老人福祉・介護事業」のうち、公益社団法人全国老人福祉施設協議会にヒアリングした結果をまとめたものです。特別養護老人ホームが多数加入している団体です。労働災害の種類及びその対策における、「慢性的な腰痛が課題とされてきたものの、福祉機器を正しく利用していれば、本来であれば防止できるものであり、近年では腰痛を原因とする離職も減少」、「各事業所では、腰痛になるリスクを抑える観点から、負担のかかりにくい移乗のためのシーティングやトランスファーの研修を実施している」というところは、「老人福祉・介護事業」における特徴と考えられます。
 48ページは、「老人福祉・介護事業」のうち、一般社団法人日本在宅介護協会にヒアリングした結果をまとめたものです。訪問介護サービスを展開する事業者が多数加入する団体です。作業態様における、「利用者宅にある介護補助機器を使うことを前提としており、日本の住宅事情もあり、必ずしも広いスペースを確保できない中で、作業を工夫している」のところや、労働災害の種類及びその対策における、「一人の利用者に対して複数の事業者が関与することや、第三者の目が入りにくい個人宅がサービス提供の場になることを前提として、情報共有の仕組みを工夫して、ヘルパーが目の前の介護業務に集中しやすい環境整備を支援」、「腰痛対策として、機器の積極活用や、非常勤職員も受講可能な講習会の実施に取り組んでいる」というところは、訪問介護事業における特徴と考えられます。
 それでは、個々の団体についてもう少し詳細に御紹介いたします。18ページに戻り、まずは、全国児童発達支援協議会です。1番の業界の組織状況です。全国児童発達支援協議会は児童福祉法に基づく、障害児通所事業を行っている事業所を構成員としていて、523事業所が加盟しています。全国に約35万人いるとされる発達障害のある幼児のうち、サービスを利用しているのは全体の約10%程度で、今後も事業は増加する見込みとされています。
 他の団体との協力等の関係です。定期的な情報交換や、研修会等の開催における相互協力は行っているものの、それ以上の協力関係はない。ただし会員レベルでは、他の障害者福祉分野の事業を併せて行う所もあり、他の団体にも加入しているという状況です。
 2番の作業態様です。0歳から18歳までの障害のある子どもに対して、日中にサービスを提供しています。散歩や遠足など、屋外においてサービスをする場合もあります。また、一般の保育所等に訪問支援員が出向いて支援をしています。大規模施設の場合には看護師も常駐していますが、小規模施設の場合には管理者、児童発達支援管理責任者、保育士若しくは児童指導員の配置となっているという状況です。
 従事者の主な職業構成です。直接雇用が大半で、保育士や児童指導員のほかに心理士、看護師、療法士などの専門職が大半です。短時間勤務の従事者も一定数存在しています。
 3番の労働災害の発生状況です。噛まれる、引っかかれるなど、子どもとの関わりでのけが、それから外出時の事故、自動車送迎の乗降時に子どもの不規則な動きをかばうためにけがをする。腰痛、ぎっくり腰などが問題となることもありますが、受け入れている児童の年齢や障害種別によって発生率は大きく異なっている。保護者からのプレッシャーも多いなどを挙げています。いわゆる職業病ですが、子どもに噛まれる、引っかかれることによるけが、子どもの咄嗟な行動への対応や身体的介護による腰痛、相手への過度の感情移入等が原因となって、共依存や燃え尽き症候群に陥りやすいことを挙げています。
 4番の労働災害防止対策です。燃え尽き症候群とならないために、一人で抱え込まずに組織として対応するノウハウを共有する。子どものアセスメントを取り、子どもの行動を予測することで、事故を未然に防止している。メンタルヘルスの相談窓口を設けて、うつを未然に防ぐ取組をしているなどを挙げています。
 23ページですが、全国身体障害者施設協議会です。1番の業界の組織状況です。全国身体障害者施設協議会は、身体障害者への支援を中心に行う障害者支援施設を会員としていて、518施設が会員となっています。全国の身体障害者施設の20.7%を占めています。
 他の団体との協力等の関係です。当協議会は、全国社会福祉協議会内に事務局を有する他の協議会と連携を図るとともに、日本知的障害者福祉協会や、日本身体障害者団体連合会等との間で情報共有を図っています。利用者の年齢に応じて、利用する施設も移行していくことから、施設レベルでは児童発達支援や、老人福祉・介護関係の業界とも連携が発生しているものの、業界団体レベルでは日常的な接点が多いわけではないという状況です。
 2番の作業態様です。身体障害者に対して、日常生活上の支援や、自立訓練、就労移行支援、夜間の施設入所支援を行っています。具体的には、入浴、排せつ、食事の介助や家事、日常生活の相談、生産活動機会の提供、必要な訓練、求職活動支援などの福祉サービスを提供しています。夜間対応が必要なことからシフト体制を敷いていて、また日中の時間帯に多くの職員を配置しています。近年、利用者の障害の進行等に対応するため、昼夜を問わず質の高いケアが求められていることに加えて、記録等の必要な事務も増えていることなどを挙げています。従事者の主な職業構成ですが、生活支援員が多くを占めています。
 3番の労働災害の発生状況です。頻度は高くないとしつつも、利用者の移乗介助による腰痛、利用者や職員同士の接触による負傷、濡れた床、入浴介助時の転倒などを挙げています。いわゆる職業病については腰痛を挙げています。
 4番の労働災害防止対策です。天井走行リフトや介護ロボットを導入している施設の紹介をしています。トイレ、浴室へのリフトの導入、移乗時には可能な限り二人一組で対応するなどを挙げています。
 5番のその他です。利用者の年齢に応じて必要とされるサービス内容は変化していく。介助という点では、障害者福祉と介護福祉には共通点も多いものの、障害者支援施設の利用者が有する障害には様々なものがあることから、個別の利用者の状況に応じて柔軟に対応を変えていく必要性は、障害者福祉のほうが顕著であると認識されています。
 27ページですが、日本知的障害者福祉協会のヒアリング状況です。1番の業界の組織状況です。日本知的障害者福祉協会は、知的障害者を主たる対象として、障害福祉サービスを行う施設及び事業所を会員・準会員としていて、6,408事業所が会員・準会員となっています。以前は実施主体が社会福祉法人の事業場のみでしたが、現在では企業やNPOの事業場もあり、運営主体が多様化しています。
 他の同業団体の状況です。全国社会福祉協議会や、全国社会就労センター協議会などを挙げています。他の団体との協力等の関係です。他団体が開催する会議への出席、国への働きかけ、全国社会福祉協議会に設置されている連絡協議会を通じて、知的障がい者に限らず、障害福祉全体について横断的な議論を行うことも可能となっています。会員事業者が所属する法人の中には、知的障がいだけでなく、精神障がい、身体障がいのある方に、障害福祉サービスを併せて提供する所も多く、一つの法人が複数の団体に加入しており、障害者福祉サービスをどのように区分するかについて一律的に捉えるのは困難という状況です。
 2番の作業態様です。従事者の多くを生活支援員が占めています。車で送迎する際には二名体制で対応することが多い。入所施設を有する事業においては夜勤体制も存在する。また、一事業所の中で、知的障がいのみならず、複数の障害福祉サービスを提供する主体が増加しており、従事者がそれらを兼務することもあるという状況です。従事者の主な職業構成ですが、ほとんどが直接雇用です。手厚い支援が必要な時間帯には、集中的にパートを配置する等、シフトを柔軟に組んで対応しているなどという状況です。
 3番の労働災害の発生状況です。特に災害発生頻度が高いわけではない、腰痛は深刻な頻度で発生しているわけではない、精神疾患の発生も顕著ではないと認識されています。いわゆる職業病については、協会としては把握していない、把握すべき喫緊の懸案があるわけではないという状況です。
 4番の労働災害防止対策です。業界として労働災害に特化した対策に取り組むべき状況にはないと認識されています。
 32ページですが、全国社会就労センター協議会に対するヒアリング状況です。1番の業界の組織状況です。会員は全国の社会就労センターであり、約1,500の施設が会員となっています。他の団体との協力等の関係です。当協議会は全国身体障害者施設協議会や、障害者の就労支援に取り組む団体と連携を図っています。
 2番の作業態様です。社会就労センターの生産活動は、農業、食品加工、縫製、木工、印刷、クリーニングなど多岐にわたっています。主に利用者である障害者が、できる作業を分担して実施しつつ、必要に応じて職員も作業に参画する形になっています。また、職員は利用者の就労支援や、生活支援などのサポートも担っています。
 3番の労働災害の発生状況です。頻度は高くないとしつつ、生産活動への従事により生じる軽度の負傷、作業中の利用者との接触に伴う負傷、身体障害の利用者の介助に伴う腰痛などの事例を挙げています。いわゆる職業病については、業界における課題とされているわけではないものの、腰痛や精神疾患を発症する因子が一定程度存在すると認識されています。
 4番の労働災害防止対策です。協議会として、業界全体の取り組みを主導するほどの問題が生じているわけではないものの、会員施設単位で取り組んでいる防止策としては、疲労回復のための体操、利用者の状況に応じて複数の職員で支援、産業医の活動、定期的なストレスチェックを挙げています。また、国が策定した腰痛予防対策指針などを会員施設へ情報提供しています。
 36ページですが、全国老人保健施設協会です。1番の業界の組織状況です。全国老人保健施設協会は、介護保険法に規定する介護老人保健施設のうち、全国で約3,600施設が加入していて、加入率は約90%です。他の同業団体の状況です。介護老人保健施設は、介護保険法に基づく介護保険施設に分類されますが、介護を中心としつつも、医療を併せて提供する等関係団体は多岐にわたっています。
 2番の作業態様です。1年365日サービスを提供するため、シフト制を採用しています。介護やリハビリを中心としつつも、経管栄養や、痰の吸引等の医療行為も行っています。医師が一人の施設も多い中で、あらゆる症状を抱えたさまざまな患者と対峙している。難しい症状については病院へ行くよう指示することとなる。事務作業が相当量発生しているなどという状況です。従事者の主な職業構成ですが、基本的には直接雇用であり、医師、薬剤師、看護職員、介護職員等が配置されています。
 3番の労働災害の発生状況です。腰痛、介助の際の転倒、通勤時、デイケア送迎中の交通事故、看護師においては針刺し事故を挙げています。いわゆる職業病としては腰痛を挙げています。また、ストレスに起因する精神疾患が中間管理職層においては発生し得ると認識されています。
 4番の労働災害防止対策です。協会ホームページ等で周知をしている。介護老人保健施設リスクマネジャー認定資格制度を創設した。毎年安全推進月間を設置している。ポスターのテーマを腰痛予防としたことがある。安全推進セミナーを実施して、メンタルヘルスや腰痛予防について講義をしたなどが挙げられています。
 事業主が取り組んでいる事例としては、リフト、スライディング機械、安全ベルトなどの福祉用具の導入、医療用腰痛コルセットの配布、ストレスチェックの実施、腰痛予防に係る研修会の実施、無駄な力なしで介助ができる技術のレクチャー、電子カルテ導入による事務負担の軽減などを挙げています。
 今後の取組としては、介護ロボットの開発支援を挙げています。パワーアシスト機能やノーリフト等、完成品のロボットでなくても省力化や安全性向上に利用できる技術は潜在的に多いと認識されています。また、ICTの導入を挙げています。事務負担の縮減に加えて、安全性向上にも寄与できると認識されています。
 5番のその他です。より良いケアを目指すという意味において、「社会福祉又は介護事業」に含まれる事業には一定の共通性はあるものの、労働災害防止対策や、省力化対策として当面取り組むべき事項という点では、児童福祉、老人福祉・介護、障害者福祉の方向性が一致するとは限らないと認識されています。
 41ページは、全国老人福祉施設協議会のヒアリング状況です。1番の業界の組織状況です。全国老人福祉施設協議会は、社会福祉法人の事業所を会員とする協議会で、会員事業所数は11,711事業所となっています。軽費老人ホームは半分以上、特別養護老人ホームは6割程度と、業界の大半の事業所が加入しています。
 他の団体との協力等の関係です。全国社会福祉協議会等の関係団体が実施する研修への登壇や、調査研究に当協議会の役員等が参画するなどの連携をしています。
 2番の作業態様です。特別養護老人ホームにおいては、24時間体制でサービスを提供する必要があり、シフト体制を組んでいる。車での送迎は複数の車両を用いて、施設と個々の家庭を往復する形態が主流となっている。デイサービスは5人程度でサービスを提供する形態も多いなどという状況です。主な職業構成です。施設長、医師、生活相談員、介護職員又は看護職員等の職員で構成されていて、6割程度が常勤です。人手が特に必要な時間帯にはパート職員を多めに動員するなどして対応しています。人手不足のため派遣職員で対応することもあるという状況です。
 3番の労働災害の発生状況です。送迎サービスに係る交通事故発生のリスクはある。施設内の衛生管理が正しく行われていれば、職員への感染症リスクも深刻ではない。入居者とのやり取りの中でけがをする場合はある。入居者の家族との関係が原因となってストレスを抱える事象は頻繁に発生しているわけではない。慢性的な腰痛は発生しているなどを挙げています。いわゆる職業病としては、慢性的な腰痛を挙げています。福祉機器を正しく利用していれば、本来であれば防止できるものであると認識されています。近年では、腰痛を原因とする離職も減少傾向にあります。
 4番の労働災害防止対策です。各事業所では、腰痛になるリスクを抑える観点から、負担のかかりにくい移乗のためのシーティングや、トランスファーの研修を実施している。介護リフトやロボットスーツ等の福祉機器の導入により、腰痛のリスクを削減している。腰痛防止ベルトの導入は順調に進んでおり、毎年腰痛検査も行っている。事務作業のIoT化により、労働時間削減を図っている。シーティングや移乗ベッドの導入により負担軽減を行っているという状況です。
 5番のその他です。介護老人保健施設(老健)も介護保険制度に基づく施設であり、接点は存在しています。特養と老健の間で利用者が移行する事例もあるとのことです。また施設サービスと居宅サービスでは、物理的な作業場所、サービス提供時間(就労時間)という観点から、就労形態に一定の相違があると認識されています。
 45ページは、日本在宅介護協会のヒアリング状況です。1番の業界の組織状況です。日本在宅介護協会は、258社が加盟しており、在宅介護事業において大きなシェアを占めています。他の同業団体の状況ですが、当協会のように、実施する介護事業のサービス種目を問わずに、会員企業を受け入れる団体のほかにも、近年は種目を絞った形で会員を募る団体も増加している状況です。他の団体との協力等の関係です。当協会は7団体からなる民間介護事業推進委員会の一員となっており、他の6団体と共に政策提言を行っています。
 2番の作業態様です。食事、入浴、排せつ介助を主としながら、利用者の生活に係る全般に携わっています。ケアマネージャーを中心に情報共有を工夫して、複数の事業者が連携して一人の利用者にサービスを提供するという特徴があります。ヘルパーが一人で訪問してサービスを提供できるように、提供メニューを調整することも多い。一人のヘルパーが、一日に複数の利用者宅を訪問することも多く、訪問スケジュールや巡回路の調整に工夫を要する。腰痛防止ベルト等、ヘルパーが常時身に付けている機器を除けば、利用者宅にある介護補助機器を利用することが前提となり、工夫を要するという状況です。主な職業構成ですが、会員における非常勤スタッフの総数は10万人以上となっています。家庭環境等により勤務時間や就労場所が限定される人も柔軟に勤務できるスケジュール調整を行っている。介護職員だけでなく、看護師も必要とされているなどという状況です。
 3番の労働災害の発生状況です。慢性的な腰痛は、負荷のかかる総時間に依存する側面もあり、短時間勤務者においては必ずしも頻発するとは限らない。無理な姿勢で作業しないように教育・研修を行っているため、ぎっくり腰のような突発的な腰痛も大きな課題となっているわけではない。ただし、利用者宅に介護補助機器が用意されていない場合もあり、一定程度は発生し得るのが現状で、転倒リスクも挙げられています。第三者の目のない中でサービスが提供されることから、利用者やその家族との関係に起因して、精神的ストレスを感じる場合もあるということを挙げています。いわゆる職業病ですが、介護現場においては腰痛が職業病といわれているということです。
 4番の労働災害防止対策です。中央労働災害防止協会が取りまとめた「腰痛予防の進め方」などを参考にして、事業所内でのリスクアセスメントを実行している。腰痛予防対策講習会などを開催して、常勤、非常勤にかかわらず従業員に受講させている。腰痛防止ベルトなどを積極活用して、腰痛防止に取り組んでいる。また、利用者が在宅環境に応じて福祉用具を購入する場合、サービス提供者の労働災害防止にもつながるなどを挙げています。今後の取組としては、腰痛予防対策につながる全国的な研修会の実施、サービス提供の場が個人宅であり、第三者の目が入りにくいことから、利用者やその家族との関係において、精神的なストレスにならないよう、ICTの活用等、更なる情報共有・連携の仕組みを工夫するということなどを挙げています。
 以上が「社会福祉又は介護事業」に係るヒアリング状況についての説明です。
○森戸座長 「社会福祉又は介護事業」について、事務局からヒアリング状況の説明をしていただきました。ヒアリングの状況等を踏まえて、「社会福祉又は介護事業」の見直しの方向性について御意見を頂戴いたします。併せて事務局の説明についての御質問、御疑問等がありましたらお願いいたします。
 資料2-1で付けていますが、平成17年の「労災保険率の設定に関する基本方針」に沿って業種区分の分類をすることになっています。ここでいうと、作業態様や災害の種類の類似性がある業種グループに着目してということで、作業態様とか災害の種類がどうなのかということをヒアリングをして聞いているということだと思います。
 あとは、業界団体等の組織状況等について斟酌しつつということになっていますので、業界団体の状況も全体としてどうなのか、個別にどうなのかいろいろあると思いますが、その辺も関係あるということだろうと思います。主な観点としてはこの辺がポイントになるかと思います。それ以外に業界の状況を知るために、いろいろ詳細にヒアリングをしていただいていますので、それを踏まえて御質問等があればお願いいたします。
○酒井委員 詳細なヒアリングの報告をありがとうございました。たくさんの業界のヒアリングの報告がありましたが、全体を通してみると、共通した労災の発生状況、そういった要素・要因といったものがある一方で、各業界で労災に対する認識、労災発生状況というものにも違いがあるということだと思います。
 ただしこれは、あくまでも定性的に各業界がどのように認識しているかという資料だと思います。定性的な観点からの分析と同時に、データで把握していく必要もあるのではないかと思いました。ヒアリングの中でもありましたけれども、業界同士で、互いの業界と連携している部分もあるのだけれども、さほど深い交流があるわけではないということが幾つか出てきました。お互いの業界のことを知らないという側面もあるかと思います。ですから、お互いに労災の種類はかなり異なっていると、その業界の中では思っているかもしれないけれども、実は定量的に把握してみると結構同じ側面もあるのではないかということもあると思うのです。データによる把握も重要かと考えます。
 もし現時点で、定量的な側面から労災の種類と、労災の発生状況が把握できるのであれば、そういうことを紹介していただくということもあろうかと思います。同時に、もし現時点でそういう正確なデータが得られないということであれば、今後そういうデータの蓄積が必要かと思いました。
○森戸座長 今の点について、事務局から何かありますか。
○労災保険財政数理室長 今回はヒアリングの状況の報告ということで、ヒアリングをした定性的な状況について申し上げました。御指摘をいただいたとおりデータによる数量的な分析もあわせて行っていくことが重要だと思っています。例えば、第1回検討会においては、労災データを使った災害の発生頻度であるとか、重篤度であるとか、母集団としての保険集団の大きさといったものについての分析を行ったところです。また、死傷病報告のデータを基にした災害の型についても分析いたしました。データによる数量的な分析がどこまで可能かというのはありますけれども、引き続きそういったこともあわせて行っていきたいと思っています。
 また、労災保険のデータですが、先ほど最後に、データの蓄積が必要であるというお話もあったと思います。労災保険のデータで発生頻度、重篤度がどの程度になっているのか、あるいは給付種別のデータがどのようになっているのかということは、その細目を設定しないとそういうデータは取れないということがあります。そのような労災データの分析も必要ということであれば、その細目を設定してデータの蓄積を待って、また改めて検討することも必要になろうと思います。
○森戸座長 事務局の指摘のとおりで、細目になっていないとそのデータも分かれていないから、それを分けるかどうかという話をしていて、データがないから、ある程度ヒアリングをしなければいけないという趣旨だと思います。ただ、委員御指摘の点はもっともな話で、もちろんヒアリングは大事ですけれども、例えば腰痛が少ないと言っていてもそれは業界の認識です。他の業界と比べて、ということがそんなに分かっているわけではないし、更に他の業界と比べて本当に少ないと言えるかどうかは分かりません。そこは、そういうものであるということはもちろん事務局としても当然踏まえて、私たちも議論しなければいけないと思います。
 先ほど私が言及した、平成17年の基本方針にもちろん沿って考えるわけです。ヒアリングをして、明らかにこれは特異な集団であるとか、ちょっとほかとは違うというのが出ればもちろんですけれども、顕著な差が出てこない場合も多いでしょう。その場合には、基本方針でいう考慮すべき要素に照らして極めて特異なものが、他の集団と混ざっているというようなことがそれほど出なければ、それはそれでそういうものとして見ていく。つまり、何も出ないということは、一応現状のとおり考えざるを得ないということと思っています。でも、御指摘いただいた点は注意してヒアリングのデータを分析しないといけないと思いますので、それはよろしくお願いします。他の委員はいかがですか。
○中益委員 ヒアリングの結果を拝見すると、幾つかの団体から、訪問系のサービスと施設系のサービスでは作業様態が違うのではという趣旨の見解が出ていたかと思います。実際確かにそういう側面はあるように思います。仮に今後この業界を独立させるとなったときに、災害の様態が訪問系と施設系で同じなのか、違うのかというデータをもし取れるようでしたら、取っていただいたらどうかと思います。
 もう1つこの点に関連して、平成17年の方針によれば、保険集団としての規模は考慮すべき要素かと思われます。そこで、もし分かりましたら、社会福祉業界における訪問系の事業者と施設系の事業者数を教えてください。
○森戸座長 特に2点目についてお願いします。
○労災保険財政数理室長補佐 今の労災の適用事業細目の中では、「9432社会福祉又は介護事業」という一つの集団になっているので、労災のデータから直接、訪問介護と、施設介護でどういう構成比になっているかというのは直ちには把握できません。代わりに、平成26年に行われた経済センサスでどういう数字になっているかを御紹介します。
 平成26年経済センサス上は、訪問介護事業で従業者が約39万人です。特別養護老人ホームで約58万人です。先ほども出てきた老健、介護老人保健施設で約29万人です。通所サービス・短期サービスを提供している所で約49万人という数字になっています。入居施設と通所・短期サービス、訪問介護サービス、それぞれに数十万人規模の集団が統計上は出てきます。
 ただし、この経済センサスはあくまでその事業所の主たる経済活動で格付けしておりますので、例えば入居施設が併せて通所サービス、デイサービスを提供している場合も、基本は入居施設としてカウントされているはずです。先ほどのヒアリングの中でも1つの事業所、1つの法人が複数の福祉サービスを展開している場合が少なからずありますという御紹介をさせていただきましたが、この経済センサス上の数字で、そのような実態をきれいに切り分けられているわけではないはずです。少なくともメインが何かというものを一定のルールで格付けした場合、訪問介護と施設介護、それぞれに数十万というオーダーの従業員が従事しているという捉え方をする必要があります。
○森戸座長 他の委員はいかがですか。「社会福祉又は介護事業」に係るヒアリングに関してはよろしいですか。また全般に関わることもあろうかと思いますので、この後もう少しヒアリングの御紹介がありますので、それを進めたいと思います。それでは、「社会福祉又は介護事業」については、事務局において本日の御議論、御意見等を踏まえて、引き続き検討を進めていただければと思います。
 次は議題(2)-(イ)(ウ)(エ)ですが、「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」に係るヒアリング状況についての説明をお願いします。
○労災保険財政数理室長 「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」に係るヒアリング状況について御説明を申し上げます。50ページを御覧ください。労災保険率適用事業細目「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」に対応する主な日本標準産業分類、それから、ヒアリングの対象とした団体等を示しています。
まず、対応する主な日本標準産業分類ですが、細目「9434保育所」は、日本標準産業分類の細分類「8531保育所」に対応しています。細目「9435認定こども園」は、保育所型認定こども園と地方裁量型認定こども園については、細分類「8531保育所」に対応しています。また、幼保連携型認定こども園は、日本標準産業分類の小分類「819幼保連携型認定こども園」に、幼稚園型認定こども園は小分類「811幼稚園」に、それぞれ対応しています。細目の「9433幼稚園」は、小分類の「811幼稚園」に対応しています。
 次に、「保育所」、「認定こども園」及び「幼稚園」のヒアリングの対象とした団体ですが、それぞれの事業を代表する1団体ずつであり、ヒアリングに御協力いただいた団体は記載のとおりです。それぞれの団体ごとのヒアリング状況については、この後御報告申し上げますが、ここで、ヒアリングで把握したそれぞれの事業の特徴等を簡単に整理しています。
 まず、「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」の共通点です。近年、幼稚園や保育所から認定こども園へ移行する事例が増加しており、幼稚園教諭と保育士双方の資格を有する者も多くなっています。また、子どもとの接触によるけが、腰痛、保護者対応に係るストレス等は、どの細目においても発生しています。
 細目ごとの特徴として、「保育所」につきましては、開園時間が長い、調理設備及び調理員を配置する必要があるということが挙げられます。「認定こども園」の特徴としては、保育所と幼稚園双方の機能を果たせる設備及び人員が必要とされる、開園時間が長い、新設は少なく既存の幼稚園や保育所から移行する事例が多いということが挙げられます。「幼稚園」につきましては、各学級に原則1人の担任教諭が配置される、夕方まで預かり保育を行う園も増加傾向にあることが挙げられます。
 52ページからは、それぞれの団体に対するヒアリング状況です。まず、全国私立保育園連盟のヒアリング状況です。最初に55ページのヒアリングのまとめを御覧ください。業界の組織状況における、「認定こども園への移行が進んでおり、会員の約1割が認定こども園。児童福祉と教育、双方の性格を併せ持つ」のところや、作業態様における、「保育士の多くは幼稚園教諭免許も保有」、労働災害の種類及びその対策における、「保護者対応による精神的疲弊も無視できない、ただし学校とは異なり、保護者と毎日顔を合わせるため、一定程度は緩和される」といったところは、「保育所」と「認定こども園」及び、「幼稚園」との関係性や、「保育所」における特徴と考えられます。
 52ページにお戻りください。1番の業界の組織状況です。全国私立保育園連盟は私立認可保育所、これは認定こども園を含んでいますが、これらによる公益団体であり、全国約13,000園のうち9,510園が会員となっており、今後も増える見込みです。近年では認定こども園に移行した園が増加しており、会員園数の約1割を占めています。児童福祉と教育双方の性格を併せ持つ業界ともいえます。待機児童対策等により保育園の増設が続いており、業界規模は拡大傾向となっています。
 他の団体との協力等の関係ですが、当連盟は全国保育協議会及び日本保育協会と共に保育三団体協議会を構成して連携協力をしています。個々の園レベルにおいては、地域の実情に応じて、小学校や教育委員会との連携、児童発達支援センター等の連携も日常的に行われているなどの状況です。
 次に、2番の作業態様です。朝7時から夜7時まで開所している所が多く、早出・遅出等のシフト体制を組んでいる。最も人手を要する昼間にはパートタイムの保育士を補充することも多い。家庭環境により昼間だけであれば勤務可能という保育士も一定数存在するという状況です。
 主な職業構成ですが、常勤及び非常勤の直接雇用と派遣等で構成されています。保育士及び調理員の配置が必要で、乳児対応において看護師も重要な役割を担っている。子育て支援員の活用も増えているという状況です。養成校を経て保育士資格を取得する場合、併せて幼稚園教諭免許も取得できることが多いため、多くの保育士が両方の資格を保有している。幼保連携型認定こども園に勤務する保育教諭の約9割が両方の資格を有しており、認定こども園に移行する際にも人的リソースの確保における障害は少ないといえるという状況です。
 3番の労働災害の発生状況ですが、交通事故や転倒が多いと認識している。子どもとの接触によるけがや腰痛も発生し得る。保護者対応による精神的疲弊は無視できない。ただし、学校とは異なり保護者と毎日顔を合わせるため、一定程度は緩和され、事態が深刻化しにくいという状況です。
 次に、4番の労働災害防止対策です。メンタルヘルス対策として弁護士に相談できるホットラインを設置した。それから、保育カウンセラーの養成により保護者支援の理論と技法を学ぶ機会を設けている。直接子どもと接する以外にも、保育要録を作成する等の業務があり、ノーコンタクトタイムの実施状況について調査を行っていることを挙げています。
 5番のその他ですが、保育所と幼稚園における作業態様や労働災害発生状況について大きな差異があるとは認識していない。保育所は児童福祉分野に該当する一方で、幼稚園と認定こども園は小学校とは少し異なるものの教育というカテゴリーで捉えることができる部分がある。一方、人的リソース、作業態様等の観点からは、保育所と幼稚園にも類似性があり、認定こども園への移行も増えているので、保育所は児童福祉と教育の中間的存在と認識している。保育所は児童福祉の一形態であるという意味で、広義の福祉には当てはまるものの、障害者福祉や老人福祉とは若干距離があると認識しているという状況です。以上が、全国私立保育園連盟のヒアリングの内容の報告です。
 続いて、全国認定こども園協会のヒアリング状況です。まずは、64ページの、ヒアリングのまとめを御覧ください。業界の組織状況における、「会員の56%が社会福祉法人、43%が学校法人系列」、「既存の幼稚園、保育所が認定こども園に移行することが多く、それらの園は幼稚園団体、保育所団体に加入し続けることも多い。幼稚園団体、保育所団体においても「認定こども園委員会」等が設置されている」のところや、作業態様における、「約8割の職員が幼稚園教諭と保育士、両方の資格を有して保育に従事」、労働災害の種類及びその対策における、「園児との接触、身代わりによる怪我・転倒、腰痛」、「うつ(職場内、保護者対応に起因)」といったところは、「認定こども園」と「幼稚園」及び「保育所」との関係性や、「認定こども園」における特徴と考えられます。
 58ページにお戻りください。1番の業界の組織状況です。正会員は1,392園で、全国の認定こども園のうち20%強が会員となっています。最近の3年間は会員が年間100園以上増加しており、今後も増加傾向にあるといわれています。他の同業団体の状況ですが、認定こども園を称する全国規模の団体は3団体存在しており、当協会は3団体の中で会員数が最も多い団体となっています。幼稚園団体、保育所団体がそれぞれ存在していますが、どちらの系統の団体の中にも「認定こども園委員会」等が設置されているという状況です。認定こども園の認可は、既存の幼稚園、保育所からの移行が多く新設は少ないため、新たに認可を受けた園は引き続き幼稚園、保育所の団体に属することも多くなっています。
 他の団体との協力等の関係ですが、同業のこれらの団体とは事項によっては協同する場合があるということです。また、自治体によっては教育委員会との接点も多くなっています。園レベルでは小学校との連携が進んでいる所もあり、園レベルでの児童福祉分野との連携もあるということです。
 2番の作業態様についてです。保育所と幼稚園双方の機能を果たせる設備及び人員が必要とされる。ほとんどが保育に従事している職員であるが、負担軽減、効率化の観点から、事務職員の採用など保育の業務以外の部分において専従化を図っているという状況です。
 12時間程度の開園時間となっているため、シフト制などを用いて、在園する子どもが多い時間帯に多くの職員が出勤できるように調整している。朝の早い時間帯や延長保育の時間帯のみ勤務する非常勤職員を配置したり、土曜日も開園するために平日に休みを設定する等の調整を行っています。また、給食の時間も子どもに付き添うため交代で30分ずつ分割して休憩する等の工夫をしている。事務、保育記録、教材研究に充てる「ノーコンタクトタイム」を確保するようにしているという状況です。
 主な職業構成ですが、ほとんどが直接雇用の常勤とパート職員で構成されています。また、補充のために派遣社員を受け入れるケースも多くある。幼稚園教諭と保育士とでは作業態様に大きな違いはなく、同じように子どもと関わっている。認定こども園においては、8割の職員が幼稚園教諭・保育士両方の資格を有しているという状況です。
 次に、3番の労働災害の発生状況です。園児との接触、身代わりによるけが・転倒、腰痛、教材作成時、送迎時の事故などを挙げています。いわゆる職業病については、子どもの抱っこや子どもと目線をあわせるためにしゃがんで作業することが原因の腰痛と、職場内、保護者対応が原因のうつを挙げています。
 4番の労働災害防止対策です。抱きかかえ方の工夫や腰痛ベルトの使用。うつの防止対策については、相談できる体制作りということで、規模の大きな園ではメンター制も活用しているということです。上司、同僚との関係性を良好にするための交流や園内研修、労務相談のホットライン、メンタルケアカウンセリングサービスなどを挙げています。それから、好事例として、園内研修にて園児のけがへの対応の周知と併せて労働災害に係る注意喚起をしたということを挙げています。
 5番のその他ですが、昨今の少子化に伴い幼稚園、保育所のみの運営では入園者が減少し得るところ、認定こども園に移行することでより多くの子どもを受け入れることが可能となることから、今後も認定こども園は増加していくとの見通しを持っておられます。認定こども園への移行により、結果的に幼稚園の数は減少しているものの、保育所については、都市部を中心として待機児童解消のために増加傾向となっているため、認定こども園の増加が直ちに保育所数の減少にはつながらないとされています。また、「幼稚園」、「保育所」、「認定こども園」を一体的・類似する保険集団としてとらえることには大きな違和感はない。一方、当協会の会員の内訳は、56%が社会福祉法人、43%が学校法人となっており、「教育業」と「社会福祉又は介護事業」のどちらの保険集団とも一定の類似性があるともいえるため、これらのうち片方の集団と統合するのは現実的ではないと認識されています。以上が全国認定こども園協会のヒアリングの内容の報告です。
 次に66ページを御覧ください。全国国公立幼稚園・こども園長会に御協力いただいたヒアリング内容について報告いたします。労災保険の適用労働者となる幼稚園教職員の範囲とは必ずしも一致しないものの、幼稚園の現場における作業態様等を推察するために、全国国公立幼稚園・こども園長会に今回ヒアリングに御協力いただきました。
 まず、業界の組織状況についてです。幼稚園数は10,474園で、国公立が3,786園、私立が6,688園となっています。これは幼稚園型認定こども園を含んだ数字です。また、幼稚園とは別に、幼保連携型認定こども園が4,466園存在しています。こども園への移行が進んでいる影響もあり、幼稚園の園数は近年減少気味となっています。
 次に、作業態様です。管理職として園長、副園長又は教頭が配置されるが、管理職は園長のみで次が主任という園も多くなっています。各学級に原則1人の担任教諭が配置されるが、正規職員ではなく非常勤が担任をするという場合もあります。事務職員が配置されるのは僅かで、教員・職員の分業を徹底できるだけの体制が確保されているとは限らず、担任教諭が学級事務のほかに相当程度の周辺事務も担っています。
 保育所や認定こども園のような給食設備がなくても幼稚園が預かり保育を行うことは可能であり、認定こども園への移行だけでなく、預かり保育機能を有する幼稚園も近年増加しています。こども園や預かり保育を行う園が増えたことで、職員の勤務形態や時間なども多様化・複雑化し、園児の降園時刻、これは保護者と対峙する時刻にもなりますが、その時刻が一律にはならず、情報共有や研修、保護者への伝達などに関して従来以上に工夫が必要となっているという状況です。
 次に、労働災害の種類及びその対策です。子どもをかばうために無理な体勢となり負傷することがある。また、子どもを抱きかかえることも多いため慢性的な腰痛も発症しやすい。教材作成中に負傷することもある。日々子どもの成長を実感できるやりがいのある仕事である反面、「ここまですれば十分」という水準について、職場内や保護者との間で明確なコンセンサスを形成しにくい。そのため、長時間労働を抑制するためには、準備や振り返り等、子どもと直接接する業務以外の業務を抑制するための組織的な取組が必要となるという状況です。以上が全国国公立幼稚園・こども園長会のヒアリング内容の報告です。
 以上が「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」に係るヒアリング状況についての説明となります。
○森戸座長 事務局より、「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」に係るヒアリング状況について説明していただきました。ヒアリングの状況等を踏まえて、「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」の見直しの方向性について御意見を頂戴したいと思います。あわせて、事務局の説明に御意見、御質問、確認したい点等がありましたらお願いします。どなたからでも構いません。いかがでしょうか。
○小西委員 先ほどの福祉のところとも関係するかもしれませんが、具体的に教えてください。地域にある児童館や学童というのはどこに位置付けられるのですか。
○労災保険財政数理室長補佐 御質問いただきました学童保育というのは、実は今回のヒアリングの対象としている団体の範囲には含まれていません。「8531保育所」を除く「853児童福祉事業」という中に学童保育が格付けられることにはなるのですが、今回は学童をヒアリングの対象にはしておりません。先ほど出てきた児童発達支援の団体は、発達障害を持っているお子さんとその御家族をサポートするという団体です。学童保育も日本標準産業分類上の「児童福祉事業」、そして労災保険の細目「9432社会福祉又は介護事業」の中に含まれるものの、学童保育の団体にはヒアリングをしていません。
○小西委員 そうしますと、本日お配りいただいた16ページの下の図で言うと、学童保育というのも「8539その他の児童福祉事業」のところに入るということですか。
○労災保険財政数理室長 はい。16ページに、細目「社会福祉又は介護事業」に対応する日本標準産業分類を記載していますが、委員がおっしゃるとおり、学童保育というのは「8539その他の児童福祉事業」に属することになります。
○小西委員 結構です。
○森戸座長 ほかはいかがでしょうか。
○花岡委員 御報告、ありがとうございます。私も今の点と近い提案なのですが、先ほどの「社会福祉又は介護事業」の中の、「児童福祉事業」の作業態様や災害の種類と、御報告いただいた「認定こども園」、「保育所」、「幼稚園」の作業態様、災害の種類が非常に近いと思いました。先ほど「社会福祉又は介護事業」の中で、今後、具体的なデータの収集方法として、細目を設定しない限り分からないということをおっしゃっていたと思うのですが、特に「社会福祉又は介護事業」においては、「児童福祉事業」についてどういった状況になっているかというのを、細目を立てて、データを収集していただければと思いました。
 とりわけ「社会福祉又は介護事業」においては、「児童福祉事業」と、「障害者福祉事業」、「老人福祉・介護事業」は、作業態様と災害の種類が大分異なると思いましたので、もしもこの細目を細分化するということであれば、特に「児童福祉事業」を区分けしていただきたいなと思いました。以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。事務局から何か、その点についてはありますか。
○労災保険財政数理室長 17ページのところでも説明いたしましたが、「社会福祉又は介護事業」は、日本標準産業分類の小分類レベルで分ければ、「児童福祉事業」と「障害者福祉事業」、「老人福祉・介護事業」というように分かれまして、それぞれ先ほど御説明いたしましたとおりの特徴が見られるところであり、仮に「社会福祉又は介護事業」という細目について、更に分割するといったときには、先生が言われたことについても検討していきたいと思っています。
○森戸座長 今の両委員の御指摘とも、同じような点に関わるのかなと思いますが、完璧にというか、きれいに分類しようとしても、どうしてもちょっと違うものが入っていたりすることがあるのはしょうがないのかなと思いますが、ただ、一応それは認識していなければいけないし、もしうまく区分できるようであれば、それはすべきなのだろうと。将来的には労災保険料の話にもなっていくと思いますので、今のような御指摘も非常に重要だと思います。ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 ところで、ヒアリング状況をまとめた資料によれば、派遣労働者が多数活躍している業界もあるようですが、派遣会社の労働者、派遣労働者はどこに派遣されていても、派遣会社側で労災保険料を負担するという理解でいいのですか。その場合、どの細目が適用されるのですか。民間職業紹介業が「9411広告、興信、紹介又は案内の事業」に属する旨は書籍等にも記載されているようですが、派遣会社がどの細目に属するかについては、どこかに明記されているのでしょうか。
○労災保険財政数理室長補佐 労働者派遣事業が、労災保険率適用事業細目のうちどれに属するかは、明記されていません。
○森戸座長 明文化されていないのですか。
○労災保険財政数理室長補佐 労災保険の業種区分においては、職業紹介事業と労働者派遣事業は異なるものという整理になっています。
 職業紹介事業は森戸座長が御指摘のとおり、9411の中に含まれるという整理になっています。職業紹介事業で紹介を受けて、最終的にどこかに勤めることになった労働者というのは、当然雇われた先で労災保険の適用を受けます。ですが、職業紹介プロセスの最中においては、これから職業紹介を受けようという労働者は、職業紹介事業者に雇われているわけではありません。職業紹介事業の中で労災保険が保護の対象としているのは、職業紹介をするエージェントの側の労働災害であり、それは9411というところに区分されるということです。一方、労働者派遣事業において派遣労働者が誰に雇われているかといえば、派遣先ではなくて派遣元の派遣会社です。なので、労働者派遣事業を労災保険でどのように保護するかといえば、それは派遣会社でコーディネートする人も保護対象ですし、派遣される派遣労働者も、どちらも労働者派遣事業の適用労働者として組み込まれているわけです。
 ところが派遣労働者が、どこでどういう労働災害リスクを負っているかといえば、派遣元ではなく、派遣先でどのような仕事をしているかに依存して決まってくるので、職業紹介事業のように一律に「9411です」と規定することができません。現在の業種区分の考え方では、派遣先で、派遣労働者がどんな作業、どんな業務に従事するか、その作業、業務というのが労災保険の業種区分、細目と照らしてどこに適合するかに基づき区分します。勿論、派遣会社はいろいろな会社に派遣するので、作業態様も多岐にわたることがあるのですが、そこは1事業場1適用という原則に沿って、この派遣会社は派遣労働者を、主として、どういう作業態様、どういう業務内容の所に派遣しているか、その区分によって格付けをします。なので、派遣会社は理論上、様々な業種に格付けされるという整理になっています。
 実態としては、事務作業として派遣される方がたくさんおられるので、「9416前各項に該当しない事業」の適用を受けている派遣会社が多数あるのですが、作業態様、労働災害リスクに応じて業種を区分する、そして1事業場に1適用という原則で運用するという労災保険の考え方がある以上、派遣会社というものを一義的に、アプリオリにここの業種と格付けすることが困難なため、あえて業種区分としては設けていません。
○労災保険財政数理室長 派遣元の事業場がどこの業種区分の適用を受けるかについては、具体的には労働基準局長通達「労災保険率適用基準」の中で定められています。第1回検討会で紹介したのはその抜粋だったので、派遣元がどうなるかについて触れた箇所は含めていなかったのですが、その適用基準の中で定められているということでして、簡単にいいますと、派遣先での主たる作業で、派遣元の業種が決まるといった形になっています。
○森戸座長 なるほど。派遣会社の中で事務をしている人も、主たる派遣が製造業派遣だったら、製造業に格付けられることもあるということですね。
○労災保険財政数理室長補佐 おっしゃるとおりです。
○森戸座長 分かりました。ヒアリングの資料の中にも「労働者派遣」という言葉が登場していたので、念のため確認させていただいた次第です。ほかの点はいかがでしょうか。
○皆川委員 本日の御説明、ありがとうございます。先ほど御説明いただいた「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」というのは、恐らくほかの方も同じかなと思いますが、その辺の作業様態や事故・災害の種類というのは非常に似ているのかなと思うのですが、先ほどもありました保険集団としての規模という面で言うと、どれぐらいあるのか、あるいは、それを分離するときの基準というのは、労働者で何万人ぐらいいたら分離してもいいのかみたいな基準が、もしあればお教えいただけますか。
○労災保険財政数理室長補佐 明確に「何人以上ならば業種区分として独立させる」という基準があるわけではありません。また、幼稚園や保育所から認定こども園への移行が進んでいるので、リアルタイムで、それぞれの区分にどれだけの数が存在するか、必ずしも把握できるわけではないのですが、現状、「保育所」と「認定こども園」と「幼稚園」、全部あわせると適用労働者数が大体50万人弱ぐらい。近年、待機児童対策で保育所が増えている一方、長期的には少子化というトレンドがあるので、この集団が今後どのくらいの大きさで推移していくかというのは、我々としてもなかなか予見しにくいところはあるのですが、現時点では3つあわせると50万人弱です。
 これが独立した業種として存在に耐えられる大きさかどうかというのは、なかなか直ちには判断し難い部分があるのですが、少なくとも第1回の検討会において、保険集団が大きいということで紹介させていただいた「医療業」は約300人万、「情報サービス業」も110~120万人います。「教育業」も約160万人います。「社会福祉又は介護事業」は今回、多様な事業があると紹介させていただきましたが、今の労災保険の範囲では約260万人でして、それらと比較すると、規模感としては一段小さいものです。「94その他の各種事業」の中が大きすぎるということが、議論の端緒の1つにはなっているわけですが、そこの中で際立って大きいというほどの水準とは、直ちには言えない部分もありますし、もう1つ、中長期にこの集団が、この大きさで維持されるのか、拡大していくのかということも、直ちには判断し難いところがあるので、この50万弱という数字をもって、業種として耐えられるかどうかというのは、今、我々も断定できるだけの材料が揃っているわけではありませんが、少なくとも約50万人の適用労働者がいます。ほかの「医療業」や「情報サービス業」の100万人以上というオーダーで存在しているものとは、ちょっとレベルが違う数字ですということを回答とさせていただきます。
○森戸座長 よろしいでしょうか、ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」の関連のヒアリングについての御意見をいただければと思います。今の規模の話に関しては、67ページで参考資料をまた付けていただいていますが、先ほど私は平成17年の基本方針といいましたが、それを踏襲して作成された平成25年の報告書のまとめも併せて考慮する、という意味です。保険集団が小さい場合の取り扱いについては新規受給者1,000人未満というようなことが、下のほう、(2)の丸4にありますが、保険集団が大きい場合の基準については具体的な数字が書いてないです。ただし「大きな保険集団を分離する時には」という記述もありますので、別に何万人いたらいいとか悪いという話ではないのでしょうけれど、規模に関して一応、目安になるような議論もされているということだと思います。ほかにいかがでしょうか。何かありますか。
○酒井委員 全体的な視点についての意見となりますが、今回の検討会においては、労災の種類というか、どういったタイプの労災が多いのかという観点から主に見ているという側面がありますが、同時に雇用管理という観点からも、労災というのを考えないといけないのかなと感じています。
 というのも、例えば同じタイプの事故であっても、労災抑制のインセンティブを与えるという観点からは、雇用管理においても同様なのかという点が重要になってくるのかなと思います。
 これは、今の保育園等ではありませんが、先ほどの介護といった事例ですと、例えば同じ腰痛であっても、施設のほうでは対策しやすいのだけれども、訪問サービスのほうでは対策しにくいということがありますと、同じ労災事例を見ていながら、対策というところでは実は全然違うという実態があるかもしれないので、その観点がやはり必要かなと思います。
 そのことに少しまた関連するのですが、雇用管理という観点からは、今、一番重要になってきているのは、先ほど森戸座長のほうからもありましたが、非正規と呼ばれる人たちが増えてきているという実態を反映して、ある業種では非常勤職員、非正規職員が多いのだけれど、ある業種では少ないといったことが、大きな違いになってくるのかなと思います。
 それで言うと、先ほど「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」というヒアリング状況を紹介していただいたのですが、例えば保育所では、従来から非常勤職員が多かったかと思うのですが、幼稚園でも今は預かり保育等長時間の開園によって、非常勤職員を配置するようになってきているということだったかと思いますが、雇用管理上という観点から、それらの幼稚園ですとか保育所といったものが、ある意味、収斂してきているのかなと感じますので、動向として今後、雇用管理の観点から見て、同じようになってきているというならば、そういう視点で捉える必要もあるのかなと、この業種は、今は違うのだけれど、少しずつ似てきているようになっているという考え方も必要なのかなと思いました。以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。何か事務局からコメントはありますか。
○労災管理課長 非常に重要な御指摘だと思います。我々もそういう観点を含めて、今後検討していきたいと思います。ありがとうございます。
○森戸座長 そうですね。やはり同じ労災事故でも、どう管理されているか、できるかという点は、当然見なければいけないでしょうし、また、非正規従業員の話も、もちろん非正規の従業員も労働者として労災の対象ではありますが、こういうヒアリングは、どうしても正社員、上の団体に聞くから、正社員なりを暗黙の前提として、無意識のうちにかもしれないけれど、割とそうしたところにウエイトが掛かったようなヒアリングになる可能性もあると思いますので、そこは注意しなければいけないとは思います。貴重な御指摘だと思います。ありがとうございました。保育所等について、ほかの点はいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、ヒアリングの状況を説明いただいて、質疑応答もしましたので、「保育所」、「認定こども園」、「幼稚園」については、また本日の御議論、御意見等を踏まえて、事務局において引き続き検討を進めていただきたいと思います。
 少し定刻より早いのですが、本日の議論としてはここまでにさせていただきたいと思います。今後、事務局におきまして、本日の議論を踏まえた整理をしていただき、そろそろまとめに入っていきます。報告書の骨子案の検討もしていただきたいと思います。それから、本日の各委員からの御指摘等もありますので、もしそれに何か対応できる面があれば、それも併せてお願いしたいと思います。そういうことで、事務局のほうに作業を進めていただきたいと思いますが、委員の皆さん、そういう方針でよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、そのように、よろしくお願いします。では、今後の予定等についてお願いします。
○労災保険財政数理室長補佐 本日はありがとうございました。いただいた御意見は、事務局で整理をさせていただきまして、次回の議論につなげていきたいと思います。次回の第4回につきましては、場所は未定なのですが、日時としては12月18日の午前10時からを予定しています。場所等が決まりましたら、また改めて連絡を差し上げたいと思います。
 また、本日の議事録についても、先生方に御確認いただいた上で公開という形にさせていただきますので、御承知おきください。
○森戸座長 ありがとうございました。では、第3回労災保険の業種区分に係る検討会は以上で終了といたします。皆様、長時間御議論いただき、ありがとうございました。

(了)


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